
TIS株式会社の人事本部 人材戦略部 HRBP室に所属しています。
HRBP室の中にHRBPを行うチームとキャリア採用を行うチームがあり、私はキャリア採用をメインで担当しています。
キャリア採用担当としては、社内には複数の事業部があり、それぞれの事業部に採用担当が伴走する体制をとっています。私もその一員として、各事業部の採用をサポートする一方で、社員紹介採用の促進やキャリア入社者のオンボーディング支援などにも携わっています。
特にオンボーディング領域では、入社後の社員がスムーズに社内に溶け込み、早期に活躍できるような環境づくりを意識して取り組んでいます。

TISでは年間およそ200名近いキャリア採用を行っており、入社者一人ひとりをどのようにフォローしていくかは、常に考えている課題です。
キャリア入社者向けの入社式など入社時に集まる機会はあるものの、その後は業務単位での関わりが中心となり、他部署や同時期入社の社員との接点がほとんどない状況でした。
また、簡単な交流イベントや全社的な親睦会のような取り組みは存在しているものの、キャリア入社者がその存在を知らなかったり、知っていても参加しづらいといった課題もありました。
特に「一緒に行く人がいないから行かない」「まだ社内に知り合いがいない」などの声も多く、せっかくの施策が十分に活かしきれていない実態がありました。
離職率が特別高いわけではありませんでしたが、「辞めるほどではないけれど、もう少し支えや仲間意識があったらいいのに」との声もあり、エンゲージメントの観点からも見直しが必要だと感じていました。
こうした背景から、キャリア入社者が安心して働けるようなオンボーディング施策と交流の場を作ることに、より力を入れることにしたんです。
TISの事業部内で、新しい仲間との関係性を作っていくための施策としての推進事例があり、関係作りに有効な企画を実施しているということは認知していました。
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そういったきっかけもあり、HPを拝見したり、直接お話をお伺いした中で、組織づくりにおいて、「働きたい組織に変えていきましょう」、「孤独を無くす」というコンセプトに共感をしました。
さらに話を聞くうちに、想像以上に多様なプログラムを展開していることを知り、単なる交流イベントではなく、組織課題に寄り添った場を設計しているという印象を持ちました。
キャリア入社者向けの施策として、2024年度からバヅクリのプログラムを導入し、2025年度も継続して実施しています。
まず、2024年度の初回導入時の決め手は大きく3つありました。
1つ目は、プログラムを柔軟にカスタマイズできる点です。
自社のキャリア入社者の状況や課題に合わせて、ワーク内容や構成を調整できることが魅力でした。
2つ目は、同期交流が一過性のものではなく、継続的なつながりに発展しそうだと感じた点です。単なる交流イベントではなく、入社後も相談や情報交換がしやすくなるような仕掛けが組まれている点に共感しました。
そして3つ目は、先ほど例に挙げたように事業部内で既に導入実績があり、現場から「導入して良かった」との声が上がっていたことです。信頼できる実績があったことで安心して導入を決めることができました。
続く2025年度の継続導入の理由は、前回の成果にありました。
2024年度の参加者からの満足度が非常に高く、「次もぜひ参加したい」「もっと時間を長くしてほしい」などの声が寄せられました。
また、バヅクリ側から同期交流に特化した新しいプログラムが提案され、前回のフィードバックを反映したカスタマイズが可能だったことも大きなポイントです。

