「バヅクリHR研究所」は、会社員1,100名を対象に、「コロナ禍が終息した後に期待するもの」「(制度などとして)残ってほしいもの」に関してインターネット・アンケート調査を行い、過半数を超える人が「在宅勤務を制度として残して欲しい」との回答でした。また、在宅勤務が制度化されている企業の魅力度が高いことも判明しました。
今回の調査で、コロナ禍終息後も、①「通勤などの時間削減」(72%)「体力負担の軽減」(49%)や「交通費などの削減」(46%)のために、②「在宅勤務」(41%)などのリモートワークや「ウェブ、テレビ会議」(34%)を希望する会社員が多く、③それらの制度を採用している企業が、転職する際の判断材料になりうると考えている人が若手から管理職層まで幅広い層で支持を集める結果となり、多様な働き方が選べる制度を採用している企業ほど「魅力的」という結果でした。
一方、在宅勤務やリモートワークなどがさらに進み、会社への通勤が少なくなることで、「同僚との飲食店などでの会食や飲み会」(約40%)、「オフィスでの何気ない雑談」(約30%)などを求め、「対面でのコミュニケーションの大切さ」を重要視していることもわかりました。
コロナ禍、在宅勤務やオンライン会議などリモートワーク制度が、より一般的になった一方で、今後のリモートワークの継続は、企業によって判断が分かれる可能性があり(全ての業界や業種での制度採用は困難と思われますが)、企業の今後の制度としての導入や新たなコミュニケーション方法の確立など、「人」で成り立つ企業力を高める上で、大きな分岐点になるタイミングが予想されます。
今回の調査では、コロナ禍で一般化した勤務形態や施策などに関する「アフターコロナ」の会社員の意識を調査したものです。
「バヅクリHR研究所」では、緊急事態宣言下の2021年6月にも同様の調査を行ったところ、ほぼ変わらない結果になりました。
目次
会社員1,100名のアフターコロナに関する意向調査内容
背景
コロナ禍で、リモートワークやオンライン会議が、より一般的となりました。一方で、今後コロナ禍が落ち着いた後にも、リモートワークなどの継続は企業により、判断が分かれる可能性があります。本調査では、コロナ禍で普及した勤務形態や施策などに関するアフターコロナの会社員の認識を検証しました。
調査結果
1. 在宅勤務、ウェブ会議、時差出勤はアフターコロナでも残ってほしい
コロナによって、導入が促進された施策や制度で、アフターコロナでも残って欲しいもの(複数回答可)で、会社員が最も多く回答したのは、「在宅勤務」で35.5%、次いで「ウェブ・テレビ会議(社内打ち合わせ)」が31.5%、「時差勤務」が28.5%でした。
うち、役職別で見ると、管理職(部下などを管理する立ち場の役職)は「ウェブ・テレビ会議」が52.3%、「在宅勤務」が46.5%、「時差勤務」が41.5%の回答となりました。
管理職に対して、非管理職(部下がいない役職)の回答率が低いのは、在宅勤務やリモートワーク、オンライン会議などで、上司に対して相談しづらいと感じている可能性が考えられます。
また、リモートワーク(在宅や自宅以外も含む)経験者のほうが、非経験者よりも「在宅勤務」や「リモートワーク」の回答率が圧倒的に高く、6割〜8割が在宅勤務やリモートワークを望んでいる結果となり、一度経験するとそのメリットを強く体感できていることがわかりました。
リモートワーク・在宅勤務を導入している企業社員に「今後求めていること」について問う自由回答では、「リモートワークにかかる経費を負担してほしい」などの福利厚生の充実化や、「評価をしっかりしてほしい」といったリモートワークでの評価制度の確立を求める回答が多くありました。
「入社早々、在宅勤務など、リモートワークになる企業について思うこと」について聞いた質問(自由回答)では、「最初は出社したほうが良い」「人間関係の構築ができていないため機能しないと思う」「企業風土が浸透しない」といった意見が多く見られる一方、「(そういった企業は)体制が整っていると思い、高評価」「時代を先取りしている。先進的な企業と見る」といった好意的な意見もありました。
2. 在宅勤務の最大のメリットは時間的コストの削減。子育てにも有効
「在宅勤務などリモートワークがアフターコロナに残ってほしい」の回答者に、その理由について聞いたところ、「通勤などの時間的なコストを削減できる」が最も多く71.9%、次いで「仕事における体力的負担が軽減する」が45.5%、「通勤の交通費などのコストを削減できる」が45%でした。
管理職と非管理職で分けて見ると、管理職の方のほうが「生産性が向上する」と回答している割合が高く、自身で業務内容などをコントロールできる社員のほうが在宅勤務で生産的に業務に取り組むことができると考えていることがわかります。
