地方企業の採用担当者の中には、求人募集をしても応募者が集まらず、採用に苦戦している方が多いのではないでしょうか?
労働人口減少の影響もあり、日本全国で人材獲得競争が起こる中、地方の中小企業における採用難度は年々高まっています。
地方採用で成果を出すには、採用市場全体の動向を踏まえた上で、自社の課題に合った採用手法を選ぶことが欠かせません。
本記事では、地方採用の現状データ・よくある課題とその解決策・おすすめの採用手法・成功に向けたポイントを体系的に解説します。
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地方採用の現状

ここでは地方採用の現状について解説します。
地方採用が厳しさを増している背景として「地方における労働人口の減少」と「有効求人倍率の増加」が挙げられます。
地方採用を取り巻く状況を改めて確認しましょう。
地方の労働人口が減少している
近年は、進学や就職をきっかけに地元を離れる若者が増加しています。

総務省が公表した住民基本台帳人口移動報告(2023年)によると、転入超過となっているのは東京都・神奈川県・埼玉県など7都府県。転入超過数は東京都が6万8,285人と最も多く、前年比でさらに拡大している状況です。
15〜29歳の若年層に絞ると、東京圏への転入超過は特に顕著です。地方から都市部への人口流出が構造的に続いており、そもそもの母集団が縮小し続けていることが、地方採用を難しくする根本的な要因といえます。
有効求人倍率の高止まり
地方採用が厳しさを増している背景の一つに、有効求人倍率の高止まりがあります。
厚生労働省の「一般職業紹介状況(2024年分)」によると、2024年の年間平均有効求人倍率は1.25倍(前年比0.06ポイント低下)です。3年ぶりに低下したものの、依然として1倍を大きく上回っており、求職者が仕事を選べる「売り手市場」の状況が続いています。
特に地方では、2024年12月時点で福井県が1.91倍と全国最高水準を記録するなど、地方でも求人競争は激しく、条件面での優位性を出しにくい中小企業ほど採用に苦戦しやすい状況です。
リモート採用・副業採用という追い風
一方で、地方採用にとっての追い風もあります。場所を選ばない働き方が普及したことで、生活拠点を都市部に置いたまま地方企業に就職・副業するケースが増えています。専門性の高い都市部の人材にアクセスしやすくなった点は、採用ターゲットを広げる大きなチャンスです。リモート採用の可否を明示するだけで応募数が変わるケースも多く、自社の採用要件を改めて見直す価値があるでしょう。
地方企業の採用課題とは

そもそも地域の労働人口が少ない地方企業の採用は、都市部の企業以上に採用のやり方に工夫が必要です。
ここでは地方企業が抱えがちな採用課題を紹介します。
それぞれの課題の解決策も紹介しますので、同じ課題を抱えている企業は参考にしてみてください。
1. 全国の人材にアピールができていない
地方で採用を行うとき、もうすでにその地域に住んでいる人材や学生にターゲットを絞ってアプローチする企業は多いです。
しかし、「今は都市部で働いているが、将来的には地元に帰りたい」「忙しない都市部を離れて、地方でライフワークバランスをとりながら生活したい」など、潜在的に地方で働きたいニーズを持っている人もいます。
そんな中で、地元の求職者に絞って募集をするのは非常にもったいないことです。
「U/Iターン希望者」「地方移住希望者」など、全国にいる人材にも広くアピールすることで、採用の間口を広げることができます。
2. 自社の採用課題が定まっていない
採用がうまくいかない原因は、大きく外的要因と内的要因に分けられます。
「そもそも地方企業に就職したい人材が少ない」「首都圏の企業より高い給与を払えない」など、採用担当者の力ではどうにもできない問題は外的要因になります。
一方で、「自社の強みを言語化できていない」「分析不足で、採用競合がどこかわからない」など、採用課題に対して解決策が考えられるものは内的要因に分類できます。
外的要因を変えるのは難しいため、採用を成功させるには、採用課題を外的要因と内的要因に分類した上で、内的要因の解決に注力する必要があります。
