福利厚生を見直したいものの、どんな制度にすれば社員に喜ばれるのか迷っていませんか。給与や休日だけでは他社との差がつきにくいなか、ユニークな福利厚生は、社員の満足度を高めながら会社の魅力を社外に伝える手段になります。

この記事では、企業が実際に導入しているユニークな福利厚生を目的別に12事例紹介します。あわせて、制度を設計するときの注意点や課税・非課税の考え方、満足度を高める運用のコツまで取り上げます。自社に合った制度を見つける手がかりとして役立ててください。

目次

ユニークな福利厚生を導入するメリット

ユニークな福利厚生

福利厚生には、法律で義務づけられた「法定福利厚生」と、企業が自由に設けられる「法定外福利厚生」があります。ユニークな制度を作れるのは後者です。独自の工夫を加えると、社員の満足度が上がるだけでなく、会社の魅力を社外にも伝えられます。まずは導入で得られる効果を3つの角度から整理します。

採用市場での差別化につながる

求職者が企業を比べるとき、給与や勤務地に加えて働く環境そのものを見る人が増えました。他社で見かけない制度があると、求人票の段階で目に留まりやすくなります。

独自の福利厚生は、応募者に「この会社は社員をどう扱うか」を具体的に示す材料になります。採用広報やSNSで取り上げられれば、広告費をかけずに認知が広がる効果も期待できます。

社員エンゲージメントの向上

自分の会社にしかない制度を使えると、社員は「ここで働けてよかった」と感じやすくなります。日々の業務では得にくい満足感が、職場への愛着につながっていきます。

ただし話題性だけを狙うと、利用されないまま形だけ残ることもあります。離職率の低下や交流の活性化など、達成したい状態を先に決めてから制度を組み立てると効果が安定します。

企業ブランディングとメディア露出

独自性のある制度は、社外から見たときの会社の印象を形づくります。転職先を選ぶ際に福利厚生を重視する人は多く、制度の内容が応募の決め手になる場合もあります。

SNSやニュースで紹介されると、採用以外の場面でも企業名が知られるきっかけになります。露出だけが目的になると社員が置き去りになるため、社内の満足とのバランスを意識したいところです。

休暇制度のユニークな事例

ユニークな福利厚生の事例

休暇に関する制度は、社員が安心して休める空気をつくる土台になります。連続した休みでパフォーマンスが戻り、定着率の改善にもつながります。休み方に特色を持たせた2社を紹介します。

1. サイボウズ株式会社|働き方宣言制度

サイボウズ株式会社は、2018年4月から働き方宣言制度を取り入れています。あらかじめ用意された選択肢から選ぶのではなく、働く時間や場所、残業の可否を曜日ごとに自分で決め、社内に宣言する仕組みです。

もともとは9種類の働き方から選ぶ方式でしたが、それでも全員の希望には届かないとして現行の形に移りました。同社の公表では、2005年に28%だった離職率が4%まで下がったとされています。

2. アイリスオーヤマ株式会社|リフレッシュ休暇・アニバーサリー休暇

アイリスオーヤマ株式会社では、有給休暇とは別に2種類の休暇を用意しています。3日以上の連続休暇を取れるリフレッシュ休暇と、誕生日や結婚記念日など自分で決めた記念日に取れるアニバーサリー休暇です。

記念日に合わせて休めると、家族との時間や自分の予定を前もって組みやすくなります。有給とは別枠で休暇を設ける企業は年々増えており、休みやすさを採用の訴求点にする動きが広がっています。

育児・家庭支援のユニークな事例

出産や育児は、働き方を見直す大きなきっかけになります。子育てに専念できる環境や復帰しやすい仕組みがあると、社員は長く働き続けやすくなります。家庭との両立を支える2社を取り上げます。

3. 大和ハウス工業|次世代育成一時金制度

住宅総合メーカーの大和ハウス工業には、育児を支える制度が複数あります。子ども1人につき最大100万円を支給する次世代育成一時金制度はその代表例です。

育休からの復帰時には、上司との面談を通して職場へ戻りやすくする育児休業復帰サポートプログラムも整えています。金銭的な支援と復帰支援を組み合わせている点が、子育て世代にとって心強い設計といえます。

4. 株式会社ZOZO|家族時短

ファッション通販を運営する株式会社ZOZOには、家族時短という制度があります。育児や介護だけでなく、ペットや同居人など本人が家族と認識する相手のサポートが必要なときにも、1日2時間まで時短勤務ができます。

時短の単位は30分から設定できるため、必要な分だけ柔軟に調整できます。「家族」の範囲を社員自身の感覚に委ねている点が、一般的な育児・介護制度との違いです。

健康支援のユニークな事例

体調が安定していると、仕事の成果も出しやすくなります。健康づくりを後押しする制度は、社員のリフレッシュと社内交流の両方に効きます。健康支援に取り組む2社を見ていきます。

