「社員のモチベーション低下に悩んでいる」「従業員に理念を浸透させたい」という課題を抱える企業であれば、インナーブランディングの導入が効果的です。インナーブランディングとは、自社の企業理念やブランド価値を社員に浸透させる活動を指します。
社員が企業の理念やブランド価値に共感し、生産性が高まることで、顧客に届くブランド価値も向上していきます。社内の土台が整っているほど、社外への発信にも一貫性が生まれるのです。
この記事では、ライオンやサイボウズ、スターバックスなど国内外8社の成功事例を中心に、インナーブランディングの進め方や有効な施策、成果につながった企業に共通するポイントまで具体的に紹介します。

インナーブランディングとは

インナーブランディングは、自社の企業理念やブランド価値を社員に伝えて浸透させる活動を指します。
インナーブランディングを行うと、理念に深く共感した社員のモチベーションが向上し生産性が高まります。
その結果、顧客にとってのブランド価値も高まります。
ブランディングとは、ターゲットに対して企業の価値やイメージを高く認知してもらうために行う取り組みのこと。
一般的に「ブランディング」というと、消費者・顧客に自社のブランドを認知してもらい、イメージ向上や販売促進につなげるアウターブランディングを指すことが多いです。
一方でインナーブランディングはアウターブランディングとは異なり、対顧客ではなく社内にいる従業員向けの取り組みになります。
そのため通常のブランディングとはやることが異なってきます。
インナーブランディングについてもっと知りたい方は下記をご覧ください。
インナーブランディングとは?進め方や、注意点、施策例など詳しく解説
インナーブランディングの事例

