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テレワークの状況において従業員にどのような変化が起きているのか?
テレワークを導入して業務効率化ができたという意見がある中で、従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下に頭を抱えている企業が増えています。
株式会社リクルートキャリアの実施した「働くモチベーション」に関する調査によると、テレワーク前後でモチベーションが低いと回答した割合は14.1%から22.5%へアップしています。
本調査によると、働くモチベーションに影響する要素のうち「仕事の全体感の把握」「仕事の重要性の実感」「上司や同僚からのフィードバック」などがテレワークだと低下してしまうことがわかりました。
テレワークにおいてモチベーションが下がってしまう理由
テレワークにおいて、従業員のモチベーションが下がってしまう理由はさまざまです。
複数の要因が重なりあってモチベーションを下げていっていることを理解し、対策につなげましょう。
理由1 オンオフの境目がなくなり仕事スイッチが入らない
テレワークの働き方は、仕事のオンオフをつけづらいためモチベーションが下がる傾向があります。
今までは、朝起きてからオフィスの席に着くまでの時間を使って、徐々に頭を仕事モードに切り替えることができました。
スーツを着ることでスイッチが入る人、通勤電車の中でスマホでニュースを読みながら頭を切り替える人、オフィスに入って同僚に挨拶をすることで仕事スイッチを入れる人など、オンオフのスイッチを入れるタイミングは人それぞれです。
しかしテレワークの場合、今までのような「切り替え」ポイントがなくなってしまい、なかなか仕事モードに入り切れない人も多いのです。
テレワークの中でも特に在宅ワークをしている方は、より仕事とプライベートの切り替えがしづらい環境といえます。
少し手を伸ばせばテレビをつけられる、プライベートに関する物が視界に入ってしまうなど、どうしても気が散ってしまう要因が多いためです。
理由2 見られている意識がなくなる
テレワークになると、オフィスにいるときのように「上司に見られている」「監視されている」状態ではなくなります。
そのため、つい気を抜いてしまったり、中にはさぼったりしてしまう方もいるでしょう。
同僚や上司の目線があれば、適度な緊張感の中で仕事を進められますが、周囲に誰もいない状況が続くと「どうせ見られていないしいいや」と、モチベーションが下がってしまう可能性もあるのです。
理由3 仕事の進捗管理がすべて自分次第になる
テレワークだと周囲の目がないのでさぼってしまう人がいる一方で、逆に働きすぎてしまう人もいます。
オフィスにいれば同僚に話しかけられたり、電話が鳴ったり、仕事を中断するタイミングが自然と発生します。
しかし、1人で黙々とテレワークをしていると、邪魔が入らない限りエンドレスで働けてしまう状況になります。
もちろん、ご自身のタイミングで休憩をとるのが1番ですが、集中しすぎて知らぬ間に働きすぎてしまう人も少なからずいるでしょう。
その結果、オフィスにいるときよりも長時間働き続けることで疲労がたまってしまい、疲労の影響でけっきょく働く意欲がどんどん下がるという、負のサイクルに陥る可能性があるのです。
理由4 余計なことに手を付けがち・気が散る環境になる
テレワークになると、ついいつもよりSNSを開いてしまったり、部屋の掃除や洗濯などを始めてしまったり…余計なことに手をつけてしまう人も多いのではないでしょうか。
掃除をしているときに、懐かしいアルバムが出てきてつい見入ってしまったという経験と同じように、仕事をしていたはずなのに気付いたら関係ない作業に熱中していた、というケースもよくあることです。
出先のカフェでテレワークをしていたら周囲の人の話に聞き耳を立ててしまった、家でテレワークをしていたらつい家事ばかり進めてしまったなど、気が散って仕事のモチベーションも下がってしまうことがあるのです。
理由5 働くための設備が整っていない
テレワークのときに、気持ちよく働くための設備が整っておらずモチベーションが上がらない場合があります。
特に2020年、初めての緊急事態宣言のときは、テレワークへの移行が急務でした。
そのため、自宅に仕事用の机と椅子の用意が間に合わなかったり、大容量の通信に耐えられるWi-Fiが無かったり、設備や環境が整わずつらい思いをした人も多いでしょう。
中には、やむを得ずダイニングテーブルや固い椅子でテレワークを行って、足腰を痛めて仕事に集中できなかった人もいます。
テレワークのときも、会社と同水準の働く環境を整えないと、仕事のモチベーションどころか業績悪化しかねません。
日本のビジネスパーソンはどのようなときにモチベーションがあがるのか?
