パーパス経営とは

パーパス経営(Purpose-driven management)は、企業や組織がその存在意義や目的(パーパス)を中心に据えて経営を行うアプローチです。

伝統的な経営手法では、企業は利益最大化を主な目標として追求してきましたが、パーパス経営では利益追求だけでなく、社会や環境への貢献、従業員や顧客の幸福感の向上など、より広い価値創造を追求することを重視します。

パーパス経営は、企業や組織が長期的な持続可能性を追求するために重要な役割を果たします。これには、社会的な目的や価値を組織のミッションやビジョンに組み込むこと、ステークホルダーの利益をバランス良く考慮すること、透明性と説明責任の向上などが含まれます。

パーパス経営は、従業員や顧客に対する意義のある働き方や製品・サービスの提供を通じて、組織の社会的な影響力を高めることを目指します。また、パーパス経営は、社会的な問題や持続可能性の課題に対して積極的に取り組むことも特徴としています。

近年、多くの企業や組織がパーパス経営を取り入れており、社会的な目的を追求することで経済的な成果も上げることができるという考え方が広まっています。

ビジョン・ミッション・バリューとの違い

パーパス、ビジョン、ミッション、およびバリューは、組織の目標や方向性を表す概念ですが、それぞれ異なる意味を持っています。

パーパス(Purpose)

パーパスは、組織の存在意義や根本的な目的を表します。なぜ組織が存在し、何を成し遂げようとしているのかを示すものです。パーパスは、社会的な影響力や貢献を追求する組織の根本的な動機や理念を表現します。

ビジョン(Vision)

ビジョンは、将来の理想的な状態や目標を描いたものです。組織がどのような世界や社会を作りたいのか、どのような未来を実現したいのかを示します。ビジョンは、組織が追求する方向性や大まかな目標を表現する役割を果たします。

ミッション(Mission)

ミッションは、組織が現在取り組んでいる具体的な活動や業務を記述します。組織の存在意義やパーパスを達成するために、どのような行動や役割を果たしているのかを示します。ミッションは、組織の活動領域や目的を具体的に定義する役割を果たします。

バリュー(Value)

バリューは、組織が重視する価値観や信念を表します。組織の行動や意思決定において重要視される原則や基準を示します。バリューは、組織の文化や行動指針、利害関係者との関係性に影響を与えます。

これらの概念は、組織の方向性や目標を明確にし、組織内外のステークホルダーに対して理解を深めるために活用されます。パーパスは組織の根幹を表し、ビジョンは理想的な将来を描き、ミッションは具体的な活動を示し、バリューは組織の価値観を反映します。

パーパス経営が注目されている背景

VUCA時代の突入

VUCAとは、不確実性(Volatility)、不安定性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉で、現代のビジネス環境を表現しています。急速な技術の進歩、市場の変動、競争の激化などにより、企業は予測困難な状況に直面しています。このような環境では、伝統的な利益追求だけでなく、組織のパーパスを明確にし、より意味のある活動に取り組むことが求められます。パーパス経営は、組織の方向性と価値を定め、組織を変革に導くための枠組みとして注目されています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の浸透

デジタル技術の急速な進歩により、企業や組織はDXを進める必要性を迫られています。DXは、デジタルテクノロジーを活用して業務やプロセスを変革し、競争力を強化する取り組みを指します。このような変革において、単に技術の導入や効率化だけでなく、組織のパーパスを明確にし、社会的な意義や価値を追求することが重要視されています。パーパス経営は、DXの目的や方向性を定め、変革を通じて社会への貢献を実現する手段として注目されています。

SDGsへの関心の高まり

SDGs(持続可能な開発目標)は、国連が採択した2030年までに達成すべき17の持続可能な開発目標のことです。これらの目標は、貧困の撲滅、教育の普及、クリーンエネルギーの利用など、社会的・環境的な課題に取り組むことを目指しています。企業や組織は、自らの活動がSDGsに貢献することを求められ、関心が高まっています。パーパス経営は、組織のパーパスをSDGsと結び付け、社会的な目的を達成するための枠組みとして重要視されています。

