経営者や人事担当の方の多くは、従業員にモチベーション高く業務に取り組んでもらい、会社全体の士気を高めたいと考えているかと思います。そうした状況を作る際に重要になってくるのがワークエンゲージメントです。本記事では、定義や3つの要素に加えて、現場で実践できる具体的な高め方や測定の尺度まで整理して解説していきます。

エンゲージメント資料ダウンロード

調査から施策実行、効果検証まで全部おまかせください「エンゲージメントまるっとサポート」

施策のアイデアはあるのに、現場が動かない。サーベイ結果を見ても「結局何から始めれば良いのか」が明確にならない。そんな状態のままでは、組織の変化は生まれません。

「エンゲージメントまるっとサポート」は、課題分析から施策設計、実行支援、効果測定まで一連のプロセスを伴走するサービスです。点の施策ではなく、組織が持続的に変わるための流れ全体をデザインします。

現場がラク、人事もラク、だから組織が動く。サーベイと育成支援を一貫して行ってきた知見をもとに、最適な改善ステップを共に描きます。

エンゲージメント課題の発見から打ち手の実行までサポートします。まずはお気軽にお問い合わせください。

ワークエンゲージメントの基礎知識

ワークエンゲージメントを高めると得られる効果

ワークエンゲージメントは、言葉としては広まったものの、似た概念と混同されやすいテーマでもあります。まずは定義と3つの要素を押さえ、従業員エンゲージメントや関連する心理状態との違いまで整理しておきましょう。土台を共有しておくと、後半で紹介する施策の意図もつかみやすくなります。

ワークエンゲージメントの定義

「気づいたら時間が経っていた」と感じるほど、仕事へ前向きに入り込めている状態が、ワークエンゲージメントです。オランダのユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが提唱した概念で、特定の業務や出来事に対する一時的な感情ではなく、仕事全般へ持続的に向けられる心理状態を指します。

この持続性こそが、その日の気分や成果で上下する満足感とワークエンゲージメントを分ける決め手といえます。

仕事に追われる感覚ではなく、自ら仕事へ向かっていく感覚が続いている点が、後述する関連概念と区別される特徴になります。気分の波ではなく、ベースとして前向きさが保たれているイメージで捉えるとよいでしょう。

活力・熱意・没頭という3つの要素

ワークエンゲージメントは、熱意、没頭、活力の3要素が満たされている心理状態とされています。熱意は、仕事に誇りややりがいを感じ、挑戦しようという意欲がわいている状態です。没頭は、仕事にのめり込み、時間を忘れるほど集中して取り組んでいる状態を指します。活力は、エネルギッシュに働き、困難に直面しても粘り強く立ち向かえる状態として定義されています。

3要素のうちどれか一つが欠けても成立せず、3つがそろってはじめてワークエンゲージメントが高い状態と判断されます。

たとえば熱意はあっても活力が枯れていれば、気持ちだけが空回りして疲弊しやすくなります。3つのバランスを意識すると、自社の課題がどの要素にあるのかを見立てやすくなるでしょう。

従業員エンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントと混同されやすい言葉に「従業員エンゲージメント」があります。両者の違いは、前向きな気持ちが「何に」向いているかにあります。ワークエンゲージメントが仕事そのものへの熱意や集中を表すのに対して、従業員エンゲージメントは、会社や組織に対する愛着や貢献意欲を示す指標です。

平たくいえば、ワークエンゲージメントは「仕事が好き」、従業員エンゲージメントは「この会社で働き続けたい」という感覚に近いといえます。

会社のビジョンへの共感、上司や同僚との良好な関係、会社への貢献意欲などが従業員エンゲージメントを構成します。2つは無関係ではなく、夢中になれる仕事を与えてくれる会社へ愛着が深まるといった形で、互いに高め合う関係にあります。

エンゲージメントとは?企業における意味や重要性・向上ポイント・他社事例などを解説

いまさら聞けない!「従業員エンゲージメント」とは?

終⾝雇⽤が衰退し、働き⽅改⾰のもと⼈材の流動化が活発な今、従業員エンゲージメントに注⽬が集まっています。

HR研究所では、従業員エンゲージメントと従業員満足度の違いや、従業員エンゲージメント低下の原因とリスク、従業員エンゲージメントの向上がもたらすメリットをはじめ、どうすれば従業員エンゲージメントを高めることができるのか、いまさら誰にも聞けない「エンゲージメント」についての基本をまとめました。

下記からダウンロードできますので、自社のエンゲージメント向上施策にぜひお役立てください。

いまさら聞けない従業員エンゲージメント

ワーカホリズム・バーンアウト・職務満足感との関係

ワークエンゲージメントは、関連する3つの心理状態と並べると輪郭がはっきりします。これらは「活動水準の高さ」と「仕事への態度が肯定的か否定的か」という2つの軸で整理できます。

