管理職やリーダーの方にとっては、組織やメンバーの生産性を上げるうえで、モチベーション管理が必要だと感じている方も多いと思います。

またコロナ禍によるリモートワークの増加で、より一層、モチベーション管理の難易度は上がっているのではないでしょうか。
この記事では、モチベーションとはそもそも何なのか、モチベーション管理の重要性やモチベーション低下の要因など、事例を踏まえて解説していきます。

モチベーションとは何か

モチベーションとは

モチベーションとは、「目標に向かって努力し、その達成を目ざそうとする意欲」を意味します。
モチベーションの中でも仕事における意欲はワーク・モチベーションと呼ばれています。

はじめに、モチベーションをわかりやすく理解するために、モチベーションの3つの特徴を説明します。

モチベーションは行動を引き起こす

モチベーションは、目標に向けて特定の行動を引き起こす特徴があります。
例えば、8月までに体重をマイナス10キロ減らそうという目標を立てたとして、その目標を達成するまでの行動を引き起こす、心理的エネルギーなるものがモチベーションです。

目標までの距離でモチベーションの強度は変化する

モチベーションは、目標との距離によって強度が変化する特徴を持ちます。
一般的に、目標までの距離が近いほど、モチベーションは強度を増す傾向にあります。
例えば、1年で10キロ減量をするという目標よりも、より近い1か月先までに1キロ減量するという目標のほうが、モチベーションがあがるということです。

しかし、必ずしも目標までの距離が近ければよいというわけではなく、長く遠い目標に対しても、「少しずつ近づいている」と実感することで、満足度や心地よさ、充実感を得ることができます。

モチベーションは目標達成までの行動を持続させる

モチベーションは、目標達成までの行動を持続させる特徴を持ちます。
適度な目標設定ができていれば、モチベーションによって目標達成まで行動を続けることが可能です。
しかし、目標に対する行動計画が無理なものであれば、モチベーションがなくなり、行動が持続できなくなるでしょう。

自分がいかに継続的に取り組める内容か?を考えて具体的な行動に落とし込むことで、モチベーションによる行動持続効果が期待できます。

モチベーション管理は経営において重要な要素

従業員のモチベーション管理

従業員のモチベーション管理は、経営にも直結する要素です。
会社を経営するためには、人材は必要不可欠であり、人材の力が十分に発揮されなければ会社の利益は期待できません。

ここ最近では、終身雇用制度が崩壊して転職へのハードルが下がっています。
「放っておけば定年まで頑張って働いてくれる」という考え方は改めて、企業が積極的に従業員のモチベーションを引き出さなければなりません。

次の章では、従業員のモチベーション管理方法のヒントとなる、モチベーションの生まれ方に関して「マズローの5段階欲求説」と「マクレランドの欲求理論」について解説していきます。

モチベーションはなぜ生まれるのか?|マズローの5段階欲求説

マズローの5段階欲求説

「マズローの5段階欲求説」とは、心理学者 A・マズローの欲求階層説で述べられた説で、人間の欲求は5階層のピラミッドのようになっているという心理学理論です。
その5段階とは、一番下から順に「生理的欲求」、「安全の欲求」、「社会的欲求」、「承認欲求」、「自己実現の欲求」と分かれています。
マズローは、人間は生きている限り自己実現につけて絶えず成長する生き物であり、1つ下の欲求が叶うと次の欲求を叶えようとすると説いています。

5段階の欲求について、1つずつ内容を説明していきます。

1. 「生理的欲求」

これは人間の生活に深く関わるものである、食欲・睡眠欲・排泄欲・性欲などといった
ことが当てはまります。
これがなくては、生命の維持が不可欠なものがあげられます。

2. 「安全の欲求」

安心かつ安全な暮らしへの欲求を表します。病気や思いもしなかった事故など、自分の身を安全に保てるか?というセーフティーネットもこれに該当します。
年齢の小さな子どもはこの欲求が現れますが、大人になるにつれて反応を抑制できるようになります。

3. 「社会的欲求」

身近な人間関係、家族や友人、会社から受け入れられたいという欲求です。
どこかの社会集団に所属をして、自らが安心したいという状態であり、所属と愛の欲求と呼ばれることもあります。

4. 「承認欲求」

どこかの社会集団に所属をして、自らの社会的欲求を満たしていたとして、その集団の中で高い評価を得たい、自分の持つ能力や人格を認められたいという欲求です。
これが満たされないと劣等感や焦燥感などが現れてきます。

承認欲求はさらにここから2種類に分類されます。

「低位の承認欲求」
他者から注目されたり、褒め称えられたりすることを求める欲求を指します。
自分の第三者から認められたい!褒められたい!という気持ちがこれに該当します。

