
評価制度はすでに整備されており、成果評価の結果も蓄積されていました。しかし「評価が低い社員に対して、組織としてどう関わるべきか」という方針が曖昧なまま、管理職個人の裁量に委ねられている状態でした。
育成で対応すべきなのか、役割を変えるべきなのか、それとも代謝を促すべきなのか。その判断軸がないため、人事部門も管理職もどう動いていいかわからない。結果として「問題が起きてから対処する」後手の対応が続いていました。
また、ローパフォーマーが発生する構造的な原因にも着手できておらず、毎年同じ課題が繰り返される悪循環も見られました。
バヅクリが提案したのは、以下の4ステップによる段階的な支援です。初期フェーズでは①②を集中的に実施します。
① ローパフォーマーの定義づけ② ローパフォーマーの発生原因分析③ キャリア開発マップの作成④ アンラーニングの促進
「ローパフォーマー」の定義があいまいなまま対応を始めると、必ず管理職や人事の間で判断がばらつきます。そこでまず、以下の2軸で「一次定義」を設計しました。
パフォーマンス軸(過去〜現在の視点):成果評価において一定の基準を下回っている状態
ポテンシャル軸(未来の視点):能力評価において、現在の等級に求められる水準に対して価値力・影響力が乖離している状態
どちらかに該当する場合をローパフォーマーの「仮認定」とし、次の二次定義でより詳細に場合分けします。

定義だけで終わらない。3つの対応パターンまで設計する
ローパフォーマーを特定したあと、「どうするか」の方針が決まっていなければ、現場は結局動けません。バヅクリでは定義の設計と並行して、該当した人材に対する対応パターンを以下の3つに類型化し、それぞれの判断基準と進め方まで設計します。
① 改善期待を込めてキャリア促進
育成によって改善可能性がある人材に対しては、成長の道筋を示しながらキャリア開発を促進します。本人が「どこへ向かえばよいか」を具体的にイメージできる支援を設計します。
② 社内の役割変更や再アサイン
現在の等級・役割とのミスマッチが主因の場合は、本人の強みが活かせる別の役割や部署へのアサインを検討します。「能力がない」のではなく「配置が合っていない」ケースも少なくないためです。
③ 代謝促進(労務的なリスクも踏まえ詳細に設計)
育成コストや組織への影響を総合的に判断し、代謝を促すべきと判断した場合は、労務リスクも考慮しながら段階的なプロセスを設計します。感情的・属人的な判断ではなく、定義に基づいた客観的なプロセスとして運用できる形を整えます。
7つのローパフォーマー判断基準を設計
「未来の視点」における改善可能性の評価には、以下の7項目を活用します。「変えづらい資質か」「育成コストが許容範囲外か」「チームワークへの悪影響があるか」の3観点で各項目を評価し、2つ以上の○がついた場合をローパフォーマー条件に含むべきとしました。
マインド基準(特に重視)
スキル基準

この7項目は、人材要件における「マインド・ポータブルスキル」の各要素を以下の3観点で評価し、2つ以上該当するものを選定しています。
上位5項目はこの3観点すべてに明確に該当するマインド基準であり、特に優先度が高いと判断しました。残る2項目(職務の正確な理解・自己改善力)はスキル基準ですが、チームや組織への影響が大きいことから追加しています。
定義が決まったら、次は実態把握です。人事データだけでは見えない「現場での行動の実態」を把握するため、管理職向けのアンケートを設計・実施します。
アンケートの設計において特に重視したのは、「育成支援のためのもの」という位置づけを明確にすることです。評価・処遇には直接使用しないことを明記し、回答者が安心して実態を回答できる環境を整えました。
案内文のポイントは3つです。

原因分析で「育成で対応すべき」と判断した人材に対しては、単に「もっと頑張ろう」では変わりません。本人が「自分はどこへ向かうべきか」を具体的にイメージできるキャリア開発マップを作成し、成長の道筋を可視化します。
マップには現在の等級・役割における期待値と現状のギャップ、習得すべきスキルや行動変容のポイント、目標となるロールモデルや到達水準を盛り込みます。上司との1on1や評価フィードバックの場でこのマップを使うことで、「何をどう変えれば評価が上がるか」が管理職・本人の双方に伝わりやすくなります。
ローパフォーマーの多くは、「能力がない」のではなく「過去に有効だった習慣や思考が現在の環境にフィットしなくなっている」ケースが少なくありません。そのため、新しいことを学ぶ前に**「古い習慣・思い込みを手放す(アンラーニング)」プロセス**が必要になります。
バヅクリでは、アンラーニングを促すワークショップや研修を設計・実施します。自分の行動パターンを振り返り、「なぜその行動が有効でなくなったのか」を本人が腹落ちして理解することで、学び直しへの抵抗感が下がり、行動変容が起きやすくなります。単なるスキル研修ではなく、マインドセットの更新から始める点がバヅクリのアプローチの特徴です。
本プロジェクトにおいてバヅクリは、ローパフォーマーの定義設計から原因分析の枠組み構築、管理職アンケートの設計・分析まで、人事部門と伴走しながら進めます。「何をもってローパフォーマーとするか」という最も難しい問いに対して、HR理論と各社の実態をすり合わせながら、現場で使える基準を一緒につくります。
2フェーズ目以降は、キャリア開発マップの作成やアンラーニング促進の研修・ワークショップ設計へと発展させ、「ローパフォーマーが生まれにくい組織」の構造づくりを支援します。
通信
約3,000名