これらの要素が組み合わさり、パーパス経営が注目される理由となっています。VUCA時代の不確実性に対応し、DXの進展を通じて社会的価値を追求し、SDGsへの貢献を実現するために、組織はパーパス経営を取り入れることが求められています。

パーパス経営のメリット

パーパス経営には以下のようなメリットがあります。

組織の方向性と一体感

パーパス経営は、組織の存在意義や目的を明確にします。従業員や関係者は、組織のパーパスに共感し、それに向かって働くことで一体感を持つことができます。組織の方向性が明確になることで、目標達成や結果の追求に集中しやすくなります。

組織の魅力と競争力の向上

パーパス経営は、社会的な影響力や貢献を追求する組織としての魅力を高めます。従業員や顧客は、価値のある使命や目的を持つ組織に魅力を感じ、関与したり支持したりする傾向があります。また、パーパスを追求する組織は、社会的な課題や持続可能性に対する取り組みが評価され、競争力が向上することがあります。

ステークホルダーとの信頼関係の構築

パーパス経営は、組織が社会や環境への貢献を重視する姿勢を示します。これにより、顧客やパートナー、地域社会などのステークホルダーからの信頼や共感を得やすくなります。信頼関係は、長期的なパートナーシップや持続可能な成長にとって重要な要素であり、パーパス経営に取り組むことで結果的に長期的なブランディングに繋がります。

社員のエンゲージメントが向上する

パーパス経営は、従業員にとって働く意義や満足感を提供します。従業員は、組織のパーパスに共感し、その達成に向けて貢献することで自己成長や自己実現を追求する動機が生まれます。意欲と関与の向上は、生産性や創造性の向上につながることがあります。

意思決定が早くなる

パーパスは、企業にとっての行動指針そのものであるため、戦略を考える際の「道標」となります。パーパスが社内に浸透していることで、社員全員が同じベクトルで仕事を進められるため、意思決定にかかる時間や質が向上します。

これらのメリットは、パーパス経営が組織のパフォーマンスや成長にポジティブな影響を与える理由です。従業員の意欲や関与の向上、信頼関係の構築など、組織全体の健全な発展に寄与します。

会社理念を浸透させ従業員エンゲージメントを高めるためには

パーパス経営を成功させるためには、従業員エンゲージメントの向上が欠かせません。

それでは、従業員のエンゲージメントを向上させるためには他にどんな打ち手が必要になってくるのでしょうか。バヅクリHRの研究所では、エンゲージメントに関するアンケート調査を実施し、エンゲージメントを高める要素、施策、取組事例などをまとめました。

下記からダウンロードできますので、エンゲージメント向上施策にぜひお役立てください。

【資料概要】

  1. エンゲージメントサーベイに関する調査結果
  2. エンゲージメントを高める3要素
  3. エンゲージメントを高める打ち手
  4. エンゲージメント向上施策
  5. エンゲージメント向上施策に関する注意点
  6. エンゲージメント向上取り組み事例
  7. まとめ

パーパス経営に取り組む方法

自社が置かれている状況を把握する

まずは、自社が現在置かれている状況を把握することが重要です。組織の強みや弱み、市場や業界のトレンド、ステークホルダーの期待などを分析しましょう。これにより、自社のパーパスを明確化するための情報やヒントを得ることができます。

パーパスの言語化

組織のパーパスを明確にするためには、それを適切に言語化することが必要です。パーパスは、ビジョンやミッションとは異なる独自の文言で表現される場合があります。

組織全体が共有できる明確な文言を作り出し、組織内外に伝えることで、共感と理解が促進されます。

現場・組織全体への浸透

パーパスは組織全体に浸透させる必要があります。これには、従業員や関係者への啓蒙活動や教育プログラム、コミュニケーションチャネルの活用などが含まれます。パーパスの重要性や意義を共有し、従業員が組織のパーパスに共感し、それを具体的な行動に反映できるように支援しましょう。

