ダイバーシティな組織を目指し様々な取り組みを実施している企業の事例から、成功する取り組みを学ぶことは組織のダイバーシティ化への近道です。
その他にも、ダイバーシティな組織になることで得られるメリットや、取り組みを行う時のポイントなども合わせてご紹介します。
ダイバーシティな組織を目指し、人材の獲得やパフォーマンスの向上を目指しましょう。
目次
ダイバーシティとは
「ダイバーシティ」とは、一般的に「多様性」という意味を持つ言葉です。
ビジネスシーンで使われる場合は、性別、年齢、国籍、文化などの違いに関わらず多種多様な人種が共存している組織や、環境のことを指します。
また、ダイバーシティには2つの種類があります。
性別、年齢、国籍などの目に見える多様性を表層的ダイバーシティ。
価値観や習慣、考え方、性格などの目には分かりにくい多様性を深層的ダイバーシティといいます。
ダイバーシティとインクルージョンの違い
ダイバーシティと共に「インクルージョン」という言葉が使われているのを目にしたことがある人も多いでしょう。
インクルージョンは直訳すると包括・包含という意味で、主にそれぞれの持つ違いを活かした組織作りのことを指します。
ただ多様性のある組織を目指すのではなく、それを認め合い、違いや個性を活かした組織作りをしたいものです。
ダイバーシティ経営とは
ダイバーシティ経営とは人材が持つ多様な個性を活かし、価値を生み出したり、組織のパフォーマンスを高めたりする経営スタイルのことを指します。
経済産業省が推進する「ダイバーシティ2.0」には、「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」というものが設定されています。
「7つのアクション」により推進できる
「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」には
- 経営戦略への組み込み(トップマネジメントのコミットメント)
- 推進体制の構築
- ガバナンスの改革
- 全社的な環境・ルールの整備
- 管理職の行動・意識改革
- 従業員の行動・意識改革
- 労働市場・資本市場への情報開示と対話
の7つのアクションが記されており、これらを実行することでダイバーシティな組織に近づくとされています。
7つのアクションについて詳しくはこちら
注目されるようになった背景
ダイバーシティが注目されるようになった背景には、以下のような理由があります。
1. 少子高齢化
日本は少子高齢化が進み売り手市場であり、働き手の不足が課題となっています。
ダイバーシティな組織になることで人材の母集団を拡大し、優秀な人材の獲得を目指すことができます。
2. 働き方の多様化
働き方改革やライフワークバランスを重視する考え方の浸透などにより、働くということに対する価値観は以前よりも多様化しています。
様々な価値観や考え方の人が多くなったことにより、理想とする働き方も人それぞれになってきました。
ダイバーシティな組織は、どのような考え方、働き方も受け止めます。
3. 消費の多様化
インターネットが普及し、国内だけでなく海外に向けても商品を販売できるなど、ビジネスの相手になる層は格段に広くなりました。
多種多様なターゲットに向けアプローチをするには、その層の心理を読み取れたり、文化を知っていたりする人がいなくてはいけません。
ダイバーシティな組織になることでサービスを提供する際、より多くのターゲットに寄り添うことができます。
4. グローバル化
グローバル化が進み日本の企業に勤務しながらも、海外にルーツを持つ方も増えてきました。
そこで、より多くの人が働きやすい組織になるためダイバーシティを推進する企業も多いです。
ダイバーシティ経営を行うために
ダイバーシティ経営を行うためには、どのような取り組みを行えばいいのか一例をご紹介します。
1. 社内のダイバーシティへの理解を広める
まずはメンバーのダイバーシティへの理解を深めることが重要です。
方法としては研修を実施したり、ワークショップを開催したりすることが考えられます。
座学でダイバーシティについての知識を習得することももちろん大切ですが、話を聞くだけの研修は受講者が受け身になってしまいがちです。
多種多様な人と価値観をシェアしあったり、ダイバーシティについての意見交換をしたりすると、より深い学びのある時間となるでしょう。
ダイバーシティ推進のおすすめ研修プログラム
ダイバーシティ推進のためのおすすめプログラムは以下です。
この全てのプログラムが、研修やチームビルディングのためのワークショップを企画・運営するバヅクリを利用し開催できます。
参加者満足度は97%を誇ります。
バヅクリを利用することで、プロの司会者や講師を招きワークショップを実施できるだけでなく、企画から運営までをお任せできるので社内負担を85%も削減できます。
1. ダイバーシティ研修
バヅクリのダイバーシティ研修は、様々なワークを通して
