リモートワークの普及により、社内チャットは欠かせない業務ツールとなる一方、顔が見えないやり取りゆえの新たなハラスメントが増えています。
この記事では、社内チャットで起こりうる5つのハラスメント類型を具体例とともに紹介し、グレーゾーンの判断基準や予防策、発生時の対処フローまで解説します。
目次
社内チャットハラスメントが増加している背景

厚生労働省が公表している「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、3年前の令和2年度と比較してパワハラの相談件数は16.0%増、セクハラは9.7%増、マタハラ(妊娠・出産・育児休業等ハラスメント)は5.0%増と、いずれのハラスメント相談件数も増加しています。
その原因の一つが、働き方改革やDXの影響でリモートワークが普及し、SlackやMicrosoft Teams、Chatwork、LINE WORKSなどのチャットツールが業務連絡から雑談まで、あらゆる場面で利用される情報伝達手段となったことです。
対面のコミュニケーションが大きく減り、本来なら伝わっていた表情や声のトーンといった非言語情報が欠落してしまうことが増えた結果、コミュニケーションの誤解や摩擦が生じやすくなりました。
その結果、軽い意図のメッセージが威圧的に受け取られたり、意図が伝わらなかったりするケースが増加しています。
社内チャットハラスメントとは? 定義と法的位置づけ

ここでは改めて、社内チャットハラスメントの定義と法的な位置づけを確認します。
社内チャットハラスメントの定義
社内チャットハラスメントとは、社内のチャットツールやメッセージアプリを通じて行われる、相手に不快感や精神的苦痛を与える言動全般を指します。
重要なのは、発信者に悪意がない場合でも、受け手が「不快だ」「苦痛だ」と感じればハラスメントに該当する可能性があるということです。
パワハラ防止法との関係
2020年に改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行され、パワーハラスメントの防止策を講じることが企業に義務付けられました。
さらに、2022年の改正により、これまで大手企業のみが対象であったハラスメント相談窓口の設置が、中小企業を含むすべての事業者に義務化されました。
この法律では、パワーハラスメントを以下の3つの要素すべてを満たす行為と定義しています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
社内チャットでの不適切な言動も、これらの要件を満たせばパワーハラスメントとして認定されます。
また、パワハラに限らず、セクハラやマタハラ、社内チャットハラスメントを含むすべてのハラスメントに対して対策をとる義務があり、対策を怠った場合、企業は法的責任を問われるリスクがあります。
オンラインコミュニケーション特有の問題点
オンラインコミュニケーションには、対面コミュニケーションとは異なる問題が存在します。
- 記録が永続的に残る
- 24時間いつでも送信・受信が可能
- 非言語情報が欠如している
- 心理的距離感を錯覚しがち
チャットを含むオンラインコミュニケーションは便利である一方、これらの誤解や負担、感情的摩擦を生みやすいものでもあります。
企業はこうしたオンライン特有の弱点を理解したうえで運用ルールを整備し、組織全体で安全・健全なコミュニケーション環境をつくることが重要です。
社内チャットで起こる5つのハラスメント類型

社内チャットで実際に発生しているハラスメントは、5つの類型に分類できます。
1.パワーハラスメント(パワハラ)
職務上の地位や人間関係といった優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えるパワーハラスメントは、社内チャットでは以下のような形で起こります。
人格否定や威圧的な言葉遣い
「こんなこともできないのか」「使えない」「何度言えばわかるんだ」など、相手の人格や能力を否定するメッセージを送る。
過度な叱責を全体チャンネルで行う
本来個別に注意すべき内容を、全員が見られる公開チャンネルで行うことで、相手に恥をかかせる。
無視・既読スルーによる精神的苦痛
業務上必要な質問や報告に対して、意図的に返信しない、既読をつけても無視する。
