近年、企業経営において注目されている「ダイバーシティ&インクルージョン」。
本記事をご覧の皆様の中にも、自社でダイバーシティ&インクルージョンの推進を担当されているという方もいらっしゃると思います。
しかし、社内でダイバーシティ&インクルージョンの推進を実践する際には、様々な課題や障壁が存在します。

本記事では、ダイバーシティ&インクルージョンを効率的に推進するためのヒントをお伝えしていきます。

ダイバーシティ&インクルージョンの進め方

「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、「人材の多様性(=ダイバーシティ)を認め、受け入れて活かすこと(=インクルージョン)」です。

企業や組織が、多種多様な人が互いの考え方の違いや個性を受け入れながら、個性や能力に応じて活躍できる環境を整え、組織としても成長するという考え方を指します。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

経済産業省が発表した「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」には、ダイバーシティを推進する実践のための7つのアクションが示されてます。

ダイバーシティ2.0行動ガイドラインは、経済産業省による「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」で定められました。

7つのアクションは、以下です。

①経営戦略への組み込み

経営トップが、ダイバーシティが経営戦略に不可欠であること(ダイバーシティ・ポリシー)を明確にし、KPI・ロードマップを策定するとともに、自らの責任で取組をリードする。

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン

1つ目のアクションは、経営のトップが、性別や国籍、人種に関係なく、能力のある人材がその能力を十分に発揮し、活躍できる環境が必要であることを認識し、それを明言することです。

また、女性比率や国際人材比率、女性管理職人数・比率などのKPIを設定し、ダイバーシティ推進のロードマップを整理、開示します。

会社としてダイバーシティに本気で取り組む姿勢を内外に示すことが、ダイバーシティ&インクルージョン推進の第一歩となります。

②推進体制の構築

ダイバーシティの取組を全社的・継続的に進めるために、推進体制を構築し、経営トップが実行に責任を持つ。

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン

2つ目は、トップ自らがダイバーシティ推進部署・組織の長となって取り組みを推進したり、トップ直轄の部署を立ち上げるなど、ダイバーシティの推進体制を構築し、そこにトップが責任を持っている状態にすることです。

経営トップがダイバーシティ経営の「プロジェクトリーダー」として、取組の実行に責任を持つことが重要であると明記されています。

経営陣のダイバーシティへの取組の優先順位を高めるために、ダイバーシティの推進を経営幹部の業績評価指標の 1 つとすることもこの項目に記載されています。

③ガバナンスの改革

構成員のジェンダーや国際性の面を含む多様性の確保により取締役会の監督機能を高め、取締役会がダイバーシティ経営の取組を適切に監督する。

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン

経営を監督・モニタリングするため、取締役会構成員を多様なバックグラウンド・業界から選ぶとともに、女性及び外国人も起用するなどして取締役会の監督機能の向上を図り、ダイバーシティ推進への取り組みの監督も行うようにすることが3つ目です。

ダイバーシティに関する取り組みの進捗を報告することや、ダイバーシティに関する課題の議論なども記載されています。

④全社的な環境・ルールの整備

属性に関わらず活躍できる人事制度の見直し、働き方改革を実行する。

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン

4つ目は人事制度の見直しと働き方改革の実行で、年功序列的な人事システムなど、特定の属性に有利な仕組みを見直し、より成果に基づいた評価や報酬体系とすることや、裁量労働勤務、フレックス勤務、在宅勤務等の制度整備や、働き方の柔軟化を進めることが挙げられています。

様々なバックグラウンドを持った人たちが公平に扱われ、家族や属性の事情による不利益・不公平をできる限り少なくすることが求められています。

⑤管理職の行動・意識改革

従業員の多様性を活かせるマネージャーを育成する。

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン

各部門の管理職に、経営戦略上のダイバーシティの意義について理解を促し、多様性を活かせるマネジメントスキルを提供するトレーニングを実施すること、管理職自身への評価や、部下に対する人事評価・ジョブアサインメントの基準に、ダイバーシティの要素を入れ、管理職による多様な人材のマネジメントを促進することなどのマネージャー育成が5つ目のアクションとして挙げられています。

管理職に対して、異文化人材との働き方やコミュニケーション等の具体的な手法等に関するトレーニングを行うことや、管理職の評価指標や選定要件にダイバーシティの要素を盛り込むことが重要です。

オンラインで実施可能なダイバーシティ研修

出典:バヅクリ

バヅクリ株式会社が提供する、オンラインダイバーシティ研修では、多様性を理解して成果を出せる組織をつくるための考え方・コミュニケーション手法・マネジメント手法を学ぶことができます。

人種や性別などを元にした「統計学的多様性」のほか、考え方・捉え方などの違いである「認知的多様性」についても学びます。
また、多様な人材を登用するだけに終わらず、個々の違いを受容しながらひとつの組織としての力を発揮する「ダイバーシティ&インクルージョン」や、意見の相違から目をそらさず、建設的な相互理解を推進する「シナジーコミュニケーション」など、一歩進んだ「ダイバーシティ研修」を提供しています。

