採用活動で「ぜひ入社してほしい」と思うあまり、知らずにオワハラに該当する行為をしてしまっている採用担当者は少なくありません。オワハラは場合によっては脅迫罪・強要罪に該当し、企業の社会的信用を大きく損なうリスクがあります。
この記事では、オワハラの定義・違法性・具体例を通じて、採用活動におけるオワハラの回避法や改善策について詳しく解説します。
企業担当者が学生と良好な関係を構築し、オワハラを未然に防ぐヒントにしてください。
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オワハラとは

オワハラとは「就活終われハラスメント」の略であり、新卒採用において企業が内々定を出した学生に対して囲い込みを行う行為を指します。
政府がまとめた「2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」では、オワハラを「就職をしたいという学生の弱みに付け込んだ、学生の職業選択の自由を妨げる行為」と定義しており、企業に対して以下のような行為を行わないよう呼びかけています。
- 正式な内定前に他社への就職活動の終了を迫ったり、誓約書等を要求したりする
- 内定期間中に行われる研修について、内定辞退後に研修費用の返還を求める誓約書を要求する
など
オワハラが生まれた背景

オワハラが生まれた背景には、経団連が発表した2016年卒の採用活動スケジュールの見直しがあります。
「就活の早期化・長期化によって学業の時間がなくなっている」という声に対応し、2016年卒採用では広報解禁が大学3年生の12月から3月へと3ヶ月の後ろ倒しに、選考解禁が4年生の4月から8月へと4ヶ月の後ろ倒しとなりました。
しかし広報から選考までの期間が長いため、経団連に加盟していない企業を中心に、これらのスケジュールよりも前に実質的な選考・内定出しを始めるところもありました。
そこで、学生に他社を受けさせないようにするための妨害行為が発生し、オワハラという言葉が生まれました。
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企業がオワハラをしてしまう原因

採用担当者が意図せずオワハラに発展してしまう背景には、主に以下の3つの要因があります。
優秀な学生をできる限り確保したい
優秀な就活生ほど複数の企業から内定をもらいやすく、獲得競争が激化します。「なんとしても自社に来てほしい」という気持ちが強くなるほど、行き過ぎた引き留め行為につながってしまう可能性があります。
内定辞退を防いで採用コストを回収したい
採用活動には説明会の設営・広告費・面接対応など多大なコストがかかります。内定辞退が生じると採用計画の見直しや追加募集が必要になるため、コスト回収の観点から内定者を囲い込もうとする動きがオワハラに発展することがあります。
採用担当者に過度なプレッシャーがかかっている
「予定人員を確保しろ」「採用コストを無駄にするな」といった上からのプレッシャーが採用担当者を追い詰め、焦りから強引な言動につながるケースも少なくありません。組織全体の問題として捉えることが重要です。
オワハラの実例

ここではオワハラの具体例を解説します。
直接的な行為はもちろんのこと、間接的に学生の就職活動を妨害する行為もオワハラに当たる可能性があります。
新卒採用の担当者の方は、自社がオワハラに該当する行為をしていないかチェックしてみてください。
他社の選考・内定辞退を強要する
- 「今、選考中の企業をすべて辞退すれば、この場で内定を出す」と提案する
- 「選考中の企業すべてに辞退の連絡を入れろ」と命令する
など、選考中の他社や内定をもらっている企業へ辞退を強要する行為はオワハラにあたります。
中には、役員や人事の目の前で辞退の電話をかけさせ、すべての企業に電話をかけるまで拘束するなどといった悪質な例もあります。
他社の選考進行を妨害する
- 毎日のように電話をかけ、就活状況の報告と内定承諾をしつこく要求する
- 他社の選考が集中しやすい時期に内定者向けイベントを企画し、「不参加の場合は内定取り消し」などと警告して強制参加させる
といった、他社の選考に専念できないように働きかける行為もオワハラにあたります。
これらの行為は内定者に対するフォローアップとも見なすことができるため、「オワハラか否か」の線引きが難しいです。
しかし学生が「就職活動を続けたい」という考えのもと、イベント参加を断ったりスケジュールの調整をお願いしたりする場合に、企業がそれを理由に内定を取り消せば、違法性を問われる可能性があります。
面接を先延ばし・拘束時間の長い研修で就活を妨害する
- 他社の選考が重なりやすい日にちに面接日程を設定する
- 他社への就活を阻むため、必要以上に面接回数を増やす
- 拘束時間の長い研修・課題を課し、他社の選考に参加する時間を奪う
といった行為もオワハラに該当します。これらは一見「丁寧な採用活動」や「入社前教育」として正当化されやすいため、やっている側に悪意がないケースも多いです。しかし就活生の立場からすれば、他社の選考に参加できない状況に追い込まれることに変わりはなく、「オワハラか否か」の判断は企業側の意図ではなく、就活生が感じる圧力や行動の制約によって判断されます。
学生が「他社の選考も受けたい」という意思を示した際に、企業がスケジュール調整に応じなかったり、参加しなければ内定を取り消すと警告したりした場合は、違法性を問われる可能性があります。
内定辞退者の脅迫
内定辞退の連絡した人に対し、
- 絶対に入社するように脅し文句をかける
- 高圧的な態度を取る
などといった行為もオワハラにあたります。
内定を辞退するかどうかは学生本人の意思に委ねられており、企業が強制することはできません。
また企業は「考え直してほしい」と説得することはできますが、頑なに内定辞退を拒んだり、それを理由に脅迫したりする行為は認められていません。
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オワハラは違法?関連する法律と法的リスク

