「社内で起きている問題行為がハラスメントに該当するのか判断できない」
「パワハラ・セクハラ以外にも対策すべきハラスメントはあるのか」
など、ハラスメント対策に悩む人事担当者や経営者の方は多いのではないでしょうか。

職場におけるハラスメントは年々多様化しており、従来のパワハラ・セクハラだけでなく、リモートワーク特有のものやカスタマー対応など新しい形のハラスメントも増加しています。

企業には法的な防止義務があり、適切な対策を講じなければ訴訟リスクや人材流出につながる可能性もあります。

本記事では、厚生労働省の最新調査データをもとに、職場で発生しうるハラスメントの種類を網羅的に解説します。

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目次

ハラスメントとは?基本の定義と企業が対策すべき理由

ハラスメント(harassment)とは、相手に対して不快感や不利益を与える言動・行為のこと。

語源は英語の「harass(嫌がらせをする、困らせる)」で、職場では上下関係や立場を利用した嫌がらせ、性的な言動、差別的な扱いなどが該当します。

行為者に悪意がなくても、受け手が不快に感じたり、就業環境が害されたりすれば、ハラスメントとなり得ます。

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワハラを受けた労働者の割合は19.3%。

約5人に1人が「パワハラを経験している」と回答するなど、ハラスメントは身近な問題になりつつあります。

出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」

職場でのハラスメントを防止すべく、2020年6月(中小企業は2022年4月)から「労働施策総合推進法」におけるパワーハラスメント防止措置(通称:パワハラ防止法)が義務化されました。

企業は以下の対応が求められ、これらの対応を怠った場合は行政指導のリスクを負います。

  • パワハラに対する方針の明確化と周知・啓発
  • 相談窓口の設置
  • 事後の迅速かつ適切な対応 など

また、ハラスメントの放置は企業イメージの低下や人材流出などといった経営リスクにもつながるため、多くの企業が試行錯誤しながらハラスメント対策を講じています。

一方、ハラスメント対策に取り組む企業の59.6%が、ハラスメント予防・解決のための取組を進める上での課題に対して「ハラスメントかどうかの判断が難しい」と回答しています。

出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」

実際に従業員からハラスメント相談が発生したとき、適切に判断・対応するためにも、各ハラスメントの定義と具体例を正しく理解し、社内で共通認識を持つことが重要です。

法律で防止措置が義務化されている「5大ハラスメント」

 ここでは法令上の定義があり、企業に防止措置義務があるハラスメントを解説します。

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメント(パワハラ)の定義

パワハラは、以下の3つの要素をすべて満たす行為を指します。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
  3. 労働者の就業環境が害されている

つまり、上司が部下に対して行うものだけでなく、同僚間や部下から上司への行為も、優越的な関係があればパワハラになりえます。

パワーハラスメント(パワハラ)の6つの類型と具体例

厚生労働省では、パワハラを以下の6つの類型に分類しています。

  1. 身体的な攻撃:殴る、蹴る、物を投げつけるなど
  2. 精神的な攻撃:人格を否定する言動、侮辱、脅迫など
  3. 人間関係からの切り離し:無視、仲間外れ、隔離など
  4. 過大な要求:明らかに達成不可能なノルマや業務の押し付け
  5. 過小な要求:能力とかけ離れた簡単な仕事しか与えない
  6. 個の侵害:私的なことに過度に立ち入る行為

具体的には、下記のような行為がパワハラに該当し、発生した場合は企業としての対応が求められます。

  • 大勢の前で長時間にわたって叱責し続けたりするのは「精神的な攻撃」
  • 新人に対して到底達成できない売上目標を課すのは「過大な要求」
  • 私物のスマートフォンを勝手にチェックするのは「個の侵害」

法的根拠と現状

パワハラの法的根拠は、「労働施策総合推進法」(通称:パワハラ防止法)です。

また厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワハラの相談があった企業は64.2%と、全ハラスメントの中で最も多い割合となっています。

