「研修コストを見直したい」

「自社の実態に合った研修を実施したい」

そうした課題感から、研修の内製化を検討し始める企業が増えています。

研修の内製化はメリットも多い一方、すべての研修を内製化すればうまくいくわけではありません。

本記事では、研修内製化のメリット・デメリットを整理したうえで、内製化に向く研修と外注すべき研修の見極め方、具体的な内製化の進め方を解説します。

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令和の研修

目次

研修の内製化とは

研修の内製化の方法を解説する前に、内製化の定義と近年内製化が注目されている背景を解説します。

研修内製化の定義

研修の内製化とは、これまで外部の研修会社や講師に委託していた研修を、社内のリソースで企画・実施することを指します。

社内講師の育成、自社オリジナルの研修コンテンツの開発、eラーニング教材の自社制作なども、内製化の範囲に含まれます。

研修内製化が注目される背景

研修内製化への関心が高まっている背景には、人的資本経営が浸透し、人材育成を経営戦略の重要な要素と位置づける企業が増えたことがあります。

その結果、研修コストの最適化や、自社の実態に即した育成施策への転換、オンライン研修・eラーニングの活用、社内ナレッジの共有・活用などを目的として、研修の内製化の取り組みが広がっています。

研修内製化のメリット

研修を内製化することで、企業はどのような効果を得られるのでしょうか。

ここでは代表的なメリットを紹介します。

1. コスト削減

研修を内製化すると、外部講師への謝礼や研修会社への委託費用を削減できます。

特に、新入社員研修のように毎年繰り返す定番研修を内製化すると、中長期的なコストメリットは大きくなります。

2. 自社の実態に合った内容にできる

外部研修は自社の具体的な実態を反映しにくく、一般論に偏りがちです。

研修を内製化することで、自社の事業内容・組織文化・実際に起きている課題を踏まえて、実態に即した研修を実施できます。

3. 柔軟な実施が可能

日程・時間・対象者を自社の都合に合わせて設定できます。

急な組織変更や追加開催といった細かな調整も、社内完結であれば柔軟に行えます。

4. 社内ナレッジの蓄積・共有

一度作った研修コンテンツは社内の資産として蓄積できるのもメリットです。

eラーニング化をしておくことで、社員はいつでも見返して復習できます。

異動や退職で担当者が入れ替わっても、コンテンツ自体は組織に残り続けるため、属人化を防ぐ効果も期待できます。

5. 社内講師の育成・活躍機会

社員が講師を務める経験は、教える側自身のスキルアップやモチベーション向上にもつながります。

現場で活躍する社員の知識や成功事例が社内に共有されることで、若手にとってのロールモデルが可視化され、社内コミュニケーションの活性化も期待できます。

6. 現場との距離が近い

社内講師は現場の実態を熟知しているため、受講者の悩みに具体的に寄り添うことができます。

部署特有の課題についての質問にも、具体的な事例を交えながら答えることができるでしょう。

研修内製化のデメリット・注意点

一方で、研修の内製化にはいくつかの注意点も存在します。

1. 企画・開発の工数がかかる

コンテンツの企画・開発には時間と労力がかかります。

さらに人事や社内講師の工数もかかるため、あらかじめ社内リソースの調整が必要です。

2. 社内講師のスキル・質にばらつきが出る

講師を務める社員のスキルによっては、研修の質にばらつきが生まれるケースも

研修の満足度や効果を高めるためにも、講師育成やトレーニングによる底上げが必要です。

3. 専門性の高い内容は難しい

法務・財務・ITなど高度な専門知識が必要な分野は、内製化のハードルが高くなります。

社内に適任者がいない場合、無理に内製化すると誤った情報を伝えてしまうリスクもあります。

4. 客観性・新しい視点が入りにくい

社内だけで研修を完結させると、外部の視点や最新トレンドが入りにくくなります。

意識的に研修コンテンツを更新する意識を持たないと、毎年同様の内容が繰り返され、受講者が飽きてしまう危険性もあります。

5. 社内講師の本業への影響

講師が本業と兼務する場合、研修の準備・実施の負荷が通常業務に影響することがあります。

特に繁忙期と研修準備が重なると、講師本人の業務にしわ寄せがいきやすいため、負荷を分散させるような働きかけが不可欠です。

6. 受講者の緊張感が下がる

