感染症の流行や働き方改革などで、大企業を中心にテレワークの推進が強化されました。
2回目の緊急事態宣言の際には、従業員の出社率を2割におさえるなど万全な対策をしている企業が増えました。
各社、テレワーク支援のためにサテライトオフィスの契約やタブレット端末の支給などサポートを充実させていますが、どうしても課題視されるのが「テレワーク下の雑談」「カジュアルコミュニケーション」の減少です。
テレワークで業務を行う企業へのアンケートによると、テレワークで雑談が減ることで孤独感や不安を感じ、仕事にも影響が出ると多くの方が回答しています。
今回はテレワークでの雑談にフォーカスし、雑談を増やすことの目的や雑談の活性化方法について、施策例を挙げてご説明していきます。
目次
テレワークで雑談が減った?世間はどのように感じているのか?
テレワーク中の雑談について、スコラ・コンサルトがアンケートをとったところ、テレワークによって「雑談が減った」と答えた割合は84.7%となりました。
雑談が減ることで「仕事で困る」と回答した方は74.7%となり、雑談が減ったことに「不安を感じている」方の割合も69.6%と非常に多い結果となっています。
ほとんどの方がテレワーク下での雑談減少に対して課題感を持っていることが分かりました。
どうして雑談の減少は、ここまで業務に影響を及ぼすのでしょうか?
雑談の重要性
私たちが、職場環境のどのようなシーンで雑談をしていたのか思い出してみましょう。
■よくある雑談シーン
- お手洗いでたまたま会った社員と立ち話をする
- 客先へ訪問するとき、行き帰りの移動時間に雑談をする
- お昼休憩を一緒にとって、食事をしながら雑談をする
- オフィスを出るタイミングがたまたま一緒だった同僚と最寄り駅まで話しながら歩く など
このように、オフィス出社をしているときは、知らず知らずのあいだにたくさんの雑談が日々、発生していました。
雑談の内容は、業務の報連相や社内の共通の同僚の話、まったく業務外の家族や趣味の話題などさまざまです。
果たして、この仕事に直接的な関係のない雑談は、なにか重要な意味があるのでしょうか?
カジュアルコミュニケーションは心理的安全性を高める
雑談のようなカジュアルコミュニケーションを行うことは、社員同士の信頼関係が構築され、社員の心理的安全性を高めることができます。
業務に直結しない話題に関しても「社内の人には、いつでも何でも話しができる」という環境をつくることができれば、社員の人間関係におけるストレスも緩和され、心理的安全性が高まるのです。
もちろん、おしゃべりばかりして作業の手を止めていたら本末転倒ですが、1日8時間ずっと集中し続けるのは難しいものです。
仕事のちょっとした合間に数分、社員同士で雑談することは、心身ともにリフレッシュ効果も期待ができるのではないでしょうか。
雑談の中でイノベーションが起きる
目的のない会話だからこそ創造性が高くなり、イノベーションが起きやすくなります。
イノベーションには、既存の概念にとらわれず新しい意見をどんどん取り入れて新たなものをつくっていく破壊的イノベーションや、外部資源やほかの業種・人材が持つアイデアを取り入れていくオープンイノベーションがあります。
なにか新しい企画をつくったり、凝り固まった従来の手法をひっくり返したりしたいときこそ、雑談が重要になります。
また、「今日は何時に〇〇さんと話そう」と計画的に行うよりも、たまたまオフィス内で居合わせた人と雑談していたら悩みが解決した!というケースも少なくありません。
自分が意図していなかった相手との自由な会話の中でこそ、創造性が生まれ、問題解決のヒントが見つかるのです。
雑談きっかけに社員の不調に気付くことができる
オフィスで一緒に働いていれば、なんとなく社員の顔色を見て「元気がなさそうだな」とか、「今日は〇〇さん随分はやく帰ったな」など視覚的に気付くことができます。
しかし、テレワーク中は何気なく無意識に社員同士を観察する、という行為がなくなります。
そのため社員のちょっとした変化やSOSに気付くことができません。
テレワーク中の雑談は、社員が今何に興味を持っているのか、業務以外に困っていることはないかなどを聞き出すきっかけとして最適です。
会話を通してお互いの様子を確認し合うことは、社員のメンタルヘルスにも重要な要素なのです。
テレワークでどのように雑談をつくるべきなのか?
