「社員たちにもっと主体的に行動してほしい」「社員の仕事に取り組む姿勢を改善したい」など、社員育成に対して課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。
社員の主体性や問題解決能力を向上させるとして、近年注目されているのが「アクティブラーニング」という学習手法です。

本記事ではアクティブラーニングを導入した企業事例を、注意点や具体的な手法とともに紹介します。導入に迷っている企業の方はぜひ参考にしてみてください。

アクティブラーニングとは

アクティブラーニングは、受講者が自ら課題に取り組むことで、能動的な学びを促す教育手法です。

アクティブラーニングの代表的な手法として、

・受講者が実際の現場に出向き調査や仕事を体験する「フィールドリサーチ」

・実例や架空の事例を基に解決法を導く「ケースメソッド」

・グループで意見交換を行いながら知識を共有する「ディスカッション」

などがあります。

アクティブラーニングが企業で注目される背景には、変化の激しい現代社会に適応できるスキルを養う必要性が高まっていることがあげられます。

現代社会はVUCA時代とも呼ばれ、予測不能で不安定な状況に晒されています。

そんな中でアクティブラーニングは、社員のコミュニケーション力や論理的思考力、柔軟性を向上させる効果的な手法として、ますます重要視されています。

アクティブラーニングのメリット

ここではアクティブラーニングを企業の研修などに導入するメリットを解説します。

問題解決能力の向上

アクティブラーニングは受講者が自ら積極的に問題に取り組む学習方法です。

与えられた正解を覚えて実行するのではなく、与えられた課題に対して自ら考え、議論し、解決法を導くという学習プロセスを辿ります。

自分なりに答えを出すプロセスを経ることで、受講者の問題解決能力を飛躍的に向上させることができます。

発想力が豊かになる

アクティブラーニングでは、正解のない課題に取り組むことがあります。

そこで受講者は持っている知識や経験を結集し、新たなアイデアや解決策を生み出す必要があります。

アクティブラーニングを通じて自分なりの答えを考えることで、発想力を高めることにつながります。

またアクティブラーニングでは、意見交換やグループディスカッションの中で、自分にはない新しい視点や考え方に触れることができます。

そうした経験の中で新たな価値観を学び、さらに発想力を伸ばす基盤を作ることができます。

コミュニケーション能力の向上

アクティブラーニングはグループで行うことが一般的で、受講者は他のメンバーと協力しながら課題に取り組みます。

そのため、傾聴力・質問力・ファシリテーション能力などのチームで働くのに必要な能力を養うことができます。

アクティブラーニングの効果を最大限高めるためには

「アクティブラーニングを取り入れた研修をしてもその場限りになってしまい、あまり意味がない」そう感じている人事担当者も多くいらっしゃるのではないでしょうか。でも実は研修に意味がないのではなく、「意味がある研修」にするためには明確な戦略と計画が必要です。