- 統計学的多様性
- 認知的多様性
- ダイバーシティ&インクルージョン
- シナジーコミュニケーション
などについて学びを深めていく研修です。
ただ座って話を聞くだけでなくワークを体験をしたり、アウトプットをしたりしながらより深く学びを得ることができます。
2. おえかき
絵を描くという非日常なことを通し、参加者同士の一体感を醸成します。
また、描くテーマを自身の価値観や内面に関することにすることで、参加者同士の相互理解を深めることができます。
3. 多様性・相互理解ワークショップ
その他の参加者と共に行うワークや、自分自身のことを振り返るワークを通し、多様性のある価値観を理解していきます。
相互理解を深めることによるダイバーシティの推進に加え、価値観の違いからすれ違いがちになるオンラインでのコミュニケーションのコツも学ぶことができます。
ダイバーシティ研修について詳しくはこちら
2. 労働環境を整備する
時短勤務制度が活用しやすい環境や、育休などの休暇が取得しやすい環境、テレワークを選択できる環境を作り出し、どのような属性であっても働きやすい環境を目指しましょう。
それぞれのメンバーが働きやすい環境や、仕事と生活を両立できる環境を作ることが、ダイバーシティな組織を作り出すためには欠かせません。
3. 公平な評価制度を用意する
性別や、人種、働き方に関わらず、公平に評価をする制度を用意してください。
4. 長期的な取り組みを行う
真のダイバーシティーな組織を作り上げるためには、様々な価値観・考え方を認め合うカルチャーを醸成しなくてはいけません。
そのような文化を持つ組織は短期間で作り上げられるものではありません。
定期的に研修やワークショップなどを開催し、長期的な目を持って取り組みを行いましょう。
ダイバーシティ推進に取り組む企業事例
それでは、ダイバーシティの推進に取り組む企業をご紹介します。
それぞれの企業が行う取り組みや、成功例を参考にしてみてください。
1. 損保ジャパン日本興亜
損保ジャパン日本興亜は、ダイバーシティな組織を目指し
- 女性管理職比率の向上
- 柔軟な働き方を進める
- 仕事と育児を両立しながらキャリアアップできる環境を構築する
を目標に、テレワークツールや制度の拡充、休暇取得の推進、テレワークノウハウの提供などを行っています。
女性管理職比率の向上においては、管理職・中間職・若手層の階層別の女性専用の育成プログラムを実施。
同社がダイバーシティ化の取り組みの中で運営している女性経営塾の受講者からは、部店長やグループ会社の執行役員も誕生しています。
損害保険ジャパン株式会社
2. 株式会社ベネッセホールディングス
通信教育、出版などの事業を行う株式会社ベネッセホールディングスでは
- 障害者の雇用の促進
- 女性活躍の推進
- シニアの活躍推進
- 様々な地域での人材雇用
の4つを軸に、ダイバーシティな組織を目指し取り組みを行っています。
それぞれの目標を達成するため、
- 研修の実施
- ブログなどを通した情報発信
- 定年を65歳まで延長
などの取り組みを実施。
全社の女性比率が7割の同社は、「保育手当」や「育児時短制度」を導入後、利用者は年々増加傾向にあります。
株式会社ベネッセホールディングス
3. 日本IBM
ビジネスのためのツールや機器の提供や、組織のコンサルティングなどを行い、親会社はアメリカ企業の日本IBM。
ダイバーシティな組織を目指し、
- 女性活躍支援
- 障害者の活躍支援
- LGTB当事者の活躍支援
- 子育て応援
- ワーク・ライフ
の5つの分野で、支援を行っています。
同社では20年以上と長期に及び働き方改革を実施して、自分らしく働ける組織作りに取り組んでいます。
同社では、女性がキャリアを継続していく上で出会う問題を解決するためJapan Women’s Council (JWC) を1998年に発足。
産休や育休、在宅ワークやフレックス制、保育所の設置などを制度化しました。
女性メンバーばかりだったJWCも、8期目からは男性メンバーも加わり取り組みを行っています。
JWCで定められた制度は、女性だけでなく男性が利用することもあります。
IBM
4. P&G
アメリカに本社を置く一般消費財メーカーのP&Gは「ダイバーシティ&インクルージョン」を経営戦略の1つに掲げ、「文化」「制度」「スキル」を3本柱に
- 女性活躍推進
- ダイバーシティ&インクルージョンの推進
- 多様な社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる組織づくり
を目標に、25年にわたり、組織のダイバーシティ化に取り組んでいます。
それぞれの柱に関する取り組みは以下です。
文化
- 「ダイバーシティ&インクルージョン」が経営戦略の1つであることを浸透させる
- 社内イベントなどを通じて社員の意識を向上させる
- 社長や経営陣がロールモデルとなる