ここではインナーブランディングを実施した日本企業の事例を紹介します。
インナーブランディング施策の実施を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
ライオン株式会社
日用品大手のライオンは、創業120周年を迎えた2011年に「今日を愛する。」という新たな企業メッセージを発表。
この企業メッセージの浸透を目的として、インナーブランディング活動を行いました。
これまでコーポレートブランディングの推進は広告部門の管轄でしたが、「会社を本気で変えたい」という思いで社長が率先して旗振りを行い、企業メッセージに基づいて動画制作などの取り組みを行いました。
その結果、「生活者の大切な今日を応援する」という想いに共感する社員が増え、ライオンのブランド浸透度調査でも会社や企業メッセージに対する理解度が高まりました。経営トップが先頭に立って継続的に取り組んだ好例といえます。
日本たばこ産業株式会社
日本たばこ産業では、社内でも認知度が低かった新商品の理解を広げる目的で、社内SNSを使ったインナー向けプロモーションに取り組みました。誰でも投稿や書き込みができるため、新商品に関する意見やコメントを社員が気軽に発信できる環境が整っています。
社内SNSで新商品のプロモーションを行うことで、まず社員が自社商品の魅力を存分に理解、愛着を持つようになったと言います。
また他の部署との情報交換も活発になり、社内コミュニケーションの活性化にもつながっているようです。
株式会社マクロミル
マーケティングリサーチ会社のマクロミルでは、オンライン社内報の配布を行っています。
これまでは紙媒体で社内報を発行していた同社でしたが、よりスピード感を持って従業員に情報を伝えたいという思いからオンライン社内報を開設しました。
現在は「今、リアルタイムで起こっていることはweb」「より深い情報は紙媒体」とそれぞれの特徴を活かしながら情報をだし分けているようです。
社内報では、社内のニュースやMVP受賞者のインタビュー、経営陣の言葉を発信しています。
従業員が社内のことを深く知る良いきっかけとして、インナーブランディングに効果を発揮しているようです。
サイボウズ株式会社(多様な働き方の制度化による理念浸透)
グループウェアを開発するサイボウズは、2005年に離職率28%を記録したことをきっかけに、人事制度と組織風土の抜本的な見直しに着手しました。「100人いれば100通りの働き方があってよい」という方針を掲げ、制度・ツール・風土の3つの面から、一人ひとりの価値観に合わせて働き方を選べる環境を整えています。
働く時間や場所を自分で申告する新・働き方宣言制度などを通じて、社員が自社の価値観に共感しながら働ける状態をつくりました。こうしたサイボウズのワークスタイル変革の歩みの結果、ピーク時に28%だった離職率は3〜5%程度まで低下しています。
株式会社リクルート(ブランドビジョンの社内浸透)
多くの事業を抱えるリクルートでは、所属や事業によってブランドへの理解にばらつきが生まれやすいという課題がありました。同社のAir事業では、「商うを、自由に。」というブランドビジョンを社内に広げるインターナルブランディングの取り組みを進めています。
ビジョンの背景や意味を一方的に伝えるのではなく、従業員にとってのメリットへ翻訳して届ける工夫を重ねている点が特徴です。社員一人ひとりがブランドを自分ごととして捉え、日々の業務で体現できる状態を目指しています。
スターバックス コーヒー ジャパン(Our Mission and Valuesの体現)
スターバックスは、家庭でも職場でもない「サードプレイス」という価値を掲げ、その実現に向けて従業員(パートナー)一人ひとりが理念を体現することを重視しています。理念であるOur Mission and Valuesは、アルバイトを含むすべてのパートナーの行動の拠りどころになっています。
入社後の研修や日々の対話を通じて理念を繰り返し共有し、パートナーが自発的に判断・行動できるよう促しています。理念に沿った行動が現場のサービス品質に直結している点が、同社のインナーブランディングの強みです。
ザ・リッツ・カールトン(クレドによる行動指針の浸透)
高級ホテルのザ・リッツ・カールトンは、価値観と理念をまとめたゴールドスタンダードを掲げ、その中核に位置づけられるクレドを全従業員が携帯しています。経歴や勤続年数に関わらず、誰もが同じ判断基準で行動できるようにする狙いがあります。
毎日の朝礼でクレドの一文について話し合う時間を設けるなど、理念を日常業務に落とし込む仕組みを徹底しています。理念が一人ひとりの行動にまで浸透していることが、同社のサービス品質を支える土台になっています。
ヤンマーホールディングス株式会社(ブランドステートメントの社内浸透)
創業100周年を機にリブランディングを行ったヤンマーは、「A SUSTAINABLE FUTURE」というブランドステートメントを掲げ、グローバル化で生じた事業ごとのイメージのばらつきという課題に向き合いました。社外への発信だけでなく、社員自身が理念を理解し体現することを重視しています。
創業時から受け継がれてきた「HANASAKA」という価値観を浸透させるため、海外拠点も含めてワークショップを実施する取り組みを続けています。社員が「ヤンマーらしさ」を自分ごととして考える機会をつくっている点が特徴です。
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インナーブランディングの取り組みの一つに、ワークショップ開催があります。
企業理念について改めて考える機会を設けることで、理念への共感がさらに深まり、組織の一体感を作ることができるようになるでしょう。
インナーブランディングにおすすめのワークショップが、バヅクリが提供する「会社の理念共感ワークショップ」と「会社のビジョンを考える!おえかきワークショップ」です。
どちらのワークショップも会社の理念について考え、具体的な形にすることを通じて、理念に対してより当事者意識を持てるようになります。
ワークを中心にプログラムが組まれているため、楽しく組織のエンゲージメントを向上できるおすすめの研修です。
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成功事例に共通するポイント

紹介した事例には、成果につなげた企業に共通する考え方があります。自社でインナーブランディングを進める際の判断材料として、3つのポイントに整理します。
経営層が当事者として関わること
ライオンで社長が旗振り役を担ったように、成果を上げた企業では経営層が自ら理念を語り、行動で示している傾向があります。担当部署に任せきりにせず、トップが繰り返し想いを伝えることで、社員は「会社が本気で取り組んでいる」と受け止めます。リッツ・カールトンのように、管理職が日々クレドと向き合い自分の言葉で語れる状態をつくることも、浸透を加速させます。
一方的な発信ではなく双方向で浸透させること
ポスターを貼り、カードを配るだけでは理念は記憶に残りにくいものです。リクルートが従業員にとってのメリットへ翻訳して届けたり、ヤンマーが社員参加型のワークショップを開いたりしているように、社員が自分の言葉で理念を語り合う場をつくると、自分ごととしての理解が進みます。伝えることと伝わることは別物だという前提に立つことが大切です。
効果を測定し改善を続けること
理念浸透の成果は数字で測りにくいものの、放置すると取り組みが形骸化します。ライオンのように理解度を調査したり、サイボウズのように離職率の推移を追ったりと、定量・定性の両面で変化を可視化することが欠かせません。短期で成果を求めず、結果を振り返りながら施策を見直す姿勢が、長期的な定着につながります。
インナーブランディングの進め方

