現代のビジネス環境において、企業にとって最も大切な資産は従業員であることは言うまでもありません。中でも、若手社員は企業にとって将来を担う存在であり、彼らの育成と定着は特に重要です。
しかし、近年では、若手社員の離職が増加しており、その要因の一つとして「やりがいの欠如」が挙げられています。
本記事では、若手社員の離職を減らすために、ワークエンゲージメントの重要性、仕事にやりがいが感じられない理由と、その対策について考えていきます。
目次
ワークエンゲージメントとは
ワークエンゲージメントの定義
ワークエンゲージメントとは、仕事に対してのポジティブで充実した心理状態を指します。ワークエンゲージメントはオランダのユトレヒト大学の Schaufeli 教授らが提唱した概念です。
ワークエンゲージメント3つの要素
ワークエンゲージメントは、「熱意」「没頭」「活力」の3要素が満たされている心理状態とされています。
それぞれの定義は以下です。
- 熱意:仕事に誇りや、やりがい、挑戦しようという意欲を感じている状態
- 没頭:仕事にのめり込んでいる感覚や、時間を忘れるほど熱心に取り組んでいる状態
- 活力:仕事に費やす努力をいとわない気持ち、困難な状況に直面した時の粘り強さなどがある状態
若手社員のワークエンゲージメントを高めるメリット
少子高齢化が進み労働人口が減少し、ひとつの企業に長年勤めつづけることが当たり前でなくなった今、優秀な人材の流出を防ぐためにも若手社員のワークエンゲージメントを高める必要があります。ここでは若手社員のワークエンゲージメントを高めるメリットを解説していきます。
離職率の低下
仕事に熱中し、没頭している状態であれば、転職する動機が高まりにくく、離職率が低下することが考えられます。
若手社員の定着という意味において、給与などの金銭的なインセンティブよりも高い効果を与える可能性もあります。
モチベーション向上
ワークエンゲージメントが高い状態は、働くことが楽しく、仕事に集中してエネルギーを注いでいる状態です。
若手社員のモチベーションが高まると、生産性も向上し、組織全体のパフォーマンスや業績の向上につながるでしょう。
メンタルヘルスの健全化
ワークエンゲージメントが高まると、熱意や活力が高まっている状態のため、ストレスを感じることが少なくなります。
若手社員のメンタルヘルスが健全に保たれ、ストレスに起因する精神疾患や体調不良が減少します。
ワークエンゲージメントの詳細については、以下の記事をご覧ください。
若手社員がやりがいを感じられない理由
仕事にやりがいを感じられていない状態が続くと、ワークエンゲージメントも低下してしまいます。では若手社員はどういった理由で仕事にやりがいを感じていないのでしょうか。
仕事に楽しさを見いだせていない
若手社員が仕事の楽しさを見いだせていない場合、モチベーションが低下し、仕事に対する興味や関心が薄れる可能性があります。
また、楽しさを感じられないことが原因で、ストレスや過労が蓄積され、健康や精神的な面で悪影響を及ぼすこともあります。
その結果、やがて仕事に対する意欲が失われ、離職するというケースも珍しくありません。
若手社員は、今後長期的に企業で働くためにも、仕事の楽しさややりがいを見つけることが重要です。
職場の人間関係が悪い
職場の人間関係が悪いと、ストレスや不安感が増し、やりがいを感じづらくなります。人間関係が原因で退職するケースも少なくありません。
職場でのコミュニケーションの改善や、上司や同僚との話し合いなどを通じて、人間関係を改善することが必要です。
賃金・報酬が適正でない
仕事に対して適正な報酬を得られない場合にも、やりがいを感じづらくなります。
給与面や待遇面が不満である場合には、給与の見直しや福利厚生の充実など、報酬面の改善が求められます。
ストレスや過労
ストレスや過労は、若手社員の離職原因として大きな要因です。適正な時間内での業務ができていない場合や、業務量が多すぎて負荷が大きい場合、ストレスや過労につながります。
そのため、労働環境の改善が求められます。
また、定期的な健康診断やメンタルヘルスケアの提供、ストレスチェックの実施なども、若手社員のストレスや過労を減らすための重要な施策となります。
指導者やマネージャーの指導力不足
指導者やマネージャーの指導力不足も、若手社員がやりがいを感じられない原因の1つです。
若手社員が育成されずに放置されている場合や、的確なフィードバックがなく、やりがいを感じられない場合があります。
そのため、指導者やマネージャーには、若手社員を適切に育成し、成長を促す役割が求められます。
具体的には、定期的な面談や目標設定、フィードバックの提供などが必要です。
成長の機会が限られている
若手社員は、将来の成長やキャリアアップに期待している場合が多いです。しかし、成長の機会が限られている場合、やりがいを感じられなくなることがあります。
そのため、若手社員には、キャリアアップの可能性を示すことが求められます。
具体的には、社内研修や教育制度、外部研修の提供などが挙げられます。
