働き方の変化により、多くの企業がオンボーディングの方法に変更を加え、探り探りに施策を実施してきたと思います。
今までは対面の人事面談や、内定者向けのイベント、入社後研修を通して進められてきたオンボーディングですが、新しい働き方や組織のあり方に適応するために改めて施策内容を見直す必要があります。
今回は、新しい働き方が普及する中で、各社の取り組むオンボーディングにどのような影響があったのか確認し、オンラインでも実施できるオンボーディング事例についてまとめます。
目次
そもそもオンボーディングとはなにか?
オンボーディングとは、英語でon-boardingと表記され、新たに船に乗船してきたメンバーに「Welcom aboard!(ようこそ)」と歓迎する言葉が由来となっています。
人事採用の場面では、新入社員の内定~入社までのプロセスや、内定者・新入社員研修などを指す言葉として使われます。
オンボーディングは、新入社員・中途社員問わず、新たに入ってくる人材に対して実施します。
場合によっては、社内の配置転換で新しい部署へ異動するメンバーに対しても、オンボーディングを行います。
オンボーディングを行うことで、新しい組織に入るまでの候補者の不安を解消し、入社後の早期即戦力化を期待できます。
通年採用を行う多忙なスケジュールの中で、人事担当者と配属先の社員が協力をしながらオンボーディングを進めていくことが求められますが、なかなかオンボーディングの見直しをする余裕がない方が多いのではないでしょうか。
新しい働き方におけるオンボーディングの実態
近年の働き方の変化によって、在宅勤務のまま新人を受け入れざるを得なかった企業も少なくありません。
それでは各社、どのようなオンボーディングを行っていたのか、企業アンケートを確認してみましょう。
オンボーディングに何らかの変更をした企業が過半数以上
同調査によると、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、入社前のオフィス見学や人事との面談、入社前後の顔合わせや研修などのオンボーディング施策に何かしらの変更を加えた企業が過半数を占めました。
中でも、「業務時間外に行う非公式のイベント」は、37%の企業が中止としています。
その他にも、OJTは全体の26%、配属先メンバーとの顔合わせは22%、配属先主導の研修や配属先上司との顔合わせについて21%の企業が取りやめをしていることが分かりました。
オンボーディングを少人数・オンラインに変更した企業が大多数
同調査にて、オンボーディングに対して「具体的にどのような変更をしたのか」尋ねたところ、ほとんどの企業が少人数への切り替えやオンライン対応へと変更していました。
それに伴い、会場の変更やオンボーディングに関するイベント・研修日時の変更を余儀なくされています。
特に、人事や配属先上司との面談は、入社前後ともにオンラインで実施する企業が目立ちました。
つまり、内定後1度も対面で人事や上司と会わずに、入社後もずっとオンラインのやり取りを続けている人たちが多いということです。
オンボーディング代替案
オンボーディング施策に何かしらの変更を加えた企業は、次のような新たな取り組みを行っていたことが分かりました。
- コミュニケーション頻度を増やした
- 非公式のイベントの代わりにオンライン飲み会を実施した
- Web会議や新たなコミュニケーションツールを導入した
- OJTが難しいため研修内容を拡充した
- チーム活動を積極的に取り入れた 等
これらの取り組みを実施することで、働き方などに変化があっても「オンボーディングを行ったことで中途入社者の入社後活躍に良い影響があった」と答えた企業が全体の48%となりました。
決して高い数値ではないものの、変化の中でオンボーディング内容を見直したことで、前向きな結果が出ていることが読み取れます。
新入社員のオンボーディングの見直しは急務
オンボーディングの中でも、新入社員に対するオンボーディングの見直しは急務と言えます。
新入社員は「社会人としてうまくやれるかな」「先輩や同期とうまくコミュニケーションとれるかな」など、さまざまな不安を抱えながら入社日を迎えます。
今までは新入社員の不安を解消するための内定式や内定者懇親会、OJTを含んだ入社後研修を経て企業に馴染んでいくのが一般的でした。
しかし、緊急事態宣言が重なった2020年の4月は、オンラインで入社式や初期研修を行う企業と、完全自宅待機で何も手を打たなかった企業に対応が分かれてしまいました。
社会人経験が長い中途社員とは比較にならないほど、2020年度の新入社員にコロナが与えたインパクトは大きいです。
今まで通りのオンボーディングではなく、抜本的にオンボーディングや付随する新入社員研修などを見直す必要があると言えます。
ジョブ型雇用や副業者にも対応できるオンボーディングを
組織体制を見直す企業が多い中、新たにジョブ型雇用を取り入れる企業も増えてきました。
また、ジョブ型雇用に副業・複業ブームが掛け合わされることで、ライトな形の採用が増え、企業に短期的に出入りする人材も増えていくでしょう。
今後は中長期的に働く正社員だけでなく、プロジェクト型で働くジョブ型雇用の副業・複業者に対してのオンボーディングも重要視されると予想されます。
これらのことから、改めて今のタイミングで自社のオンボーディングについて再度見直しが必要と言えます。
リモート環境においてどのようにオンボーディングを実践すればよいのか?
リモート環境でオンボーディングをスムーズに進めていくために、どのような施策を実施すればいいのでしょうか?