ワーカホリズムは、活動水準は高いものの、「働かないと不安だ」という強迫的な動機で動いている否定的な状態です。バーンアウト(燃え尽き症候群)は、熱心に取り組んだ末に意欲を失い、活動水準も態度も低下してしまった状態を指します。職務満足感は、仕事への態度は肯定的でも活動水準が高いとは限らず、「満足はしているが没頭まではしていない」状態にあたります。

同じ「よく働く人」でも、内発的に楽しんで働くワークエンゲージメントと、不安に駆られて働くワーカホリズムでは、心身への影響が正反対になります。

ワークエンゲージメントが重要視される背景

ワークエンゲージメントの高め方

それでは近年、なぜワークエンゲージメントが重要視されているのか、その理由をご紹介します。背景には、人を採用しにくくなり、定着もさせにくくなったという労働市場の構造変化があります。

労働人口の減少による人材確保の難しさ

一つには、少子高齢化が進むことによる労働人口の減少傾向が挙げられます。採用市場は買い手市場から売り手市場に変化しており、労働力の確保が徐々に難しくなってきています。

募集をかけても以前のように人が集まらないなかでは、いま在籍する従業員一人ひとりに力を発揮してもらう発想が欠かせません。

採用で頭数を増やしにくいからこそ、既存社員のワークエンゲージメントを高めて生産性を保つ取り組みに注目が集まっています。各企業は、従業員のパフォーマンスを引き上げ、組織全体の生産性を維持する必要に迫られているのです。

人材の流動化と転職の一般化

インターネットなどを通じて情報の非対称性が低下したことにより、転職活動が盛んになり、一つの企業に長年勤め続けることが当たり前ではなくなったことも、重視され始めた理由といえます。

転職先の情報や条件を簡単に比較できるようになり、より良い環境を求めて動く人が増えました。

特に優秀な人材ほど引き抜きの対象になりやすく、待遇だけでは引き止めきれない場面が増えています。そこで、仕事そのものへの手応えや没頭感を高め、「ここで働き続けたい」と感じてもらう流出防止策として、ワークエンゲージメントが位置づけられています。

ワークエンゲージメント向上で得られる効果

それでは、従業員のワークエンゲージメントが高まるとどのようなメリットがあるのでしょうか。主要な効果を5つの観点から見ていきます。個人の健康から組織の業績まで、影響が広く及ぶ点が特徴です。

メンタルヘルスの健全化

ワークエンゲージメントが高まると、熱意や活力が満たされている状態のため、ストレスを感じることが少なくなります。それにより、従業員のメンタルヘルスが健全に保たれ、ストレスに起因する精神疾患や体調不良が減少します。

ミスやトラブルで一時的に落ち込んでも、回復が早く、仕事へ支障を残しにくいのも特徴です。

ストレスチェックや産業医面談といった守りの対策に、エンゲージメント向上という攻めの施策を組み合わせると、相乗効果が期待できます。不調が出てから対処するのではなく、いきいきと働ける状態を保つこと自体が予防につながるのです。

従業員のモチベーション向上

ワークエンゲージメントが高い状態は、働くことが楽しく、仕事に集中してエネルギーを注いでいる状態です。

こうした状態では「やらされている」という感覚が薄れ、自分から改善案を出したり、新しいやり方を試したりする行動が増えていきます。

一人ひとりの前向きな行動が積み重なることで、組織全体のパフォーマンスや業績の向上につながります。モチベーションは精神論ではなく、活力と没頭が伴ってはじめて持続する点も押さえておきたいところです。

エンゲージメントと業績や生産性に相関はあるのか? データに基づく関係性と効果的な施策を紹介

離職率の低下と定着率の向上

今の仕事に熱中し、没頭している状態であれば、転職する動機が高まりにくく、離職率が低下することが考えられます。従業員の定着という意味において、給与などの金銭的なインセンティブよりも高い効果を与える可能性もあります。

この関係は感覚的な話にとどまりません。厚生労働省の令和元年版 労働経済の分析では、ワークエンゲージメントの高さが新入社員の入社3年後の定着率や離職率と関連することが示されています。

採用コストを抑えながら中長期の人材育成に投資しやすくなる点で、定着率の向上は経営面でも大きな意味を持ちます。人が辞めない前提で計画を立てられると、教育やノウハウの蓄積も進めやすくなるでしょう。

