メンター制度とは、直属の上司とは別の社歴の近い先輩社員が新入社員や若手社員のサポートを行う制度で「メンター制度を導入したものの、メンターによって支援の質が大きく違う」「面談が雑談で終わってしまう」という声は、人事担当者からよく聞かれます。こうした状態を防ぎ、メンターが安心して後輩支援に踏み出せるようにする取り組みが、メンター研修です。
本記事では、メンター研修の目的やカリキュラム例、メンタリングと他の育成手法との違い、研修効果を高めるポイント、提供会社までを人事担当者向けに整理します。これから制度を立ち上げる場合にも、すでに運用している制度を見直す場合にも役立つ内容です。
メンター制度とメンター研修の関係

メンター研修を理解するには、まず土台となるメンター制度との関係を押さえておくと分かりやすくなります。ここでは制度の仕組みと、その中でメンター研修が担う役割、そして研修が求められる背景を順に整理します。
メンター制度の基本的な仕組み
メンター制度は、直属の上司とは別に、社歴の近い先輩社員が新入社員や若手社員のサポートを担う仕組みです。サポートする先輩社員を「メンター」、サポートを受ける社員を「メンティ」と呼びます。
実務を通じて仕事を教える「OJT(On-the-Job Training)」とは性質が異なり、メンター制度では精神面の支えやキャリアの相談が中心になります。担当するのは別部署の先輩であることが多く、評価や指示の関係を持たない「斜めの関係」だからこそ、メンティは率直に悩みを打ち明けやすくなります。
メンター研修が果たす役割
制度の枠組みを整えても、メンターがやり方を手探りのまま面談に臨めば、「何を話せばいいのか分からない」と戸惑い、雑談だけで時間が過ぎてしまいます。メンター研修は、こうした不安を解消し、メンターが支援の型を持って臨めるようにする場です。
具体的には、メンターの役割の理解から、傾聴や質問といった対話スキル、フィードバックの仕方までを扱います。研修を挟むことで、誰が担当しても一定の水準で支援できる状態に近づきます。
メンター研修が求められる背景
若手の早期離職は、多くの企業で長く続く悩みです。厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)によると、大学卒業者の就職後3年以内の離職率は33.8%と、3割を超える水準が続いています。
背景には、人間関係になじめないまま「相談できる相手がいない」と孤立してしまうケースがあります。メンター制度はこの空白を埋める打ち手として注目され、制度を機能させる土台としてメンター研修の必要性が高まっているのです。
公的な手引きも整っており、厚生労働省の女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル紹介マニュアルでは、導入の意義から効果検証の方法までが体系的にまとめられています。
メンター制度を導入するメリットと注意点

メンター制度には多くの利点がある一方で、運用上の注意点も知っておく必要があります。研修の設計に入る前に、制度がもたらす効果と、つまずきやすいポイントの両面を確認しておきましょう。
新入社員・若手社員の定着とモチベーション維持
新入社員や若手社員の多くは、新しい職場になじめるか不安を抱えています。周囲との関係がまだ浅く、悩みがあっても「こんなことを相談していいのかな」と一人で抱え込みがちです。
気軽に相談できるメンターがいれば、不安を早い段階で解消でき、モチベーションの維持や早期離職の防止につながります。別部署の先輩がメンターを務める場合は、部署をまたいだつながりが生まれ、組織全体のコミュニケーションが活性化する効果も期待できます。
メンター自身と組織にもたらす効果
人に教えたり支えたりする経験は、メンター本人の学びにもなります。自分のキャリアを見つめ直したり、メンティの多様な考え方に触れたりするなかで、仕事への責任感が育っていきます。
中堅社員や幹部社員がメンター役を担う場合、目標達成のプレッシャーから少し離れ、メンティとの対話がリフレッシュの機会になることもあります。結婚や出産などのライフイベントを経た社員が同じ経験を持つ後輩を支えることで、女性活躍推進の後押しにもなります。
相性・負担・質のばらつきという課題
一方で、メンターとメンティの相性が合わないと、双方がストレスを抱え、かえって関係がこじれてしまうことがあります。両者の特性を見極めたうえで組み合わせを考えることが欠かせません。
メンターは通常業務に加えて支援を担うため、負担が増えがちです。任せる範囲をあらかじめ整理しておかないと、「自分の仕事が回らない」と疲弊してしまいます。
また、メンターのスキルや関わり方によって支援の度合いに差が出ます。この質のばらつきをならす役割を担うのが、メンター研修です。
メンター研修を実施する目的

