多様な働き方を模索する中で、自社の社内コミュニケーション量が落ちているのではと気になっている企業も多いでしょう。
とくに2020年度は新型コロナウイルスの流行で、テレワークを導入したり、ソーシャルディスタンスを保ちながらコミュニケーションをとったりと、今までにない応対を求められてきました。
経営層からは「社内コミュニケーションは十分にとれている」と見えていても、実際の現場ではコミュニケーション課題を抱えていることも多いです。
不測の事態が発生しやすい今こそ、改めて社内コミュニケーション調査を行って、企業の健康状態をチェックしてみましょう。
目次
社内コミュニケーション調査とは
社内コミュニケーション調査とは、社員同士のコミュニケーション量・質を確認し、企業の健康状態を客観的に把握するための調査です。
一般的には、Webのアンケートフォームなどを用いて、社員のコミュニケーションに関する満足度や課題などを聞き出し、集計・分析を行います。
社内コミュニケーション調査でヒアリングする代表的な項目は以下の通りです。
- 仕事内容、職場の雰囲気、会社全体への満足度(SA)
- 仕事内容、職場の雰囲気への満足度の理由(FA)
- 同僚、上司、部下とのコミュニケーションに関する満足度(SA)
- 同僚、上司、部下とのコミュニケーションに関する満足度の理由(FA)
- 参加したことがある社内イベント(MA)
- 社内イベントへの参加意欲(SA)
- 社内イベントに参加したい理由、参加したくない理由(FA)
- 社内イベントへの参加と業務パフォーマンスの関係(SA)
- 社内イベントへの参加と業務パフォーマンスの回答理由(FA)
- 会社への「愛着」(SA)
アスマーク
社内コミュニケーションが活性化していれば、社員の働く満足度が高く成ったり、職場の雰囲気が良くなったりする傾向にあります。
また、社内コミュニケーションをとるための社内イベントへの参加意欲が高く、社員同士の信頼関係や企業への愛着度も高くなるでしょう。
反対に、社内コミュニケーションに課題があれば職場の雰囲気は悪くなり、社員の働くモチベーションや社内イベントへの参加意欲は下がっていく可能性が高いです。
社内コミュニケーションの現状と必要性
社内コミュニケーションが正しく機能しているか確かめるために、社内コミュニケーション調査は欠かせません。
社内コミュニケーションはなぜ重要なのか、また他社では社内コミュニケーションに対してどのような課題を感じているかなど、社内コミュニケーションに関する現状を確認しておきましょう。
約7割の企業でコミュニケーションの課題が生じている
HR総研の『社内コミュニケーションに関するアンケート2021』によると、約7割の企業が「社内コミュニケーションに課題がある」と回答しています。
また、約4割の企業は、新型コロナウイルスの影響で社内コミュニケーションが悪化していると答えており、コロナによる対面コミュニケーションの減少を危惧している傾向が見られました。
社内コミュニケーションは重要だと分かっていても、実際のコミュニケーション量・質ともに満足していない企業が大多数を占めている現状です。
社内コミュニケーションの課題
大企業では、部門間や同じ部署の社員同士のコミュニケーションがうまくいっていないという声がありました。テレワーク中のコミュニケーション手段としてチャットやメールを導入する企業が多いですが、便利なチャットツールを使っていても、迅速な情報共有ができていないと感じる人が9割にものぼっています。
チャットやWeb会議ツールなどを使って業務の情報伝達はできても、気軽な雑談や質問が減少している点が、ストレスになっていると読み取れます。
社内コミュニケーションの必要性
同調査によると、社内コミュニケーション不全が業務の障害になると回答した人が全体の7割となりました。
社内コミュニケーションがうまくとれず、迅速な業務報告や上司への相談が難しくなった結果、社員の精神的ストレスが増加傾向にある点も興味深いです。
このことから、円滑な業務進行や、働きやすい職場づくりには社内コミュニケーションが必要不可欠とわかります。
社内コミュニケーション調査の前に把握しておくべきこと
多くの企業が社内コミュニケーションに悩みを抱えており、とくにコロナ禍では社内コミュニケーション不全によって精神的ストレスを感じている人も増加しています。
この現状を受けて、焦ってコミュニケーションツールを導入したり、社内イベントを企画したりする必要はありません。