5. 株式会社Cygames|健康サポート・補助制度

ゲーム事業を展開する株式会社Cygamesは、健康サポート・補助制度として社内に整体を常設しています。専門のスタッフによる施術を、就業中に受けられる環境が整っています。

さらに、プロのインストラクターを招いた筋トレのレッスンを週2回、終業後に開いています。40歳以上の正社員が自己負担なしで脳ドックを受けられる制度もあり、日々の疲れのケアから将来の病気予防まで、幅広く社員の健康を支えている点が特徴です。

6. freee株式会社|ドリンクフリー・オフカツ

クラウド会計サービスを手がけるfreee株式会社は、勤務中の食事や飲み物を無料で提供するドリンクフリーで、食事面から健康を支えています。

部活動の費用を会社が補助するオフカツもあり、自転車部などの運動系を通じて体を動かす機会が生まれています。運動不足の解消だけでなく、部署をまたいだ交流のきっかけにもなっています。

キャリア形成支援のユニークな事例

ユニークな福利厚生の注意

学びや経験の機会があると、社員は将来像を描きやすくなります。キャリア形成を支える制度は、長く働く理由づくりにもつながります。成長を後押しする2社を紹介します。

7. Sansan株式会社|Geek Seek

名刺管理サービスを手がけるSansan株式会社には、エンジニアやデザイナーなどの専門職を支援するGeek Seekという制度があります。業務の質を高めるために必要な書籍やソフトウェア、最新ガジェットの購入費、勉強会やカンファレンスへの参加費などを補助します(対象ごとに上限を設定)。

書籍や資料が対象のGeek Seek Skills、ツール購入向けのGeek Seek Tools、勉強会の費用を支える Geek Seek Workshop など、目的別に複数の枠が用意されています。新しい技術に触れる機会を会社が後押しすることで、社員のスキルアップと成果の質の向上を同時にねらう設計になっています。

8. LINEヤフー株式会社(旧ヤフー)|サバティカル制度・勉学休職制度

インターネット領域で多様な事業を展開するLINEヤフー株式会社(旧ヤフー)には、サバティカル制度があります。勤続10年以上の正社員を対象に、2〜3カ月の範囲でキャリアや働き方を見つめ直す休暇を取れます。

休暇中は一定期間、会社が支援金を支給します。専門知識や語学を集中的に学ぶための勉学休職制度もあり、勤続3年以上の正社員が最長2年取得できます。長期の学び直しを正式な制度として認めている点が特徴です。

コミュニケーション活性化のユニークな事例

雑談や交流の機会は、チームの動きやすさを左右します。社内のつながりを後押しする制度は、日々の連携をなめらかにします。交流に力を入れる2社を取り上げます。

9. ロート製薬株式会社|社外チャレンジワーク・社内ダブルジョブ

医薬品や化粧品を手がけるロート製薬株式会社は、社員が会社の枠を越えて経験を積める2つの制度を設けています。就業時間外や休日に他社などで働ける複業の社外チャレンジワークと、就業時間の一部を使って他部署の仕事を経験できる兼務の社内ダブルジョブです。

どちらも社員の立候補にもとづいて認められ、社外チャレンジワークは入社3年目以上が対象です。別の現場で得た知見が本業にも生き、社員が自分のキャリアを主体的に広げるきっかけになっています。

10. アキュラホームグループ|輪島塗夫婦椀の贈呈

注文住宅を手がける株式会社アキュラホームでは、結婚した社員に輪島塗の夫婦椀を贈る贈呈式を開いています。

家族の繁栄が末永く続くようにという願いを込めて手渡されます。お祝いの品を会社の行事として贈ることで、節目を組織全体で祝う文化が根づいています。

話題性で際立つユニークな事例

ここからは、制度そのものが強い話題を呼んだ事例を紹介します。珍しさが社外の関心を集め、企業文化の発信につながっているケースです。

11. 面白法人カヤック|サイコロ給

ゲームやコンテンツ事業を手がける面白法人カヤックには、毎月サイコロを振って報酬の上乗せ分を決めるサイコロ給があります。給与の全額が運で決まるのではなく、月給にサイコロの出目のパーセントを加える形です。

たとえば月給30万円で6が出れば、30万円の6%にあたる1万8千円が上乗せされます。人を完璧に評価するのは難しいという考えから、最後は運に委ねる発想で創業時から続いています。お金にまつわる制度をあえて遊びにすることで、評価をめぐる社内のわだかまりを和らげるねらいがあります。

12. 株式会社サニーサイドアップ|32の制度

PR事業を展開する株式会社サニーサイドアップは、社名の語呂に合わせた32の制度という独自の福利厚生群を運用しています。健康診断で総合A判定を取った社員に3万2千円を支給する『目指せ!A身体』制度などが含まれます。