エンゲージメントと離職率に相関はあるのか? データに基づく関係性と効果的な施策、企業事例を紹介

顧客満足度の向上

ワークエンゲージメントの高さは、社内にとどまらず顧客との接点にもにじみ出ます。自社の商品やサービスに自信を持ち、やりがいを感じて働く担当者の対応は、顧客に安心感や信頼を与えます。

反対に、気持ちの入っていない接客や提案は、相手にも伝わってしまうものです。

働き手の前向きな姿勢がサービスの質を押し上げ、結果として顧客満足度やリピートにつながっていきます。商品開発の場面でも、没頭して取り組む担当者からの方が、質の高いアイデアが生まれやすいといわれています。

創造性・イノベーションの促進

仕事に熱意を持って取り組む従業員は、決められた作業をこなすだけでなく、「もっと良くできないか」と既存のやり方を見直す動きを見せます。

こうした小さな改善提案や新しい挑戦が積み重なると、組織のなかに変化を歓迎する空気が育ちます。

挑戦が前向きに受け止められる職場では、失敗を恐れずに試す行動が増え、新しいアイデアが生まれやすくなります。一人の思いつきが埋もれずに形になる土壌があるかどうかで、組織の伸びしろは変わってくるのです。

ワークエンゲージメントの尺度と測定方法

高める施策を考える前に、まずは現状を正しくつかむ必要があります。ワークエンゲージメントの測定方法は大きく3つあり、エンゲージメントを直接測る尺度と、対極のバーンアウトから間接的に測る尺度に分かれます。それぞれの特徴を押さえておきましょう。

MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)

MBI-GSは、ワークエンゲージメントそのものを測るのではなく、対極の「バーンアウト」の度合いを測る測定方法です。バーンアウトは日本語で「燃え尽き症候群」と呼ばれ、それまで熱心に仕事に邁進していた人が、突然やる気を失ってしまうことをいいます。

「消耗感(疲労感)」「冷笑的態度(シニシズム)」「職務効力感」の3つの尺度に関する質問へ回答し、スコアを集計します。

算出した数値が低いほどバーンアウトから遠い、つまりワークエンゲージメントが高いと判断されます。

OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)

OLBIも、MBI-GSと同様にバーンアウトを測定する方法です。「疲弊」と「離脱」という2つのネガティブな側面に関する質問から、バーンアウトの度合いを把握します。

OLBIの測定結果が低いほど、ワークエンゲージメントが高いという評価になります。

MBI-GSと考え方は共通しており、自社で扱いやすい方を選ぶとよいでしょう。間接的に測る尺度として、バーンアウト対策とあわせて活用されることが多い方法です。

UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

UWESは、ワークエンゲージメントの高さを直接測定する方法です。具体的には、「活力」「熱意」「没頭」の3つの尺度について、17項目の質問に回答することで測定を行います。

測定方法のなかでも安定性が高く、世界的にもっとも広く使われている尺度です。

日本人向けには質問を9項目に絞った短縮版や、さらに少ない3項目の超短縮版もあり、負担を抑えて手軽に実施できます。回答者の負荷が小さいと継続して測りやすく、経年での変化も追いやすくなります。

エンゲージメントサーベイへの従業員の意識調査

HR研究所では実際にエンゲージメントサーベイへの回答をしたことがある会社員2,200名に対して独自にアンケート調査を行ったところ、「無駄」や「何に活かされているのか分からない」などエンゲージメントサーベイに対しての不満が明らかになりました。

エンゲージメントサーベイに関する従業員の本音を調査した調査結果も、ぜひ参考にしてみてください。

ワークエンゲージメントを高める2つの資源

ワークエンゲージメントは、2種類の「資源」を充実させることで生み出されると考えられています。個人の心理的な要素に起因する「個人の資源」と、職場環境に起因する「仕事の資源」です。この2つは互いに影響し合い、片方が満たされるともう片方も高まりやすくなります。

個人の資源

個人の資源は、具体的には、自己効力感や自尊心、ポジティブ思考、レジリエンス(困難をしなやかに乗り越える力)といったものが挙げられます。

これらは、仕事を「やらされている」と感じる状態から、「自分から取り組んでいる」という感覚へ切り替える土台になります。なかでも重視されるのが自己効力感で、「自分ならこの仕事をやり遂げられる」と思える感覚を指します。

小さな成功体験を積み重ねることが、自己効力感を育て、ワークエンゲージメントを底上げする近道といえます。

仕事の資源

仕事の資源を充実させるためには、人手不足の解消や人材育成、上司や同僚のサポート促進などが挙げられます。その他には、リモートワーク制度の整備や有給休暇の取得促進、労働時間の短縮なども当てはまります。