研修を組み立てる前に、「何のために実施するのか」をはっきりさせておくと、内容に芯が通ります。メンター研修の目的は、大きく次の3つに整理できます。
メンターに期待される役割の腹落ち
研修でまず押さえたいのは、「メンターは何をする人なのか」という共通認識です。OJT担当と混同し、業務のやり方を教える役だと思い込んだまま始めてしまうと、メンティの相談に乗る場面で戸惑いが生まれます。
メンターに期待されるのは、業務指導そのものではなく、メンタル面の支えとキャリアの相談相手としての関わりです。この線引きを最初に共有しておくと、メンターは迷わず動けるようになります。
管理職になる前にマネジメントの感覚をつかめる機会でもあるため、メンター本人にとっての意味を伝えると、前向きに取り組んでもらいやすくなります。
制度のルールと支援体制の共有
メンター研修は、制度の運用ルールをメンターに伝える場でもあります。面談の頻度や1回あたりの時間、活動の報告先、業務時間外に対応する場合の扱いなど、決め事を明確にしておくと、メンターは安心して動けるでしょう。
あわせて、メンターが困ったときに頼れる窓口や、相性が合わない場合の相談先も共有します。「自分一人で抱えなくていい」と分かることで、メンターの心理的な負担はぐっと軽くなります。
ランチ費用の補助やメンター同士の情報交換会など、会社からの支援策を具体的に示すと、制度への納得感も高まるでしょう。
メンティを支えるスキルの習得
研修の中心となるのが、メンティを支えるための実践的なスキルです。相手の話にじっくり耳を傾ける傾聴力、考えや気持ちを引き出す質問力は、面談の質を大きく左右します。
メンタルの不調に気づくための基礎知識も扱っておくと、早い段階で適切な窓口につなげられます。これらは一度説明を聞くだけでは身につきにくく、ロールプレイなどの演習を通じて練習すると定着しやすくなります。
スキルを体系立てて学ぶことで、経験や勘に頼らずに後輩を支えられるようになります。
メンタリングと他の育成手法の違い

メンタリングは、似た言葉と混同されやすい手法です。研修で正しく伝え、メンターが関わり方を取り違えないためにも、OJTやコーチングとの違いを押さえておきましょう。
OJT・ティーチングとの違い
メンタリングは、メンターとメンティが信頼関係を築きながら、メンティ自身が課題に向き合う力を引き出す人材育成手法です。知識や手順を教え込むOJTやティーチングとは、目的も関わり方も異なります。
OJTやティーチングが「正解を伝える」関わりだとすれば、メンタリングは「本人が答えにたどり着くのを支える」関わりに近いといえます。扱うテーマも、業務の進め方にとどまらず、キャリアや働き方の悩みにまで広がります。
3つの手法の違いを整理すると、次のようになります。
| 手法 | 主な目的 | 関わり方 | 扱うテーマ |
| メンタリング | 自律的な成長の支援 | 対話で引き出す | キャリア・悩み全般 |
| OJT | 業務の習得 | 実務の中で教える | 担当業務 |
| ティーチング | 知識の伝達 | 答えを教える | 特定の知識・スキル |
コーチングとの違いと活かし方
コーチングは、質問を通じて相手の中にある答えや意欲を引き出す手法で、メンタリングと相性が良いことで知られています。上下関係を意識せず、目標に向かって伴走する姿勢が共通しています。
違いを挙げるなら、コーチングが目標達成に焦点を当てるのに対し、メンタリングはキャリアや精神面まで含めて長い目で寄り添う点です。メンター研修にコーチングの問いかけ方を取り入れると、面談で気づきを促しやすくなります。
両者をうまく組み合わせることで、メンティが自分で考えて行動する後押しができます。
メンター研修のカリキュラム例

メンターに求められるのは、支援する側としての心構えと、メンティに寄り添う対話の技術です。ここでは、実際のメンター研修で扱われることの多い流れを、カリキュラム例として順に紹介します。
メンターの役割理解
最初に、座学やワークを通じてメンター制度の概要や目的、意義を共有します。ここでメンターが「自分は何を期待されているのか」をつかんでおくと、その後の学びが自分ごとになります。
役割があいまいなまま進むと、面談で何を話すべきか迷いやすくなります。冒頭で立ち位置をはっきりさせることが、研修全体の土台になります。
よいメンターに必要なマインド
ワークを交えながら、よいメンターとはどのような存在か、どんなスキルやマインドを備えているのかを掘り下げます。自分のこれまでの経験を棚卸しすることで、メンティの相談に答えるヒントが見つかります。
過去に自分が先輩に支えられた場面を思い出すと、「あのとき助かった」という実感が、そのまま関わり方のお手本になります。
メンタリングの進め方
メンタリングは、信頼関係を土台にメンティの主体性を引き出す手法です。ここでは、コーチングやOJTとの違いを振り返りながら、面談を進めるうえでの留意点を確認します。
初回はお互いを知る自己紹介から始め、回を重ねるごとに踏み込んだテーマへ移っていく、といった段階の踏み方も押さえます。
傾聴力・質問力の習得
メンターに欠かせないのが、相手の話に耳を傾ける傾聴力と、気持ちや考えを引き出す質問力です。うなずきや相づち、相手が話しやすい間の取り方など、対話の姿勢を演習で身につけます。
「それで、どう感じたの」と気持ちに焦点を当てる問いを挟むと、メンティは自分の本音に気づきやすくなります。
モチベーションを高めるフィードバック
メンターの役割の一つに、メンティへのフィードバックがあります。相手の心情をくみ取りながら、前向きな気持ちを引き出す伝え方を、ワークを通じて学びます。
できていない点をただ指摘するのではなく、まず努力や変化を認めたうえで次の一歩を一緒に考えると、メンティは受け止めやすくなります。
実践ケーススタディ
最後に、実践的なケーススタディで学びを総仕上げします。「ネガティブな発言が多いメンティにはどう接するか」「向上心の強いメンティにどんな課題を示すか」など、さまざまなタイプを想定して対応を考えます。
正解のない場面を事前に経験しておくと、実際の面談で慌てずに向き合えるようになります。
メンター制度を実施する際のポイント

