「人的資本」とは、人材が、教育や研修、日々の業務等を通じて自己の能力や経験、意欲を向上・蓄積することで付加価値創造に資する存在であり、事業環境の変化、経営戦略の転換にともない内外から登用・確保するものであることなど、価値を創造する源泉である「資本」としての性質を有することに着目した表現である。
~人材の価値を最大限に引き出す~
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート」(2020年)および「人材版伊藤レポート2.0」(2022 年)の中で、人的資本経営の重要であることが強く主張されていることから、近年注目度が増しています。
企業価値の持続的成長を実現するため、わが国では2010年代に入ってコーポレートガバナンス改革が進められている。重要な事実は、企業価値の主要な決定因子が有形資産から無形資産に移行していることである。無形資産の中でも人的資本は経営の根幹に位置づけられるべきものである。その意味で人的資本の価値創造は企業価値創造の中核に位置する。
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス(企業統治))を考慮した投資活動や経営・事業活動を指します。
SDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)を指し、国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
これらの考え方が市場に浸透してきたことにより、投資家から人的資本情報開示の要請が高まっています。
「エンゲージメント(engagement)」は、「婚約、誓約、約束、契約」を意味する言葉です。ここから派生して、人事領域におけるエンゲージメントでは「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」という意味合いで使われています。
ワークエンゲージメント
仕事そのものに没頭している状態であり、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態、『活力』『熱意』『没頭』という3次元から構成」や「仕事に対する『快』の高さと活動水準の高さを示す」などと解説されています。
従業員エンゲージメント
在籍している組織に対して、エンゲージメントが高い状態のことであり、職務満足、組織コミットメント、役割外行動などの既存の概念と類似するものです。
伊藤レポートで提唱されている「人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素(3P・5Fモデル)」の1つとしてエンゲージメントが取り上げられています。
任意の開示基準であるISO30414において、開示項目に設定されています。また、有価証券報告書の記載事項としても、上場会社等の開示が求められています。
まずはエンゲージメントを測定する必要があります。エンゲージメントサーベイを用いて、自社のエンゲージメントスコアを把握できる状態を作ります。
サーベイの結果から、スコア改善に向けた具体的な改善施策を行う必要があります。
結果の深堀り→課題の設定→施策実行
人的資本情報開示において、事業戦略と人材戦略の統合的ストーリー性(独自性)と定量的データ(比較可能性)の両面での開示が求められています。