少子高齢化や転職が一般的なものになった影響もあり、人材不足に悩む会社が増えてきています。
特に離職率が高い会社では、残った社員に業務が集中してしまい生産性が低下したり、戦略や施策の実行が滞ったりなど、経営に大きな支障をきたします。

実は、人材の離職を防止するには研修施策が有効です。
本記事では研修の離職防止効果やおすすめの離職防止研修、自社で離職防止研修を行う際のポイントを紹介します。

離職率の高い現状

離職率について話し合う社員

社員の離職問題は日本企業が抱える問題の一つです。
ここでは離職防止研修について解説する前に、企業の離職に関するデータを見ていきます。

新卒人材は3人に1人が3年以内で離職

厚生労働省のデータ
出典:厚生労働省 新規学卒者の離職状況

厚生労働省のデータによると、平成30年度の新卒人材の3年以内離職率は高卒人材で39.3%、大卒人材で31.8%と、両者ともに3割を超える結果となりました。
「新卒で入社した企業に長く勤める」という従来の日本型雇用のあり方が大きく変化し、転職が当たり前の選択肢になりつつあることがわかります。

中小企業庁の調査データ
出典:中小企業庁 第2部 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍

また2014年の中小企業庁の調査によると、中途採用人材の3年以内離職率は企業規模にかかわらず3割前後でした。
中途人材も新卒と同様に、およそ3人に1人は3年以内に離職しているようです。

離職率が高いことで起きる多くの弊害

企業の離職率が高まると、健全な企業運営が難しくなります。
ここでは人材の観点から離職率が高いことで起きる弊害について解説します。

1. 採用コストが無駄に

人材の採用を行う際は、求人媒体や人材紹介などの採用サービスを使うのが一般的です。せっかく入社した社員が離職してしまうと、今までにかかった採用コストが無駄になってしまいます。
また金銭的なコストだけではなく、人事担当者や面接を担当する現場社員の負担増加など、採用までにかかった人的なコストも無視できない問題です。

2. 教育コストが無駄に

採用した社員は入社してすぐに活躍できるわけではありません。
活躍をサポートするためには、入社後も研修やOJT、定期的な面談などの教育が必要になります。
離職率が高くなると、今まで社員にかけた教育コストを回収できなくなってしまいます。

3. 新たな人材確保が難しい

過労死問題をきっかけに「ブラック企業」という言葉が知れ渡るようになった現在、候補者は「就職先がブラック企業ではないか」に非常に敏感になっています。
離職率が高い会社は候補者からブラック企業と認識される可能性が高まります。
そのためさらに応募が集まりにくく、内定辞退が増えてしまい、新たな人材確保が難しくなります。

離職防止には研修がおすすめ

離職防止研修を実施した組織

離職率が低減されると、採用活動で有利になったり、時間や採用コストを削減できたりするなどのメリットがあります。
また従業員エンゲージメントの向上やメンバーの熟練度の高まりなどによる、生産性アップの効果も期待できます。

離職の原因には、職場でのコミュニケーション不和や業務のミスマッチ、マネジメントの機能不全など様々なものがあります。
これらを改善するために、研修をうまく活用しながら第三者目線でメンバー、マネジメント側の意識を変えていく必要があるでしょう。

【階層別】離職防止研修のポイント

離職防止研修の様子

年次や階層によって離職につながる不満の原因は異なってきます。
ここでは離職防止を目的とした研修のポイントを、階層別に紹介します。

1. 新入社員向け

新入社員が離職する大きな原因は、業務内容や職場の雰囲気とのミスマッチにあります。
入社する前に思い描いていた会社・仕事と、配属後の現実とのギャップを大きく感じ、退職に向かってしまうのです。

このような不安を解消するためには、まずは新入社員研修を通じて先輩や同期社員との一体感を醸成してもらう機会を作りましょう。
また自社の企業風土や業務内容への理解を深める研修プログラムも盛り込み、コミュニケーションや業務を円滑に行ってもらうためのサポートをしましょう。

2. 中堅社員向け

中堅社員の離職につながる悩みの一つに、「成長が感じられない」「仕事にやりがいを感じない」などの業務面でのマンネリ化があります。
この課題感を解消するためには、本人のスキルアップにつながる研修を行うのがおすすめです。
また自分のスキルを棚卸しながら理想の社会人像を設計するキャリアデザイン研修を行うことで、業務に対して目的意識を持てるようになり、モチベーションアップにつながります。

また中堅社員は組織のハブやチームリーダーとしての役割を担うことも多いでしょう。
プレーヤーからリーダーへ役割が変わると、メンバーのマネジメントにつまづく社員もいます。
そしてチームとしての成果を出せないことが悩みとなって離職につながる可能性があります。
リーダー研修を行いリーダーとしての成長を支援することで、離職を防止しましょう。

