職場の生産性を維持するためには、従業員の心身の健康を保つためのメンタルヘルス対策が欠かせません。

しかし厚生労働省による最新調査によると、多くの労働者が仕事関連のストレスを抱えており、その対策は喫緊の課題とされています。

この記事では、メンタルヘルスの概要と職場でのストレス要因、効果的なメンタルヘルス対策について解説します。

メンタルヘルスとは

世界保健機関(WHO)の定義によると、メンタルヘルスとは「人が自身の能力を発揮し、日常生活におけるストレスに対処でき、生産的に働くことができ、かつ地域に貢献できるような満たされた状態(a state of well-being)」のこと。

心身ともに健康で日常のストレスに対処できるだけでなく、自己実現へ向けた活動や、生産的で実りある仕事をするための活力を持っている状態を指します。

すなわちメンタルヘルスとは、単に心身が健康であるだけにとどまらず、人々が主体的に社会的役割を担い、能力を発揮できる状態が整っていることを表す概念なのです。

2023年度に厚生労働省が発表した「労働安全衛生調査」では「仕事や職業生活に関する強いストレスがある」と回答した人が82.2%となっており、この数値は年々増加傾向となっています。

近年の日本では、多くの人が仕事や職場について強い不安やストレスを感じており、それをきっかけに健康障害を起こす人も増えています。

さらに、従業員のメンタルヘルス悪化は組織全体の生産性やモチベーション、離職率にも悪影響を及ぼすため、企業のメンタルヘルス対策は喫緊の課題となっています。

メンタルヘルス対策の種類

厚生労働省が定義している「労働者の心の健康保持促進のための指針」では、メンタルヘルス対策として下記の4つのケアに取り組むことが重要だとしています。

  • セルフケア
  • ラインによるケア
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
  • 事業場外資源によるケア

下記で具体的に解説します。

セルフケア

セルフケアは、ストレスを感じている個人が自らストレスに対処し、軽減させる取り組みのこと。

企業ができるセルフケアの推進として、セルフケア研修やセルフケアの情報提供、ストレスチェックによってメンタルヘルスの現状を伝えることなどがあります。

またストレスやメンタルヘルスに対する啓蒙を行い、正しい知識と対処法を周知することが重要です。

ラインによるケア

ラインによるケアは、職場の管理監督者や上司が部下に対して行うメンタルヘルスケアのこと。

具体的には、業務量の調整や職場環境の改善、従業員との1on1などがこれに当たります。

監督者や上司は、従業員がメンタルヘルス不調にならないように常に気にかけ、万が一不調になった場合には早期に適切な対応を図ることが求められます。

一方でラインによるケアは様々な調整が必要なため、現場に浸透するまで多くの時間を要します。

事業場内産業保健スタッフによるケア

事業場内産業保健スタッフによるケアは、産業医や衛生管理者、保健師等など、専門家によるケアのこと。

セルフケア研修のコンテンツ企画やメンタルヘルス対策における個人情報の取り扱い、社外の相談機関との橋渡しなど、セルフケアとラインによるケアが効果的に実施されるようにサポートをしてくれます。

職場におけるメンタルヘルスケアは、自分たちだけで判断・解決しようとするのではなく、これらのメンタルヘルスのプロフェッショナルを適宜頼ることが肝要です。

事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアとは、外部の医療機関のような専門的なメンタルヘルスサービスを活用したケアのこと。

従業員が社内でのケアを望んでいなかったり、精神疾患等で専門的な治療を必要としていたりする場合に有効です。

また社内のリソースが足りない場合にも、事業場外資源によるケアを上手に活用することで従業員に必要なケアを実践できます。

職場におけるメンタルヘルス不調の原因

職場では、様々な出来事がきっかけでストレスが引き起こされます。

ここでは従業員がメンタルヘルス不調になってしまう原因として考えられるものを紹介します。

心理的ストレス要因

職場のストレス要因の大部分が、職場内での人間関係や業務上の責任といった心理的なものです。

特に従業員が自分の意見を自由に言いにくかったり、失敗に対して寛容でなかったりする企業風土は、心理的安全性が低く、ストレスも多くなりがちです。

このような状況を放置するとメンタルヘルス不調に陥る人が増え、長期的には従業員の離職率の増加、業務の効率低下、さらには職場全体の士気の低下を招く要因となります。

物理的ストレス要因

規定の就業時間内では終わらない業務量や、騒音、空調の不備など、物理的なストレス要因もメンタルヘルスを悪化させる要因となります。

従業員の快適さや健康に配慮しない職場環境では、従業員の心身に負担がかかり、また集中できなくなった結果作業効率が低下する原因となります。

そして作業効率が上がらない職場環境ゆえに仕事がなかなか終わらず、長時間働かざるを得なくなり、さらにストレス状態が悪化してしまうという負のループに陥ってしまいます。

メンタルヘルス対策のポイント

ここでは企業のメンタルヘルス対策のポイントを3段階に分けて具体的に解説します。

一次予防:未然に防ぐ

一段階目は、メンタルヘルス不調を起こす前にストレスを溜めないよう予防を行うことです。

個人で取り組めるストレスケアの情報提供やストレスマネジメント研修により、従業員のセルフケアの意識を高めます。

また組織側では労働環境の改善を行い働きやすい職場作りを推進しましょう。

二次予防:早期発見

二段階目の予防策として、メンタルヘルスに不調をきたした従業員を早期に見つけ、適切な処置を行うことが重要です。

ストレスチェック制度を導入し、従業員のストレッサーにいち早く気づける体制を整えるとともに、従業員側から自発的な相談を促せるよう相談窓口を設置したり、産業医との面談機会を儲けたりしましょう。

また近年は、従業員が心理カウンセラーなどに気軽に相談できるサービスも出てきています。

そのようなサービスも活用しながら、従業員が悩みを相談しやすい労働環境を作ることが重要です。

三次予防:復帰の支援

万が一、メンタルヘルス不調により従業員が休職してしまった場合は、不安や焦りを緩和させるための精神的なフォローや、職場復帰後に無理をさせないためのサポート体制を整備しましょう。

ここで重要なのは、メンタルヘルス不調の再発を防ぐために、従業員を第一に考えた慎重なケアを実施することです。

職場復帰支援プランの作成や実施、フォローをする際は、事業場内産業保健スタッフを中心に、管理監督者と休職中の労働者の間で密な連携を取りながら進めるとよいでしょう。

メンタルヘルス対策に効果的な研修

オンライン研修サービスのバヅクリが提供する「ストレスケア研修 〜ストレスとの付き合い方を学び生産性を安定させる〜」では、自分の心の癖と自分にとってのストレッサー要因を分析し、その対処方法について考えます。

ストレスとの向き合い方を学ぶことで、心の病を未然に防ぐとともに、楽しく前向きに仕事ができるようになります。

仕事や人間関係で悩みが尽きない若手社員の方におススメの研修プログラムです。

まとめ

企業の生産性を維持するためにも、従業員の心身の健康に気を付けることは非常に重要です。

バヅクリのストレスケア研修では、ストレスの気づき方、メンタルヘルスケアの手法を

知ることができます。

ぜひこの記事を参考に受講を検討されてみてはいかがでしょうか。