HR研究所では、従業員研修のプログラム設計と実施において、研修前・研修中・研修後の3段階に分け研修の効果を最大限に高める手法をまとめました。

資料は下記からダウンロードできますので、ぜひ従業員研修の計画にお役立てください。

研修効果を最大化する要素とは

アクティブラーニングの手法

ここでは、実際に企業の研修にも使えるアクティブラーニングの手法を解説します。

Think-Pair-Share

Think-Pair-Shareは、決められたテーマやお題に対して自分の意見を考えた後、他者と意見を交わしながら議論を深める手法です。

【Think-Pair-Shareのやり方】

1.ファシリテーターが「テーマ」「お題」を発表する

2.個人で「テーマ」「お題」について考える

3.2人1組になり、互いの意見を交換する

4.ペアで1つの意見をまとめ、全体で発表する

Think-Pair-Shareでは、自分の意見を発信する力だけでなく、他者の意見も踏まえた上で意見をまとめられる柔軟性を養うことができます。

ラウンド・ロビン

ラウンド・ロビンは、少人数のグループを作り、各メンバーが決められたテーマやお題について1人ずつアイディアを出し合う手法です。

【ラウンド・ロビンのやり方】

1.4人程度のグループを作成し、ファシリテーターが「テーマ」「お題」を発表する

2.順番を決めて互いの意見やアイデアを話し合う

ラウンド・ロビンでは、発言の内容に対する評価やコメントをせずに、どんどん新しいアイデアを出すのがポイントです。

チーム全員がアイディアを積極的に出すことで、新たな価値観に触れるとともに、多様性を尊重する姿勢が身につきます。

ピア・レスポンス

ピア・レスポンスは、プレゼンテーションやレポートを作成する際に実践できるアクティブラーニングの手法です。

【ピア・レスポンスのやり方】

1.ペアまたはグループを作成し、発表者はプレゼンテーションやレポートのアウトラインを共有する

2.聞き手はアウトラインの内容についてフィードバックを行う

3.発表者を交換し、全員がフィードバックをもらうまで繰り返す

4.フィードバックを元に、自分のプレゼン・レポートの改善を行う

ピア・レスポンスにおいて発表者は、伝えたいことが端的に伝わるようなプレゼンテーション能力が求められます。

また聞き手も傾聴した上で、より良いアイデアや意見を考える必要があるため、考える力と話す力の両方が養われます。

マイクロ・ディベート

マイクロ・ディベートは、3人1組のグループで、肯定と否定の立場から「お題」について議論する手法です。

【マイクロ・ディベートのやり方】

1.3人1組のグループを作り、肯定役・否定役・ジャッジ役の人を決める

2.出された「お題」について、肯定・否定の立場の人は論拠を5つ以上考える

3.肯定・否定それぞれの意見を聞き、ジャッジ役が結論を決める。役割を交代し、合計3回のディベートを行う

この手法では、対立する意見を持った参加者がお互いの視点を尊重し、納得できる結論を導き出すことが求められます。

受講者は自身の主張を論理的に説明し、相手の主張を理解し合いながら、問題解決を図る能力を養うことができます。

アクティブラーニングの導入事例

ここではアクティブラーニングの具体的な事例を解説します。

ソニー銀行株式会社

インターネット銀行大手のソニー銀行では、入社後2か月の間におこなわれる新人研修の中でアクティブラーニングの手法を取り入れています。

5日間にわたっておこなわれる「データサイエンスブートキャンプ」では、前半の3日間でデータサイエンスに関する理論を学んだあと、残りの2日間で実際にデータ分析を行います。

そして分析したデータを元に問題の解決方法を考え、最終的に社内で発表するための資料作成も行います。

「データドリブンなカルチャーを築くこと」を目的に行われているこの研修によって、新入社員はデータ分析の考え方を学ぶことができます。

富士通株式会社

富士通ではソフトウェア関連の技術者向けに、社内認定制度を取り入れています。

その認定方法として、ケースメソッド型のアクティブラーニングの手法を採用しています。

同社では認定資格を取得する際に、2日間にわたって様々な演習を行います。

例えばサイバーセキュリティの認定資格の場合、

・サイバー攻撃側の立場で攻撃のメソッド学習と演習

・サイバー攻撃のログの解析演習

・グループワークによる対応の比較検討

・異なる技法を試す時間

など、幅広い演習をすることで、学んだことをしっかりとアウトプットできる制度になっています。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社

キヤノンマーケティングジャパンでは、経営人材候補にリーダーシップ・戦略立案力や実践力の強化を目的としたプログラム「LEAD Program」を実施しています。

その中では事業計画の立案と検証を、アクティブラーニングによって実施しています。

アクティブラーニングの研修を選ぶならバヅクリ!

バヅクリの研修はグループワークや対話をメインに構成されています。

スキル習得と組織のチームビルディングを同時に行うことで、学習効果と組織力を同時に向上できます。

参加者同士の交流により新たな気付きを得ることができたり、学習内容を共に振り返る仲間ができたりなど、アクティブラーニングによって受講者の行動変容を促すプログラムが揃っています。

まとめ

今回はアクティブラーニングについて、手法や事例を中心に紹介しました。

アクティブラーニングは受講者のコミュニケーションスキルを高めるだけでなく、モチベーションやチームワークの向上も見込める学習手法です。

ぜひこの記事の中から自社に合った事例を見つけ、アクティブラーニングを実施してみてはいかがでしょうか。