出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメント(セクハラ)の定義

セクハラとは、職場における性的な言動により、労働者が不利益を受けたり、労働者の就業環境が害されることを指します。

職場の上下関係だけではなく、同僚や顧客・取引先相手でも発生し、性別や年齢・性的指向は問いません

また行為者の意図に関係なく、受け手が「性的に不快」と感じれば成立する点に注意が必要です。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)の2つの類型と具体例

厚生労働省では、セクハラを以下の2つの類型に分類しています。

対価型セクハラ:性的な言動への対応によって、解雇や降格など不利益を受けるもの
環境型セクハラ:性的な言動により就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に支障が生じるもの

例えば上司が部下に対して「昇進させてほしければデートに付き合え」などと示唆・要求し、拒否した場合は評価を下げる等の不利益を与える場合は対価型セクハラに、性的な冗談やからかい、容姿や体型について繰り返し発言する場合は環境型セクハラに該当します。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)の法的根拠と現状

セクハラの法的根拠は「男女雇用機会均等法」です。

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に相談があった企業は39.5%と、パワハラに次いで多い相談内容となっています。

マタニティハラスメント(マタハラ)

マタニティハラスメント(マタハラ)の定義

マタハラとは、妊娠・出産・育児休業などを理由として、不利益な取扱いをしたり、嫌がらせをしたりする行為です。

マタニティハラスメント(マタハラ)の具体例

たとえば以下の行為がマタハラに当たります。

  • 妊娠を報告した社員に対して「迷惑だ」と発言する
  • 産休・育休の取得を認めない、または取得を理由に降格させる
  • 妊娠中の体調不良による休暇申請を認めない
  • 復職後に明らかに能力より低い業務だけを割り当てる

マタニティハラスメント(マタハラ)の法的根拠

妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止や、妊娠・出産をした女性労働者の就業環境を害さないよう防止する措置の義務は「男女雇用機会均等」を根拠としています。

また、育児休業を理由とする不利益取扱いの禁止、また育児休業者の就業環境を害さないよう防止する措置の義務は、育児 ・ 介護休業法で規定されています。

パタニティハラスメント(パタハラ)

パタニティハラスメント(パタハラ)の定義

パタハラとは、男性労働者が育児休業などを取得することに対して行われる嫌がらせや不利益な取扱いを指します。

パタニティハラスメント(パタハラ)の具体例

たとえば以下の行為がパタハラに当たります。

  • 育休を申請した男性社員に対して「育休を取ったら出世に響くぞ」と脅す
  • 「男のくせに育休なんて」と発言する
  • 育休を取得した男性社員を昇進・昇格の対象から外す

パタニティハラスメント(パタハラ)の法的根拠

パタハラの法的根拠は、マタハラと同じく「育児・介護休業法」です。

育休は性別にかかわらずすべての労働者が行使できる権利であり、政府も男性の育児休業(育休)取得促進へ向けて制度改正等を行っています。

しかし、実際には職場の理解が追いついていないケースも多いのが現状です。

ケアハラスメント(ケアハラ)

ケアハラスメント(ケアハラ)の定義

ケアハラとは、労働者が家族の介護を理由に介護休業や短時間勤務を申し出た際に、嫌がらせをしたり不利益な取扱いをしたりする行為です。

ケアハラスメント(ケアハラ)の具体例

たとえば以下の行為がケアハラに当たります。

  • 介護休業を申請した社員に「仕事か介護かどちらかにしろ」と迫る
  • 介護のための時短勤務を認めない
  • 介護を理由とした配置転換を拒否する

ケアハラスメント(ケアハラ)の法的根拠

ケアハラの法的根拠は「育児・介護休業法」です。

高齢化社会の進展に伴い、介護と仕事の両立支援は企業の重要な課題となっており、事業主は介護休業を申請した労働者の就業環境を害することがないよう防止措置を取る義務があります。

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職場で増加している「新型ハラスメント」8選

働く人や働き方の多様化により、新しいハラスメントの形である「新型ハラスメント」が生まれています。

ここでは法令上の定義はないものの、社会的に問題視されているハラスメントを8つ紹介します。

モラルハラスメント(モラハラ)