深夜・休日の業務連絡と即時返信要求
深夜や早朝、休日にメッセージを送り、さらに「すぐ対応して」「なぜ返信しないのか」と即時返信を求める。
2.セクシュアルハラスメント(セクハラ)
性的な言動により相手に不快感を与えるセクシュアルハラスメントも、社内チャットで発生しがちなハラスメントの一つです。
性的な冗談やプライベートな質問
「彼氏(彼女)はいるの?」「結婚しないの?」といった恋愛・結婚に関する質問や、性的な内容を含む言葉をチャットで送る。
外見に関する不適切なコメント
「今日の服装いいね」「髪型変えた? 似合ってるよ」といった、一見褒め言葉に見えても、業務と無関係な外見へのコメントはセクハラに該当する可能性がある。
個人DMでの執拗な誘い
業務用チャットツールの個人メッセージ機能を使って、食事やデートに繰り返し誘う行為。
上司から部下への誘いなど、職務上の優位性がある場合はパワハラにもなり得るので注意が必要。
3.モラルハラスメント(モラハラ)
精神的な嫌がらせや人格否定を通じて、相手を支配しようとするモラルハラスメントも、社内チャットの特性を悪用して行われることがあります。
特定の人物を無視する・会話から外す
複数人がいるチャンネルで、特定の人の発言だけにリアクションをつけない、返信しないなど、その人だけを会話から意図的に排除し、孤立させる行為。
グループチャットから意図的に外す
業務上必要な情報共有のグループチャットから特定の人だけを外す、あるいは新しいグループを作る際に意図的に招待しない。
陰口や誹謗中傷の共有
本人のいないチャンネルで、その人の悪口や批判を共有する。
スクリーンショットで本人や第三者にやりとりが伝わるケースも多く、深刻な精神的ダメージが発生しやすい。
4.リモートハラスメント(リモハラ)
リモートワーク特有のハラスメントとして、近年注目されているのがリモートハラスメントです。
具体的には以下のような行為があり、精神的プレッシャーやプライバシーの侵害にもつながるので注意しましょう。
常時カメラオン強制
業務上必要のない場面でも常にカメラをオンにするよう強制し、「監視されている」という精神的プレッシャーを与える。
在宅勤務中の過度な監視・頻繁な稼働確認
「今何してる?」「作業進んでる?」と短時間に何度もチャットで確認する、常にオンライン状態を求めるといった行為。
信頼関係が失われるとともに、従業員の自律性を損なう。
プライベート空間への言及や詮索
ビデオ会議で映り込んだ自宅の様子について「部屋が散らかってるね」「一人暮らし?」などのコメントをしたり、家族の声が聞こえた際に詮索したりする。
「既読」機能を利用した返信強制
既読機能があるチャットツールで、「既読ついてるのになぜ返信しないのか」と責める。
休憩時間や移動中に即座の返信を求めるといったパワハラにもつながる。
5.テクノロジーハラスメント(テクハラ)
テクノロジーハラスメント(テクハラ)は、ITツールやデジタル技術に関する知識の差を利用したハラスメントのこと。
テクハラは年配の従業員やデジタルネイティブでない世代に対して行われるケースがほとんどです。
部下や年下の社員が加害者になるケースも多いため、これらの行為もハラスメントになり得ることを周知していく必要があります。
ITリテラシーの差を揶揄する発言
「こんなこともわからないの?」「ググればすぐ出てくるのに」など、チャットツールやパソコン操作に不慣れな人を馬鹿にする発言。
使い方がわからない社員への嫌味
「何度説明すればわかるんですか」「マニュアル読みましたか?」といった、技術的な質問に対する冷たい対応や嫌味など。
質問しづらい雰囲気を作り、業務効率の低下にもつながる。
【実例付き】これもハラスメント?判断に迷うグレーゾーン事例

ここではハラスメントかどうかの判断が難しいグレーゾーンの事例について、具体的なシーンとともに解説します。
絵文字やスタンプの使い方
絵文字やスタンプは、使い方次第で相手に威圧感や不快感を与えます。
特に、否定的な意味を持つ絵文字を業務上のやり取りで使用したり、相手の年齢や立場を考慮せず一方的に使ったりしてしまった場合、ハラスメントと認定される可能性があります。
たとえば上司が部下に対して、業務の指示メッセージに「💢(怒りマーク)」や「💦(汗)」といった絵文字を多用する、部下の報告に対して「👎(サムズダウン)」のリアクションをつけるなど、送り手と受け手で絵文字の受け止め方が異なる場合は特に注意が必要です。