「高位の承認欲求」
自分のことを自分で承認できるかがこの欲求です。
他者の評価軸の中での判断ではなく、自分の中の評価や基準によって作り出されたものです。

5. 「自己実現の欲求」

上記4つの欲求が全て満たされると、最後に出てくるのが「自己実現の欲求」です。
自己実現の欲求とは、より一層自分が自分らしく、能力を開花させた状態で生きたいという欲求です。
自分が今できることを最大限やりたいなどという想いが高まっている状態です。

4つのモチベーション|マクレランドの欲求理論

マクレランドの欲求理論

マズローの5段階欲求説では、人間は5つの階層の欲求の中で生きていることがわかりました。
マズローの5段階欲求説を、4つのモチベーションに分類したものが、マクレランドの欲求理論です。

「マクレランドの欲求理論」とは、モチベーションを4タイプに類型化したもので、デイビット・C・マクレランドが提唱した理論です。
マクレランドは、モチベーションの基となる欲求は、達成・権力・親和・回避の4つであり、モチベーションの裏には必ずこれらの欲求のいずれか、もしくは複数が起因していると説いています。

具体的にマクレランドの唱える、4つの欲求をみていきましょう。

1. 「達成欲求」

成功の報酬よりも、自身がそれを達成したいという欲求から人間は努力をします。
以前、取り組んだ時よりもうまくやりたい、効率的に取り組みたいという欲望のことを達成欲求と呼んでいます。
自分が取り組んだ結果に関してフィードバックを欲しがるのもこの欲求の特徴です。

2. 「権力欲求」

他者にインパクトを与え、影響力を発揮したい・他者や物事をコントロールしたいという欲求のことです。
責任を与えられること自体を楽しんで、他者から働きかけられるよりもコントロールしようとします。
競争を好み、地位やステータスを重視する環境や状態でイキイキとします。

3. 「親和欲求」

他者との交友関係を構築したいという欲求です。
この欲求を強く持つ人の特徴としては他者の評価が気になり、良く見られたい、好かれたいとい想いが強いです。
心理的な緊張状態には、1人では耐えられない傾向にあります。

4. 回避欲求

困難な状況や失敗を回避しようとする欲求です。
失敗するのに対して、恐怖心が強く適度な目標をあえて避けようとします。
また批判を恐れて、周囲の意見に合わせようとします。

今回は理論的なモチベーションの生まれ方について、2つの有名な心理学を紹介しました。
自分が普段、仕事の中で感じている想いや考えていることが当てはまる方もいるのではないでしょうか。

部下のモチベーションを把握するコツ|若手社員とベテラン社員のモチベーションアップのポイント

モチベーションアップのポイント

ここまで、2つの理論を説明しつつモチベーションについて紐解いてきました。
仕事において、上司が部下のモチベーション管理をしながら適切な対応をするのは、実はとても難しいことです。
また、若手社員とベテラン社員では、モチベーションが上がるタイミングが異なります。

次の章では、若手社員とベテラン社員のモチベーションが上がるタイミングに具体的にどのような違いがあるのか解説します。

若手社員のモチベーションが上がるタイミング

まずは、若手社員のモチベーションが上がるタイミングについて、3つご紹介します。

就業時間内に業務を完遂すること

終業の時間をゴールと設定し、そこまでに今日やらなければいけない業務を終わらせることに達成感を感じる人が多いようです。

事前計画通りに業務を完遂すること

自分が立てた計画どおりに仕事を遂行し、定時で帰りプライベートな時間を楽しみたいという気持ちです。
急に頼まれた仕事や予定通りに仕事を終わらせられずに、残業をするという状況は若手社員にとって最もモチベーションが下がり、仕事の効率をダウンさせる可能性があると言えます。

一緒に働くメンバーに感謝されたとき

毎日顔を合わせ、一緒に働くメンバーや上司に認められ、感謝される瞬間は若手にとってモチベーションアップにつながります。

ベテラン社員のモチベーションが上がるタイミング

続けて、ベテラン社員のモチベーションが上がるタイミングについて見ていきましょう。

難易度の高い仕事が成功したとき

ベテラン社員がやりがいを感じる瞬間は、難しい仕事を成功させたときです。
仕事の難易度が上がると、それを達成できたときの喜びや気分の高まりが、モチベーションに直結するとされています。