外部講師の研修と比べて、社内講師だと受講者の本気度・緊張感が下がりやすい傾向があります。

同僚が話す研修という認識から重要性が伝わりにくくなる場合があるため、研修の位置づけを明確に伝えましょう。

内製化すべき研修と外注すべき研修の判断基準

すべての研修を内製化する必要はありません。

メリット・デメリットを踏まえて、どの研修を内製化し、どの研修を外注するか切り分けることが重要です。

ここでは内製化すべき研修と外注すべき研修の判断基準を解説します。

内製化に向いている研修

内製化に向いている研修として下記があります。

●自社固有の内容が多い研修:自社の制度・ルール・業務プロセス・文化など、自社でしか教えられない内容

●繰り返し実施する定番研修:新入社員研修、OJT担当者研修など、毎年繰り返し実施する研修

●現場の実務に直結する研修:営業ノウハウ、製品知識、業務スキルなど、現場の社員が教えるほうが効果的な内容

●コンプライアンス・ハラスメント研修:法令・社内ルールの基本は内製化しやすい(ただし最新法令対応は外部も活用)

●階層別研修の一部:自社の管理職像・期待役割など、自社固有の内容が多い部分

外注が向いている研修

外注が向いている研修として下記があります。

●専門性が高い研修:法務、財務、IT、コーチングなど、高度な専門知識・資格が必要な内容

●最新トレンド・ノウハウが必要な研修:DX、AI活用、最新マネジメント理論など、外部の専門家のほうが最新情報を持っている領域

●客観的な視点が必要な研修:ハラスメント研修の外部講師による実施、アセスメントを伴う研修など

●社内に適任者がいない研修:講師として適切な人材が社内にいない場合

●経営層・役員向け研修:外部エグゼクティブコーチ、ビジネススクール講師など、外部のほうが適切な場合

ハイブリッド型の検討

内製と外注は二者択一ではなく、柔軟に組み合わせることが重要です。

「基本パートは内製、専門パートは外部講師」「外部で作られた研修コンテンツを社内講師が解説する」など、ハイブリッド型の研修スタイルを採用する企業も増えています。

自社の体制やリソースに応じて、ハイブリット型の導入も検討しましょう。

研修内製化の進め方5ステップ

ここでは実際に研修を内製化する際のステップを解説します。

ステップ1:内製化する研修を選定する

まずは現在実施している研修を棚卸しし、内製化の優先順位をつけましょう。

すべての研修を一気に切り替えるのではなく、効果の見込みやすい研修から優先的に着手します。

ステップ2:社内講師を選定・育成する

内製化する研修を選定したら、テーマに適した社員を講師候補として選定します。

専門性・プレゼンスキル・本業との両立可能かどうかといった基準をもとに適した講師を選び、必要に応じて講師トレーニングを実施しましょう。

ステップ3:研修コンテンツを開発する

研修の目的・ゴールを明確にしたうえで、スライドやワークシート、ケーススタディなどの教材を作成します。

既存の外部研修コンテンツを参考にしながら、自社向けにカスタマイズするのもおすすめです。

受講者が研修を自分ごとにできるよう、実際の業務シーンに近い事例を盛り込むことを意識しましょう。

ステップ4:パイロット実施・改善する

いきなり全社展開する前に、まずは小規模なパイロット実施を行います。

実施後は受講者・講師双方からフィードバックを集め、コンテンツや進行を改善してから本格展開に移りましょう。

ステップ5:本格展開・継続的改善

パイロットの結果を踏まえて本格展開します。

研修はやりっぱなしで終わらせず、定期的に効果測定を行い、コンテンツのアップデートや講師スキルの向上を続けていきましょう。

「年に一度」など研修を見直すタイミングをあらかじめ決めておくと、改善が後回しになるのを防げます。

社内講師の育成方法

研修内製化の成否は、社内講師の質に大きく左右されます。

ここでは社内講師を育成する際のポイントを紹介します。

社内講師に求められるスキル

社内講師には担当テーマの専門知識・経験に加え、プレゼンテーションスキルやファシリテーションスキル、受講者からの質問への対応力が求められます。

さらにコンテンツの企画・設計スキルがあれば、より自走できる講師として活躍できます。

専門知識があっても教えるのが苦手という社員も存在するため、本人の適性も踏まえて講師を選びましょう。

社内講師トレーニングの内容

社内講師トレーニングの内容として、講師の心構えや役割の理解、効果的なプレゼンテーションの方法、研修の進行・ファシリテーション技術、受講者を巻き込む問いかけの技法などがあります。