モラハラとは、言葉や態度によって精神的に相手を追い詰める嫌がらせのこと。

パワハラは上司と部下の関係といった「職務上の権限の有無や立場の違い」を利用したハラスメントである一方、モラハラは優越的な関係がなくても成立するといった違いがあります。

具体例として「わざとため息をついて不快感を示す」「バカにしたような態度で接する」「あいさつを無視する」などがあります。

リモートハラスメント(リモハラ)

リモハラとはテレワーク環境下で発生するハラスメントで、コロナ禍以降のリモートワーク普及に伴い、新たな問題として注目されています。

「業務上必要ないのに常時カメラONを強要する」「自宅の部屋や家族の様子について詮索する」「早朝・深夜など業務時間外に頻繁に連絡する」など、在宅で仕事しているからこそ起こるプライバシーの侵害やマナー違反が特徴です。

カスタマーハラスメント(カスハラ)

カスハラとは、顧客や取引先からの著しく不当な要求や言動を指します。

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間にカスハラを経験した企業は27.9%と、パワハラ・セクハラに次いで高い割合となっています。

さらに、相談件数の推移では各ハラスメントの中で唯一「増加している」が「減少している」を上回っており、「生活関連サービス業、娯楽業」(16.6%)、「宿泊業、飲食サービス業」(16.0%)で特に多く発生しています。

出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」

カスハラの具体例は「土下座の強要」「長時間のクレーム」「SNSへの晒し上げ」など。

企業は従業員の心身と安全を守り、離職を防ぐ観点からも、カスハラに対応する必要があります。

ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

ジェンハラとは、性別に基づく固定観念や役割分担意識による差別的な言動を指します。

セクハラとは異なり、性的な要素がなくても成立するのが特徴です。

「女性なのに」「男のくせに」という発言や、「女性は事務、男性は営業」といった性別による業務の固定化はジェンハラに該当します。

アルコールハラスメント(アルハラ)

アルハラとは、飲酒に関連した嫌がらせや強要行為を指し、具体的には「一気飲みの強要」「飲めない人に対する侮辱・非難」「酔いつぶすことを目的とした飲酒の強要」などを指します。

本人の意思に反して飲酒を強いる行為や、飲めないことを理由に不利益を与えたり侮辱したりする行為は、健康被害や事故につながるおそれがあるので注意が必要です。

時短ハラスメント(ジタハラ)

ジタハラとは、業務量を減らさずに残業時間の削減だけを強要する行為です。

働き方改革の推進に伴い残業を抑制する方針が立てられたものの、人員配置の調整や業務効率化が進んでおらず、実際の現場の業務量との間で摩擦が起きている職場で発生しています。

具体例としては「『定時で帰れ』と命令するが仕事量は変わらない」「残業申請は承認しないが、成果は求める」などがあり、ジタハラを受けた従業員はサービス残業や持ち帰り残業(自宅での残業)に追い込まれるケースがあります。

SOGIハラスメント(ソジハラ)

ソジハラとは、性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)に関する差別的な言動を指します。

本人の同意なく性的指向・性自認を第三者に暴露する「アウティング」のほか、「まだ若いから分からないだけ」「治るよ」など存在を否定したり、カミングアウトを強要したりする発言もソジハラに当たるため注意しましょう。

就活ハラスメント(オワハラ含む)

就活ハラスメントとは、就職活動中の学生に対するセクハラやパワハラを指します。

内定を出す条件として他社の選考辞退を強要する「オワハラ」(就活終われハラスメント)が代表的です。

そのほかに「面接の場で性的な質問や発言をする」「内定者懇親会での飲酒の強要」「選考で得た個人情報を利用してプライベートな連絡をする」などが就活ハラスメントに当たります。