外的要因を織り込んだ上で、内的要因を解決することで、適切な採用戦略や採用ターゲットが定まります。
3. 採用母集団が小さい
前述したように、労働人口そのものが減少していたり、地方圏から都市部への人口流出が進んでいたりすることもあり、地方採用では採用戦略を策定して適切に採用活動を進めても、採用母集団が小さくなってしまいがちです。
さらに人手不足に悩む地方企業では、「あれもやってほしい」「これもできてほしい」など、人材に求めるものが増える傾向にあります。
ただでさえ母集団が小さいのに加えて、採用要件のハードルが高まってしまうと、なかなか希望の人材が集まらず内定まで繋がりません。
そこで重要なのは、採用ターゲットを明確にする際に自社にとって必要な人材要件を見極めることです。
採用を通して自社のどんな課題を解決したいのか、またその課題を解決するのに必要なスキルは何かを定めることで、採用したい人材の要件がクリアになります。
4. 採用活動が属人化している
地方の中小企業では採用担当者が1〜2名という体制も珍しくなく、採用活動が特定の担当者に依存しやすい構造があります。担当者が異動・退職すると採用ノウハウが失われ、翌年の採用活動から仕切り直しになるケースも見受けられます。
採用フロー・選考基準・候補者とのコミュニケーション履歴を仕組みとして蓄積していくことが、属人化解消の第一歩です。採用管理システムの導入や、採用媒体ごとの効果測定を定期的に行う習慣をつけることで、担当者が変わっても再現性のある採用が可能になります。
5. 転職潜在層へのアプローチが不足している
地方採用の応募者が少ない原因の一つに、求人情報が「今すぐ転職を考えている顕在層」にしか届いていないことがあります。しかし求職者全体のうち積極的に転職を検討しているのは一部にすぎず、多くは「いい条件があれば転職してもいい」という潜在層です。
この潜在層は母数が大きい反面、求人票を能動的に検索する行動はとりません。地方企業が採用に苦戦する背景には、こうした潜在層へのリーチが構造的に手薄になっているという問題があります。顕在層だけを追いかけていると、応募数の天井は低いままです。採用母集団を広げたいなら、潜在層の存在を前提に置いた情報発信の設計が必要といえます。
地方採用を成功させる方法

ここでは地方採用を成功させるために注目するべきポイントを解説します。
1. 採用ターゲット像を明確にする
地方採用を行う際には、求める人材の性格や経験・スキル・希望年収など、ターゲットとなる人の人物像を具体的に設定しましょう。
自社が求める採用ターゲット像をあいまいにした状態で採用活動を始めると、アプローチの方向性が定まらず、求職者に自社の魅力が伝わりにくくなってしまいます。
例えば「U/Iターン希望者」という採用ターゲット像を設定した場合は、採用フローにオンライン面接を導入することで、応募のハードルを下げることができます。
このように、採用ターゲットを具体的に設定することで、採用のメッセージや打ち手も明確になり、地方採用を有利に進めることができます。
2. 地方企業で働くことの魅力を分析・発信する
「地方に住み、地方で働くこと」は、求職者にとって強力な魅力づけにもなり得ます。
一方で、地方で働く良さを明確に認識できていない求職者も少なくないため、地方企業が主体となって働く魅力を発信する必要があります。
そのために、まずは3C分析やSWOT分析などのフレームワークを活用し、競合他社と比較した自社の魅力を客観的な視点で明らかにしましょう。
近年はSNSなど、採用担当者が手軽に情報発信できるツールがたくさんあります。
採用ターゲットとマッチするSNSを選定した上で、自社の魅力を発信し続けるのがおすすめです。
3. U/Iターン人材にアプローチする
地方企業にぜひ検討してほしいのが、U/I/Jターン人材へのアプローチです。
今は都市部に住んでいても「いつかは地元に帰りたい」「地方でゆとりある暮らしをしたい」という潜在層は一定数存在しており、そのニーズに合ったメッセージを届けられるかどうかが母集団形成の鍵を握ります。