座学だけでなく、実際に模擬研修を行い、他の講師候補からフィードバックをもらう機会を設けると、実践的なスキルが身につきやすくなるでしょう。

社内講師のモチベーション維持

社内講師のモチベーションを維持する取り組みとして、講師の活動を評価・処遇に反映する仕組みや、講師同士が学び合えるコミュニティを作るのがおすすめです。

また本業との両立に配慮して負荷をコントロールし、講師としての成長機会・キャリアパスを示すことで、「また社内講師を引き受けよう」というモチベーションも高まりやすくなります。

研修内製化を成功させるポイント

ここでは研修内製化を成功させるためのポイントを解説します。

1.「すべて内製化」を目指さない

すべてを内製化するのではなく、内製化に向く研修と外注が適した研修を見極め、最適な組み合わせを設計しましょう。

コストを抑えようと無理にすべて内製化しようとすると、かえって質の低下や担当者の疲弊を招きます。

内製化はあくまで研修効果を最大化するための手段のひとつと捉えておくとよいでしょう。

2. 経営層・現場の理解を得る

研修を内製化する目的とメリットを経営層・現場に丁寧に説明し、協力を得られるようにしましょう。

社内講師の選出や工数確保には、現場の理解が必須です。

講師役を担う社員とその上長に対して、通常業務との調整を事前に相談しておくと、後々の摩擦を防ぎやすくなります。

3. 社内講師を「やらされ仕事」にしない

講師役を単なる追加業務ではなく、本人のキャリア形成・成長機会として位置づけられるように業務を設計しましょう。

「なぜ自分が講師をやるのか」が本人の中で腹落ちしていないと、研修準備の質にも影響が出ます。

例えば講師としての貢献を評価・処遇に反映する仕組みがあると、講師を続けるモチベーションになります。

4. コンテンツの継続的なアップデート

一度作ったコンテンツをそのまま使い続けると陳腐化します。

法改正や社内制度の変更、最新トレンドを踏まえて、定期的に見直す仕組みをあらかじめ組み込んでおきましょう。

5. 効果測定を行い改善する

受講者アンケートや行動変容の確認、業績への影響などを通じて研修効果を測定します。

その結果をもとにコンテンツ・講師・運営を改善するPDCAを回すことが、内製化の質を高めます。

アンケートは「満足度」だけでなく、「研修後に実際に行動が変わったか」まで確認できる設問を用意すると、より実態に即した改善につながります。

6. 外部リソースを適切に活用する

研修は社内だけで完結させようとせず、必要な部分では外部リソースを取り入れましょう。

例えばコンテンツ開発の外部支援や講師トレーニングの外部委託など、適切に外部リソースを頼ることで、無理のない設計がしやすくなります。

研修内製化でよくある失敗と対策

ここでは内製化を進める過程でよくある失敗と、失敗を回避する対策法を紹介します。

失敗1:社内講師の質にばらつきがある

同じテーマの研修でも、担当する講師によって説明のわかりやすさや進行のペースに差が出てしまい、受講者から「回によって内容の理解度が変わる」といった不満が出るケースです。

こうした失敗を回避するためには、講師トレーニングを実施して一定の水準を担保するとともに、講師同士がお互いの進行を見学し、フィードバックし合う場を設けるのがおすすめです。

