企業の人事担当者や経営者の中には、「組織改善に取り組むとき、何から始めればいいのか」「どんな取り組みが組織改善に直結するのか」など、組織改善にお悩みの人も多いのではないでしょうか?
この記事では、組織改善に向けた具体的な手法・フレームワークや、成功した取り組み事例、組織改善が業績向上にどのように関連しているかをご紹介します。
この記事を参考に組織を改善し、従業員エンゲージメントや生産性の向上にお役立てください。
目次
組織改善とは
組織改善は、企業の成長や組織のパフォーマンスの最大化を目的に行われる、組織の課題を解決する取り組みのこと。
組織の構造や役割・仕組み・運用方法を変えることで、理想の組織を目指すものです。
組織課題には、従業員の不満や組織パフォーマンスの課題など様々なものがあります。
組織改善を行う上で大切なのは、組織改善そのものを目的化させることなく、どんな課題を解決したいかを明確化させることです。
そして本質的な組織改善を実現し、「企業成長」をするには、従業員エンゲージメントを高めることが欠かせません。
組織改善が求められる理由
組織改善は比較的従業員人数が多かったり、規模を急激に拡大したりしている企業で必要と考えられています。
その理由として、
・古くからあるルールや制度が、社員や顧客などの外部環境に合わなくなる
・長い間いる社員と最近入社した社員ではエンゲージメントやキャリア志向が異なるため、コミュニケーションの摩擦が多くなる
などの問題が発生することが挙げられます。
また、組織改善が求められるようになった要因の一つとして「従業員エンゲージメント」への関心の高まりも挙げられます。
労働人口の減少が進む日本では、社員数が少ない中でも高い生産性を保ち、企業成長を担保できる、最適な組織体制を構築することが求められています。
組織改善と業績向上の関係
組織改善の大きな目的として、継続的な企業成長を実現することがあります。
ここでは組織改善を行うことで業績にどのような影響があるのか、その要素を紹介します。
社員の定着・採用の向上
従業員の努力や成果が報われる評価制度を構築するなどの組織改善を行うと、従業員満足度が向上します。
その結果、離職率が低くなり、優秀な人材が定着しやすくなります。
また、現代の日本では以前と比べて転職へのハードルが下がっています。
従業員満足度の高い組織を作ることで「働きやすい会社」という評判が社外にも広まり、優秀な人材の確保ができるようになります。
提供サービス・商品の向上
組織改善を行い、従業員満足度が向上すると、従業員は高いモチベーションを維持しながら、能動的に仕事に取り組むようになります。
また、自社商品やサービスをより深く理解し、顧客に対しては親身に対応しようという姿勢が生まれるため、提供サービスの質が高まります。
従業員満足度が向上すると、顧客満足度も向上するのです。
社員の労働生産性の向上
組織改善は、社員の労働生産性の向上にもつながります。
非効率な組織体制や仕組み、無駄な業務を削減するなど、一連の組織改善を行うと、業務効率が向上します。
また、組織改善によって従業員満足度が向上し、意欲のある従業員が増えると、成果を上げるための意見交換やコミュニケーションも活発になります。
その結果、労働生産性が高まるなどのメリットをもたらします。
組織改善に向けた取り組み手法「7S」
組織にとって大切な「7S」とは、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した組織改善のフレームワークです。
「7つの経営資源と相互性」を示すもので、7Sのフレームワークを活用することで自社の現状を把握・分析でき、課題を明確化することができます。
具体的には、7Sは3つのハード面と4つのソフト面に分類されます。
ハード面の3S:System(制度)・Strategy(戦略)・Structure(構造)
ソフト面の4S:Staff(人材)・Shared value(価値観)・Skill(スキル)・Style(経営スタイル)
ここでは7Sの活用方法を紹介します。
現状の把握
まずは7Sの各要素を自社の状況と照らし合わせ、現状を洗い出します。
ハード面の3Sの場合、事業目標の達成に向けて、どんな組織構造や戦略を構築し、どんな制度を用意しているかを把握します。
またソフト面の4Sからは、社員の能力やスキルレベル、上司のコミュニケーションスタイルや経営理念の浸透状況などを把握します。
課題の明確化
現状を元に、ハード面とソフト面の双方から課題を洗い出します。
出てきた課題が複数あった場合には、課題の大きさや緊急度に合わせて優先順位をつけます。
対策案の作成
課題の優先順位の高いものから、具体的な対策案を作成します。
対策案を考える際には、5W2H(Why・Where・Who・What・When・How・How much)のフレームワークを用いて案を具体化しましょう。
対策案の検討
対策案を実行する前に、対策案を実施した場合と現状を比較し、求める効果が得られるか予測を行います。
予測の結果、効果が不十分だと判断された場合には、対策案のブラッシュアップを行いましょう。
また実行に移す際は、前段で考えた5W2Hを実行し、計画倒れにならないようにプロジェクト化して進めましょう。
エンゲージメント向上に効果的な打ち手とは?
バヅクリHR研究所では、従業員エンゲージメント向上に効果的な打ち手を3つの要素にまとめ、具体的な事例とともに解説した資料を作成しました。
下記から資料をダウンロードできますので、エンゲージメント向上施策にぜひお役立てください。
組織改善事例
ここでは日本企業で実施された組織改善の成功事例を紹介します。
自社の課題と照らし合わせた上で、具体的な改善策を検討する際の参考にしてみてください。
【ヤフー株式会社】1on1ミーティング
インターネット企業大手のヤフー株式会社では、1on1ミーティングを前者に浸透させることで組織改善を図っています。
2010年前後にスマートフォンが社会に浸透し始め、PC利用前提で設計されていたヤフーのサービスは徐々に成長が鈍化していました。
そのことに危機感を抱いた経営陣は、2012年に社長が交代したことを機に、「脱皮をしないヘビは死ぬ」という哲学者ニーチェの言葉を旗印に組織体制の刷新を実行しました。
当時は「業務負担が増加する」など内部からの反発する声が多かったものの、新社長は1on1の重要性を説き続けたことで、週1回30分の1on1ミーティングを全社的に導入することに成功しました。
また「従来のトップダウン型では、環境変化に対応するのは困難」という考えから、組織体制のスリム化や行動規範の策定なども実施しています。
【サイボウズ株式会社】人事制度の改善・働き方改革
IT業界の大手であるサイボウズでは、「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という方針のもと、どんな人も気持ちよく働ける職場を目指し、人事制度の拡充を実施しました。
リモートワークが世間で浸透する前から在宅勤務や副業制度などを整備し、それぞれの社員がニーズやライフスタイルの変化に合わせて働き方を選択できる「選択型人事制度」を導入。
また成果や生産性を重視した「ウルトラワーク制度」など、ユニークな人事制度に取り組んでいます。
これらの取り組みにより従業員エンゲージメントが高まり、一時期28%あった離職率は4%まで改善しました。
まとめ
この記事では組織改善の概要や改善手法のフレームワーク、組織改善の成功事例を紹介しました。
組織改善に取り組むことにより潜在化した組織の課題を見つけるきっかけや、従業員の生の声を聞くことのできるよい機会となります。
改善事例を参考に一度組織改善について考えてみてはいかがでしょうか。