エンゲージメント改善等の人的資本に関する取り組み結果を有価証券報告書に反映させることは、組織がステークホルダーとコミュニケーションをとる上で重要です。
逆に言えば、人的資本開示義務が生じた昨今では、エンゲージメントを初めとする人的資本への取り組みへの重要性が更に高まっています。

本記事では、その方法や具体的な手法について詳しく解説します。

エンゲージメントとは

ビジネス・HR領域におけるエンゲージメントとは、モチベーションやロイヤルティを含む、従業員の全体的な関与度合いを表します。

従業員エンゲージメントは、従業員が組織の目標や価値観に共感し、自発的に取り組もうとする状態を指します。

エンゲージメントが高い状態の従業員は、組織に対して積極的に貢献し、生産性が高くなる傾向にあります。

エンゲージメントとは?意味や重要性・向上ポイント・他社事例などを解説

人的資本開示とは

人的資本開示(Human Capital Disclosure)は、組織が自社の人的資本に関する情報を公開することを指します。人的資本は、従業員の知識、スキル、経験、創造性など、組織における人々の能力や付加価値を表す概念です。

人的資本開示は、組織が人的資本の重要性や価値、効果、パフォーマンスを外部のステークホルダーに明示する手段として利用されます。人的資本の活用方法や開発プログラム、トレーニングの実施、ダイバーシティとインクルージョンの取り組み、従業員エンゲージメント、労働条件などの情報を開示することで、透明性を高め、ステークホルダーの信頼を獲得することができます。

人的資源(HR)領域での国際的な基準を提供するために国際標準化機構(ISO)が制定した規格であるISO30414では、下記の領域を対象としています。

コンプライアンスと倫理

組織が法令や規制に適合し、倫理的な原則を遵守しているかどうかに関する指標です。例えば、法的コンプライアンスへの従順性や倫理的行動規範の遵守度を評価します。

コスト

人的資源に関連するコストに関する指標です。組織が人材採用、トレーニング、福利厚生、雇用契約などにいくらの費用を費やしているかを把握します。

ダイバーシティ

組織内の多様性に関する指標です。性別、人種、年齢、障がい、性的指向などの要素に基づいて、組織のダイバーシティ戦略やダイバーシティ指標を評価します。

リーダーシップ

組織のリーダーシップの質や効果を評価する指標です。従業員の管理職への信頼等の指標です。

組織文化

エンゲージメント等従業員意識と従業員定着率を測定する指標です。

健康、安全

労災等に関連する指標です。

生産性

人的資本の生産性と組織パフォーマンスに対する貢献をとらえる指標

採用・異動・離職

人事プロセスを通じ適切な人的資本を提供する企業の能力を示す指標です。

スキルと能力

個々の人的資本の質と内容を示す指標です。

後継者計画

対象ポジションに対しどの程度承継候補者が育成されているかを示す指標です。

労働力

従業員数等の指標です。

参考:https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/ISO30414

本記事の主題であるエンゲージメントは、ISO30414の「組織文化」領域の指標として定められています。

エンゲージメントサーベイの活用と取り組み結果

エンゲージメントサーベイは、組織が従業員のエンゲージメントを測定するために活用される調査ツールです。このサーベイは、従業員の意識、モチベーション、ロイヤルティなどの要素を評価し、組織のエンゲージメント状況を把握することを目的としています。

以下に、エンゲージメントサーベイの概要とその実施の意義、そして取り組み結果の分析と評価方法について説明します。

エンゲージメントサーベイの概要と実施の意義

エンゲージメントサーベイは、定量的・定性的な質問を通じて従業員の意見や感情を収集する手法です。このサーベイを実施することで、以下のような情報が得られます。

・従業員の満足度やモチベーションのレベル

・組織へのロイヤルティや関与(エンゲージメント)の度合い

・コミュニケーションやリーダーシップの評価

・ワークライフバランスやキャリア成長の機会への満足度など

エンゲージメントサーベイは、組織にとって重要な意義を持ちます。まず、従業員のエンゲージメント状況を把握することで、問題点や課題を特定し、改善の方向性を見出すことができます。

また、従業員の声を聞き、彼らのニーズや要望に応えることで、従業員満足度やモチベーションの向上につながります。さらに、組織全体のパフォーマンスや生産性の向上、離職率の低下など、ポジティブな影響をもたらすことも期待できます。

エンゲージメントサーベイの結果を有価証券報告書に反映させる手法の紹介

エンゲージメントサーベイの結果を有価証券報告書に反映させる方法には、以下のような手法があります。

エンゲージメントサーベイを実施した事実の記載

エンゲージメントサーベイを実施した事実を記載します。従業員の意見に耳を傾けている姿勢や、組織改善の意向があることを投資家やステークホルダーにアピールします。

エンゲージメントサーベイの結果の要約

サーベイ結果を要約し、有価証券報告書の適切なセクションに掲載します。例えば、従業員の満足度やエンゲージメントのレベル、重要な課題や改善施策の概要などを記載します。

