ウェルビーイングとは、心身の健康状態が良好で、社会的にも満たされた状態のこと。
社員にとって働きがいのある職場を整備する上で意識するべきこととして、近年このウェルビーイングの考え方が注目されています。
またウェルビーイングの向上に企業が取り組むことで、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも繋がると言われています。

しかし、ウェルビーイングの具体的な意味や、取り組み方がわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事ではウェルビーイングの意味や注目が集まる背景、また企業がウェルビーイングに取り組む際のポイントを解説します。

SDGsに繋がる「ウェルビーイング」とはなにか?

SDGsに繋がる「ウェルビーイング」

ウェルビーイングの意味

ウェルビーイング(Well-being)とは、直訳すると「幸福」「健康」という意味があります。
一般的には、身体的・精神的・社会的に良好で満たされている状態にあることを指します。

ウェルビーイングに関する調査を実施しているギャラップ社は、ウェルビーイングの構成要素を下記の5つに定義しています。

  • Career Wellbeing:個人が好むさまざまな活動に取り組み、納得感を得ること
  • Social Wellbeing:日々の生活において人間関係が良好なこと
  • Financial Wellbeing:自分の資産の収支状態を健全に管理・運用できること
  • Physical Wellbeing:心身が健康な状態であること
  • Community Wellbeing:地域のコミュニティに属し、つながっている感覚があること

またアメリカ人心理学者のマーティン・セリグマンは、ウェルビーイングを理論的に測るための5つの要素として「PERMA」という指標を提唱しています。

  • Positive Emotion(ポジティブ感情)
  • Engagement(仕事への自発的な従事)
  • Relationship(他者との良好な関係性)
  • Meaning and Purpose(仕事の意味や目的をモチベーション高く追求)
  • Achievement(達成感)

ウェルビーイングに関する詳しい説明を知りたい方はこちらの記事もチェックしてみてください。

ウェルビーイングに注目が集まる背景

ウェルビーイングに注目が集まる背景として、世界の共通目標であるSDGsとの関連性があります。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに達成するために掲げられた国連加盟193か国共通の目標のこと。
日本においても、政府や各業界団体、大企業などがSDGsへの取り組みを進めており、徐々にSDGsはビジネスの世界における「共通言語」となりつつあります。

SDGsで掲げられている17の目標の一つに、「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」、あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するというものがあります。
上記ではウェルビーイングは「福祉」と訳されますが、企業が人種・年齢・ジェンダーに関わらず働きやすい環境を整えることも、SDGsを達成するために企業ができる取り組みの一つです。
このように、ウェルビーイングに企業として取り組むことは、SDGsという世界の大きな潮流にも繋がっています。

SDGsに繋がるウェルビーイングに取り組む際のポイント

ウェルビーイングに取り組む際のポイント

ウェルビーイングに取り組むメリット

1. 健康経営

健康経営とは、従業員等の健康管理や健康増進の取り組みを「投資」と捉え、経営的な視点から戦略的に実践すること。
企業としてウェルビーイングに取り組むことは、健康経営の実践と深い関わりがあります。
従業員の健康を心身ともに促進することで、企業のイメージアップやリスクマネジメントにもつながります。

2. 生産性向上

ウェルビーイングにより従業員のやりがい・働きやすさが向上すると、従業員のモチベーションが高まります。
またウェルビーイングに配慮した職場を作ることで、従業員間の関係も良好になります。
そのためコミュニケーションが活発な組織になり、会社の生産性が向上します。

3. 離職率低下

離職の原因としてよく挙げられるものとして「労働環境の悪さ」や「人間関係」などがあります。
企業による従業員のウェルビーイング向上への取り組みは、まさにこれらの状況を改善するための取り組みです。
なのでウェルビーイングに取り組むことは、人材の定着率が高めることにも繋がります。

4. 人材確保

ウェルビーイングに積極的に取り組むことは、企業のブランドイメージの向上にも繋がります。
従業員にとって働きがいのある職場を整備することで、優秀な人材を獲得しやすくなるでしょう。

ウェルビーイングに取り組む際の注意点

1. 福利厚生

福利厚生を充実させることで、従業員の定着や採用強化に役立ちます。
福利厚生によって従業員のウェルビーイングを向上させたい場合は、運動・食生活・レジャーなど、個人のライフスタイルを豊かにさせるようなサポートを充実させましょう。
また、託児所の設置など、あらゆる人が働きやすくなるサポートを行うことも有効です。