【早見表】ハラスメント種類別 定義・具体例・法的根拠一覧

ここでは、職場で発生しうる主要なハラスメントを一覧表で整理しました。

社内研修や啓発資料としてご活用ください。

種類定義具体例法的根拠企業の義務
パワハラ優越的関係を背景とした業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により就業環境が害されるもの人前での叱責、無視、過大なノルマ、個人情報の詮索労働施策総合推進法義務
セクハラ職場における性的な言動により就業環境が害されること不必要な身体接触、性的な冗談、容姿への言及男女雇用機会均等法義務
マタハラ妊娠・出産を理由とする不利益取扱いや嫌がらせ妊娠報告後の降格示唆、産休への否定的発言男女雇用機会均等法義務
パタハラ男性の育児休業取得に対する嫌がらせ「男のくせに育休」発言、出世への脅し育児・介護休業法義務
ケアハラ介護休業の申出・取得者への嫌がらせ介護休業への嫌味、過小な業務割り当て育児・介護休業法義務
モラハラ言葉や態度で精神的に追い詰める嫌がらせ無視、ため息、陰口、バカにした態度なし努力義務
リモハラテレワーク環境で発生するハラスメント常時カメラON強要、私的空間への言及なし努力義務
カスハラ顧客からの著しい迷惑行為土下座強要、長時間クレーム、SNS晒しなし努力義務
ジェンハラ性別に基づく固定観念による差別的言動「女性なのに」「男のくせに」発言なし努力義務
アルハラ飲酒に関する嫌がらせ一気飲み強要、飲めないことへの非難なし努力義務
ジタハラ業務量を減らさず残業削減だけを強要仕事量そのままで「早く帰れ」命令なし努力義務
ソジハラ性的指向・性自認に関する差別やアウティング本人同意なく性的指向を暴露、侮蔑的発言なし努力義務
就活ハラ就活中の学生へのセクハラ・パワハラ内定辞退強要、性的な冗談やからかいなし努力義務

「これはハラスメント?」判断に迷うグレーゾーン事例

ここではハラスメントの判断が難しいケースについて、具体例とともに解説します。

事例1:業務上必要な指導とパワハラの境界線

 上司が部下のミスを指摘し、改善するよう指導したところ、部下が「パワハラだ」と主張しました。

このケースにおいて、 業務上必要な指導とパワハラを判断するポイントは「業務の適正な範囲を超えているか」です。

必要以上に心理的負荷を与える指導が行われていた場合はパワハラに該当する可能性があります。

  • 指導の目的が業務上の必要性に基づいているか
  • 指導の方法が相当な範囲内か(人格否定や暴言がないか)
  • 他の社員の前で必要以上に叱責していないか

などの事実確認を行いましょう。

また、ミスの指摘と改善の提案は業務上必要ですが、「お前は無能だ」など人格を否定する発言や、大勢の前での長時間の叱責は不適切です。

1対1で具体的な改善点を伝えるようにしましょう。

事例2:褒め言葉のつもりが「容姿に関するセクハラ」に

上司が部下に「今日の服装、似合ってるね」と声をかけたところ、不快に思った部下が「セクハラだ」と訴えたケースです。

セクハラは行為者の意図ではなく、受け手がどう感じたかが重要です。

容姿や服装への言及は、たとえ褒め言葉のつもりでも、特定の身体部位について触れたり、業務に関係のない私的な外見評価をしたりする行為はセクハラとなる可能性があります。

職場でのコミュニケーションでは、容姿や服装に関するコメントは避け、業務上の成果や努力を評価する言葉を選ぶのがベターです。

事例3:飲み会の誘いはハラスメントになるか

「部下を飲み会に誘ったが断られ、その後も何度か誘っているが断られ続けている」という場合、コミュニケーションとハラスメントの境界線をどこに引けばよいのでしょうか。

飲み会への誘い自体は直ちにハラスメントに直結しませんが、以下の場合は問題となります。

  • 何度断っても執拗に誘い続ける
  • 断った後に態度を変えたり、評価を下げたりする
  • 参加しないことで不利益を示唆する

あくまでも飲み会は業務外の時間で行われるコミュニケーションのため、参加は任意であることを明確にし、不参加による不利益がないことを伝えることが重要です。

また何度か断られたら、それ以上しつこく誘わないようにしましょう。

事例4:リモート会議での背景・服装への言及 

オンライン会議中、上司が部下の様子について「部屋が散らかってるね」「今日はいつもよりラフな格好だね」とコメントした場合、ハラスメントになり得るのでしょうか。

ここでは「業務外のことに干渉しすぎていないか」がポイントです。

リモートワークでは、自宅という私的空間が業務に含まれるため、自宅の様子について不必要にコメントするなどのプライベートへの過度な干渉はリモハラの「個の侵害」に該当する可能性があります。