結果の傾向や比較データの開示

エンゲージメントサーベイの結果に基づいて、組織のエンゲージメントの傾向や改善の進捗状況を開示します。過去の結果や業界のベンチマークデータとの比較を通じて、組織のエンゲージメントの状況を客観的に評価することも重要です。

また、定量的な目標数値を設定している場合は、結果と目標との乖離やその理由の考察なども記載します。

アクションプランの開示

サーベイの結果を元に、具体的なアクションプランや改善施策を記載します。組織が取り組む予定の課題、目標、実施予定の改善プログラムなどを開示することで、投資家やステークホルダーに対して組織のエンゲージメント改善への取り組みを示します。

以上のように、エンゲージメントへの取り組みを有価証券報告書に反映させることができます。

エンゲージメントサーベイの結果を有価証券報告書に反映させている事例

金融庁「記述情報の開示の好事例集 2022」を参考に、有価証券報告書への具体的な記載事例についてご紹介します。

東急株式会社

従業員エンゲージメントや、管理職に占める女性比率等、目標と実績に分けて記載を行っています。

株式会社キッツ

「働きがい」や「働きやすさ」などの従業員エンゲージメントの目標値及び、具体的な取り組みに関する記載を行っている事例です。

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エンゲージメント以外の人的資本開示への取り組みと関連項目

エンゲージメント以外の項目と記載内容についても触れておきます。

ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み

ダイバーシティ&インクルージョンは、組織の力を引き出し、創造性やイノベーションを促進するために重要な要素です。組織は、従業員の多様なバックグラウンドや視点を尊重する姿勢の表明やそれらを受け入れるための環境整備を行うことで、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを示すことができます。有価証券報告書においては、ダイバーシティ&インクルージョンに関する具体的な方針や目標、進捗状況などを開示することが重要です。

従業員トレーニングプログラム

従業員のスキルや能力の向上は、組織の成果に直結する重要な要素です。組織は、従業員の成長と発展を支援するためにトレーニングプログラムを提供することがあります。有価証券報告書においては、従業員トレーニングプログラムの目的、内容、参加者数、効果などを開示し、組織が従業員の成長に取り組んでいることを示すことが重要です。

健康・安全・福利厚生の取り組み

従業員の健康と安全は、組織の持続可能性と従業員の幸福感にとって不可欠な要素です。組織は、従業員の健康管理や安全対策、福利厚生プログラムなどへの取り組みを開示することがあります。有価証券報告書においては、これらの取り組みの詳細や効果、従業員への影響などを開示することで、組織の従業員への配慮や責任を示すことが重要です。

有価証券報告書におけるこれらの取り組み結果の反映方法は、具体的なデータや指標の開示、目標の達成度や進捗状況の報告、取り組みの効果や成果の評価などがあります。また、過去の結果との比較や業界のベンチマークとの対比なども重要な要素です。組織は、これらの取り組み結果を有価証券報告書に適切に反映させることで、従業員への関心や価値観、持続可能な成長への取り組みを投資家やステークホルダーに示すことが求められます。

人的資本開示のポイント

続いて、金融庁「記述情報の開示の好事例集 2022」に記載されている、開示のポイントについて以下にご紹介します。

・人的資本可視化指針で示されている2つの類型である、独自性(自社固有の戦略や、ビジネスモデルに沿った取組み・指標・目標を開示しているか)と比較可能性(標準的指標で開示されているか)の観点を適宜使い分け、又は、併せた開示は有用

• KPIの目標設定にあたり、なぜその目標設定を行ったのかが、企業理念、文化及び戦略と紐づいて説明されることは有用

• マテリアリティをどう考えているのかについて、比較可能性がある形で標準化していくことは有用

• グローバル展開をする企業は、サステナビリティ情報の開示において、例えば、人権に関する地政学リスク等、ロケーションについて着目することも有用

• 独自指標を数値化する場合、定義を明確にし、定量的な値とともに開示することは有用

• 過去実績を示したうえで、長期時系列での変化を開示することは有用

• 背景にあるロジックや、前提、仮定の考え方を開示することは有用

• 人的資本の開示にあたり、経営戦略をはじめとする全体戦略と人材戦略がどう結びついているかを開示することは有用

まとめ

エンゲージメント改善と人的資本開示義務に取り組むことは、組織にとって重要な課題です。エンゲージメントの向上は、組織の生産性やパフォーマンスを向上させる効果があります。

一方、人的資本開示は、組織が自社の人的資本に関する情報を公開することで、透明性を高め、投資家やステークホルダーの信頼を獲得するための重要な手段です。エンゲージメントサーベイの活用や他の人的資本開示への取り組みも、有価証券報告書に反映させるために重要な役割を果たします。

エンゲージメントサーベイの活用やエンゲージメント向上への取り組みについて、本記事をご覧の皆様に少しでも貢献できたら幸いです。