成果に見合った給与がもらえること

年齢が上がるのと同時に、給与で評価されたいと思う人が多いためです。

お客様に感謝されたとき

お客様の役に立てた実感を持てていることが継続的なモチベーションにつながります。

従業員の年次によって、一定の傾向があることを理解しつつ、自社の従業員がどのタイミングでモチベーションが上がりやすいか確認することが大切です。

モチベーションが上がればエンゲージメントの向上が期待できる

仕事へのモチベーションアップはエンゲージメントの向上に深く関わっています。
従業員のエンゲージメントを向上させるためには、モチベーションを上げる他にどんな打ち手が必要になってくるのでしょうか。

バヅクリHRの研究所では、エンゲージメントに関するアンケート調査を実施し、エンゲージメントを高める要素、施策、取組事例などをまとめました。

下記からダウンロードできますので、エンゲージメント向上施策にぜひお役立てください。

【資料概要】

  1. エンゲージメントサーベイに関する調査結果
  2. エンゲージメントを高める3要素
  3. エンゲージメントを高める打ち手
  4. エンゲージメント向上施策
  5. エンゲージメント向上施策に関する注意点
  6. エンゲージメント向上取り組み事例
  7. まとめ

従業員のモチベーションを把握する10のチェックリスト

チェックリスト

従業員のモチベーションを管理するために、ここでは10のチェックリストをご用意しました。
組織の部下のモチベーションは下がっていないか、チェックリストを活用しながら確認してみてください。

仕事の効率が悪い
仕事の質が下がる
新しいことを身に着けたがらない
周りとのコミュニケーションを取りたがらない
欠席や早退が続いている
挨拶をしなくなった
会議などの場で意見を発言しなくなった
仕事の後の付き合い(食事や飲み会など)をしなくなる
上司や同僚からの評判を意識しなくなる
愚痴や不満が多い

たくさんの項目が当てはまった従業員がいる方は、モチベーション管理が黄色信号の可能性があるかもしれません。
ぜひこの機に、見直してみてください。

働きがいを喚起しモチベーションをアップさせるやり方

モチベーションをアップさせるやり方

ここからは、従業員のモチベーションアップに関して具体的に取り組んでいる企業の事例をご紹介していきます。

  1. 感謝を伝え合う仕組みづくり
  2. モチベーションを上げるために言葉をかける行動
  3. モチベーションアップ企画への取り組み

この3タイプに分けてご紹介します。

1. 感謝を伝え合う仕組みづくり

感謝を伝え合う仕組みづくりを通して、モチベーション管理に取り組んでいる企業を2社ご紹介します。

スマイル給(株式会社カヤック)

事業内容は、日本的面白コンテンツ事業と掲げるカヤック社は、ユニークで個性あふれる取り組みをしていることで有名な会社です。
カヤック社は、社員のアイデアからはじまった給与制度「スマイル給」という、社員同士の長所を評価しあう制度を取り入れています。

スマイル給のやり方は、毎月ランダムに仲間の良いところをほめて、その評価項目を給与明細に載せるという方法です。
非常にシンプルかつ斬新であり、毎月の給与と一緒に感謝や評価の言葉を受け取ることでモチベーションを高めることが可能です。

参考:面白法人カヤック「サイコロ給とスマイル給」

3C制度(フォルシア株式会社)

フォルシア社は、情報検索プラットフォームの開発やテクノロジーを使ったコンサルティング業務を行っているIT企業です。
会社の利益に対して貢献した社員に、フェアに利益の一部を分配したいという想いから3C制度という評価・賞与制度を取り入れています。

3CのCは、Contribution=会社への収益の貢献度、Commitment=業務に対する責任感・献身度、Consistency=会社への安定的関与の3つです。
3C対象者である社員全員に「あなたに総額○○万円のボーナスを自分を除く3C対象者に分配する権限があったとしたら、それぞれにいくらずつ分配しますか?」というシートを作成し、それぞれ分配額を記入してもらいます。
そして、この3Cの結果から賞与額を決めて支払う仕組みとなっています。
頑張った分だけ、正当な評価と報酬を与えてモチベーションアップを図るのは面白い取り組みといえるでしょう。

参考:「全員で全員の賞与を決める」からこそ気付けることがある!個人主義のエンジニアを変えた評価制度

2. モチベーションを上げるために言葉をかける

部下やメンバーにやる気を出してほしい時、みなさんはどんな言葉をかけたり、どんなことを話していますか?
モチベーションアップのための近道として部下を褒めるという行動があると思います。
実は、部下を褒めるにもコツがあります。
褒めるコツをつかんで、モチベーションアップやチームのパフォーマンスアップに働きかけてみましょう。