トラブルを避けるために、こうした業務連絡では絵文字の使用は最小限に留め、「👍(サムズアップ)」など肯定的・励ましの意味を持つもののみを使用するルールを設けましょう。
否定的な内容を伝える際は、絵文字に頼らず言葉で丁寧に説明することが重要です。
業務時間外の「いいね」リアクション
業務時間外のリアクション自体は問題ではありませんが、それが暗黙の「常時対応」を求めるメッセージとして受け取られる場合、リモハラに該当する可能性があります。
上司が休日の深夜2時に、部下が金曜日の夕方に送った報告メッセージに「いいね」をつけると、部下は「休日の深夜まで確認されている=自分も常にチェックすべき」とプレッシャーを感じてしまうかもしれません。
こうしたコミュニケーションの行き違いを避ける方法として、チャットツールの「予約送信」機能を活用しましょう。
業務時間外に確認した内容へのリアクションや返信は、翌営業日の業務時間内に予約送信するよう設定するのがおすすめです。
「お手すきの時に」という曖昧な指示
曖昧な指示自体は直接的なハラスメントではありませんが、その後強く叱責したり、「察して動くべき」という暗黙の期待を強制したりする行為はパワハラに該当します。
明確な指示がないことで従業員に過度な不安やストレスを与え続ける状況は、適切な業務環境とは言えません。
たとえば上司が「お手すきの時にこの資料確認しておいて」とチャットで依頼した場合、その依頼をいつ実行するかは部下の判断に委ねられることになります。
そういった曖昧な依頼を避けるためにも、締切や優先度(高・中・低)を依頼する際にあらかじめ明記しましょう。
既読無視・返信速度の差
業務の優先順位や緊急度によって返信速度に差が出ること自体は問題ありません。
ただし、意図的に特定の人のメッセージだけを無視する、返信を遅らせることで嫌がらせをする場合、モラハラやパワハラに該当します。
たとえば、Aさんからのメッセージには即座に返信するのに、Bさんからのメッセージには既読をつけても数時間返信せず、そこでBさんが「自分だけ無視されている」と感じ、精神的苦痛を受けているなら、これはモラハラに該当すると言えるでしょう。
すぐに返信できない場合は、「確認しました。詳細はまた後で返信します」と一時返信をする習慣をつけるようにするなど、無視する意図はないことを示すことが重要です。
社内チャットでハラスメントが起きやすい4つの原因

ここでは社内チャットでハラスメントが発生しやすい原因を4つ解説します。
非言語情報の欠如
対面では表情や声のトーンなどの非言語情報が多くの意味を伝えますが、テキスト中心の社内チャットではそれが伝わりません。
結果、軽い冗談が批判に見えたり、丁寧な依頼が命令のように受け取られたりなど、誤解が生じやすくなります。
特に注意や指摘などのネガティブな内容は、より厳しく冷たく感じられ、意図とのギャップが生まれやすい点に注意が必要です。
心理的距離感の錯覚
画面越しのコミュニケーションは、対面よりも心理的なハードルが低く感じられます。この「画面越しの安心感」が、不適切な発言のブレーキを緩めてしまいます。
対面では言わないような厳しい言葉も、チャットでは躊躇なく送信してしまうなど、オンラインコミュニケーションでは共感力が低下しやすくなります。
また、自宅など物理的に安全な場所からメッセージを送ることで、「自分は安全圏にいる」という感覚が、より攻撃的・無責任な言動につながることもあります。
記録性と拡散性
チャットの「記録できる」「拡散できる」という性質は、ハラスメント被害の証拠を残せるという面ではメリットですが、同時に被害を深刻化させる要因でもあります。
不適切な発言が文字として永続的に残り、何度でも読み返すことができるため、被害者は繰り返し精神的ダメージを受けます。
また、スクリーンショット機能により、第三者への共有も容易なため、本来は二者間のやり取りだったものが、瞬時に組織全体に拡散される可能性もあります。
この記録性と拡散性により、一度の不適切な発言が取り返しのつかない事態に発展するリスクがあります。
ルール・ガイドラインの未整備
多くの企業では、社内チャットツールを導入する際、技術的な設定やアカウント付与には力を入れ、「どう使うべきか」というルールやガイドラインの整備は後回しにされがちです。
