近年のビジネスシーンでは、健康経営や働き方改革の意識の高まりとともに「ウェルビーイング」というキーワードが注目されるようになりました。

「ウェルビーイングについて、聞いたことはあるがどんなことに気をつけるべきか分からない」

「社内でウェルビーイングの意識を高めて離職率低下や生産性向上につなげしたい」

など、ウェルビーイングを会社に取り入れて組織の活性化を実現したいという人も多いのではないでしょうか。

ここではウェルビーイングを測る指標と高め方、ウェルビーイング向上に取り組む企業の事例を解説します。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(Well-being)は、Well(よい)とBeing(状態)の複合語で、経済的指標だけでは測れない、物質的な豊かさを超えた人々の豊かさや満足感を測る指標のこと。

1946年のWHO(世界保健機関)の憲章では、Well-beingは「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」という意味で使われています。

近年、ライフワークバランスや健康経営の考え方が浸透し、従業員がいきいきと働くための環境づくりの指標としてウェルビーイングが注目されています。

ウェルビーイングの5つの指標

ポジティブ心理学の研究者であるマーティン・セリグマン博士らは「ウェルビーイングはP (Positive Emotion)、E (Engagement)、R (Relationships)、M (Meaning)、A (Achievement)の5つの要素から成り立つ」というPERMA(パーマ)理論を提唱しています。

以下で5つの要素について具体的に紹介します。

Positive Emotion(ポジティブな感情)

ポジティブな感情とは、楽しみや嬉しさ、希望、好奇心、充実感、感謝など、毎日の生活で感じる肯定的な感情を指します。

これらの感情を日常で持つことができれば、一時的にネガティブな感情に囚われてもそこから立ち直りやすいです。

この立ち直る力は「レジリエンス」とも呼ばれ、ビジネスシーンにおいて困難な状況や変化に対応する能力とも大きく関わっていきます。

Engagement(エンゲージメント)

エンゲージメントは日本語に訳すと「没頭・熱中」のことで、集中して物事に取り組めている状態を指します。

過去の後悔や未来の不安に襲われることなく、目の前の仕事に集中できることは、ストレスの軽減に役立ちます。

この没頭状態は、本人のスキルや特性に対して適切なバランスのチャレンジに取り組んでいるときに生じることが多く、そのため企業においては従業員の特性に応じた業務の割り当てが重要となります。

Relationship(豊かな人間関係)

家族や友人、社内における人間関係など、他者との豊かなつながりは人生の幸福度に直結すると言われています。

転職サイトを運営するエン・ジャパンの調査では「会社に伝えなかった”本当の退職理由”」の第一位に「人間関係の悪さ」がランクインするなど、会社の人間関係は離職にも大きく関わってきます。

人間関係は社会的なつながりが重要であるため、チームの一体感の醸成や従業員との関係構築はウェルビーイング向上に重要な役割を果たします。

Meaning(意味や意義)

人は「人生に目的や意味を見出したい」と考えるものです。

刹那的な楽しみや快楽ではなく、長期的な視点おいて意義を見出すことは、仕事に意味や意義を見出すことは、困難や逆境に直面したときそれを乗り越えるヒントとなります。

金銭的な成功や名声、社会的な大義、自分のやりたいことができるなど、仕事において重視することは人によって様々です。

従業員一人ひとりの目指すキャリアを知る必要があるのは、この「意味」や「意義」がウェルビーイングの実現に直結するからです。

Accomplishment(成功・達成)

