「うちの理念、正直もう誰も覚えていない気がする」 「カルチャー浸透の施策をやってはみたものの、いつの間にか自然消滅していた」 「経営陣は『挑戦しよう』と言うけれど、一番挑戦していないのは経営陣自身なんじゃないか」

心当たりのある人事担当者は、少なくないはずです。

「理念やバリューを掲げれば、社員の行動は変わる」

本当にそうでしょうか。多くの企業が「自律的な人材」や「挑戦する組織文化」を掲げていますが、いざ現場に浸透させようとすると、たいていの場合スローガンのまま終わってしまいます。理想のカルチャーを言葉にすることと、それを組織全体の行動として根づかせることの間には、大きな距離があるのです。

今回は、組織開発・人材育成・制度設計を数多く手がけてきたバヅクリ株式会社代表・佐藤太一さんに、「なぜカルチャーは現場に浸透しないのか」「何から着手すれば組織に根づいていくのか」を伺いました。

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成果に繋がる人事制度を構築「人事制度X」

「制度を作ったのにうまく回らない」そんな声をよく聞きます。制度づくりのゴールは、導入することではなく運用が定着すること。

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なぜ今、カルチャーアップデートが必要なのか

——最初に伺いたいのですが、「カルチャー」という言葉自体、社風とか雰囲気といった感じで、少し抽象的に聞こえる部分もあると思います。今回はどういう観点でお話しいただけますか。

佐藤:カルチャーアップデートという言葉自体、最近は企業変革や風土改革の文脈でニーズがかなり増えてきています。組織風土をどう変えるか、組織の雰囲気や文化をどう変えるか。ここに関心を持つ企業がすごく増えている実感がありますね。

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カルチャーを変えるというのは、実は本当に難しいことです。何がカルチャーを構成しているかというと、社員であり、経営陣であり、事業や戦略もカルチャーを成しますし、場所すらもそうです。行動規範やバリューといったものまで、すべてがカルチャーに影響を及ぼしています。社員であり経営者であり事業であり組織体であり。

全部が絡み合っている。だからこそ、カルチャーをどう捉えるかというのが、すごく難しいんです。

経営陣は本当に「体現」できているか

自律的に動ける人材を増やしたい、挑戦できる組織にしたい。

多くの企業がそう掲げます。しかし佐藤さんは、ここに根本的な落とし穴があると指摘します。

佐藤:いいカルチャーと悪いカルチャーは、どうしてもあります。「自ら行動できる自律型人材を増やそう」「とにかく挑戦しまくれる組織にしたい」というのはよくある話です。ただ、ほとんどのケースで、社長であり経営陣が、そのカルチャーを体現できていない。もしくは体現しているつもりでも、それが社内にまったく伝わっていない。ここがほとんどの企業の問題だと思っています。

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現状のカルチャーと、本来あるべきカルチャーの間にはギャップがある。このギャップをどう埋めるかというのが、カルチャーアップデートであり組織風土改革だと佐藤さんは言います。あるべきカルチャーを定義し、それを日常のコミュニケーションや管理職研修、若手研修、1on1といったフィードバックの場に落とし込んでいく。ここまでは、多くの企業が実際にやっていることです。

佐藤:ただ、あるべきカルチャーを掲げて「皆さん、このカルチャーで挑戦しましょう」「自律的にいきましょう」と言っても、大体それはスローガンとして終わってしまいます。

スローガンで終わらせないための一番の近道は、経営陣自身が現場に足を運び、「これからはこういう行動にしてほしい」と伝え続けることだと佐藤さんは語ります。ただし、これには物理的な限界があります。

佐藤:社長が何千人、何万人という会社の現場をすべて回って、あるべきカルチャーを磨き続け、それが達成できたかどうかもチェックする。これは正直、かなり難しいですよね。

チェンジエージェントという仲介者

そこでバヅクリがよく用いる手法が、「チェンジエージェント」という現場での変革の仲介者を立てるやり方です。

佐藤:チェンジエージェントという企業変革の仲介者を任命して、その人たちに現場の風土を変えていってもらいます。ただ、あるべきカルチャーを作って「これを現場で広めてください」と任命しただけでは、どうしても「やらされ感」が出てきてしまうんです。

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「挑戦しましょう」と伝えても、現場からは「いや、社長、あなたは挑戦しないじゃないですか」「役員陣だって全然挑戦していないじゃないですか」という声が上がる。挑戦しているつもりでも、それがまったく伝わっていない。しかも、挑戦して失敗したら失敗したで、責められて評価が落ちる。

こうした現実は、決して珍しいケースではないと佐藤さんは言います。

佐藤:だから制度も変えなきゃいけないんですが、制度改定はかなり時間がかかります。そこで大事なのは、チェンジエージェントの人たちに「具体的にどういう行動をとったら、あるべきカルチャーと言えるか」を、自分たちでディスカッションして作ってもらうことです。あるべき論をただ振りかざすのではなく、抽象的なものでいいので、それを現場の行動レベル、コミュニケーションレベルまで具体的に落とし込んでいく。これがチェンジエージェントの役目です。

キャズムを超える——多数派を動かす難しさ

バヅクリが組織開発のメソッドとして掲げているのが、「3割ルール」です。

佐藤:組織の3割の人が意識や行動を変えていくと、残りの7割の人たちが「何かこの会社、変わったな」と実感できるようになります。だからこそ、チェンジエージェントを通してその3割をどう作っていくかがすごく大事なんです。