制度
- 1人にあった働き方を選べる
スキル
- 自社開発のトレーニングプログラムの提供
- 階層別研修の実施
1992年に「ウーマンズネットワーク」が発足し、2013年には女性管理職比率30%を達成しました。
同社が開発したダイバーシティ&インクルージョン研修プログラムを無償提供や、他者へのレクチャーもしており、400社以上にノウハウを提供しています。
参考:ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)への取り組み
P&G
ダイバーシティ推進による効果
それではダイバーシティが推進されることによって起こる影響はどんなものがあるのでしょうか。
ダイバーシティ推進によるメリット
まずはダイバーシティな組織になることによって得られるいい影響をご紹介していきます。
ダイバーシティ推進によって得られるメリットは数多くあり、企業側だけでなく従業員側にもメリットがあります。
それぞれの立場に分けてメリットをみていきましょう。
組織に対するメリット
1. 優秀な人材の確保
優秀な人材はダイバーシティな組織を好む傾向があります。
ダイバーシティな組織であることで採用活動の際、優秀な人材にいい印象を与えられます。
また、海外からも優秀な人材を取り込み、定着させることが可能になります。
2. 競争力の強化
優秀な人材が集まることにより、企業の競争力が強化されます。
また、海外にルーツを持つ人、子育て世代、女性など多様なメンバーがいることで、様々な層に寄り添ったサービスを提供しやすくなります。
3. イノベーション
様々な視点から意見が出ることにより、イノベーションが起こりやすくなります。
4. 企業評価の向上による好循環
ダイバーシティな組織であるというイメージ付けをすることで、企業イメージが向上します。
働きやすそうな企業だというイメージを持ってもらうことは、採用活動にいい影響を与えます。
また、多種多様な視点から考えサービスを展開することで、ターゲットが求めるサービスを提供できることから顧客からの評価も向上するでしょう。
従業員に対するメリット
1. 企業への心理的安全性が高まる
それぞれの持つ価値観や考え方が認められる組織では、ありのままの自分で働くことができ、心理的安全性が高まります。
心理的安全性が高まると、メンバー同士のコミュニケーションが活性化されたり、定着率が向上したりします。
2. 活躍できる場の拡大
ダイバーシティ経営では、メンバーがそれぞれの個性や得意なことを活かし仕事ができるようになるので、活躍できる場が拡大します。
活躍できる場が増えることで、従業員の仕事に対するモチベーションも向上します。
3. 多様な人からの刺激による成長
ダイバーシティな組織では、社内に多種多様な人がいるため社内にいながらも多くの刺激を受けることができ、メンバーの成長に繋がります。
成長できる環境はメンバーの満足度を高め、仕事に対するモチベーションや定着率が向上します。
ダイバーシティ推進による課題
ダイバーシティの推進にはメリットだけでなく、デメリットが発生する可能性があるのも確かです。
どのようなデメリットが起こる可能性があるのか理解しておき、悪い影響を受けないよう対策をしましょう。
対策をすることで、デメリットを抑えダイバーシティな組織を目指せます。
1. コミュニケーションの弊害
国籍や人種、第一言語が違うなど、カルチャーの壁があることにより、コミュニケーションがスムーズに取れない場合もあります。
文化の違いを完全に理解できなくても、相互理解を高めるためのワークショップなどを通して、双方が歩み寄る努力をすることが大切です。
また、言葉の壁に関しては、海外の人も働きやすくするため、社内に日本語以外の案内を記載する企業もあります。
2. 多様な意見が存在することによるパフォーマンスの低下
多様な意見がでることによりイノベーションが起こりやすくなる一方で、意見を1つにまとめる時などは時間がかかる可能性があります。
リーダー層は、ファシリテーション力やコンセンサスを取る力をつける必要があります。
3. 無意識のハラスメントの発生
自分自身はそんなつもりはなくても、受け手と価値観や考え方が違うことで、受け手にはハラスメントだと感じられることもあるでしょう。
相手の気持ちをよく考えて発言したり、文化や価値観の違いをよく知ることで、トラブルを防ぐことができます。
まとめ
ダイバーシティな組織になることで
- 優秀な人材の獲得
- イノベーションが起こりやすくなる
- 様々な層に寄り添いビジネスができる
などのメリットがある一方で、組織の在り方について課題が出てくる場合もあるでしょう。
しかし、研修やワークショップを実施することで、目指す組織の在り方を実現することは可能です。
成功例や長年ダイバーシティ化を目指す取り組みを行っている企業の事例を参考にしながら、あなたの組織にあった方法を見つけていきましょう。