その結果、各従業員が自己流で使用し、ルールが曖昧なまま運用されています。
ルールがないことで、何がハラスメントに該当するのかの判断基準も不明確になり、不適切な言動を助長することになります。
放置した場合の3つのリスク

社内チャットハラスメントを見過ごすと、組織全体に深刻な影響が及びます。
ここでは社内チャットハラスメントを放置するリスクを3つ紹介します。
法的リスク・損害賠償
企業には、労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」やパワハラ防止法に基づく「相談窓口の設置」「再発防止策の実施」の義務があり、ハラスメントを放置することは、これらの義務違反に当たる可能性があります。
実際にハラスメントが発生し、企業が適切な対応を怠った場合、被害者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
さらに、悪質なハラスメントの場合、加害者個人が刑事責任(名誉毀損罪、侮辱罪、強要罪など)を問われることもあり、企業はその使用者責任を負います。
人材流出・採用への悪影響
ハラスメントが常態化している職場では、優秀な人材が流出しやすいです。
キャリアの選択肢が多い若手や専門性の高い人材は、「この会社にいても成長できない」と判断し、より良い環境を求めて転職します。
離職率の上昇は、採用コストの増大、業務ノウハウの流出、チームの生産性低下といった連鎖的な問題を引き起こします。
さらに口コミサイトやSNSでハラスメントの実態が共有されると、企業のブランドイメージが大きく損なわれ、優秀な人材の採用が困難になります。
生産性低下・心理的安全性の低下
ハラスメントが存在する職場では、従業員は常に「何か言われないか」「否定されないか」という不安を抱えながら働くことになり、心理的安全性が著しく低下します。
心理的安全性が低い組織では、従業員は意見を言うことを控え、挑戦を避け、ミスを隠すようになります。
その結果、イノベーションが生まれず、問題の早期発見が遅れ、組織全体のパフォーマンスが低下します。
社内チャットハラスメントを防ぐ5つの予防策

ここではハラスメントを未然に防ぐための具体的な予防策を紹介します。
明確な社内ルール・ガイドラインの策定
まずは社内チャットの利用に関する明確なルール・ガイドラインを策定し、全従業員に周知徹底しましょう。
たとえば、「平日9:00~18:00の間のみ業務連絡可能」「緊急時を除き、休日・夜間(20:00以降)のメッセージ送信は禁止」といった業務連絡を送信できる時間帯を明確に定めたり、チャットにおけるNG表現・推奨表現をリスト化したりすることで、従業員の判断基準を明確にします。
全社員向けの研修・教育の実施
ルールを作るだけではなく、その意図や背景を理解してもらうための研修も必要です。
既存のハラスメント研修に、社内チャット特有の適切な使用方法に関するコンテンツを追加し、具体的なハラスメント事例を検討してもらう時間を設けます。
また管理職には、一般従業員向けの内容に加えて、部下への指導方法、相談を受けた際の対応、チーム内でのルール徹底の方法などを学ぶ研修も実施しましょう。
相談窓口の設置と周知
ハラスメントが発生した際に、被害者が安心して相談できる窓口を設置し、その存在を継続的に周知しましょう。
その際、社内の人事部門に加えて、外部の専門機関(産業カウンセラーなど)と契約し、複数の相談ルートを用意すると、より相談のハードルが下がります。
また匿名で相談できるシステムの導入も、「名前を出すと不利益を被るのでは」という不安を軽減する施策として有効です。
相談窓口の連絡先は社内に周知し、「困ったときはここに相談できる」という安心感を醸成しましょう。
ログ管理とモニタリング体制
チャットのログを適切に管理し、問題の早期発見ができる体制を整えましょう。
チャットログを効率的にチェックするために、AIを活用したキーワード検知システムを導入し、特定のNG単語が使用された場合にアラートしたり、メンバー間のやり取りが極端に少ない・多い場合に通知する機能をつけると良いでしょう。
ただし、ログのモニタリングは従業員のプライバシーとのバランスが重要です。
「会社がすべてを監視している」という過度な監視感は、かえって心理的安全性を損ないます。