オワハラは場合によっては違法行為(不法行為・犯罪)に該当します。厚生労働省も「学生の職業選択の自由を侵害するオワハラは行わないでください」と企業に対して注意喚起を行っています。
職業選択の自由の侵害(民法上の不法行為)
日本国憲法第22条第1項は「職業選択の自由」を保障しており、就活生は自分の意思で就職先を選ぶ権利を持っています。オワハラはこの自由を侵害するものとして、民法第709条の不法行為に該当する可能性があります。不法行為と認定された場合、企業は就活生が受けた精神的損害(慰謝料等)を賠償しなければなりません。
脅迫罪(刑法第222条)
「内定辞退したら損害賠償を請求する」「大学への採用をやめる」などと就活生を脅した場合、刑法第222条の脅迫罪に該当する可能性があります。法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
強要罪(刑法第223条)
「今すぐ他社の内定辞退の電話をしろ」などと強制した場合、刑法第223条の強要罪に該当する可能性があります。法定刑は3年以下の懲役です。脅迫罪より重い刑罰が設けられている点に注意が必要です。
オワハラによる企業のリスク

企業がオワハラを行ってしまう理由として「優秀な人材を確保したい」「採用目標人数を達成したい」という想いがあります。
しかしオワハラは、学生に精神的負担をかけるだけでなく、企業にとっても大きなダメージを伴う行為です。
ここではオワハラを行うことで企業が抱えるリスクについて解説します。
大学・学生からのイメージが下がる
オワハラを受けた就活生は、高確率で大学のキャリアセンター等に相談する可能性があります。
大学内でオワハラの事例として共有されてしまうと、来年度以降の就活生にその情報が伝わり、就職の志望先として敬遠されてしまう恐れがあります。
訴訟を起こされる危険性
脅迫を伴うオワハラは、脅迫罪や強要罪に該当する場合があります。
また脅迫が伴わない場合でも、程度を超えると「精神的な苦痛を受けた」として損害賠償が請求される可能性もあります。
SNSでの拡散
また近年はSNSや口コミサイトが発達しており、オワハラなどのネガティブな情報はすぐに拡散されます。
その情報を見た人は、企業に対する印象が大きく下がってしまいます。
その結果、中長期的に採用志望者が減ってしまうだけではなく、販売する商品・サービスのブランドイメージの毀損・顧客離れにもつながる可能性があります。
オワハラを防ぐために心がけること

「優秀な人材をつなぎとめたい」というのは、経営者や人事であれば当然の考えです。
しかしその想いが強すぎると、オワハラという法的リスクを孕んだ行為を犯してしまう可能性があります。
ここでは学生にオワハラと感じられる言動がないよう、オワハラの発生を防ぐために心がけるべきことを解説します。
採用担当者に内定辞退の責任を押し付けない
「予定人員を確保しろ」「採用コストを無駄にするな」など、採用担当者に対して過度なプレッシャーをかけてしまうと、オワハラを誘発してしまう可能性があります。
採用計画が崩れてしまった責任を採用担当者だけに押し付けるのではなく、会社の魅力が他社と比較して劣っていると捉えて、会社全体で改善に取り組みましょう。
自社の魅力を就活生に知ってもらう
上の項目と関連して、内定辞退が発生した理由の一つに「自社の魅力が伝わりきっていない」という問題があります。
自社の魅力を学生に分かりやすい形で伝え、入社意欲を高めてもらい、ポジティブな気持ちで内定を承諾してもらうのが採用活動の理想です。
自社の強みや魅力、入社するメリットなどを客観的な視点から洗い出し、効果的な打ち出し方を考えましょう。
辞退された事実を受け入れる
採用したかった学生から内定辞退の連絡を受けるのは悲しいことですが、「去るもの追わず」という姿勢を持つことも大切です。
「どうしても入社してほしい」と思う学生と出会った場合でも、辞退された際には学生の将来を応援し、さわやかに送り出しましょう。
そうすれば、学生の中でも「入社しなかったけれど良い会社だった」というイメージが残り、次回の転職先候補や後輩におすすめする企業の候補になる可能性もあります。
採用担当者への研修・ガイドラインを整備する
採用担当者が個別に対応する場面でオワハラが起きやすいため、明確なガイドラインの策定と定期的な研修が有効です。「どこからがオワハラか」の基準をあらかじめ明文化しておくことで、担当者が無意識にハラスメントに踏み込むリスクを減らせます。
また、内定者からのフィードバックを採用活動の改善に活かすことも効果的です。若い世代はハラスメントへの感度が高く、従来の慣行が現代ではNGと受け取られるケースもあります。内定者の声を定期的に収集し、採用プロセスを見直す仕組みを整えましょう。
まとめ
採用活動を進める中で「ぜひ、この学生に入社してほしい」という学生が現れることもあると思います。
しかし就職活動において、最終的に企業を選択する権利は学生側にあります。
オワハラは「気持ちが強すぎた結果」では済まされません。脅迫罪・強要罪・不法行為として法的リスクを負い、SNS拡散による採用ブランドへの長期的ダメージにもつながります。
内定辞退をされてしまう危険性を考えるより、自社の志望度が上がるような施策を打つことに注力し、オワハラ防止策について考えてみてはいかがでしょうか。
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