訴求の軸は「働き方」と「暮らし方」の両面です。求人票に給与・職種だけを記載するのではなく、移住後の生活イメージや地域の魅力も合わせて伝えることで、U/I/Jターン層の関心を引きやすくなります。出身地の近隣エリアへの移住を希望するJターン層は、地域への愛着と都市部での職歴を両立させたい人材が多く、地方企業との親和性も高い傾向があります。採用ページでのコンテンツ発信や移住フェアへの出展など、継続的な接点づくりを心がけましょう。
4. WEB面接を導入し、求職者の負担を減らす
WEB面接の利用はU/Iターン希望者だけではなく、地元で働く人材を採用したいときにも有効な手法です。
対面での面接と比較して、移動時間や準備の時間が少なくて済むため、求職者の応募のハードルを下げることができます。
web面接を導入するための通信環境の整備、ツールの導入なども視野に入れて、求職者ファーストの採用を行いましょう。
なお、WEB面接の導入は選考辞退率の低下にも寄与します。面接のたびに有給を取得して遠方へ出向く必要がなくなるため、在職中の候補者からの応募が増える効果も期待できます。
5. 自治体補助金・支援制度の活用
地方採用における見落とされがちな打ち手が、自治体による採用・移住支援制度の活用です。多くの都道府県・市区町村が、U/I/Jターン促進のための補助金や就職支援プログラムを提供しています。
例えば、移住者向けの住宅補助・引越費用補助を企業が代わりに案内するだけでも、候補者の意思決定を後押しする材料になります。採用担当者が自治体の担当窓口と連携し、公式な支援メニューをまとめた資料を採用ページに掲載するだけでも差別化になるでしょう。地方創生関連の補助金は毎年度更新されるため、定期的に最新情報を確認することをおすすめします。
オススメの採用手法とは

ここでは地方採用でおすすめの手法を解説します。
1. リファラル採用
リファラル採用とは、社員から自社にマッチした候補者を紹介してもらう採用手法のこと。
社員から紹介を受けた後、採用試験や面接などを行った上で採用するのが従来の縁故採用とは異なる点です。
リファラル採用のメリットとして、下記のものがあります。
- 紹介者から候補者の能力や性格などを事前にヒアリングできるため、ミスマッチが起こりにくい
- 社員の人脈を通じてアプローチするため、採用競争に巻き込まれにくい
- 求人サイトや人材紹介サービスなどの有料サービスを介さないので、採用コストを抑えられる
リファラル採用を成功させる上で重要なのが、社員の協力です。
候補者を紹介してくれた社員にインセンティブを与える、友人に自社の紹介を気軽にできるように資料やツールを用意するなど、採用担当者の方から働きかけて社員を巻き込んでいきましょう。
2. 採用広報
近年、求職者が転職面接を受ける際には事前に会社HPや会社のSNSをチェックすることがほとんどです。
それらのwebページで自社の魅力を的確にアピールすることで、求職者の集客強化ができます。
採用広報を行うメリットには下記があります。
- 自社でHPやSNSを運用すれば、費用をかけずに集客ができる
- SNSは転職を検討する前の潜在層にもアプローチできる
- 地元の地域だけではなく、全国の人材へのアプローチも容易におこなえる
発信内容は求人情報だけでなく、社員インタビューや現場レポート・地域の暮らしの様子なども組み合わせると、求職者が「働くイメージ」を持ちやすくなります。継続的な発信が信頼の蓄積につながります。
3. ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、候補者にスカウトメールを送ることで直接アプローチする採用手法のことです。求人を掲載して応募を待つ従来の採用手法とは異なり、自社が求める人材に直接アプローチできます。
求める要件を満たす人材の母数がそもそも少ない場合や、従来の採用手法ではなかなか出会えない場合はダイレクトリクルーティングを用いた攻めの採用が有効です。
スカウト文面は定型文ではなく、相手の経歴や志向に合わせてカスタマイズすることが返信率を上げる鍵です。「なぜあなたにコンタクトしたか」「自社のどんな仕事を担当してほしいか」を具体的に記載することで、候補者の温度感が高まります。
4. 地方に特化した求人サイト