モニタリングの目的・範囲・方法を事前に明示し、従業員の理解と同意を得ることが重要です。
心理的安全性の高い組織文化の醸成
制度やルールだけでなく、根本的な組織文化の改革も重要です。
コミュニケーションをチャットだけに依存せず、定期的な対面(またはビデオ会議)の機会を設ける文化を作ることで、お互いの人となりを理解でき、チャットでのやり取りも円滑になります。
月に一度の全体ミーティング、週に一度のチームランチ、四半期ごとのオフサイトミーティングなど、組織の規模や状況に応じた機会を設計しましょう。
また、上司と部下が一対一で話す1on1ミーティングを定期的に実施しましょう。
定期的に対話の機会があることで、小さな違和感やストレスを早期にキャッチでき、深刻化する前に対処できます。
ハラスメント発生時の対応フロー

ここでは万が一ハラスメントが発生してしまった場合の、適切な対応フローについて解説します。
Step1:初動対応
ハラスメントの相談や報告を受けた際の初動対応が、その後の展開を大きく左右します。
具体的には以下の対応を実施しましょう。
被害者の話を傾聴
まずは被害者の話を、否定したり疑ったりせず、真摯に聞くことが最優先です。
その際、「そんなつもりじゃなかったのでは」「あなたにも原因があるのでは」といった発言は絶対に避けましょう。
「必ず適切に対応します」と安心感を与えるとともに、被害者が何を望んでいるのか(謝罪、加害者との接触禁止、配置転換など)も丁寧に聞き取ります。
記録の保存
相談内容は詳細に記録し、日時、場所、相談者、相談内容、被害の具体的状況などを文書化します。
また、チャットのログ、スクリーンショットなどの証拠がある場合は、それも保全します。
Step2:事実関係の調査
初動対応の後、速やかに事実関係の調査を開始しましょう。
チャットログの保全
該当するチャットのログを保存します。
問題のメッセージだけでなく、その前後の文脈も含めて保全することで、正確な状況判断が可能になります。
システム管理者と連携し、削除される前に確実にデータを保存しましょう。
関係者へのヒアリング
被害者、加害者とされる人物、第三者(同じチャンネルにいた他のメンバーなど)から、それぞれ個別にヒアリングを行います。
ヒアリングは中立的な立場で行い、加害者とされる人物にも弁明の機会を与え、公平性を保つようにしましょう。
Step3:被害者の保護
調査と並行して、被害者の保護措置を講じます。
就業環境の改善措置
被害者と加害者の接触を避けるため、配置転換、チーム変更、在宅勤務への切り替えなどの措置を検討します。
ただし、被害者が不利益を被らないよう、本人の意向を最優先に配慮します。
メンタルヘルスケア
ハラスメント被害は深刻な心理的ダメージを与えます。産業医や専門のカウンセラーとの面談機会を提供し、必要に応じて休職などの措置も検討します。
被害者が孤立しないよう、人事担当者が定期的にフォローアップすることも重要です。
Step4:加害者への対応
事実関係の調査結果をもとに、加害者への対応を決定します。
事実確認と弁明の機会
調査結果を加害者に示し、事実確認を行います。この段階でも弁明の機会を与え、公平性を保ちましょう。
懲戒処分の検討
ハラスメントの事実が認められた場合、就業規則に基づき適切な懲戒処分を検討します。
処分の程度は、ハラスメントの悪質性、頻度、被害の程度、反省の有無などを総合的に判断して決定します。
また、処分だけでなく、再発防止のための研修受講を義務付けることも有効です。
Step5:再発防止
個別の事案への対応が終わった後、組織全体の再発防止策を実施します。
ルールの見直し
今回のハラスメントがなぜ発生したのか、既存のルールに不備がなかったかを検証し、必要に応じてガイドラインを改訂します。
全社への注意喚起
個人が特定されない形で、「このようなケースがハラスメントに該当する」という事例を全社に共有し、注意喚起を行います。
ただし、被害者のプライバシーには最大限配慮し、本人の同意なく詳細を公表することは避けましょう。
まとめ
社内チャットハラスメントは、リモートワークの普及とともに増加している深刻な問題です。
これらのハラスメントを放置すると、法的リスク、人材流出、生産性低下といった深刻な結果を招きます。
今回紹介した予防策と対処法を参考に、まずは現状把握から始め、自社に最適なルール作りに着手してみてはいかがでしょうか。