目標に向かって努力し、最終的に勝利や成功体験を掴み取ったとき、大きなポジティブ感情が生じます。

また、過去の成功体験を振り返ることで、自分の人生に誇りを持つことができ、ウェルビーングの向上につながります。

特に、入社からまだ日が浅い社員に成功体験を積ませることは、周囲からの承認を得る上でも非常に重要な要素となります。

ウェルビーイングを高めるためには

ここでは、企業が従業員のウェルビーイングを高めるためにできることを具体的に解説します。

長時間労働の禁止

ウェルビーイング向上の第一歩は、長時間労働の是正です。

経営トップ自らがメッセージを発信し、従業員のワークライフバランスを確保するような仕組みを作りましょう。

具体的には機械化・IT化による生産性向上、ノー残業デーの導入、必要な人手の採用、取引先とのコミュニケーション改善などの施策が有効です。

とはいえ、現実に即していない改革はかえって反発を生みます。

まずは労働状況の実態を調査し、どの部署でどのくらいの残業が発生しているのかを把握することが重要です。

社員の健康状態を把握

社員の健康状態を把握するために、定期的な健康診断やメンタルヘルスチェックを実施しましょう。

これらの検査のほか、人間ドックや歯科健診の推進、予防接種の補助を行うのもいいでしょう。

企業から従業員へ向けて心身の健康維持を行うよう働きかけることで、一人ひとりの生産性が向上するとともに、「会社は社員の健康に配慮してくれているんだ」ということが伝わります。

社内コミュニケーションを活性化

社内コミュニケーションの活性化は、ウェルビーイングを向上させるために重要です。

従業員が「心理的安全性の高い職場」と感じられる環境にすることで、従業員同士の関係性が改善し、安心して意見を表明したり、チーム内での協力が進んだりするようになります。

具体的には、定期的な1on1ミーティングや、チームビルディングのためのイベントを実施しましょう。

また社内SNSの活用し、意見交換の場を設けるのも有効です。

ウェルビーイングをおこなっている会社事例

ここでは実際にウェルビーイング向上のための施策を実施している会社を紹介します。

トヨタ

「幸せの量産」をミッションに掲げるトヨタでは、2021年よりトヨタ自動車 未来創生センター・豊田中央研究所・Toyota Research Instituteが集まり「Emotional Well-Being研究会」を立ち上げるなど、ウェルビーイングの実践に真剣に取り組む企業の一つです。

そんな同社ではトップ自らが社員に「仕事以外の時間を楽しむように」とメッセージを出し、従業員のワークライフバランス向上を図る取り組みをおこなっています。

また国籍や人種・ジェンダー・ライフイベントの有無など、多様なバックグラウンドを持つ人同士が働くために、相談窓口の設置や社内理解促進施策をおこなうなど、さまざまなことをおこなっています。

味の素ホールディングス

味の素株式会社は2018年に健康経営宣言を制定、「社員のこころとからだの健康を維持・推進できる職場環境づくり」を進めている会社です。

年に一回、国内で働く全従業員と産業医・保健師・看護師が面談を行い、適切な保健指導などにつなげています。

そのほか、悪性腫瘍の早期発見に有効な自社製品「アミノインデックス」を使った任意のスクリーニング検査を実施し、従業員のがんの早期発見に貢献しています。

株式会社アシックス

スポーツや健康に関連する製品を扱う株式会社アシックスでは、従業員だけではなく、社員の家族に対してもウェルビーイング向上の取り組みをおこなっています。

健康促進プログラムやメンタルヘルスケアなど、健康維持にかかわる様々なプログラムやイベントを実施しているほか、健康情報のポータルサイトを整備・対象者の興味・関心に合わせた情報発信を実施しています。

ウェルビーイング研修ならバヅクリ

バヅクリでは「ウェルビーイング研修〜良好な人間関係と組織の心理的安全性を育む〜」は、幅広い世代に対応したウェルビーイング研修を提供しています。

ウェルビーイングな環境を作るための豊富なワークを用意しており、実践的な内容も多いため、研修を受けた後に学びを活かしやすいのが特徴です。

またアイスブレイクや対話ワークショップを多く用いており、職場で良好な人間関係を築きやすく、ウェルビーイングを醸成する基盤となる「心理的安全性」を高めることができます。

まとめ

今回はウェルビーイングの指標や高める方法、日本の企業における事例を説明しました。

ウェルビーイングが向上することは、生産性の向上や離職率の改善など様々なメリットがあります。

ぜひこの記事を参考に、バヅクリのウェルビーイング研修を取り入れてみてはいかがでしょうか。