近年は、一定の地域に特化したローカル求人サイトが多く生まれています。これらのサイトは地元ならではの生活情報や地域の魅力も合わせて発信していることが多く、もともと地元で働くことを希望している求職者に効率よくリーチできます。地元密着型ビジネスを営んでいる場合や、Uターン・Iターン後も長く定着してほしい人材を採用したい場合は積極的に活用しましょう。
全国向けの大手求人媒体と比べて掲載費用が抑えられるケースも多く、採用予算が限られる地方の中小企業にとってコストパフォーマンスの高い選択肢になりえます。一方で、掲載可能な職種や対応エリアに制限がある場合もあるため、自社のターゲット像と媒体の利用者層が合っているかを事前に確認した上で選定することをおすすめします。
5. ハローワークの戦略的活用
地方採用において、ハローワークは依然として重要なチャネルです。求人票の掲載は無料で行えるため、採用予算が限られる地方の中小企業にとって使わない手はありません。
ただし、求人票に掲載できる文字数は限られており、他社との差別化が難しいという課題があります。その場合は単独求人チラシの設置・単独面接会の実施を担当者に打診してみましょう。自治体によっては役所・役場のHPや掲示板にも求人情報を掲載できます。無料で使える接点を最大限組み合わせることが、予算制約のある地方採用の基本戦略です。
6. 地方大学・専門学校への訪問(新卒採用の場合)
地元の大学生を新卒で採用したい場合に有効な手法が、自社の活動エリア内にある大学・専門学校への訪問です。
地方の大学に通う学生はすでにそのエリアに住んでいる可能性が高く、地方企業で働くことへのハードルは低いでしょう。地元の優秀な若手人材を採用することで、将来の幹部候補を育成することも可能です。
大学生にアプローチするには、合同説明会への参加・個別説明会の開催など、大学の就職担当者へ打診するのが一つの手です。理系学生や技術職の人材を採用したい場合は、研究室の教授とつながることも検討しましょう。
内定辞退を防ぐフォロー施策

内定を出してからも、地方企業には都市部企業にはない離脱リスクが潜んでいます。認知度・給与・キャリアパスで比較されやすい構造だからこそ、内定後のフォローが採用成否を分ける最後の一手になります。
内定者が不安に感じるポイントを先手で解消する
内定者が辞退を考える背景には、「入社後のイメージが湧かない」「社内の人間関係が不安」「他社と比較したときのメリットがわからない」といった心理があります。内定通知後にただ合格を伝えるだけでなく、入社後に携わる業務・チームの雰囲気・研修体制などを具体的に伝えることが離脱防止の基本です。
移住を伴う場合は生活情報をセットで届ける
移住を伴うU/Iターン採用の場合は、住まいの探し方・生活環境・自治体のサポート内容を情報としてまとめて提供することも、内定者の不安軽減に直結します。「仕事は決まったが、生活がイメージできない」という不安は入社直前まで辞退の引き金になりえるため、移住者向け支援情報を一枚にまとめた資料を用意しておくだけでも、候補者の安心感は大きく変わります。
内定後フォローをプロセスとして標準化する
内定後のフォローを「担当者の気遣い」で終わらせず、連絡頻度・接触手段・伝える内容をあらかじめ決めておくことが重要です。内定通知後1週間以内に業務イメージを伝える資料を送付し、入社1か月前に現場社員との懇談機会を設けるといったフローを標準化しておくと、担当者が変わっても再現できます。内定後のコミュニケーションを採用プロセスの最終フェーズとして組み込むことが、地方採用成功の仕上げになります。
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まとめ
本記事では地方企業の採用活動の課題や現状、成功させる方法について解説しました。
地方採用を成功させるには、現状の市場データを正確に把握した上で自社の内的課題を整理し、採用ターゲットとチャネルを絞り込むことが出発点です。全国の潜在層・U/I/Jターン希望者へのアプローチ、採用広報やダイレクトリクルーティングの活用、そして内定後の丁寧なフォローまで、一貫した採用体験を設計することが辞退防止にもつながります。打ち手は多岐にわたりますが、まずは自社の課題を一つ特定し、取り組める施策から着手してみましょう。