毎月平均7時間以上眠った社員に手当を出す制度や、失恋した社員が休める休暇など、暮らしの場面に寄り添った制度が並びます。社員の声を反映しながら定期的に内容を見直している点が、長く使われ続ける理由になっています。

ユニークな福利厚生を設計するときの注意点

ユニークさは魅力になりますが、設計を誤ると使われない制度になりかねません。導入前に押さえておきたい視点を3つ整理します。

導入目的の明確化

その制度を何のために設けるのか、目的をはっきりさせておきましょう。珍しさを優先しすぎると、ねらいの定まらない制度になりがちです。

目的があいまいな制度は満足度が上がりにくく、利用率も伸び悩みます。「離職を防ぐ」「交流を増やす」など達成したい状態を言葉にしてから内容を決める順番が大切です。

コストと効果のバランス

導入や運用にかかる時間と費用に対して、得られる効果が見合っているかを確認しましょう。

効果を実感するには、一度きりではなく継続して運用する必要がある制度もあります。始める前に「どのくらい続けられるか」を見積もっておくと、途中で止まるリスクを抑えられます。

課税・非課税の線引き

見落としやすいのが税務の扱いです。福利厚生のつもりでも、要件を満たさないと給与とみなされ課税される場合があります。

たとえば従業員レクリエーション旅行は、参加割合や金額などを総合的に見て課税かどうかが判断されます。結婚祝いや記念日の金品も、一定の基準に従う場合に福利厚生費として扱えます。現金を直接渡す形や高額すぎる支給は給与課税の対象になりやすいため、設計の段階で税理士に確認しておくと安心です。

満足度の高い福利厚生を設計する方法

満足度の高い福利厚生

社員に使われ、満足度の高い制度にするための進め方をまとめます。導入して終わりにせず、運用まで見据えることが続けるコツです。

社員アンケートでニーズを把握

どんな制度が求められているかは、社員に尋ねるのが近道です。現場の声を集めると、想定とのずれに気づけます。

一部の社員だけが使える内容より、世代を問わず利用できる制度のほうが満足度は安定します。作る前にニーズを確かめておくと、使われない制度を生まずに済みます。

制度の周知と利用促進

制度を設けても、知られていなければ使われません。導入時の案内に加えて、利用者の感想を共有する工夫が効きます。

「そんな制度があるとは知らなかった」という声は意外に多く聞かれます。定期的に周知し、使った人の体験を社内で広げると、利用の輪が自然に広がっていきます。

外部サービスの活用

企画や運用に手が回らないときは、福利厚生に使える外部サービスを頼る方法もあります。専門のノウハウを借りれば、知見の少ない企業でも満足度の高い制度を整えられます。

たとえばバヅクリは、遊びや体験を通じてチームビルディングができるサービスで、福利厚生としても利用できます。オンラインで参加でき、参加者満足度は98%を超えています。講師はいずれもプロが務め、図工やマインドフルネスなど普段は味わいにくい体験を社内に取り入れられます。

幅広いサービスをそろえた福利厚生倶楽部のような会員型サービスも、選択肢の一つです。

近年のユニークな福利厚生のトレンド

近年は、限られた予算でも満足度を高められる制度に注目が集まっています。規模の小さい企業でも、工夫しだいで独自性を出せる流れがあります。

中小企業でも始めやすい少額・高満足の制度

社会保険料の負担が増えるなかで、法定外の福利厚生にかけられる予算は限られがちです。そのため、費用を抑えながら満足度を上げられる制度への関心が高まっています。

睡眠や歩数に応じた少額の手当、記念日休暇など、大きな投資をせずに始められる制度は中小企業でも取り入れやすいといえます。金額の大きさよりも、社員の暮らしに寄り添う視点が満足度を左右します。

採用ブランディングを意識した制度設計

求職者が企業を選ぶ基準は、給与だけにとどまらなくなりました。若い世代を中心に、その会社らしさが伝わる制度に魅力を感じる人が増えています。

自社の事業や価値観に結びついた制度は、求人の場面で他社との違いを具体的に示せます。「何を大切にする会社か」が伝わる制度ほど、共感した人材を引き寄せやすくなります。

まとめ

ユニークな福利厚生は、社員の満足と社外への発信の両方に効く打ち手です。ただし話題性だけを追うと、使われないまま終わってしまいます。導入のときは次の点を意識すると、長く使われる制度になりやすいといえます。

  • 達成したい目的を先に決める
  • 社員が気軽に使える設計にする
  • 課税・非課税の扱いを事前に確認する
  • 導入後も周知と改善を続ける

自社の文化に合った制度を選び、社員に喜ばれる福利厚生に育てていきましょう。