従業員へのブランディング活動であるインナーブランディングは、どのようなプロセスで進める必要があるのでしょうか。
ここではインナーブランディングの進め方を解説します。
理念やミッションの設定
インナーブランディングを進めるには、社員に浸透させるべき価値観やビジョン・ミッションを明確にする必要があります。
企業全体のビジョンやミッションを策定するだけではなく、製品・サービスの価値観やコンセプトも明確にすることで、自社が社会に対してどんな貢献をしているのか、より詳細に伝わりやすくなります。
一度決めて終わりにせず、社員の声も取り入れながら見直していくと、現場の実態に合った言葉に育っていきます。
従業員への認知
理念やミッションを策定したら、その内容を従業員に浸透させていきます。ミッションをイメージにしたポスターを目につく場所に掲示したり、行動規範を「すべきこと」「すべきでないこと」に分けてイラスト付きでまとめた冊子を制作したりと、さまざまな媒体を使って価値観を届けます。
掲示や配布だけで終わらせず、対話やワークショップなど社員が参加できる機会と組み合わせると、認知から共感へと進みやすくなります。
効果の測定
成功事例に共通するポイントでも特筆したように、施策を実施した後は、必ず効果測定を行いましょう。「何割の従業員が満足したのか」「売上がどのくらい変化したのか」など、施策の前後で数字の変化を算出すると、取り組みの効果を可視化できます。モチベーションや働く意欲を測りたい場合は、定期的な従業員満足度調査が役立ちます。
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インナーブランディングの施策

自社の価値観を社員に浸透させるには、先ほど紹介したやり方以外にも様々な方法があります。
ここではインナーブランディングの施策を紹介しますので、自社に合ったやり方をぜひ試してみてください。
インナーブランディング動画の作成
インナーブランディングの取り組みとして、企業トップからのメッセージや社内での取り組みを、動画にして社員向けに発信する方法があります。
動画は文字情報だけではなく、映像や音声などさまざまな情報を盛り込めるため、文章では伝えきれない微妙なニュアンスも表現できます。
従業員に対して自分たちの仕事がどのように社会に貢献しているか、直感的に理解を促すことができる媒体なので、積極的に活用することをおすすめします 。
社内SNSを活用する
インナーブランディングの取り組みとして、社内SNSの活用があります。
インナーブランディング向上のためには、経営陣と従業員が日常的にコミュニケーションを行い、様々なタイミングで自社の価値観を実感できるようになることが重要です。
チャットツールやWeb会議システムなど、社内コミュニケーションツールをうまく活用することで、経営陣と従業員が気楽に情報をやり取りできるようになります。
その結果、自社の価値観を従業員に浸透させやすくなるでしょう。
ポスターの作成
企業に愛着を持ってもらうために、オリジナルのポスターを作るという方法もあります。
イラストや写真が使われているポスターは、文字だけの情報と比較すると視覚的にわかりやすく、伝わりやすいという特徴があります。
有名なイラストレーターやデザイナーにポスター制作を依頼したり、話題のキャラクターなども合わせて掲載したりすることで、従業員の興味・関心を高めている企業もあります。
社内イベント・ワークショップの開催
理念について社員同士が話し合う社内イベントやワークショップも、効果の高い施策です。経営陣からの一方通行の説明では理念が記憶に残りにくい一方、自分の言葉で語り合う場では社員が理念を自分ごととして受け止めやすくなります。全社集会で経営陣の想いを共有したり、少人数で企業理念を題材に対話したりと、規模や目的に応じて形式を選べる点も利点です。
まとめ
インナーブランディングに取り組むと、自社に対する従業員の愛着が増し、生産性の向上にもつながるなど、さまざまなメリットが生まれます。
今回紹介した8社のように、自社の課題に合った施策を選び、経営層を巻き込みながら継続的に取り組むことが、成功への近道といえます。まずは自社の理念を見つめ直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