また研修運営マニュアルやスクリプトを整備しておくと、講師が変わっても品質のばらつきを抑えやすくなります。

失敗2:コンテンツが自社流すぎて偏る

社内の視点だけでコンテンツを作り続けると、自社の慣習や成功体験に偏った内容になり、外部環境の変化や新しい考え方が反映されにくくなります。

受講者が社外で通用しない自己流のやり方を身につけてしまうリスクを避けるためにも、定期的に社外の知見を取り入れる機会を作りましょう。

具体的には外部研修やセミナーへの参加、書籍によるインプットがおすすめです。

失敗3:社内講師の負担が大きく疲弊する

講師役の社員が本業と研修準備を並行してこなすうちに、業務量が膨らみ疲弊してしまうケースです。

特定の社員だけに講師業務が集中すると、その社員の離職やモチベーション低下にもつながります。

講師を複数育成し、担当をローテーションすることで一人当たりの負担を分散しましょう。

失敗4:受講者が「社内研修は本気でやらなくていい」と思う

社内講師が担当する研修は、外部講師の研修と比べて受講者の緊張感が下がりやすく、「同僚が話しているだけ」という受け止め方をされてしまうことがあります。

この状態が続くと、研修の効果自体が薄れてしまうことも。

研修の位置づけや重要性を経営層や人事から発信し、受講者に「本気で取り組むべき研修」だと伝えましょう。

また、研修への参加状況や成果を評価に反映する仕組みを検討するのもおすすめです。

失敗5:一度作ったコンテンツを使い続け陳腐化

研修コンテンツを一度作成した後、更新のタイミングを決めないまま使い続けてしまい、法改正や制度変更に対応できていない内容のまま研修を実施してしまうケースです。

受講者側も「毎年同じ内容」と感じ、研修への関心が薄れてしまいます。

コンテンツの定期的な見直しスケジュールをあらかじめ決めておき、法改正や社内制度変更のタイミングでは必ず内容を更新しましょう。

さらに受講者アンケートで挙がった意見も反映し、改善を重ねることで、研修コンテンツのマンネリ化を防ぎます。

研修内製化の成功事例

ここでは実際に内製化に取り組んだ企業の成功事例を紹介します。

事例1:社員研修を内製化し質向上を実現

ソフトバンク株式会社では、外部研修では自社の企業文化に即した教育が難しく、「ソフトバンクらしいリーダーシップ」の啓蒙がしづらいという課題がありました。

そこで2009年からソフトバンクユニバーシティ認定講師制度を導入し、自社で研修を企画・運営する体制を構築することにしました。

現場での経験が豊富な社員が講師となり、外部の専門家に研修の作り方を指導してもらいながら、社内ケース事例を盛り込んだ実践的な研修コンテンツを制作。

その結果、社員の持つノウハウや知識が研修内容に反映され、組織文化の浸透が進みました。

参考リンク:https://jinjibu.jp/hr-conference/report/r201505/report.php?sid=529

事例2:管理職向け研修を一部外注、オンライン化して時間や場所の制約に囚われない研修環境を実現

日立製作所グループの日立アカデミーでは、管理職候補向けに経営知識を身につけさせたい一方、全国に拠点があり、地域ごとに受講機会の格差がありました。

また、自社だけで経営教育コンテンツを開発する負担も課題でした。

そこで全体的な研修体系の設計は自社が担いながら、経営・戦略・マーケティングなどの汎用的な経営知識は外部のオンライン研修コンテンツを活用することに。

自社の人材戦略と結び付けて研修コンテンツの幅を広げたことで、受講者は徐々に増加、各エリアのマネージャー層にも広がりました。

参考リンク:https://gce.globis.co.jp/case/hitachi-academy/

まとめ

研修の内製化は、コスト削減や自社の実態に合った育成を実現できる一方、企画工数や講師の質のばらつきといった課題もある施策です。

すべてを内製化するのではなく、自社固有の内容や繰り返し実施する研修は内製化し、専門性が高い分野は外部を活用するなど、内製と外注の適切な使い分けが重要です。

まずは自社の研修を棚卸しし、内製化に向く研修から小さく始めてみてはいかがでしょうか。

大手の研修会社ではできない今の育成課題を解決「令和の研修」

「研修はやっている。でも現場は変わっていない気がする」「理論は学んだはずなのに、実践ではうまく使えていない」そんなお悩みはありませんか?

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