今回は、オンボーディングを次の4つに分類して、それぞれの具体的な実践方法を解説していきます。
- テクニカルオンボーディング(技術的)
- ビジネスオンボーディング(業務についてフォロー)
- ソーシャルオンボーディング(社員同士のつながり)
- オーガナイゼイショナルオンボーディング(組織とのつながり)
テクニカルオンボーディング(技術的)
勤怠管理、経費精算、社内イントラの使用方法、社用携帯やPCの配布と初期設定など、ソフト・ハードの技術面に対するオンボーディングをテクニカルオンボーディングと呼びます。
リモート環境では、社員の横について教えてあげることが難しいです。
勤怠管理や経費精算などの社内ルールや、業務ツールの使い方をNotionやGoogleグループといったワークスペースにまとめたり、チャットボットを活用してリアスタイムでフォローができる体制を整えるのがポイントです。
ビジネスオンボーディング(業務についてフォロー)
入社後の立ち上がりをスムーズにするため、業務・人脈・知識などを提供するのがビジネスオンボーディングです。
リモートワーク環境下でもビジネスオンボーディングをスムーズにするためには、オンライン面談で明確に、企業のMVVや個人目標を共有することが重要です。
SalesforceやTrello、各種CRMなど業務で日常的に使用するツールは、新入社員と対面で操作方法をレクチャーするのが難しいです。
思わぬところでつまずいているのに気付かない可能性もあるので、1週間・1か月毎に「何か困りごとはないか」と確認する必要があるでしょう。
ソーシャルオンボーディング(社員同士のつながり)
チーム、組織に受け入れられ、社員同士のつながりを感じるためのオンボーディングです。
リモートワークでは、非計画的なコミュニケーション(雑談など)が減ってしまうため、ソーシャルオンボーディングは1番注意が必要です。
- メンター、メンティー制度を取り入れる
- 1on1やチームでの雑談機会を増やす
- 可能な限り顔を見せた形でのウェブ会議を行う
など、オンボーディングの変更を行うと良いでしょう。
オーガナイゼイショナルオンボーディング(組織とのつながり)
組織とのつながりをつくるためのオンボーディングです。
企業のミッション、ビジョン、バリュー、行動指針や代表からのメッセージ、自組織ならではの価値観について、オンラインでも繰り返し伝える場をつくりましょう。
本来は、オフィスに一同が集まることで組織を感じやすいものですが、オンラインでは非言語的コミュニケーションが欠如してしまいます。
そのため、組織ならではの雰囲気や社員の特徴、メッセージ性の共有が難しいのです。
可能な限り、複数の社員でオンライン上で話す機会を作ったり、企業としての考え方や背景も合わせて伝え続けると良いでしょう。
リモート環境で行うオンボーディング・他社事例
リモート環境で各社どのようなオンボーディングを行っているのでしょうか?
ここでは具体的な他社事例についてご紹介します。
事例1. 株式会社サイバード
株式会社サイバードでは、全社員のコミュニケーションの活性化と相互理解の深化を通じ、リモートワーク下でのオンボーディングの強化及び、事業の更なる成長を図るためにオンラインチームビルディング「バヅクリ」を導入しました。
バヅクリはバヅクリ株式会社が運営する研修・チームビルディングのサービスで、プロの講師による参加型グループワークを行います。
昨今の情勢からみんなで集まってリアルイベントを行うことが難しくなった中、オンライン上で社員が業務とは離れたところで交流する機会を作っています。
【参考】『費用対効果では測れないーリモートワークでの社員同士の関係構築を促進ー「バヅクリ」がお互いを知る機会-新たな関係性構築のきっかけにー』
事例2. 株式会社ヤプリ
株式会社ヤプリでは、新入社員向けのオンラインオンボーディングとして、次のような取り組みを行いました。
- Yappli BOXの配布
- 入社後3か月のオンラインプログラム(研修)の実施
- オンライン寄せ書き 等
直接会えなくても、郵送で社内グッズや参考書籍、代表からの手紙をプレゼントすることで新入社員は歓迎されていると実感できます。
Yappli BOXの中身
- 代表取締役 庵原さんからのお手紙
- 広がるアプリ「最新活用事例」CASE STUDY BOOK
- Yappli Tシャツ
- Yappli パーカー(ジップタイプ)
- Yappli パーカー(被りタイプ)
- Yappli 紙袋
- 書籍「THE MODEL」
事例3. GMOペパボ株式会社
GMOぺパボ株式会社は、コロナ前後で変わりなくオンラインのオンボーディングを実施しています。
エンジニア向けの3か月間のオンボーディングプログラムの中で次の施策を実施しています。
- 自分自身が目指したい姿を表明する「やっていきシート」の作成
- CTOやメンターとの1on1
- スケジュールランチ
- Slack上の何でも聞けるチャンネルの設置 等
事例4. 株式会社キャスター
全社員がフルリモートワークで働く株式会社キャスターでは、コロナ前からリモートでのオンボーディングを実施しています。
- 入社初日の全体研修
- 2日目の事業部研修
- 3日目以降にチーム配属でのOJT
- Googleフォームを用いた理解度チェックの小テスト 等
オンラインでも新入社員に大切なポイントが伝わっているか、確かめるための小テストを用いている点がポイントです。
まとめ
多くの企業がリモートワークを導入し、新型コロナウイルスの流行下では、採用や新入社員向けオンボーディングを変更・中止する企業が相次ぎました。
オンボーディングの中でも、オフィスに出社してもらうことで共有できていた「社風・雰囲気・社員の人となり」を伝えるのが難しくなっています。
オンラインで行うオンボーディング施策に、コミュニケーションを活性化するためのゲームを用いたり、オンラインでのチームビルディングに特化した専用のツール・サービスを利用するのも良いでしょう。
また、対面よりも新入社員との接触頻度を上げることや雑談を意識しながら、新たなオンボーディング施策を設計していってください。