ここまで、テレワークのときにモチベーションが下がってしまう要因について整理してきました。
一方で、日本のビジネスパーソンはどのような状態になればモチベーションが上がりやすいのでしょうか?
本章ではモチベーションが上がる3つの場面をご紹介します。
1. 他人に見られていると感じるとき
ある研究によると、仕事中に「誰かに見られている」と感じるときに、より集中して働く傾向があるそうです。
たとえば、ログイン中かどうか分かる業務ツールを使ったり、仕事中はウェブ会議ツールを繋ぎっぱなしにするなど、お互いの動いている様子が感じられる状況にする方法があります。
ただ、行き過ぎると「監視されている」というストレスで、逆にモチベーションが下がることもあるため注意が必要です。
2. 他者と協調していると実感するとき
モチベーションの源泉は人によって異なりますが、他者との調和志向を持ち、周囲の人と協力しあうことでモチベーションが上がるタイプの人もいます。
オフィス環境であれば、チームのメンバーと同じ空間で一緒に仕事に取り組んでいる実感を持ちやすいですが、テレワーク環境では雑談も少なく一体感を感じにくくなります。
3. 公私のバランスがとれているとき
仕事で実績を出して、正しく評価されることでモチベーションが上がる人もいますが、仕事の結果よりも公私のバランスがうまくとれているときにモチベーションが上がる人もいます。
これらのタイプは仕事中心の生き方ではなく、仕事とプライベート時間をうまく調和させることが、モチベーションの源泉になるタイプの人です。
公私調和を求めるタイプが、テレワークのときにプライベートと仕事をうまく切り分けられるかは、正直本人の管理能力によります。
テレワークになることで、公私のバランスがとれなくなりモチベーションが下がる場合もあるということです。
テレワーク中もモチベーションを維持する方法
テレワーク中は、モチベーションを疎外するさまざまな要因があることがわかりました。
テレワーク中のモチベーションを維持するために、日々の仕事前や仕事中にできる取り組みや、モチベーションアップにつながる施策をまとめてご紹介します。
施策1 仕事前に〇〇をしてモチベーションアップ
まず、毎日の仕事を始める前に簡単に取り組めるモチベーションアップ方法をまとめてみました。
- 朝日を浴びる
- 仕事前に30分運動をする(散歩やラジオ体操、ストレッチなどOK)
- 仕事環境を整える
- まずは5分ビジネス書や業界ニュースを読むと決める
- 外に行くときと同じ服装・髪型・メイクに整える
オフィス出社をするときは必然的に外に出て太陽の光を浴びますが、完全在宅でテレワークの場合、外の空気を吸うタイミングがないかもしれません。
朝日を浴びると体内時計がリセットされるため、頭の切り替えにも最適です。
また、出社するときと同じように身だしなみを整えることで気持ちの切り替えを図ったり、準備運動として5分間だけビジネスニュースや読書をするのも良いでしょう。
施策2 仕事中に行うモチベーションアップ
続いて、仕事中に取り組めるモチベーションアップの方法をピックアップしてみました。
- 1コマ45分+休憩15分など区切ってタイマーセット
- 昼休憩は必ず外の空気を吸いに行く
- 雑談をする
- ウェブ会議のときは顔出しをする
- 出勤日を決めておく
- 家の中で仕事をするスペースとプライベート空間をうまく分ける
人間の脳のパフォーマンスを上げるためには、1時間に15分の休憩をとったり、90分単位で時間を区切って働くと効果的という研究結果があります。
テレワークで仕事に没頭しすぎると、脳が疲れてパフォーマンスが落ちてしまいます。
ご自身でタイマーをセットし、意識的に時間を区切って仕事をするのも1つの方法でしょう。
また、どうしてもテレワークだとモチベーションが上がらない人は、あえて週に数回の出社日を設けるのもポイントです。
周囲の人と協調しあったり、雑談をすることでモチベーションが上がるタイプの人もいるためです。
出社するのが面倒だとしても、ウェブ会議のときにカメラをオンにして顔出しをするだけでも「見られている」意識が働くので、適度な刺激になりモチベーション維持に効果が出ることもあります。