⑥従業員の行動・意識改革

多様なキャリアパスを構築し、従業員一人ひとりが自律的に行動できるよう、キャリアオーナーシップを育成する。

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン

例えば、女性が家事・育児と仕事を両立できるように「仕事を休むため」の両立支援だけでなく、「働き続けるため」の両立支援となるように社内の制度や仕組みを見直し、構築したり、勤続年数を問わず、個々人の専門を活かして能力を存分に発揮できる多様なキャリアパスを整備・提示しているなど、ダイバーシティが推進されるためのキャリアパスの提示を行うことが6つ目のアクションです。

また、従業員へのキャリアサポート体制を構築して、一人ひとりが自分のキャリアにオーナーシップを持ってキャリアを作っていくことができる体制・仕組み作りも含まれています。

⑦労働市場・資本市場への情報開示と対話

一貫した人材戦略を策定・実行し、その内容・成果を効果的に労働市場に発信する。
投資家に対して企業価値向上に繋がるダイバーシティの方針・取組を適切な媒体を通じ積極的に発信し、対話を行う。

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン

自社のダイバーシティの実現、ロードマップ達成に向けて、どのような人材が必要であるかの人材構成を整理し、自社が獲得したい人材に訴求できるよう、採用手段・時期等の工夫により、上記の人材戦略を効果的に発信し、情報の受け取り手とのコミュニケーションを深めることが7つ目のアクションです。

ジョブディスクリプションの明確化や、権限や職務内容、担当範囲等の情報を事前発信、もしくは面接時・入社前に伝えることや、多様な人材にアプローチするため、新卒一括採用だけでなく通年採用や中途採用の拡大もここに挙げられています。

推進の際に生じる問題点

ダイバーシティ推進を議論する様子

続いて、ダイバーシティ推進の際に生じやすい問題についてご紹介します。
生じうる問題を予め認識しておくことで、実際に問題が生じるのを避けたり、素早く対処できるようになるでしょう。

コミュニケーションの問題

多様な人材を受け入れ始めた当初は特に、コミュニケーションの問題が生じやすくなります。
ダイバーシティの推進の一貫として入社した人材は、多種多様な価値観や考え方を持っており、既存の価値観・考え方とコンフリクトしやすいためです。

この問題に対処するためには、既存社員も新入社員も全社員に対してダイバーシティに対する教育・研修を行い、経営トップが差別や排他的な考え方を排除するメッセージを発信し続けることが重要です。

チームワークやパフォーマンスが一時低下する

ダイバーシティが推進され、多種多様な人材が入ってくると、同様の価値観、類似した考え方をする人材だけが集まっているときには通じていた暗黙のルールが通じなくなり、意思決定までに要する時間が増大します。
最悪の場合、チームが崩壊する恐れもあり、そうした混沌期間を乗り越えるまではチームワークやチームのパフォーマンスが低下する可能性があります。

そのような状態に陥らないためにも、オープンコミュニケーションを今までよりも意識的に行っていきましょう。
業務に関係のないコミュニケーションが促進され、相互理解が進むことでこうした問題が生じにくくなります。

待遇・評価に関する問題

多様な人材や、様々な働き方の人材が増えると、待遇や評価に不公平感が生まれかねません。

できる限り事前に職務や役割、給与体系や評価制度を明確に定義し、十分に周知して理解を求める必要があります。
最初から完璧な人事体系や評価制度を作ることは難しいため、問題が生じたら都度柔軟に対応していくことが求められます。

マネジメントのポイント

ダイバーシティマネジメントのポイント

最後に、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するにあたって生じる様々な問題に対処するための、マネジメントのポイントについてご紹介します。

経営トップのメッセージ

ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」のアクションの1つ目にも記載されていますが、ダイバーシティ&インクルージョンを実践する際は、経営トップの強い意志と責任、そして従業員に対するメッセージの発信が極めて重要です。
一度発信して終わりではなく、継続的に強い意志をもったメッセージを、社内外に対して打ち出すことが重要です。

意思決定の仕組み

少数派の意見が理不尽に却下・排除されてしまうと、少数派の従業員が発言をためらったり、モチベーションが下がったりするなどの悪影響が生じます。
こうした事態を避けるためにも、全社的、そして各部署やプロジェクトベースでも意思決定のプロセスを構築、透明化する必要があります。
管理職やチームのリーダーにも高度なファシリテーション能力が求められます。

混乱・衝突への対応

自身の考え方や価値観に固執し、新しい人材の意見を受け入れない社員が現れ、組織内に混乱や衝突が起こることは想定しておく必要があります。

マネジメント層は、的確かつ迅速に対応できるよう、相談窓口の設置やエスカレーションフローを整備しておくなど、事前に対策を講じておく必要があります。

ダイバーシティ&インクルージョン推進徹底解説セミナー動画

ダイバーシティ&インクルージョン推進徹底解説セミナー動画

ウェルビーイングを達成する方法として、組織のダイバーシティを促進することが考えられます。
バヅクリが開催した、D&I推進のための組織立ち上げや具体的な施策、失敗事例について、D&I第一人者がノウハウを公開する対談型ウェブセミナーについて動画を公開しておりますので、よろしければ御覧ください。

まとめ

ダイバーシティ推進の計画

ダイバーシティインクルージョンを推進すると、性別や人種などの可視的なものだけでなく、性格や考え方など不可視的な違いがある職場になります。特にマネジメント層にとっては非常に困難な環境となりますが、価値観を受け入れたり、評価項目の設定など違いを受け入れるマネジメントを習得して実施していくことが重要となります。