制度を社内に根づかせ、効果的に回していくために押さえたいポイントを整理します。
メンターとメンティのマッチング
制度を機能させるうえで大切なのが、メンターのコミュニケーションスキルとメンティとの相性です。面倒見のよい人がメンターにつくと、関係が回りやすくなります。一方で、お互いの特性やスタイルが違いすぎると、かみ合わずに支援が難しくなることもあります。
メンターの選び方には、運営側が指定する方法と、希望者を募る方法があります。社内の人材の特性を見極めたうえで、相性のよい組み合わせを設計するのがおすすめです。
メンターに求める役割の明確化
制度を始める際には、メンターに何を求め、どこまでを担ってもらうのか、負担の範囲を整理しておきます。期待される役割をあらかじめ示しておくと、メンターは「どんな支援をすればいいのか」をイメージしやすくなります。
メンターの上司とも役割を共有しておくと、現場の協力や理解を得やすくなります。
メンターの教育と連携体制の構築
後輩を支えるメンターには、傾聴力や受容力、キャリアへの理解が求められます。こうした力を養うためにも、メンター研修を通じた教育が役立ちます。
制度の運用には、人事部だけでなく経営層や各部門の協力が欠かせません。目的や意義を社内へ丁寧に伝え、納得を得ながら進めることで、制度は着実に根づいていきます。
メンター研修の効果を高めるポイント

研修は実施して終わりではなく、その後の運用しだいで定着度が変わります。学びを現場に活かし続けるために意識したいポイントを紹介します。
メンター同士が経験を共有する場
研修は一度実施して終わりにするより、メンター同士が学び合える場を継続して設けると効果が高まります。担当して感じた手応えや戸惑いを持ち寄ると、「自分だけではなかった」と安心でき、対応の引き出しも増えるでしょう。
他のメンターがうまくいった工夫は、そのまま自分の面談に取り入れられます。定期的な情報交換会やフォロー研修を組み込むと、メンター全体のスキルが底上げされていきます。
孤立しがちなメンターにとって、横のつながりは支援を続ける支えにもなります。
研修後のフォローと効果の振り返り
研修の成果は、実施直後だけでなく時間をおいて確かめることが大切です。3か月後や半年後に面談の状況を振り返ると、定着している点と、つまずいている点が見えてきます。
メンティの定着率や面談の継続状況、メンター本人の手応えなどを定点で見ていくと、制度の改善点が具体的に浮かびます。うまくいかない原因が研修内容にあるなら、次回のカリキュラムに反映できます。
やりっぱなしにせず振り返る習慣をつけることで、制度は回を追うごとに磨かれていきます。
メンター研修を提供している会社

研修を社内だけで企画・運営するには、相応の時間と人手がかかります。運営のノウハウがない段階では、外部サービスを活用すると社内の負担を抑えられます。ここでは、メンター研修を提供している会社を紹介します。
バヅクリ株式会社
おすすめサービス「令和の研修」
研修を内製する場合、企画から実施までに、時間や人など多くのコストがかかります。
研修を実施する際は社外サービスを活用すると、社内負担を大幅に削減できます。
また、研修運営のノウハウがない場合も、まずは社外サービスを活用するようにしましょう。

バヅクリが提供する『令和の研修』は、アクティブラーニングによる高い学習定着とアクションプランのコミットメントによる行動変容を促進するように設計されており、また講師を務めるのは業界のプロMCのため、深い学びを得るだけでなく、やらされ感のない「楽しい」と感じる研修の実施が可能です。参加者満足度は97%を誇ります。
企画から運営まですべてお任せできるので社内で実施する場合と比較して社内工数を90%も削減できます。
外部サービスの一つに、バヅクリの「令和の研修」があります。アクティブラーニングによる高い学習定着と、行動計画への落とし込みによる行動変容を促す設計が特徴です。
講師は経験豊富なプロが務め、学びの深さと「楽しい」と感じられる場づくりを両立しています。企画から運営まで任せられるため、社内で実施する場合と比べて工数を大きく抑えられます。
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まとめ
メンター制度は、悩みを抱え込みがちな新入社員や若手社員にとって、安心して相談できる相手をつくる仕組みです。ただ、制度を用意するだけでは、メンターによって支援の質に差が出てしまいます。
その差をならし、誰が担当しても一定の水準で後輩を支えられるようにするのが、メンター研修の役割です。目的やカリキュラムを整理し、研修後のフォローまで設計することで、制度は着実に機能していきます。
自社で一から組み立てるのが難しい場合は、外部サービスの活用も選択肢に入れながら、無理なく続けられる形を探してみてください。