業務内で心がけができる仕掛けづくり

パーパス経営を実践するためには、業務の中で具体的な行動に落とし込む仕掛けを作りましょう。具体的な目標や行動指針を設定し、パーパスに基づいた判断や行動を促進します。報酬や評価制度、業務プロセスの見直し、チームワークやコラボレーションの促進などが考えられます。

ステークホルダーとの対話と連携

組織のパーパスは、ステークホルダーとの対話と連携を通じて洗練されていきます。顧客やパートナー、地域社会などのステークホルダーの声を収集し、パーパスに反映させることで、より具体的で多様な価値を創造することができます。

持続的な評価と改善

パーパス経営は持続的な取り組みが必要です。定期的な評価と改善のサイクルを確立し、組織のパーパスが実現されているかどうかを監視しましょう。フィードバックの収集やデータの分析によって進捗状況を把握し、必要な修正や改善を行います。

これらの観点を踏まえながら、パーパス経営を組織に取り入れることで、組織の方向性を明確化し、従業員や関係者の共感や関与を高め、持続的な成果を実現することができます。

パーパス経営をサポートするサービス「バヅクリ」

オンラインコミュニケーションサービス「バヅクリ」では、パーパス経営をサポートするプログラムが豊富に準備されています。

仕事のやりがい実感ワークショップ 〜世界は仕事の連鎖で動いている〜

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モチベーションを上げる自己成長ワークショップ 〜できることを増やして成長速度を上げよう〜

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パーパス経営の注意点

パーパス経営に取り組む際の注意点を以下の観点に基づいて説明します。

ターゲットを絞りすぎない

パーパス経営の実践において、ターゲットを絞りすぎることは避けるべきです。組織のパーパスは広範で包括的なものであるべきであり、特定の利害関係者やニーズに限定されるべきではありません。幅広いステークホルダーを考慮に入れ、組織のパーパスがより包括的で持続可能なものとなるよう努めましょう。

パーパスウォッシュにならないようにする

「パーパスウォッシュ」とは、組織がパーパスを装ったり、表面的な取り組みを行ったりすることで、実際には本質的な変革や貢献をしていない状態を指します。

パーパスは単なるマーケティングツールとして利用されるべきではありません。パーパス経営を実践するためには、組織の文化やビジネスモデルを変革し、具体的な行動を起こすことが必要です。

社会や顧客のニーズを意識する

パーパス経営は社会や顧客のニーズに対応することが重要です。組織のパーパスは、社会的な価値創造や課題解決を通じて、社会や顧客に対して意義のある貢献をすることを目指します。したがって、社会の変化や顧客の要求に敏感であり、それに基づいてパーパスを進化させる必要があります。

内外のステークホルダーとの連携と協力

パーパス経営を実践する際には、内外のステークホルダーとの連携と協力が不可欠です。他の組織や団体とのパートナーシップや共同プロジェクトを通じて、より大きな社会的な影響力や効果を追求することができます。協力関係を構築し、多様なステークホルダーの視点を取り入れることで、パーパス経営の成果を最大化することができます。

継続的な評価と透明性

パーパス経営を実践する上で、継続的な評価と透明性を重視する必要があります。組織のパーパスの進捗や成果を定期的に評価し、透明かつ客観的な情報を提供することで信頼関係を構築します。進捗状況や課題の公開は、組織の信頼性や持続可能な成果の実現につながります。

これらの注意点を踏まえることで、組織はより真のパーパス経営を実践し、社会的な影響力を高め、持続可能な成果を実現することができます。

まとめ

パーパス経営は先行き不透明な現代には必要性の高い経営方法の1つです。

社会や顧客のニーズに応えられるようになるだけでなく、社員のエンゲージメント向上といった組織改善にも繋がるため、ぜひ一度パーパス経営について考えてみてはいかがでしょうか。