2. コミュニケーション改善

コミュニケーションが円滑になると、職場の人間関係の悩みが解消されるため、従業員のウェルビーイング向上につながります。
オフィスにリフレッシュスペースを設置したり、定期的なイベントを行ったりすることで、コミュニケーション促進に繋がります。
また近年はリモートワークの普及によってコミュニケーションが少なくなっているとも言われています。
オンラインのコミュニケーションを活性化させるためには、SNSやチャットツール、バーチャルオフィスなどの利用も検討してみましょう。

3. 労働環境の見直し

長時間残業是正をしたり、柔軟な働き方を促進したりすることで、従業員のウェルビーイングは向上します。
労働環境の見直しの第一歩として、労働時間の状況を把握する仕組みを導入することをお勧めします。
またリモートワーク環境や時短勤務制度などを整えることで、柔軟に働ける環境づくりを目指しましょう。

4. メンタルヘルス

従業員のメンタルヘルス不調は、個人のウェルビーイングを低下させるだけでなく、労働損失や生産性の低下も引き起こす重要な課題です。
厚生労働省の推奨するメンタルヘルスケアとして、セルフケアとラインケア(管理監督者による部下のメンタルヘルスケア)があります。
会社のリーダー・管理職にメンタルヘルスケア研修を行い、メンタルヘルスに関する知識をつけて実践してもらうことで、会社全体のウェルビーイングの向上につながります。

ウェルビーイングへの取り組み事例

ウェルビーイングの事例

海外企業のウェルビーイングへの取り組み事例

1. グーグル

Googleでは、チームの生産性を高める取り組みとして「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれる調査を行いました。
調査の結果「心理安全性」がチームの生産性に最も重要なことが分かった同社は、チームの心理安全性を高めるために、リーダーとメンバーが定期的に面談を行い、仕事の悩みや今後のキャリア、目標などについて対話を行っています。

2. ユニリーバ

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスではコロナ禍以前の2016年から、働く場所や時間の制限をなくして柔軟な働き方ができる「WAA」(ワー、Work from Anywhere and Anytime)という施策を行っています。
WAAにより多くの従業員が生産性向上や幸福度の上昇を実感しており、ウェルビーイング向上に大きく寄与しています。

3. IKEA

IKEAでは、ジェンダー平等や多様性は優れたアイデアやサービスを生み出す源であるとして、ウェルビーイングに取り組んでいます。
理事会や委員会のメンバーを平等な配分にすることで男女の雇用機会の均等を図る、性的指向や性同一性に関係なく働ける職場環境づくりを進めるなど、さまざまなジェンダー・指向の人にとって働きやすい職場を整えています。

日本企業のウェルビーイングへの取り組み事例

1. ロート製薬

製薬会社大手のロート製薬では「Well-being経営」を掲げ、健康経営を推進しています。
従業員の健康増進のため、毎日の歩数や早歩き時間などに応じてポイントが貯まる健康コイン「ARUCO(アルコ)」を導入しています。
また多様で柔軟な働き方ができる環境整備や、複業を後押しする社外チャレンジワーク制度や社内ダブルジョブ制度などを行っています。

2. 楽天

IT企業大手の楽天では、創業メンバーの小林正忠氏が、CWO(チーフ・ウェルビーイング・オフィサー)として、ウェルビーイング向上に取り組んでいます。

  • カフェテリアやフィットネスなど健康を支える事業を行う「ウェルネス部」
  • 従業員と組織のつながりを高める「エンプロイーエンゲージメント部」
  • 情報発信などを行う「サスティナビリティ部」

といった3つの部署を設け、従業員のウェルビーイングをサポートしています。

3. 味の素

食品会社の味の素では、従業員が自分の健康状態を確認できる専用ウェブサイト「My Health」を設置し、従業員の健康状態の把握と改善に取り組んでいます。
また「全員面談」を掲げ、個々の状態に合わせたフィジカルヘルス・メンタルヘルスをサポートしています。
また、時間帯や場所を選ばない「どこでもオフィス」の導入や、所定労働時間の短縮などを行い、柔軟な働き方を積極的に取り入れています。

4. SOMPO

SOMPOグループでは、社員・家族の心身の健康を重視するという「SOMPOグループ健康宣言」を発表し、取り組みを進めています。
具体的には健康保険組合と連携し、従業員の健康状態に合わせた取り組みの実施、労働時間の適正化、ウェアラブル端末による健康状態のデータ収集などを行っています。

まとめ

本記事ではウェルビーイングの意味や注目が集まる背景、また企業がウェルビーイングの向上に取り組む際のポイントを解説しました。
ウェルビーイングに取り組むことで、従業員個人の幸福度を上げるだけではなく、企業の生産性向上にも寄与します。
またSDGsにも繋がる取り組みとなるので、ぜひ取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。