業務を進めるうえで、雑談は重要な要素ということが分かりました。
では、テレワークのときもオフィスと同じような雑談を生み出すには、具体的にどのような手法をとればいいのでしょうか。
ここでは、テレワーク下でも雑談が生まれる5つの取り組みをご紹介します。
雑談をつくる施策その1 雑談専門のオンラインルームをつくる
多くの企業で取り入れている施策として、雑談専門のオンラインルームをつくる方法があります。
テレワーク中にスムーズなコミュニケーションをとるために、Slackやチャットワーク、ZoomなどのWebツールを活用する企業は多いでしょう。
- Slackで「雑談チャンネル」という誰でも雑談を送ることができるチャンネルをつくる
- ZoomのURLを一定の時間に開放をしておいて、いつでも誰でも雑談しに来れる環境にする
上記のような雑談専門のオンラインルームやグループをつくり、社員に周知しておくことで、社員が雑談に参加しやすくなります。
雑談をつくる施策その2 作業中はずっと繋ぎっぱなしにする
雑談専門のオンラインルームやグループをつくっても、あまり積極的に社員が利用してくれないときは、業務中にお互いのZoomなどを繋ぎっぱなしにする方法もあります。
音が気になる方は自由にミュートを設定しても良い、また顔出しが面倒な方はカメラオフでもOKにしておくのもいいでしょう。
1時間限定!と短く時間を区切ってもいいですし、業務のある日は1日中繋いでおいても問題ありません。
始めは抵抗があるかもしれませんが、「繋ぎっぱなし」の状態に慣れてくれば、お互いが同じオフィスにいるような感覚で自然に話しかけることができます。
ただし、誰かのPCの作業音や自分の生活音が逆に気になってしまう方もいるので、やりたい人同士で実施することが重要です。
雑談をつくる施策その3 雑談目的のイベントをつくる
オンラインの雑談ルームに書き込むのも面倒だし、1日中オンラインでZoomを繋ぎっぱなしも気が散ってしまうという方は、雑談イベントを開催してみましょう。
その名の通り、雑談を目的としたイベントです。
実施する頻度はとくに決まりはなく、1日に1度、週に1度など、可能な範囲で設定しましょう。
同じ部署内で4~5名参加者を募る、各部署から1名ずつランダムに選抜する、人数上限だけ決めておいて各自自由に参加できるようにするなど、進め方はかなり自由度が高いです。
ポイントとしては、人数が5名以上の場合はなるべくグループを分けること、またはファシリテーターをつけて話す順番を適度にコントロールすることです。
オンラインでの大人数のおしゃべりは、声が重なってしまい話しづらく、ストレスを感じやすいため対策をしておきましょう。
雑談をつくる施策その4 バーチャルオフィスなどツールを導入する
最近では、オンライン上にバーチャルオフィスを作成し、アバターを利用してコミュニケーションを活性化する手法もあります。
バーチャル空間の中でアバターを移動させて、テレワーク中でも近くにいるような感覚になれるWebツールです。
アバターの動きを見れば、今は休憩中なのか離席しているのか、視覚的に社員の状況をとらえることができます。
そのため、テレワーク中によくある「話しかけるタイミングが分からない」という悩みを解消し、雑談しやすい環境をつくることが可能です。
雑談をつくる施策その5 雑談に関するルールを作る
雑談をする機会を設けたのであれば、そのイベントや環境がしっかりと業務にいい影響をもたらすように、雑談に関してルールを作っておくようにしましょう。
例えば
- 顔出しをしたくない場合はカメラOFFでもOK
- 途中参加、退出OK
- チャットツールのスタンプなどを使って反応を
- 3人程度のグループ雑談を行い週替わりでメンバーを入れ替える
雑談は、心理的安全性を高め、業務を円滑に進めるために行います。
なので、リラックスした状態でコミュニケーションをするのが大切です。
つまり、堅苦しくない参加しやすい雰囲気や、参加へのハードルを下げることも大切となります。
顔出しをしなくてもいい、途中参加・退出もOKなどのルールがあると参加へのハードルが下がります。
しかし、オンラインでのコミュニケーションは情報量がオフラインの場合よりも減るもの。
できるだけカメラオンでの参加をおすすめします。
また、オンラインでの会話は、オフラインの場合よりも発言のタイミングが掴みづらいものです。
会話に入るのが難しい場合などは、チャットツールやスタンプを使って、反応・参加できるようにするといいでしょう。
テレワーク中の雑談でおすすめの話題
テレワーク中に、雑談の機会を設けても実際に話はじめてみると、どんな話題で雑談をすればいいのかわからないものです。
いくつか話題の例をいくつかご紹介します。
1. 最近ハマっていること
最近ハマっていることをシェアすることで、メンバーのパーソナリティや、今考えていることを知ることができます。
好きなことについて楽しく話しているメンバーの姿は、業務時間内ではなかなかみることのできない新鮮なものかもしれません。