また、常時在宅勤務・リモートワークを実施している会社員も「生産性が向上する」と回答した割合が高くなりました。在宅勤務などで生産性の高い業務をこなすためには、一定の在宅勤務経験も必要と考えます。
子供の有無での回答の違いを見ると、「子供有り」の会社員の「育児・介護に携わる社員が活躍できる」と回答した割合が全体と比較して、やや高くなりました。
また、年齢別で見ると、男女とも30〜39歳の子育て世代の「育児・介護等に携わる社員が活躍できる」の回答率が他の世代より高く、子供がいる会社員にとっては、在宅勤務やリモートワークによって活躍できる機会が増えるため、アフターコロナでも在宅勤務などが残ってほしいと考えていることがわかります。
自由回答では、「結果として働きやすくなり、成果の品質も良くなる」「在宅でも同じパフォーマンスを出すことが可能だと判明したため」などの意見がありました。
逆に、「リモートワーク・在宅勤務で難しいと思うことはなにか?」という自由回答では、「人間関係が疎遠になる」「意思疎通が難しい」など、コミュニケーションにおける問題点が多く挙げられました。
3. マネジメント層、若手層採用にはリモートワーク制度導入が最重要
「企業が在宅勤務・リモートワークを実施していることは、その企業への転職を検討するきっかけや判断材料になると思うか」という質問に対しては、全体の回答としては、まんべんなく回答が、ばらけました。管理職に限ると、「とてもそう思う」もしくは「そう思う」と回答した人が半数近くとなりました。
在宅勤務・リモートワーク経験の有無で見ると、現職で在宅勤務などを一部でも経験している人は、約半数が「とてもそう思う」もしくは「そう思う」と、採用において、テレワーク制度の導入が大切との回答をしています。
さらに、年齢別で見ると、20〜30代の「とてもそう思う」もしくは「そう思う」の回答率は半数を超えてました。
これらから、既に在宅勤務などを経験している人や、マネジメント層、20代の若手層の採用にあたり、在宅勤務・リモートワークの制度導入はポジティブに働くと言えるでしょう。
今後、テレワーク制度の導入・運用は、管理職や若年層に対する採用力を強化するために重要になりそうです。
4. アフターコロナでは、同僚との対面コミュニケーションに期待
企業の今後の組織運営の参考とするため、「アフターコロナに期待するものはなにか」という質問をしたところ、「同僚との飲食店などでの会食、飲み会」が最も多く回答され30.6%、次いで「オフィスでの何気ない雑談」が25.4%となっており、上司や同僚との対面でのコミュニケーションが望まれていることがわかります。この傾向は、テレワークを経験している人のほうが強く、回答率が高くなっています。
5. アフターコロナのオフィスの役割は“コミュニケーションの場”
さらに、「アフターコロナのオフィスの役割はどのように変化すると思うか」という、オフィスの意義への認識を質問したところ、全体としては「社内コミュニケーションのための場所」が最も高い約30%の回答を得ました。
この傾向は、管理職とテレワーク経験者でより強くなっており、コミュニケーションの必要性を強く感じている人ほど、オフィスをコミュニケーションの場として捉えていることがわかりました。
テレワークがさらに促進されると、オフィスの役割も、従来の業務の場から、コミュニケーションを目的とした場に変わっていく必要がありそうです。
まとめ
今回の調査では、アフターコロナで望まれるものと、その理由が明らかになりました。
コロナ禍後も、在宅勤務やリモートワークが望まれ、かつ企業として、それらの制度を採用していることが採用力の強化につながりそうです。
そして、在宅勤務やリモートワークがさらに促進すると、オフィスの意義が、より「コミュニケーションの場」へと比重を移していくことも予想されます。
全ての業界・業種の企業でリモートワークが促進されるわけではないと考えますが、企業の柔軟な対応が、大きな分岐点になるタイミングだと言えるでしょう。
調査概要
・調査対象者: 会社員1,100名
・調査時期: 2021年10月7日〜10月8日
・サンプル数: 1,100名
・属性:
性別 – 男性 79.7%(877名)、女性 21%(223名)
年齢 – 20~29歳 5.7%(63人)、30~39歳 13.8%(152人)、40~49歳 24%(264人)、50~59歳 35.8%(394人)、60歳以上 20.6%(227人)
配偶者の有無 – 未婚 34.5%(380人)、既婚 65.5%(720人)
同居の子供の有無 – 子供有 57.5%(632人)、子供無 42.5%(468人)