3. 管理職向け

優秀な管理職が離職を意識するきっかけとして、経営陣や会社の方向性に疑問を感じること、また部下とのコミュニケーションに悩むことが挙げられます。

管理職向けの経営マネジメントやチームマネジメント研修を行い、会社のビジョンをともに描く機会を設けることで、会社の未来を自分ごとに捉えてもらい、離職防止につなげることが出来ます。
またコミュニケーションに苦手意識を感じる管理職には、コーチングスキルなどマネジメントスキルの育成を図ることで、離職防止が期待できます。

おすすめの離職防止研修サービス

離職防止研修のサービスの利用

離職防止のための研修を内製するのが難しい場合は、研修サービスを利用するのも一つの手です。
ここではおすすめの離職防止研修サービスをご紹介します。

1. バヅクリ

【料金】250,000円〜
【URL】https://buzzkuri.com/
【内容】
バヅクリ株式会社は、チームの成長と社員の行動変容にコミットする研修やチームビルディングを提供する会社です。
同社が提供する研修プログラムでは、心の回復力を向上させるレジリエンスやキャリアデザインなど、離職防止をサポートするものを多数用意しています。
業種や経験年数問わずおすすめのプログラムです。

2. インソース

【料金】115,000円〜
【URL】https://www.insource.co.jp/index.html
【内容】
株式会社インソースが提供するオンライン研修は、組織の課題に合わせた「オーダーメイド型」や一名からでも気軽に参加できる「オンライン公開講座」など、さまざまな形式のものが用意されています。
初心者からマネジメント層までさまざまな立場の人が学べるものを用意しているため、自社に合ったコースを見つけることができるでしょう。

インソースの離職防止プログラムはこちら

3. リスキル

【料金】115,000円〜
【URL】https://www.recurrent.jp/
【内容】
株式会社リスキル(リカレントより2022/5/2付けで商号変更)は、1986年の創業以来人材育成事業のみを取り扱ってきた研修会社です。
リスキルの離職防止プログラムは、リーダーやマネージャ、管理職向けに若手社員の早期離職防止に特化したものになっています。
若手が陥りがちな離職要因を理解した上で、どんな対応をすればいいのかを包括的に学ぶことができるプログラムです。

リスキルの離職防止プログラムはこちら

離職防止研修の企業事例

離職防止研修の計画を立てるメンバー

企業によって企業文化や離職率が高い原因は異なるため、企業ごとに合わせた研修プログラムを構築する必要があります。
ここでは実際に離職防止研修に取り組んだ企業の事例を紹介します。

1.リコージャパン

光学機器などの製造メーカーであるリコージャパンでは、コロナ禍にリモートワークを導入しました。
業務上のコミュニケーションに問題はなかったものの、インフォーマルなコミュニケーションの不足と、家にこもりきりなことによる従業員のストレス増加が課題になっていました。

そこで同社はバヅクリのプログラム「オンラインクイズ大会」を実施。
社員同士がコミュニケーションとチームビルディングが実現できる場を設けました。

イベントによりコミュニケーションが活発化し、情報共有や相談がしやすい環境が生まれ、仕事がよりスムーズに回るようになりました。

参考:社員同士のつながりでテレワークのストレスを発散

バヅクリ

2. ミキハウス

ミキハウスは乳幼児・子ども向けの服やグッズの企画・製造・販売を行う会社です。
同社では店舗内の接客・販売を担うアルバイトスタッフ(社保加入)の離職率が50%に迫るなど、離職率が大きな課題になっていました。

そこで同社は本部と店舗の店長・教育係の三者が連携し、新人の情報や課題感を情報共有しながらプログラムを調整するような体制に変更しました。
また研修後には店舗での実践状況をレポーティングし、店長が面談時に内容を確認。
面談後にレポートを本部に共有するプロセスを徹底し、本部と店舗が一体となって研修内容の見直しを行いました。

こうした見直しの結果、ミキハウスの1年以内の離職率は、23%にまで改善されました。

3. 堂本食品

堂本食品は広島県に本社を置く創業104年の業務用食品メーカーです。
新人の定着率が課題となっている同社では、入社5年目までの社員を対象とした教育研修体系の見直しを行っています。

従来の新入社員研修・全部門研修(全部署の業務を一通り経験してもらう)・部門別研修に加え、若手社員同士の縦と横のつながりを強化するようなフォローアップ研修を企画しています。

参考:若者が定着する職場づくり取組事例集

まとめ

本記事では研修の離職防止効果やおすすめの離職防止研修、自社で離職防止研修を行う際のポイントを紹介しました。
離職率の高さは、企業が業績を上げるうえで足かせになります。記事内で紹介した研修を導入し、効果的に離職の防止を図るようにしましょう。