効果的な褒め方その1:みんなの前で褒める

部下を褒める場合は、より大勢が集まっているようなミーティングや朝礼の場などで褒めましょう。
組織のリーダーや上長が褒めるとそれに便乗して、他のメンバーも褒めてくれるので場が温まったり、よりいい雰囲気作りにもつながります。

効果的な褒め方その2:人を介して褒める

直接、「君のここがよかったよ!」と褒めるのも効果的ですが、効果が増大するのが人を介して褒めるということです。
「▲▲さんが君のここが良かったと褒めていたよ」と言われると、オーバーな表現でも素直に受け取ってもらえることが多いです。
直接伝えるのは何となく、照れくさいと思われる方、まずは他のメンバーの方の名前を出して褒めてみるとモチベーションアップにつながるかもしれません。

3. モチベーションアップ企画

コロナ禍によるリモートワークの増加で、思ったようにメンバーとコミュニケーションが取れていない方もおおいでしょう。

そんなとき、オンラインでも実施できる企画を2つご紹介します。

オンライン運動会

自宅にいながら行うオンライン運動会です。
Zoom等のオンラインコミュニケーションツール上で開催したり、YouTubeでライブ配信を行うとより盛り上がるでしょう。

制限時間内に何枚の靴下をはけるかを競う靴下履き競争や、会社にまつわるクイズ、社員のプライベートのクイズ、4種目の筋トレをリレー形式で行う筋肉算用など、バラエティー要素を取り入れるとより楽しめます。

リモートワークばかりで運動の機会が減って、コロナ太りが気になる方にも嬉しい取り組みですね。

オンライン懇親会

バヅクリ

コロナ禍でコミュニケーションが減ってしまった内定者のモチベーションを上げるために、オンライン懇親会を企画するのもおすすめです。
いち早くトレンドを掴み、テレワーク上でのコミュニケーション強化を行っているバヅクリでは、企業研修やワークショップのプロをアサインしたオンライン懇親会向けのサービスを提供しています。
常時50種類以上のオンライン体験プログラムを用意していて、プロの司会者に安心して任せることができます。

逆にモチベーションを下げてしまうことにつながるマネジメントをしていませんか?

モチベーションを下げるマネジメント

せっかくモチベーションアップの施策をしていても、知らず知らずのうちに従業員のモチベーションを下げる言動をしてしまうことも少なくありません。
最後に、モチベーションを下げてしまいやすいマネジメントのNG行動を6つご紹介します。
一つずつチェックしながら、当てはまるものがないかぜひ確認してみてください。

1. 好き・嫌いで判断

自分の好き嫌いの感情で、従業員への接し方を変えてしまっていませんか?
特定の部下を可愛がる、会話の頻度がバラバラでたまにしか声をかけない部下がいる、馬が合わない部下とは距離を置くなど、好き嫌いの感情で判断すると、相手のモチベーションを下げる可能性が高いです。

2. すぐ感情的になる

自分の機嫌で部下を叱ったり、褒めたりすると部下の信頼は得られにくいでしょう。
感情のコントロールをせずに、そのまま感情的に怒ったり、ヒステリックになる傾向にある方は要注意です。

3. えこひいき

同じミスをした部下がいても一方の部下には叱り、一方には励ますなど、個人的な感情を仕事に持ち込んでいませんか?
チームのモチベーションを維持したり、向上したいのであればまずは部下への接し方を見直してみるとよいのかもしれません。

4. 評価の納得感がない

上司からの評価に納得感が得られないと、モチベーションは下がる可能性が高いです。

評価の納得感を持ってもらうためにも、評価をつける際には理由や動機を考えながらつけるとよいでしょう。

5. 成果を横取りする

部下が努力して勝ち取った成果を上司が横取りしてしまう、自分の成果としてしまうことで、相手のモチベーションを下げているケースもあるでしょう。
成果の横取りはせず、従業員の日々の仕事ぶり適切に評価することが大切です。

6. 言動不一致

言ったことと行動が一致していない場合、不信感を与えて相手のモチベーションを下げてしまう可能性があります。

普段周りに話していることと、自分の仕事への取り組み方は異なっていないか?定期的な振り返りの機会があるとよいでしょう。

まとめ

コロナ禍によるリモートワークの増加で、部下のモチベーション管理に頭を悩ませている方も多いと思います。

まずはモチベーションがどのように生まれるのか理解し、モチベーションを下げるような言動をしていないか見直すことから始めましょう。

また、テレワーク中でも取り組めるモチベーション施策やサービスが増えています。

ぜひ、今回ご紹介したモチベーション施策を参考に、従業員のモチベーション管理に前向きに取り組んでみて下さい。