「多様性」という言葉は、現代のビジネス環境でますます重要性を増しています。社会が多様化し、価値観や人々のニーズが多様になる中で、企業はこれに対応するために積極的な取り組みを求められています。そして、ダイバーシティを実現するために、労働組合が果たす役割は非常に重要です。
本記事では、企業におけるDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の重要性について深く探求し、労働組合がその推進に果たす役割と具体的な取り組みについて紹介します。また、DE&Iを推進することで得られるメリットについても触れていきます。
※バヅクリでは、DE&Iや多様性に関する研修をはじめ200種類以上のアクティブラーニング研修を提供しています。ご興味がある場合こちらからダウンロードいただけます。
目次
多様性の重要性と社会の変化
現代社会は、急速に変化し続けています。グローバル化の進展や技術の進歩により、人々のつながりはますます広がり、異なる背景や文化を持つ人々が交流する機会が増えています。このような社会の変化に伴い、多様性が企業においてますます重要となっています。
多様性とは、人々が異なる性別、人種、民族、宗教、性的指向、能力、年齢、経験、バックグラウンドなどを持っていることを指します。企業が多様な人材を受け入れ、尊重し、活用することは、様々な視点やアイデアを生み出し、革新と競争力を促進する重要な要素となります。
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(Diversity, Equity, and Inclusion)は、多様性を尊重し、公平さを実現し、すべての人々を包括する環境を築くことを目指す考え方です。
ダイバーシティとは
「ダイバーシティ」は、人々の異なるバックグラウンド、特性、経験、意見などの多様性を指します。これには、人種、民族、性別、性的指向、年齢、障害の有無、宗教、社会経済的地位などが含まれます。組織や社会が多様な人々を受け入れ、その違いを認識し尊重することは、創造性やイノベーションの促進、ビジネスパフォーマンスの向上につながると考えられています。
エクイティとは
「エクイティ」は、公平さや正義の原則に基づいて、不平等や差別を排除しようとする概念です。エクイティの追求は、構造的な不平等や社会的な格差を解消し、すべての人々が公正に扱われる社会や組織を創り出すことを目指します。エクイティは、平等ではなく、個別のニーズや背景に応じた適切な支援や資源の配分を意味します。
インクルージョンとは
「インクルージョン」は、多様な人々が組織や社会の一員として自己を認められ、尊重され、参加できる環境を作り出すことを指します。インクルージョンの目標は、人々が自分らしく活躍できる場を提供し、意見やアイデアを自由に表明できるようにすることです。インクルーシブな環境では、人々の多様な視点や経験が尊重され、組織の活力や生産性が高まるとされています。
DE&Iのメリット
DE&Iを推進することは、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは、その具体的なメリットについて紹介します。
創造性と革新力の向上
異なるバックグラウンドや視点を持つチームは、より創造的なアイデアを生み出し、革新的な解決策を導きやすくなります。多様な人々が集まり、意見や経験を共有する環境は、新しいアイデアの発掘やビジネスの成長を促進します。
顧客満足度と市場シェアの向上
多様な社会において、顧客も多様性を求めています。DE&Iの取り組みにより、顧客の多様なニーズや要求に柔軟かつ効果的に対応することができます。顧客満足度の向上は、顧客ロイヤルティの向上や市場シェアの拡大に繋がります。
社内のモラルとエンゲージメントの向上
DE&Iの推進は、従業員のモラルとエンゲージメントを高める効果があります。多様性を尊重し、公平性と平等性を実現する組織文化は、従業員が自身のアイデンティティを受け入れ、活躍する環境を提供します。その結果、従業員の満足度とパフォーマンスが向上し、離職率も低下するでしょう。
人材の確保と競争力の強化
さらにDE&Iの取り組みは、優れた人材の獲得と留任にもつながります。多様性を重視する企業は、幅広い人材プールから選択することができ、人材確保の競争力を強化します。また、多様性を尊重し活用する組織は、個々の能力や成果を評価し、成長の機会を提供することで従業員のモチベーションやキャリアの発展を促進します。これにより、優秀な人材の獲得競争において優位性を持つことができます。
法的コンプライアンスとリスク軽減
多様性への取り組みは、法的コンプライアンスの重要な要素でもあります。労働法や差別禁止法に対する遵守は、企業のリスクを軽減し、法的なトラブルや負担を回避するのに役立ちます。
DE&Iを実現するための要素
DE&Iを実現するためには、企業が取り組むべき重要な要素や戦略があります。以下では、その要素について探求していきます。
リーダーシップのコミットメント
DE&Iの推進は、組織の最上位のリーダーシップからのコミットメントが必要です。経営陣がDE&Iの重要性を理解し、それを組織文化や戦略の一部として明示的に示すことが重要です。リーダーシップのコミットメントは、従業員に対する信頼を与え、組織全体での取り組みを促進します。
多様な人材の採用と雇用
DE&Iを実現するためには、多様な人材の採用と雇用が欠かせません。採用プロセスや採用チームの多様性を確保し、候補者の多様性を重視することが重要です。さらに、雇用段階での公平な処遇やキャリアの発展の機会を提供することで、多様な人材の参加と成長を促進します。
インクルーシブな組織文化の構築
DE&Iの推進には、インクルーシブな組織文化の構築が重要です。従業員が自身のアイデンティティを受け入れ、自由に意見を表明し、参加できる環境を作ることが求められます。組織文化は価値観や行動基準によって形成されるため、明確なポリシーやガイドラインの策定、トレーニングプログラムの実施、リーダーの役割モデリングなどが重要です。
