「ホーソン実験」は、作業環境や労働条件が生産性に与える影響を探るために行われた一連の社会実験のこと。
この実験によって、職場内での人間関係や承認が、組織全体の生産性を高める鍵であることが明らかになりました。
本記事では、ホーソン実験の概要や得られた洞察を解説するとともに、それらを職場でどのように活用できるのかを紹介します。
目次
ホーソン実験とは
ホーソン実験とは、1920年代後半から1930年代にかけて、アメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で実施された生産性向上の要因を探る実験のこと。
当時の仮説では「照明や休憩時間などの環境要因を変えれば、生産性も変化する」と考えられており、作業環境が生産性に与える影響を測定するべく一連の実験が行われました。
ここではホーソン実験で行われた4つの実験について解説します。
照明実験
ホーソン実験の最初の段階に行われたのが「照明実験」です。
この実験では「作業環境の照明を明るくすると生産性が向上し、暗くすると生産性が低下する」という仮説のもと、異なる照明条件の下で労働者の作業効率を比較しました。
その結果、照明を明るくしても暗くしても生産性には変化がなく、むしろ照明を暗くした方が作業効率は高くなる場合も見られました。
組み立て実験
2つ目に行われたのが「組み立て実験」です。
組み立て実験では「労働条件や待遇と生産性の関係」を検証するため、継電器という機械の組み立て作業の観察が行われました。
しかし「就業時間が短く、賃金が高くなるほど生産性も上がる」という当初の予想に反して、条件や待遇と生産性の間に直接的な関係性は見られないという結果となりました。
面談実験
3つ目に行われた「面談実験」では、「賃金や就業時間といった物理的要因以上に、管理体制や労働環境のあり方が作業効率に影響するのではないか」という仮説のもと、2万人以上の従業員を対象に面談が実施されました。
面談の結果、同じ条件・待遇であってもある者は満足している一方、ある者は不満を述べるなど、従業員の満足度は客観的な要素ではなく、個人の好みや感情による部分が大きいことが明らかになりました。
このことから、従業員の満足度は作業現場の客観的な要因ではなく、周囲との人間関係や感情といった主観的要因と深く結びついていることが明らかになりました。
バンク配線作業実験
最後に行われた「バンク配線作業実験」では、集団内の人間関係が生産性にどう影響を及ぼすかを検証する目的で行われました。
実験内容は、集団をいくつかのグループに分け、電話交換機(バンク)の配線作業を共同で行わせるというものです。
その結果、労働者は状況や場面に応じて自ら労働量をコントロールしており、公式な管理者からの指示だけでなく、労働者同士の非公式な関係性やルール・価値観によって作業効率が変わることが分かりました。
例えば、同僚間の協力やプレッシャーがあると生産性を向上する一方で、同僚からの過剰な期待は作業効率を抑制するケースもあることが分かりました。
ホーソン実験からわかること
ホーソン実験から分かったのは、以下の3つです。
- 生産性は作業環境ではなく、心理的・社会的要因を含む労働者の意識そのものに影響される
- 中でも、職場の人間関係や仕事に対する思いなどの感情的側面が生産性に大きな影響を与える
- 良好な人間関係を気付けている方がミスが少なく、生産性も向上する
ホーソン実験は、労働者の心理的・社会的要因が仕事の成果にどれほど影響を与えるかを示すきっかけとなり、その後の経営学や組織論の発展を後押ししました。
ホーソン効果とは
これらの実験結果から、仕事の相談をされたり褒められたりなど、組織や集団の中で承認を受けると、モチベーションが向上・生産性が高まる現象を「ホーソン効果」と呼ぶようになりました。
ホーソン効果は単に職場環境を改善するだけではなく、個々の従業員が「周囲から認められること」が生産性を高める鍵であることを示しており、現代のマネジメント論やリーダーシップ論の基礎となっています。
ピグマリオン効果との違い
ホーソン効果とともに良く言及される心理現象として、アメリカの心理学者ロバート・ローゼンタールによる研究で示された「ピグマリオン効果」があります。
ピグマリオン効果は教育や指導の場面でよく見られる効果で、たとえばチームの監督が選手に対して「君ならできる」と言葉をかけると、選手がその期待に応えようとして実際に成果を上げる事象を指します。
ホーソン効果とピグマリオン効果の違いは、他者との関係性にあります。
ホーソン効果は上下関係を問わない「注目」「承認」がモチベーションの源泉となりますが、ピグマリオン効果は「上位者(上司や監督、先輩など)からの期待」という関係の中で生まれます。
さらに、ホーソン効果は作業環境全体で観察されるのに対し、ピグマリオン効果は1対1の指導や教育の場面で発揮されることが多いです。
仕事におけるホーソン実験の活用方法
ここでは、ホーソン実験で得られた洞察を実際の職場の施策にどう活かせるのか、具体的な生産性向上の施策を紹介します。
コミュニケーションを活発化させる
社内のメンバー同士で意見交換や情報共有の場を定期的に設けると、従業員同士が互いに業務をサポートしあったり、ちょっとした声がけが増えたりして、生産性が向上します。
仕事に関する定例会議だけでなく、少人数のワークショップやカジュアルな懇談会など、インフォーマルなイベントを企画することも効果的です。
こうしたコミュニケーションを活発化させる取り組みを通じて、従業員たちの間で関係性が生まれ、組織全体への貢献意識とともに生産性が高まります。
表彰制度を設ける
ホーソン実験からも分かるように、承認はモチベーションの向上に直結します。
そのため社内の表彰制度も、従業員が「注目され、認められている」と感じるきっかけになるでしょう。
特に優れた成果を挙げた個人やチームを表彰することで、他の従業員にも前向きな競争意識を生み出すことができます。
月間MVPや優秀チーム賞などの賞を設け、努力が正当に評価される仕組みを整えましょう。
表彰にあたっては、金銭的なインセンティブを渡すだけでなく、上司や同僚からの称賛をきちんと伝えることで、心理的な満足感を高めることができます。
社外活動・レクリエーションを行う
会社外での活動やレクリエーションを取り入れることは、部署や役職の壁を越えた関係性を築くことにつながります。
スポーツイベント、ボランティア活動、社員旅行など、非公式な場での交流を促しましょう。
このような取り組みを通じて、従業員同士が互いをより深く理解できるようになり、実際の仕事の場でもチームワークの向上が期待できます。
コミュニケーションを促進する研修 / ワークショップサービス「バヅクリ」
「バヅクリ」では、従業員のサーベイ結果をもとに200種類以上のプログラムの中から、最適な施策を提案します。
プログラムには、従業員同士のコミュニケーション促進やチームワークの向上など、職場の人間関係を改善するものも多数ご用意しています。
バヅクリがどのように生産性向上につながるのか、詳しく知りたい方は以下のフォームから資料をダウンロードしてみてください。
まとめ
ホーソン実験の結果は、従業員の労働生産性は人間関係が大きく影響していることを明らかにしました。
チーム内や職場内での円滑なコミュニケーションは、組織全体のパフォーマンスに良い影響を与えます。
バヅクリで社内のコミュニケーションを活発化させる研修やワークショップをご案内します。
是非この記事を参考に導入を検討されてみてはいかがでしょうか。