加えて、仕事の進め方を自分で決められる裁量や、努力が正当に評価される仕組み、適切なフィードバックも仕事の資源にあたります。

仕事の資源が豊かな職場ほどワークエンゲージメントが高まりやすく、それがさらに個人の資源を育てるという好循環が生まれます。まずは整えやすい職場環境から手をつけ、個人と職場の両面から支えていく発想が有効です。

ワークエンゲージメントを高める具体的な取り組み

2つの資源という考え方を、現場の行動に落とし込む段階です。ここでは、多くの企業で取り入れられている代表的な施策を紹介します。自社の課題がどの資源にあるかを意識しながら、組み合わせて選んでみてください。

ジョブ・クラフティングの推進

ジョブ・クラフティングは、働く本人が仕事の進め方や捉え方、人との関わり方を自分なりに工夫し、やりがいを取り戻していく方法です。たとえば、担当業務を一度書き出して自分の強みと結びつけたり、仕事の意味を捉え直したりする作業がこれにあたります。

「与えられた仕事」を「自分でデザインする仕事」へと意識を変えることで、個人の資源が自然と育っていきます。

本人の自主性が基本ですが、研修やワークの場を会社が用意すると、取り組みが社内に広がりやすくなるでしょう。

1on1と管理職によるサポート

上司と部下が定期的に対話する1on1は、仕事の資源を増やす代表的な打ち手です。業務の悩みや今後のキャリアについて話す時間を持つだけで、部下の安心感は大きく変わります。

管理職がていねいに耳を傾け、必要な支援を差し出すことで、部下は「ちゃんと見てもらえている」と感じられます。

評価や指示の場ではなく、部下の成長を支える対話の場として運用することが、1on1を機能させる条件です。面談を入れて終わりにせず、話した内容を次の支援につなげる流れまで設計しておきたいところです。

理念・ビジョンの共有

自分の仕事が組織のどこにつながっているかが見えると、人は目的を持って動けるようになります。企業理念やビジョンを繰り返し伝えることは、その見通しを育てる取り組みです。

朝礼や全社集会、社内報など、伝える場は一度きりにせず、継続して設けることがポイントになります。

日々の業務と会社の目指す方向がつながった瞬間に、「この作業にはこういう意味があったのか」と納得感が生まれます。言葉として掲げるだけでなく、現場の判断基準として使われている状態を目指すとよいでしょう。

キャリア成長機会の提供

学びや挑戦の機会が用意されている職場では、従業員は将来の見通しを持ちやすくなります。研修や資格取得の支援、社内公募によるアサインなどが具体策にあたります。

キャリアパスが示されていると、「次に何を目指すか」が明確になり、日々の業務にも目的意識が生まれます。

成長を実感できる環境は、本人の自信と挑戦意欲を引き出し、組織への定着にもつながります。やりたい仕事に近づくための学びの場を整えることが、個人の資源と仕事の資源を同時に満たす一手になります。

参加型討議の実施

参加型討議は、職場の課題や活性化のアイデアについて、従業員同士が意見を出し合う場をつくる方法です。話し合いを通じて当事者意識が芽生え、仕事への関わり方が前向きに変わっていきます。

ただ集まって話すだけでは発散しがちなので、事前にアンケートで論点を絞っておくと議論が深まります。

その場の議論で終わらせず、出た意見を施策として実行し、結果をまた共有する循環をつくることが効果を左右します。進行役には聞き上手な人を据えると、参加者が発言しやすい雰囲気になるでしょう。

まとめ

本記事では、ワークエンゲージメントの定義から測定方法、高め方までを解説してきました。ワークエンゲージメントは、「個人の資源」と「仕事の資源」を両面から充実させ、ジョブ・クラフティングや1on1といった具体策に落とし込むことで高まっていきます。

制度の変更を伴うなど時間がかかる取り組みではありますが、企業にとって得られるメリットも多いテーマです。

まずは自社のワークエンゲージメントを測定し、どの資源が不足しているかを見極めるところから始めてみてはいかがでしょうか。

調査から施策実行、効果検証まで全部おまかせください「エンゲージメントまるっとサポート」

施策のアイデアはあるのに、現場が動かない。サーベイ結果を見ても「結局何から始めれば良いのか」が明確にならない。そんな状態のままでは、組織の変化は生まれません。

「エンゲージメントまるっとサポート」は、課題分析から施策設計、実行支援、効果測定まで一連のプロセスを伴走するサービスです。点の施策ではなく、組織が持続的に変わるための流れ全体をデザインします。

現場がラク、人事もラク、だから組織が動く。サーベイと育成支援を一貫して行ってきた知見をもとに、最適な改善ステップを共に描きます。

エンゲージメント課題の発見から打ち手の実行までサポートします。まずはお気軽にお問い合わせください。