コミュニケーションと意識啓発
DE&Iを推進するためには、従業員間のコミュニケーションと意識啓発が重要です。オープンなコミュニケーションチャネルやフィードバックの仕組みを整えることで、従業員が互いに理解を深め、違いを受け入れる文化を醸成することができます。また、定期的なトレーニングやワークショップを通じて、DE&Iの意識を高めることも重要です。
これらの要素を組み合わせることで、DE&Iを推進するための基盤が構築されます。しかし、ただこれらの要素を導入するだけでは十分ではありません。労働組合にもDE&Iを推進するための具体的な役割が求められます。
次に、労働組合がDE&Iを推進させるために取り組むべき具体的な事項についてご紹介しましょう。
労働組合の役割と具体的な取り組み
労働組合は、DE&Iを推進するために重要な役割を果たすことができます。以下では、労働組合が具体的な取り組みを通じてDE&Iを推進する方法について紹介します。
ダイバーシティポリシーの策定と実行
労働組合は、組合員の多様性を尊重し、差別や偏見を排除するためのダイバーシティポリシーの策定と実行を行うことが重要です。組合員の意見やニーズを反映させながら、包括的なポリシーを作成し、組合活動や労働条件においてダイバーシティを促進します。
ダイバーシティ教育とトレーニングの提供
労働組合は、組合員に対してダイバーシティの重要性やインクルーシブな行動の意識を高めるための教育やトレーニングを提供することができます。多様なバックグラウンドや文化を理解し、差異を受け入れる能力を高めるための取り組みが含まれます。
権利の保護と公正な処遇の確保
労働組合は、すべての組合員が公平かつ公正に扱われることを確保するために働きます。DE&Iの観点から、差別や偏見に基づく不当な扱いに対して声を上げ、組合員の権利を守る役割を果たします。
ネットワーキングとサポートの提供
労働組合は、組合員同士のつながりや相互サポートの促進に努めることができます。特に、マイノリティやマージナライズされたグループに対して、より強力なネットワークを構築し、サポート体制を整えることが重要です。このような取り組みにより、組合員全体の意識や関与が高まります。
労働組合が多様性を推進するためにオススメの研修をご紹介
多様性・相互理解ワークショップ〜あなたの弱みをみんなで強みに変える!〜
他者の多様性を受け入れ、相互理解が深いチームになることを目指すワークショップです。
このワークショップでは多様性を認めることはどういったことか座学で学んだ後に、自分の良いところや得意なことを3つ書く『ポジティブキャラクター』、逆に自分の良くない部分・苦手なことを3つ書き出す『ネガティブキャラクター』を実施します。
そして、〝心配性=慎重である〟などとネガティブな部分をポジティブに変換する『キャラクターデトックス』を行います。
このワークショップでは、自分への理解と、その他の受講者への理解の両方を深めることができます。
従業員同士、相互理解が深まることで、コミュニケーションが活発になったり、自己開示が進んだりと、ダイバーシティな組織への成長が加速するでしょう。
DE&Iワークショップ 〜無意識の思い込みに気づき多様な視点を持つ〜
このワークショップは、多様性についての基礎知識やさまざまな問題について学び、参加者同士の共有や議論を通して多様性とは何かを理解し、相互理解を深めることを目的としています。
ワークを通して、受講者の中にある固定概念や思い込みを取り除き、自分とは異なる価値観への理解を深めて行けるカリキュラム内容となっています。
職場環境アイデアソン 〜職場をもっと過ごしやすくする方法を考えよう〜
このプログラムは職場環境への意識を高めるワークショップで、
・誰もが気持ちよく働ける職場環境にするにはどうしたらいいかを考える
・職場環境を良くするために何をすべきか、アクションプランに落とし込む
といった内容を実施することで、職場への愛着度や、仕事へのモチベーション、そしてパフォーマンスを高めていきます。
労働組合の多様性に関する取り組み事例
ここでは、多様性に関する労働組合としての取り組み事例をご紹介いたします。
東証プライム市場上場 日本最大手自動車メーカー会社 労働組合
多様性に関する課題
生産性/効率が重視される製造現場において職場内の風通しが悪化。年齢の高い管理職員に対して、若手メンバーの価値観やWillを受け入れる意識/感覚の醸成が必要となりました。
取り組み内容
製造現場勤務の管理職メンバーを200名を対象に、バヅクリの多様性/相互理解ワークショップを50名ずつ計4回開催しました。また、別途組合支部毎に希望制で多様性/相互理解ワークショップ、DE&Iワークショップを実施し、お互いの価値観を理解し受け入れることが、職場の心理的安全性を醸成し、さらなる業務効率化につながることへの理解を促進することができました。
参加者の声
- そもそも自分の中に年下やZ世代は「こういう価値観」という思い込みがあったことに気付かされました。メンバーひとりひとりを理解することからはじめていければと思います。
まとめ
DE&Iは、現代の企業において不可欠な要素となっています。多様な人材を受け入れ、包括的な組織文化を築くことは、企業の競争力や持続可能な成長に直結します。労働組合がDE&Iを推進するために果たすべき役割は大きく、具体的な取り組みも豊富に存在します。
これからの時代は、多様性を受け入れ、DE&Iを推進する組織がより強くなることが予想されます。私たちが生きる社会も多様性が求められる時代です。私たちの未来をより良いものにするために、企業と労働組合が手を取り合い、DE&Iの実現を模索してみてはいかがでしょうか。
※バヅクリでは、DE&Iや多様性に関する研修をはじめ200種類以上のアクティブラーニング研修を提供しています。ご興味がある場合こちらからダウンロードいただけます。