業務に直接関係のない自宅環境へのコメントは控えたうえで、バーチャル背景の使用や画面オフを認めるなど、プライバシーに配慮した環境づくりが大切です。

【厚労省調査】ハラスメントが起きやすい職場の特徴

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」に基づき、パワハラ・セクハラを経験した人と経験しなかった人の回答差が10%以上ある職場の特徴を紹介します。

上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない

コミュニケーション不足は、誤解や不信感を生み、ハラスメントの温床となります。

また日常的な対話がない職場では、上司が部下の状況を把握できず、不適切な指導をしてしまうリスクが高まります。

1on1ミーティングや気軽に話せる場を設け、コミュニケーションを取りやすい雰囲気を醸成しましょう。

残業が多い/休暇を取りづらい

長時間労働や休暇が取りづらい環境では、従業員のストレスが蓄積し、感情的な言動が増える傾向にあります。

採用や業務効率化によって業務量の適正化を行うとともに、計画的な休暇取得の推奨・残業時間の削減など、働きやすい職場づくりを進めましょう。

ハラスメント防止規定が制定されていない

明確なルールがない職場では、何がハラスメントに該当するのか理解されず、「このくらいは許される」という誤った認識が広がりやすくなります。

就業規則へハラスメント禁止条項を明記したり、ハラスメント行為者への懲戒規定を整備したりなど、従業員に対して組織としてのハラスメント対応方針を明言しましょう。

失敗が許されない/失敗への許容度が低い

失敗を過度に責める文化がある職場は心理的安全性が低く、上司が部下を必要以上に厳しく叱責したり、ミスした社員を排除したりする傾向があります。

失敗が許されない組織文化を抜け出し、失敗から学ぶ組織文化へと変わるには、地道な理念浸透の取り組みが重要です。

企業理念の刷新や行動指針の策定を行い「あるべき姿」を提示した上で、文化として定着させる施策を実施しましょう。

従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的に見られる

日常的に冗談、おどかし、からかいがある職場は「本気ではない」「悪気はない」という言い訳が正当化され、ハラスメントが常態化しやすくなります。

相手を不快にさせる言動は冗談でも許されないことを周知し、モラハラやパワハラに対する啓発を行いましょう。

従業員の年代に偏りがある

「若い人ばかり」「中高年が多い」など特定の年代に偏った職場では、多様な価値観への理解が不足しがちになり、世代間のギャップがハラスメントにつながることがあります。

多様な人材が働きやすい職場にしていくためには、ハラスメント防止研修ダイバーシティ研修などを実施し、自分とは別の属性の人に対する知識と配慮の仕方を身につけてもらうのがおすすめです。

他部署や外部との交流が少ない

閉鎖的な環境では社内の「常識」が固定化しやすくなる上に、外部の目がないため問題行動がエスカレートしやすくなります。

他部署や他社と積極的に交流し、様々なコミュニケーションスタイルや仕事の進め方を知ることで、自分たちのあり方を客観視しやすくなるでしょう。

人手が常に不足している

慢性的な人手不足で悩んでいる職場は業務負荷が増えやすく、従業員も余裕のない人が多いです。

ストレスから感情的な言動が増えることも多く、ハラスメント発生の大きな原因となります。

業務量の見直しや役割分担の再設計、相談しやすい体制づくりといった対策を行い、働く人にとっても組織にとっても余白を作るようにしましょう。

企業が取り組むべきハラスメント対策6ステップ

ハラスメント対策は、予防から発生時の対応、再発防止まで一貫した取り組みが必要です。

ここでは、企業が実施すべき6つのステップを解説します。

Step1:トップメッセージの発信(方針の明確化)

