2026年9月16日、「第26回 総務・人事・経理Week【東京】」で、バックオフィスソリューションセミナー「『辞めてほしくない人』ほど離れる人事制度の正体〜優秀な人ほど辞める『設計ミス』とは〜」を実施しました。登壇したのは、取締役CPOの周防貴仁と、リーダー講師の笹木純子です。今回は、当日お伝えした内容を抜粋してご紹介します。

自社の等級・評価・報酬、今のままで大丈夫でしょうか。
「人事制度セルフ診断チェックリスト」で、3分ほどでセルフチェックできます。何個当てはまるか、数えながら読んでみてください。

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辞めているのは「誰」か

「辞めてしまった”惜しい人”の顔が、何人浮かびますか?」

セミナーで会場にこう聞いたところ、「5人以上」で挙がった手は数人でした。「2人以上」まで下げると、ほぼ全員の手が挙がりました。

人事やマネジメントをしている方なら、誰しも一人や二人、思い当たる顔があるのではないでしょうか。

いま起きている現代病

優秀人材の流出、評価やキャリアの不透明さ、エンゲージメントの低下。

目に見えるのはこうした離職や意欲の低下ですが、その裏側で起きているのは評価・等級・報酬の「設計」の崩れです。特殊な会社だけの話ではなく、成長している組織であればどこでも起きている「現代病」だと、私たちは考えています。

「評価だけ直す」では止まらない理由

人事制度は、経営戦略・人事ポリシー・等級・評価・報酬がひとつながりのシステムです。なので、どこか一箇所の設計ミスは全体に波及します。「評価だけ直せば流出が止まる」と考えて手を打っても、効果が出ないのはこのためです。

この理由は、2つの理論で説明できます。

ひとつは期待理論です。「努力すれば評価される、評価されれば報われる」という期待の連鎖が一箇所でも切れると、努力そのものが止まります。

もうひとつは公平理論です。人は報酬の額そのものではなく、他人と比べてどうかで納得感を判断します。なので「全員一律」は一見平等に見えて、実は貢献した人ほど不公平に感じる仕組みです。

「辞めさせない」対応が制度を壊す悪循環

高負荷が続く社員に離職の気配が出ると、多くの会社は報酬で引き止めます。すると評価担当者は「辞められると困る」という理由で評価を甘くつけがちになり、規律が緩みます。規律が緩んだ職場はさらに負荷が偏り、また離職リスクが上がる。

この対応を続けていくと、給与への依存度が高くなっていきます。

効率賃金・期待理論・エージェンシー理論・バーンアウトという複数の背景理論が示しているのは、場当たり的な引き止めが制度の規律とメリハリを溶かしていく、という同じ結論です。

3つの失敗パターン

私たちがこれまで見てきた失敗の多くは、次の3つのパターンに分けられます。

等級のミスは、”入れ物”のミスです。

前職年収でスタートの等級を決めてしまうと、後から入った人が上の等級になり、実力と序列が逆転します。等級のレンジが上下で重なる「重複型」だと、下の等級の人が上の等級の人より高給になる逆転現象まで起こります。

評価のミスは、”測り方”のミスです。

成果を出しているにも関わらず、評価が中央値寄りの「B」になってしまうことです。突き抜けた成果を出した人も、成果が出ていない人も、期末には同じ「B」に均されてしまいます。評価者が対立を避けようとするほど、この中心化は強くなります。

報酬のミスは、”払い方”のミスです。

等級が上がるほど報酬の伸び幅が大きくなる「逓増型」のカーブを敷くと、下の等級のうちは実力に見合った金額が支払われません。今の成果に見合う報酬が”今”もらえないと、待ちきれない若手優秀層から辞めていきます。同じ理由で、等級間の報酬レンジが狭すぎる会社も、高評価が処遇に届かず優秀層が抜けていきます。

3つのミスの根っこは共通しています。「誰を厚遇するのか」を、会社として言葉にしていないことです。これが不在だと、等級も評価も報酬も、担当者ごとにバラバラの基準で運用されてしまいます。実際に、優秀人材の35%がこの状態で離職しているというデータもあります。

自社の等級・評価・報酬、今のままで大丈夫でしょうか。

「人事制度セルフ診断チェックリスト」で、3分ほどでセルフチェックできます。何個当てはまるか、数えながら読んでみてください。

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セミナー内では、この3つの失敗を防ぐための3つのチェックポイント(等級・評価・報酬それぞれの見るべき観点)と、「誰を厚遇するか」を経営の言葉で言語化するための4つの問いもお伝えしました。自社の状況と照らし合わせたい方は、記事末のチェックリストからご確認ください。

見直しは「設計」より「運用」で決まる

見直しの進め方でおすすめしたいのは、現状分析→ポリシー設計→試行導入→本格運用という4フェーズです。ポイントは、立派な制度をつくることよりも、現場を巻き込んで運用に乗せることです。

もうひとつの原則が、金銭だけに頼らないことです。意味づけ、裁量、承認といった非金銭的な報酬(トータルリワード)で補うことで、小さく試しながら定着させていく。この2つを意識するだけで、定着のしやすさは大きく変わります。

まとめ

優秀な人材が辞めていくのは、能力の問題でも意欲の問題でもありません。辞める・辞めないを分けているのは「設計」です。

等級・評価・報酬の3点で自社を診断し、ポリシー・運用・非金銭の3方向から見直す。設計を変えれば、辞めてほしくない人が残ります。

自社の状況を確認したい方は、今回のセミナーでも使った「人事制度セルフ診断チェックリスト」をぜひ試してみてください。等級・評価・報酬の3階層を、セルフチェックできる内容です。気になった項目から、見直しの一歩を踏み出してみてください。

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