利用したプログラム
中途入社同期切磋琢磨促進ワークショップ~時に競い時に支え合う「同期」を創る~本プログラムを以下にカスタマイズ
「中途入社同期 相互支援促進ワークショップ~お互いを理解し、支え合う「同期」を創る~」
もともとの「中途入社同期切磋琢磨促進ワークショップ」は、名前の通り、互いに刺激し合いながら成長を目指すプログラムでした。 ただ、TISのキャリア入社者を対象にする際には、少し方向性を変える必要があると感じていました。
キャリア入社者は、年齢も職種も多様です。営業職、企画職、エンジニア職など幅広いバックグラウンドを持つメンバーが集まるため、競い合うよりも支え合う関係づくりを重視しました。 そこで、ワークのテーマを相互支援へとカスタマイズし、プログラム全体のトーンをよりオープンで前向きなものに変更しました。
具体的には、同じタイミングで入社した社員同士が自分の経験や感情をシェアできるよう工夫しました。仕事のスキルだけでなく、入社後の気づきや悩みを共有することで、自然と相互理解が深まるプログラムとなりました。
実施形態を検討する際に、まず意識したのは「誰にでも平等に参加の機会をつくること」でした。
TISは全国各地に拠点があり、地方勤務やリモートワークをしている社員も多くいます。東京に勤務していても、家庭の事情などで出社が難しい方も少なくありません。
そのため、対面とオンラインの2形態で実施することにしました。
対面では東京のオフィスに集まったキャリア入社者が、直接顔を合わせながら交流を深めました。
一方、オンラインでは遠隔地からでも気軽に参加できるように設計し、チャットやブレイクアウトルームを活用して双方向のやりとりを促しました。
約8割の社員が週3日以上リモート勤務をしていることもあり、このハイブリッド形式は当初の想定通り平等に参加の機会を作れたと感じています。
当日は、最初のアイスブレイクで行ったジャンケンから一気に場が温まったのが印象的でした。
ワークショップ前は、やや緊張した空気があり、同じ部屋にいても、まだお互いに少し緊張しているような雰囲気がありましたが、ワークが進むにつれて、参加者同士が打ち解け合い、次第に明るくフラットな雰囲気になったように感じました。
ワークショップの後に懇親会も行ったのですが、その場では「こういう機会があって本当に良かった」「今後もつながりを続けたい」といった声を多くいただきました。
また、アンケートでは、「今後も関わっていきたいと思う人に出会えましたか?」という質問に対し、5点満点中4.45とほとんどの方が今回のイベントをきっかけに持続的な繋がりを持とうと思えたと回答いただけました。グループワークで同じチームだったメンバー同士が、その場でチャットグループを作り、「今度ランチに行こう」と次の予定を立てる姿も見られました。 単発の施策に終わらず、自発的なつながりが生まれていることが印象的でした。
地方勤務の社員からの東京開催の対面イベントへの参加が多かったことも驚きでした。
大阪や福井など遠方の拠点からも複数の社員が東京開催の対面イベントに参加してくれたのですが、現場の上司や部門長から「行っておいでよ」と背中を押され参加したことを聞いて、今回の取り組みが想定外のコミュニケーション活性化に繋がっていると感じました。
今後は、今回の取り組みを一過性のものにせず、継続的なフォローアップにつなげていきたいと考えています。
実際、昨年のワークショップに参加した社員からは「半年経った今、もう一度同じメンバーで集まりたい」などの声が多く寄せられており、第2弾の開催を望む声が増えています。
今後は、小規模な懇親会やライトな交流の場を設けるなど、無理のない形で継続することを検討しています。
大がかりなイベントでなくとも、日常の中で「少し話してみる」「近況を共有する」といった機会を積み重ねることが、キャリア入社者の定着や活躍につながると考えています。
キャリア入社の社員は、どれだけ経験やスキルがあっても、新しい環境に入ることへの不安や心細さを感じる方が多いと思います。 部門の中ではコミュニティが自然に形成されることもありますが、「もっと早く知りたかった」「こんな人がいるなら話してみたかった」と感じることも少なくありません。
交流をする場を提供すること自体がゴールではなく、信頼できる仲間がこの会社にいると思ってもらうことが本質的な目的です。 それによって、困った時に支え合えるセーフティネット的な側面と、協働を生み出すコラボレーション的な側面の両方が育まれます。
キャリア入社者だからこそ、同期という共通点でつながる価値がある。 人事がそのきっかけを作ってあげられるなら、それはとても意味のあることなんじゃないかなと思っています。

コンサルティング、ソフトウエア開発、アウトソーシング等のシステムインテグレーション事業
従業員数 連結:21,765名 単体:5,970名(2025年3月31日時点)