施策3 その他のモチベーションアップ方法
仕事前、仕事の途中ではなく、日ごろから取り組めるモチベーションアップ方法をご紹介します。
- オンオフをはっきりさせてチャットの通知を切る
- 仕事用の椅子やデスクに投資をする
- 体力が落ちないように適度なワークアウトをする
- 食べ過ぎない
- 家族への協力を依頼する
テレワーク中は仕事とプライベートの時間の境目がなくなりやすくなります。
自分でチャットの通知時間を設定しておいて、早朝や深夜は一切仕事の連絡を返さないように心掛けるのも1つの手です。
また、テレワーク中は通勤移動や社内を歩いて移動することがなくなるため体力が落ちやすいです。
暴飲暴食を避け、積極的に運動をすることで心身共に元気でいることも、モチベーションアップに大切なポイントです。
テレワークのモチベーションアップに関する取り組み事例
テレワークにおける社員のモチベーションを向上するために、施策を取り入れている企業の事例を3つご紹介します。
事例1:株式会社Waris
共同代表の3名が東京、福岡、ホーチミンに在住し、創業以来ずっとテレワークを続けている株式会社Warisの事例です。
働く場所は自由ながらも、メンバーには成果という責任をしっかり持たせ、常に性善説に立ち部下を信じるスタイルで運営をされています。
ここでの性善説とは「このメンバーならテレワークでもしっかりコミットしてくれる、さぼったりしない」と、大前提として信じることです。
また、テレワーク環境ではメンバーがモヤモヤを抱えやすく、オンオフの切り替えができず働きすぎることを課題視しているWaris社。
これらの課題解決のために、勤怠チェックで働きすぎを防止したり、1on1や日々のチャットやり取りで相手のモチベーションの上下に注意を払うなど取り組んでいるそうです。
【参考】リモートワークを可能にする「セルフマネジメントできる組織」とは?~Waris流リモートワーク勉強会(2)レポート
株式会社Waris
事例2:株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業を展開するサイバーエージェントは、テレワーク前からワークエンゲージメントを高める取り組みを実施しています。
同社はワークエンゲージメントを「やりがい」「働きやすさ」の2つの軸で考え、テレワーク環境でもこの2つの要素を欠かさないよう意識しているそうです。
たとえば、テレワーク環境下でも社員の「働きやすさ」を維持するために、GEPPOというツールで、社員のコンディションを把握しているそうです。
こういったツールを用いながら、社員の不安やリアルな声を引き出し、テレワーク環境下でも働きやすい環境が保てているのか?モチベーションは維持されているかを定点チェックされています。
石田裕子(サイバーエージェント専務執行役員)
事例3:株式会社リスティングプラス
テレワークでも毎朝オンライン朝礼を取り入れることで、社員のモチベーションを上げることを試みているリスティングプラス社の事例です。
リスティングプラス社では、毎朝全社員が参加する全体朝礼と、チーム毎に分けて行うチーム朝礼を行っているそうです。
テレワークになると雑談も減ってしまいがちだからこそ、オンライン朝礼では必ずフリートーク時間を設けて「最近面白かったこと」をシェアするようにしています。
1日の始まりにテンションを上げあうことで、モチベーション低下を防ぎます。
株式会社リスティングプラス Wandetly
まとめ
テレワークの環境は、仕事へのモチベーションを下げるさまざまな要因があることを改めて理解しなくてはなりません。
働く時間や休憩のタイミングをコントロールしきれず働きすぎてしまったり、時にはさぼってしまったりと、モチベーション管理は容易ではないのです。
また、モチベーションが下がる理由は、人によって異なります。
テレワークではなぜモチベーションが下がるのか、社員のモチベーション源泉は何なのかを理解して、しっかり対策をしていってください。