ハラスメント対策のために、経営トップがコミットすることを示しましょう。

具体的には下記を実施します。

  • 経営理念やビジョンにハラスメント防止を明記する
  • 社長メッセージとして、ハラスメントを許さない姿勢を全社に発信する
  • 全社会議や社内報で繰り返しメッセージを伝える

トップが本気で取り組む姿勢を示すことで、組織全体の意識が変わります。

Step2:就業規則・社内規程の整備

ハラスメントを禁止する明確なルールを定め、違反した場合の対処を明文化します。

具体的には下記を実施します。

  • 就業規則にハラスメント禁止条項を盛り込む
  • ハラスメント行為者への懲戒処分の内容を明記する(訓告、減給、降格、解雇など)
  • 相談者や協力者への不利益取扱い禁止を明記する
  • 全従業員に規程を周知し、理解を求める

曖昧なルールではなく、「何をしたら、どうなるのか」を明確にすることで、抑止力が働きます。

Step3:相談窓口の設置と周知  

従業員が安心して相談できる窓口を設置し、その存在を周知します。

具体的には下記を実施します。

  • 社内相談窓口の設置(人事部門、コンプライアンス部門など)
  • 外部相談窓口の設置(弁護士、社会保険労務士、専門機関など)
  • 窓口の連絡先を社内ポータル、掲示板などで常時掲示

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、約7割以上の企業が相談窓口を設置しており、ハラスメント対策として一般的な施策となっています。

窓口担当者には、適切な対応ができるよう研修を実施することも重要です。

相談者のプライバシー保護と、二次被害の防止を徹底しましょう。

Step4:管理職・全社員向け研修の実施  

管理職・全社員向け研修を通じてハラスメントの内容や判断基準を共有し、予防意識を高めます。

具体的には下記を実施します。

  • 管理職向け研修:ハラスメントの定義、具体例、適切なマネジメント手法を学ぶ
  • 全社員向け研修:ハラスメントの種類、相談窓口、被害を受けたときの対応を学ぶ
  • 新入社員研修:入社時からハラスメント防止の意識を醸成する

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、約6割以上の企業がハラスメント研修を実施しています。

研修では、単なる知識の伝達だけでなく、ケーススタディやロールプレイを取り入れることで、実践的な理解を深めることができます。

Step5:実態調査(アンケート)の定期実施

職場の実態を把握するため、定期的にアンケート調査を実施します。

  • 年1回程度の従業員意識調査の実施
  • ハラスメントの有無、職場環境、相談しやすさなどを聴取
  • 匿名性を確保し、本音を引き出せる設計にする
  • 調査結果を分析し、課題を可視化する
  • 結果を従業員にフィードバックし、改善策を共有する

アンケートを通して表面化していない潜在的なハラスメントを発見し、早期対応につなげましょう。

Step6:発生時の対応フロー整備と再発防止策の徹底

ハラスメントが発生した際の対応手順を明確化し、適切に対処します。

  • 相談受付から事実確認、対応決定までのフロー整備
  • 迅速かつ公正な調査の実施
  • 被害者の保護と行為者への適切な措置
  • 再発防止策の策定と実行(配置転換、再研修、ルール見直しなど)
  • 全社への注意喚起

ハラスメントが発生しても、適切に対処することで「この会社は本気で取り組んでいる」というメッセージになります。

まとめ

職場におけるハラスメントは、従来のパワハラ・セクハラだけでなく、リモハラやカスハラなど多様化しており、企業はハラスメントへの対応が求められています。

一方、厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、ハラスメント予防・解決に「積極的に取り組んでいる」と労働者から評価された企業は、各ハラスメントの発生が少なくなるだけでなく、「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなった」(39.1%)、「会社への信頼感が高まった」(34.7%)など、副次的な効果を実感していることがわかっています。

ぜひ本記事で紹介した各ハラスメントの定義と具体例を社内で共有し、ハラスメントを早期発見・対処できる体制づくりを構築しましょう。

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