堅苦しい雰囲気ではなくざっくばらんに会話ができるでしょう。
その際、その他のメンバーは話し手の発言を否定したり、興味のないそぶりを見せたりしないようにしてください。
2. 時事ネタや流行しているもの
気になったニュースや、最近世間で流行しているものなどをシェアすることを通して、メンバーの好きなものや、考え方などを知ることができます。
その後に、「そういえば○○さんが言っていたやつ試してみたよ」と、コミュニケーションを取るきっかけにもなるかもしれません。
3. 24時間以内にあった嬉しいこと
これは、Good & Newsと呼ばれるアイスブレイクにも使われるワークの内容と同じものです。
これを行うことで、メンバーの近況や価値観を知ることができます。
またポジティブな内容の話題ですから、楽しく雑談を行うことができます。
4. 出身地や子供時代のこと
自発的に地元のことや、子供時代のことを話す人はいないもので、長く一緒に仕事をしていても意外とどんな場所に住んでいたことがあるかや、どんな幼少期を過ごしていたかは知らないものです。
地元や子供時代のなどルーツ触れることで、その人への理解を深めることができます。
ただ中には、家庭環境や幼少期のことを話したくない人もいるでしょうから、配慮も必要になります。
話題選びには配慮も必要
せっかくの雑談の機会ですから、あまり暗い話題はおすすめしません。
メンバーと話していると楽しいな、テレワークを頑張ろうと思えるポジティブな会話になるように気をつけましょう。
雑談の時間を楽しい時間だとメンバーに認識してもらうことで、コミュニケーションは活発化し、組織に対するエンゲージメントやチームワークが向上するはずです。
テレワークで雑談を活性化させている事例
先ほどご紹介した、雑談を活性化させる施策を取り入れている企業例をご紹介します。
事例1 株式会社Polaris
Polaris社では週に2時間だけ、役員も参加する雑談ルームをZoom上に設けました。
雑談ルームのルールとしては、無理に参加を強制せずに、話したくない人はミュートで聞いているだけでもOKにしたそうです。
実際に雑談ルームを実施していると、この時間を使って役員の相談事項を一気に話して解決する方もいたそうです。
雑談ルームという名前ですが、役員陣への相談タイムにあてることで業務効率化をはかったのが、Polaris社の施策の特徴といえます。
非営利型株式会社Polaris
事例2 株式会社キャスター
全社員がリモートワークで働く企業、キャスターではリモート環境でのコミュニケーション・雑談に関するさまざまな取り組みをされています。
■キャスターの雑談解消への取り組み例
- 全社的なイベントもオンラインで実施しアバター参加
- 個別チャットを使わない
- 雑談用のグループチャットも積極活用
- 30グループほどの部活動(強制せずに空き時間で自由に参加)
- オンラインフィットネスの導入
先の章でご紹介した「雑談を増やすための施策」にもありましたが、雑談用のグループチャットを作成することや、全社イベントの実施やオンラインフィットネスの施策は、雑談の増加に直接働きかけるものではありません。
しかし、オンラインフィットネスを福利厚生として提供することは、リモートワークで運動が減りがちな社員にとって心身のリフレッシュにもつながる大切な視点です。
【参考】『全メンバーがリモートワーク実現!キャスターが大事にしている雑談の場』
CHANTO WEB
事例3株式会社フィラメント
フィーカとはスウェーデン語で「コーヒーブレイク」という意味とのことです。
フィラメント社では、社員同士の雑談タイムをリモートフィーカと名付けて、社員の隙間時間に1時間ほど実施されています。
使用ツールはZoom、好きな時間に出入りができて、各々が仕事以外の雑談や近況の共有をします。
リモートフィーカではファシリテーターを設けて、参加者に話題を振るのがポイントです。
また、役職者が仕事の話をすると堅苦しくなってしまうので、「昨日はネットフリックスでこれを見たよ」などカジュアルなテーマを取り入れると良いそうです。
中には、しゃべらずに聞く専門を望んでいる方もいるので、無理に話を振らないのも雑談が続くポイントとなります。
【参考】無駄にみえる雑談は未来への可能性。テレワーク時代のオープンイノベーション
QUMZINE by Filament, inc. note
まとめ
オフィスで働く中で日常的に行われてきた雑談が激減し、社員のちょっとした変化に気付けず、コミュニケーションが活性化しづらくなりました。
テレワーク中も、適度に雑談を行うことで凝り固まった頭をやわらかくし、リフレッシュをすることができるでしょう。
雑談を通して業務の改善案や、新たなアイデアが生まれることは少なくありません。
雑談ルームの作成や、オンラインの雑談イベントなどを通して、カジュアルコミュニケーションを絶やさないよう心掛けてみてください。