また、昇進や役職昇格などのキャリアアップの機会も、若手社員がやりがいを感じるための大きな要素です。
やりがいを構成する要素とは
やりがいやモチベーションを感じる要素には、大きく2種類あります。
内発的動機と外発的動機
内発的な動機とは、自身の内面の興味・関心(本能的な欲求)に基づいて発生するモチベーションのことです。外部からの誘因に関係なく、自分自身からのみ発生します。
自身の満足、学びたいことを身に着けるために働くなどがそれに当てはまります。
一方外発的な動機とは、報酬・懲罰といった外部要因によって発生するモチベーションのことです。給料がもらえるから働く、などがそれに当てはまります。
自身の内面から発する内発的動機づけとは、モチベーションの源泉が異なります。
内発的動機けの重要性
企業にとって、社員の内発的動機は非常に重要です。
その理由の一つは、内発的動機付けは自身の興味関心、やりがいなど自己成長につながる動機づけであるため、動機が強く、モチベーションが持続しやすいという点が挙げられます。
また2つ目はとしては、外発的動機づけの場合は外部要因によりモチベーションが左右されるという点があります。
何かしらの事情で報酬が減少したり、長期間の間増加することができないことでモチベーションが維持できないといったケースも十分に考えられ、また他社がより多くの報酬を提示した場合は簡単に離職することにもなりかねません。
このように、社員のモチベーションを内発的に維持することは、企業にとって業績に関係してくるため、重要であると言えます。
内発的動機による、仕事のやりがいの高め方
冒頭に上げた、「やりがいを感じられない理由」のうち、内発的動機に関係してくるものは「仕事に楽しさを見いだせていない」という理由です。
仕事の楽しさを見いだせていない原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 仕事が本人に合わない
- 仕事が単調で刺激がない
- 仕事の意義や目的が分からない
これらの原因について、それぞれ対策をご説明します。
本人に合った仕事・業務内容にする
その人のスキルや興味に合わせた仕事をアサインすることで、仕事に打ち込めるようになります。
そのためには、本人や上司がその人の特性を把握し、それに合った職種や業務内容を任せることが必要です。
仕事に変化を加える
同じ仕事を繰り返すことが、やりがいの低下につながることがあります。
そのためには、仕事に変化を加えることで、自分自身のやる気を刺激することが必要です。
具体的には、新しいプロジェクトに参加する、別の部署で働くなどの方法があります。
仕事の意義や目的を明確にする
自分がやっている仕事の意義や目的を明確にすることで、仕事に対するモチベーションが向上することがあります。
そのためには、自分が担当している業務がどのような社会的な役割を果たしているのか、その重要性を各々が理解することが必要です。
仕事の意義や目的を明確にしワークエンゲージメントを高めるバヅクリ
1. 仕事のやりがい実感ワークショップ
このプログラムではまず、自分が人に感謝したことベスト3を考えた後、人に感謝されたことベスト3を発表し、人に対する感謝の気持ちや、自身の価値を再認識します。
その他にも、仕事は様々な人や時間、行動が連鎖し成り立っていると考え、自分が仕事をすることで誰にどのような影響を与えるかを書き出す『価値観の連鎖フロー』と言うワークを行います。
このワークを行うことで、自分の仕事の意義や、やりがいを強く感じることができるでしょう。
また、自分自身が多くの人に支えられていることも再認識できるはずです。
2. 若手社員のためのエンゲージメント研修
このプログラムでは、自分の中にある思考や行動を内省/可視化/整理し、エンゲージメントを自ら高めていく方法や考え方を学びます。
また、それを参加者同士で共有することで、相互理解も深まります。
人生の多くを占める仕事の時間をはじめ、自分の人生を自分で楽しんでいけるようになります。
3. 仕事の魅力紹介ワークショップ
「どんな仕事をしてるの?」という質問は様々なシーンでよく投げかけられるものですが、「簡潔に伝えられない」「魅力的に伝えられたか不安だ」という経験がある人も多いのではないでしょうか?
このプログラムは、小学生に自分の仕事を説明するというシチュエーションを想定して、自分の仕事を改めて見つめ直し、理解を深めたり、魅力を再発見できたりする内容となっています。
自分の仕事の魅力を再発見することで、仕事へのモチベーションや組織へのエンゲージメント向上が期待できます。
まとめ
本記事では、若手社員の離職を減らすためには、仕事にやりがいを感じることが重要であることを説明しました。
また、やりがいを高めるには内発的な動機が重要であることを示しました。
具体的な対策として、その人に合った仕事をアサインしたり、仕事に変化を加えたり、仕事の意義や目的を明確にすることが挙げられます。
これらの対策を実施することで、若手社員のワークエンゲージメントが向上し、離職を減らすことができると考えられます。