近年、人事担当者や経営者の方の間で、組織のあり方を考える上で注目度が上がってきている「ウェルビーイング(well-being)」。
言葉自体の認知度は上がってきているように思いますが、具体的な定義や組織づくりにどう活かすかについて熟知している方は少ないのではないでしょうか?

そこで本記事では、「ウェルビーイング」の意味や注目されている背景、既に「ウェルビーイング」に取り組んでいる企業の事例についてご紹介します。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングに取り組む企業

ウェルビーイングの意味・定義

ウェルビーイング(Well-being)とは、一般的には「幸福」「健康」といった言葉に翻訳されることが多く、近年では、ビジネスの場でもよく話題にされるようになっています。

厚生労働省は、ウェルビーイングを「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」であると定義しています。

ウェルビーイングの定義においてよく引用される世界保健機関(WHO)憲章の前文の一節では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」と記されています。

一般的には身体的、精神的、社会的に全てが満たされた状態のことを意味します。

ウェルビーイングの5つの領域

ウェルビーイングの概念として有名なものに、「PERMA」という指標があります。これは、「ポジティブ心理学」という自己実現理論を唱え発展させた、マーティン・セリングマンによって考案されたものです。
人が幸せであるためには、下記の5つの要素を満たしている必要があるというものです。

  • Positive Emotion:嬉しい、楽しいなどのポジティブな感情を持つこと
  • Engagement:時間を忘れて何かに没頭すること
  • Relationship:他者と良い関係を築くこと
  • Meaning:自分が生きていく意味を自覚すること
  • Accomplishment:なにかを達成すること

ウェルビーイングの5つの要素

また、ウェルビーイングを構成する要素は5つあると言われています。

  • Career Wellbeing:キャリアに対する幸福
  • Social Wellbeing:人間関係に対する幸福
  • Financial Wellbeing:経済的幸福
  • Physical Wellbeing:身体的な幸福
  • Community Wellbeing:コミュニティに関する幸福

ウェルビーイングが注目されている背景

ウェルビーイングの注目される背景

世界経済フォーラム2021(ダボス会議)

世界経済フォーラム(WEF)は、2020年6月に開催された2021年の年次総会「ダボス会議」で、テーマを「グレート・リセット」に設定しました。
グレート・リセットとは、現状の社会を構成する様々なシステムを、一旦全てリセットすることを意味します。

様々な環境や価値観の変化が生じる中で、過去に作られたシステムが最適ではなくなってきたり、問題が生じるケースが多く存在します。
そうした問題を解決するために、これまで当たり前であったシステムを白紙に戻し、まったく新しい仕組みを一からつくり出していくことにより、公平で持続可能な社会を実現して行こうという考え方です。

グレート・リセットのためには、人々のウェルビーイングについて再考する必要があると提言され、注目が集まりました。

OECD「Learning Framework 2030」

OECD(経済協力開発機構)は、新たな教育のフレームワーク「Learning Framework 2030」の中で、全人類の繁栄や持続可能性、well-being(ウェルビーイング)に価値を置くことが求められるであろうと明記しています。(参考:OECD Education 2030プロジェクトについて)

参考:OECD Education 2030プロジェクトについて

また、ウェルビーイングは、所得や財産、職業、給料、住宅などの物質的な資源へのアクセス以上のものを含む概念であり、健康や市民としての社会参画、社会的関係、教育、安全、生活への満足度、環境などの生活の質(QOL)にも関わるものであり、これらへの公平なアクセスは、社会全体の包摂的な成長を下支えするものであるとしています。

 働き方改革

日本においても国主導の働き方改革の推進により、企業は様々な価値観やライフスタイルを持つ従業員が働きやすい環境を整備する必要がでてきました。

企業は、どのような働き方や制度、ルールがあれば従業員が幸福に感じるか、やりがいを感じるかということを考えながら、制度や仕組みを検討することが求められるようになりました。

企業での取り組み

1. 味の素

味の素株式会社は人事部門が心身の健康(Health&well-being)の実現を目指し、様々な施策に取り組んでいます。
健康時には、予防を目的とした面談やストレスチェック、人間ドックなどを実施しています。
罹患時に対しては十分な休業制度や就業制限の他、メンタルヘルス回復プログラムを用意しています。

参考:味の素流「働き方改革」と「健康経営」

味の素株式会社 人事部

2. 楽天

2019年に経営陣にCWO(チーフウェルビーイングオフィサー)のポストを設け、個人、組織、社会の3つの側面から、楽天のウェルビーイングを高める取り組みを進めているます。

オンラインでのネットワーキングやコミュニティ活動で社員をつなげる取り組みや、自社事業と社会貢献をつなげた事例の共有を行ったり、既存の在宅勤務や時差出勤制度を活用し、在宅での柔軟な働き方の支援や、ウエルネスチームによるセミナー開催、チームミーティングでのストレッチ活動などの取り組みを実施しています。

参考:ニューノーマル時代に向けて、コレクティブ・ウェルビーイングを考えよう

楽天

3. ローソン

ローソン(社長自身がCSO(チーム・サステナビリティ・オフィサー:最高サステナビリティ責任者)、かつ健康ステーション推進委員会委員長となり、社内と顧客に向けて健康の取り組みや、健康経営を積極的に推進しています。

参考:従業員との関わり:健康経営

ローソン

企業がウェルビーイングを導入するメリット

1. 従業員価値提案の向上

従業員価値提案とは、EVP(Employee Value Proposition)とも呼ばれ、企業が従業員あるいは求職者に提示する価値のことです。

ウェルビーイングを推進することは、この従業員価値提案が高まります。

2. 離職防止

仕事へのモチベーションや働き方の満足度が上がると、会社への不満が小さくなり、より長く働いてくれるようになります。
離職が減少することは、採用コストが下がったり、せっかく教育した人材が流出する機会が減るため、会社にとって大きなメリットとなります。

3. 業績の向上

また社員の仕事に対するモチベーションがアップすると、仕事の効率が上がったり、パフォーマンスが向上します。
その結果、売上や利益など会社の業績向上にもつながります。

4. 優秀な人材の確保

ウェルビーイングを推進し、働きやすい職場環境や、良好な人間関係が整っている会社であると認知されるようになれば、そのような企業に就職したいと思う人も増えます。
その結果、優秀な人材を確保できるようになります。

ウェルビーイング推進をサポートするサービス

ご紹介したように、ウェルビーイングの推進は企業にとって様々なメリットをもたらしますが、実際に自社で推進するにはノウハウもなく不安であるという人事担当者や経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなときに頼りになるのが、バヅクリ株式会社が提供する「バヅクリ」です。

「バヅクリ」は、心理的安全性に基づき、企業内のコミュニケーションの量と質を高めながら、参加者同士の相互理解や絆を深め、国籍、性別、年齢、価値観などに関わらず、すべてのメンバーが個性や能力を発揮できるよう、意識・行動変容を促し、企業の組織力を強化することを目指したサービスです。

まとめ

成功したウェルビーイング

世界的にウェルビーイングの実現に向けた取り組みが活発に行われていますが、日本でのウェルビーイングの浸透はこれからと言えるでしょう。
多様化していく社会の中で、ウェルビーイングの実現に向けた取り組みを行うことは、個人の幸福度の向上だけではなく、企業の発展にも大きな影響を与えます。

これからの企業には、働く一人ひとりの多様性を認め、すべての人が生き生きと働くことができる環境づくりが求められます。