チェンジエージェントは人事や経営陣がある程度選抜して、研修やワークショップ、ディスカッションの場を定期的に設ける。現場でどう行動が変わったか、逆にどんな問題があったかを話し合い、PDCAを回していく。

佐藤:ただ、1周目は皆さんできるんですよ。チェンジエージェントやエバンジェリストを使ってカルチャーを変えていきましょうと言って、アンケートを取って「本当に変わったか」をレポーティングする。ここまではできる。でも、2周目がめちゃくちゃ難しいんです。

なぜなら、最初にチェンジエージェントになるのはアーリーアダプターやイノベーターと呼ばれる層。この人たちの意識を変えるのは、実はそれほど難しくありません。しかし、そこから先、いわゆるアーリーマジョリティやレイトマジョリティと呼ばれる多数派を動かすのは、話がまったく違ってきます。

佐藤:イノベーター、アーリーアダプターという層と、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティという層の間には、深い溝があります。いわゆる「キャズム」です。このキャズムをどう超えて、多数派にカルチャーを浸透させ、変えていくか。これがものすごく難しいんです。

では、どうするか。佐藤さんいわく、正解と呼べる唯一のメソッドはないそうです。研修や育成から変えていく方法もあれば、制度を変える方法、日々のコミュニケーションを変える方法もある。ただ、共通して大事なのは「小さな成功体験を積み重ねること」だと言います。

佐藤:自律的に動けた、誰かのために動けた、部門間の連携がちゃんとできた、お客様のために潜在ニーズまで拾いに行けた。そうした成功体験を積み重ねて、それを自分の言葉で発表できる場を作っていく。これがすごく大事だと思っています。

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「ダメな状態」を定義する

理想の状態を示すだけでなく、佐藤さんが強調するのが「やってはいけない行動」を明確にすることの重要性です。

佐藤:一番いい状態が何かを作っていくのも大事ですが、逆に「ダメな状態」を定義するのもすごく大事です。アーリーマジョリティやレイトマジョリティの層は、何がいいかは何となくわかっています。ただ、何をやったらダメなのかは、意外とわかっていない人が多いんです。

これをやったらものすごく褒める、評価する。逆に、これをやったらもう勘弁してくださいと、まったく評価しない、むしろマイナスになる。

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この判断軸を、それぞれの事業部の中で決めていくのがすごく大事です。チェンジエージェントの人たちが最初に作って、マジョリティに広めていくときに、特にこの部分を丁寧に言葉にして伝える。これが効いてきます。

バリューが「伝わらない」本当の理由

なぜ、ここまで具体的に落とし込む必要があるのでしょうか。佐藤さんは、多くの企業が掲げるバリューや行動規範そのものに原因があると指摘します。

佐藤:バリューや行動規範は、会社ごとにあるにはあるんですが、あまりにも抽象的すぎて全然伝わりません。特に今はダイバーシティの時代なので、同じ言葉でもすごくいいように解釈する人もいれば、すごく悪く解釈する人もいる。解釈が人によって異なってしまうんです。

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だからこそ、「人の話を遮ってはいけない」「時間を守りましょう」といった、具体的かつ明確な「ルール」を作っていくことが、マジョリティ層の行動や意識を変えていくうえで欠かせないと言います。

カルチャーは、自分たちだけでは変えられない

最後に、カルチャーアップデートを考えている企業に向けて、佐藤さんに一番伝えたいポイントを聞きました。

佐藤:「自分たちのカルチャーは自分たちで変えていく」というプライドを持っている企業は多いと思います。それ自体はあるべき姿ではあるんですが、実はこれが一番難しいんです。

自分で自分の行動を変えるというのは、誰にとっても簡単なことではありません。だからこそ、いろいろなカルチャーアップデートの実績を持つ第三者のプロフェッショナルに依頼したほうが、結果的には手っ取り早い。

佐藤さんはポジショントークではなく、と前置きしたうえでそう語ります。

佐藤:いろいろな失敗事例も成功事例も持っている組織開発のプロフェッショナルであれば、圧倒的に最短でカルチャーアップデートを実現できる可能性が高いです。特に難しいのが、キャズムを超えてアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、つまり一般社員層のカルチャーを変えていくところ。ここは研修もそうですし、コミュニケーションのやり方も、成功体験を積んで発表する場を作るのも、すべてが手段になり得ます。ただ、なぜカルチャーを変えなければいけないのかを腹落ちさせる部分は、さすがにプロフェッショナルの力が必要だと思います。

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全部を丸ごと依頼する必要はなく、プロジェクトマネジメント全体を任せる形でも、一般社員層への浸透部分だけを任せる形でもいい、と佐藤さんは付け加えます。実際、一番失敗事例が多いのが「一般社員層に浸透させ、行動を変える」ところだからこそ、そこをプロに任せるという選択は理にかなっている、というのが佐藤さんの結論です。

カルチャーアップデートでお悩みの方へ

理念やバリューを掲げても、現場に浸透しない。チェンジエージェントを立てても、やらされ感が抜けない。一般社員層の意識がなかなか変わらない。今回の記事であがったような壁に、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

バヅクリでは、あるべきカルチャーの定義から、チェンジエージェントの選抜・育成、現場への浸透施策の設計・伴走まで、組織開発の知見をもとに支援しています。「何から手をつければいいかわからない」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

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