まずは社内コミュニケーション調査を実施して、自社の課題はどこにあるか確かめることが重要です。課題を適切に把握できなければ、改善施策の計画は難しいでしょう。
この章では、社内コミュニケーション調査を始める前に、押さえておきたい2つのポイントを解説します。
社内コミュニケーションに対する社員と企業の考えを知る
厚生労働省が事業者向けに実施した『労使コミュニケーションを重視する内容』によると、企業側はコミュニケーションにおいて次の項目を重視していることがわかりました。
- 日常業務の改善 75.3%
- 作業環境の改善 72.9%
- 職場の人間関係 69.5%
一方、働く社員に「労使コミュニケーションを重視する内容は何か」と尋ねたところ、企業側(管理職や経営者など)が重視する内容とズレがありました。
- 職場の人間関係 66.2%
- 日常業務の改善 57.7%
- 賃金、労働時間等の労働条件 53%
経営者たちは業務や成果につなげるために社内コミュニケーションが必要と考えており、社員は職場の人間関係を良好にしたり、業務や労働条件を改善したりするために社内コミュニケーションを重視していると推察できます。
社内コミュニケーション調査を実施する際は、経営者側が求めるコミュニケーションと、社員の考えのギャップがある前提で進めていく必要があるでしょう。
社内コミュニケーション調査をスムーズに進める3つのポイント
最後に、社内コミュニケーション調査を進める際に気を付けるべきポイントを3つご紹介します。
1. 複数の分析方法を取り入れる
社内コミュニケーション調査は、社員からの意見を集めて終わりではありません。
収集したデータを分析し、社内コミュニケーションのどこに課題があるのか、社員の満足度に影響している要素は何か、複数の分析方法を用いて抽出することが重要です。
もっともシンプルな集計方法は単純集計と呼ばれるもので、質問項目ごとに回答数から数値を算出します。
例)社内コミュニケーションに満足している割合
質問項目「社内コミュニケーションに満足していますか」に対する、イエス・ノーの回答数を算出
100名中70名がイエスと回答
70÷100(×100%)=70%
その他の代表的な分析方法には、クロス集計があります。
クロス集計は、異なる部署や職種、社員の年齢などを掛け合わせて分析する方法です。
例)新卒1年目と勤続10年目の社内コミュニケーションに対する満足度
新卒1年目:85%が満足と回答
勤続10年目:60%が満足と回答
差分の25%の要因は何か、別の質問項目や記述式の回答内容を見て仮説を立てていく
2. 調査の実施を目的にしない
2つ目のポイントは、社内コミュニケーション調査の実施を目的にしないことです。
社内コミュニケーション調査は、社内コミュニケーションの現状課題を把握するために行うものです。調査後は社員に調査結果の共有と、改善施策の提案をセットで行わなければなりません。
もし調査をした後、何も改善施策を提案せずに放置してしまえば、「せっかく忙しい中で答えたのに何も変わらない」と不満の声が上がる可能性があります。
調査結果をもとに、課題をすべて解決するのは難しいとしても、今後どのような対策をとっていくかなど真摯に向き合うよう注意しましょう。
3. 調査は継続して行う
社内コミュニケーション調査や、従業員満足度(ES)調査などは、1回実施するだけでな意味がありません。
繰り返し調査を行えば、前回実施したものとデータ比較ができるようになったり、回答者数が増加したりするなど、メリットがあります。
社内コミュニケーション調査は、PDCAのチェックの役割を持つため、次のイメージで継続的にPDCAサイクルを回していきましょう。
P…社内コミュニケーションを高めて、どのような状態になりたいか目標計画
D…日々の社内コミュニケーションの実施
C…社内コミュニケーション調査の実施、調査結果の分析と仮説立て
A…社内コミュニケーションの課題に対する施策の検討、実施
まとめ
社内コミュニケーション不全に悩みを抱えたまま放置すれば、業務効率が落ちたり、社員の働く満足度が下がったりするなど、経営に悪影響を及ぼします。
いきなり社内イベントを企画するなど、思い付きの施策を実施するのではなく、社内コミュニケーション調査を通して自社の健康状態を正しく把握しましょう。
始めはうまく回答が集まらなかったり、想像以上に満足度が低かったりする場合もあるかもしれません。継続的に調査を行い、PDCAサイクルを回し続けることで改善を進めていきましょう。