社員のモチベーション低下にお悩みではありませんか?従来のモチベーションアップ施策だけでは、変化の激しい現代社会において持続的な効果を生み出すことは難しくなってきています。

そこで注目されているのが、社員一人ひとりが自らモチベーションを管理し、向上させる「セルフモチベーション」です。本記事では、セルフモチベーションの重要性や、企業にもたらすメリット、そして人事担当者が実践できる具体的な施策まで、体系的に解説します。

なぜ今、セルフモチベーションが必要なのか?

VUCAの時代と言われる現代において、企業を取り巻く環境は常に変化しており、従来の指示型のマネジメントでは、変化への迅速な対応やイノベーションの創出が難しくなっています。社員一人ひとりが自律的に考え、行動するセルフモチベーションが、企業の成長には不可欠な要素となっています。

従来のモチベーション理論の限界(モチベーション2.0から3.0へ)

モチベーション2.0から3.0へ

モチベーションとは、「目標に向かって努力し、その達成を目ざそうとする意欲」を意味します。

従来のモチベーション理論(モチベーション2.0)は、主に外的報酬によって社員のモチベーションを向上させることに重点を置いていました。アメとムチのように、目標達成に対して報酬を与え、未達成に対してペナルティを課すことで、社員の行動をコントロールしようとする考え方です。しかし、この方法には限界があります。

外的報酬は一時的にはモチベーション向上に繋がるかもしれませんが、長期的には効果が持続しないばかりか、創造性や内発的動機を低下させる可能性も指摘されています。また、外的報酬に依存した状態では、報酬が得られない状況でのモチベーション維持が難しく、変化への対応力も低下する傾向があります。

近年注目されているのは、社員の自律性や内発的モチベーションを重視した、より人間中心のアプローチ(モチベーション3.0)です。社員が自ら目標を設定し、主体的に行動を起こせるよう、組織として環境を整え、支援していくことが求められています。これが、セルフモチベーションの重要性が叫ばれる背景です。

モチベーションについてもっと詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
チーム・社員のモチベーションアップのためにリーダーがするべきこと

セルフモチベーションとは

セルフモチベーションとは、外的報酬や指示に頼ることなく、自ら目標を設定し、その達成に向けて意欲的に行動し続ける力のことです。

高いセルフモチベーションを持った社員は、

  • 目標達成意欲が高い
  • 変化に柔軟に対応できる
  • 主体的に行動できる
  • ポジティブ思考である
  • 責任感が強い
  • ストレス耐性が高い

といった特徴を持つ傾向があります。

セルフモチベーションを理解する:3つの重要な要素

自己決定理論 セルフモチベーションに需要な3つの要素

社員のセルフモチベーションを高めるためには、まず「何がセルフモチベーションを支えているのか」を理解する必要があります。心理学において、人間のモチベーションを説明する理論の一つに「自己決定理論」があります。

自己決定理論では、人が内発的に行動を起こすためには、「自律性」「有能感」「関係性」の3つの心理的欲求が満たされていることが重要であるとされています。これらの要素が満たされることで、人は自発的に行動し、自身の能力を最大限に発揮できるようになるとされています。

自律性:主体的に行動を起こす力 

自律性とは、自分の意志で行動を選択し、決定しているという感覚のことです。自分で決めたことに対しては、責任感や意欲を持って取り組むことができます。

従来のように、上司の指示や命令によって行動が制限される環境では、社員は自律性を阻害され、モチベーションやパフォーマンスの低下に繋がります。人事担当者は、社員が自らの意思で仕事を選択し、主体的に行動できるような環境づくりを目指していく必要があります。

有能感:成長を実感し、自信を高める

有能感とは、自分は何かできる、自分は役に立っていると感じることです。仕事を通じて自身の成長を実感したり、周囲から認められることで、有能感は高まります。

有能感を高めるためには、社員一人ひとりの強みや能力を理解し、適切な業務を任せることが重要です。また、定期的なフィードバックや評価制度を通じて、社員の成長を可視化することも効果的です。

関係性:周囲との良好な関係を築く

関係性とは、周囲の人々と良好な関係を築き、互いに支え合っていると感じることです。職場において、同僚や上司から信頼され、良好なコミュニケーションが取れていると感じられることは、心理的安全性を生み出し、社員のモチベーションやパフォーマンス向上に繋がります。

関係性を高めるためには、チームワークを重視した働き方を促進したり、社員同士のコミュニケーションを活性化するような取り組みが有効です。

自己決定理論に基づいて、社員の「自律性」「有能感」「関係性」を高めるような職場環境や制度設計、コミュニケーションを促進することで、社員のセルフモチベーションを高め、ひいては組織全体の活性化に繋げていくことができるでしょう。

セルフモチベーションが企業にもたらすメリット

セルフモチベーションが企業にもたらすメリット

セルフモチベーションの高い社員は、企業にとって大きな財産といえます。具体的には、以下のようなメリットが挙げられます。

エンゲージメントの向上

エンゲージメントとは、社員が企業や仕事に対して、どれほど愛着や思い入れを持っているかを表す指標です。セルフモチベーションの高い社員は、仕事に対してやりがいや意義を感じているため、エンゲージメントも高くなります。高いエンゲージメントは、企業への貢献意意識を高め、組織全体の活性化に繋がります。

生産性の向上

セルフモチベーションの高い社員は、自ら目標を設定し、その達成に向けて努力するため、高い生産性を発揮することができます。また、問題解決にも積極的に取り組み、業務改善にも繋がるでしょう。

離職率の低下

仕事にやりがいを感じ、主体的に働いている社員は、離職率が低い傾向にあります。優秀な人材の流出を防ぎ、組織の安定化に貢献します。

人事担当者としての役割

人事担当者は、従来型の「管理する」という立場から、「社員の自律的な成長を支援する」という立場へと、意識転換していく必要があります。社員が、自らの仕事に意義ややりがいを感じ、最大限能力を発揮できるよう、環境を整え、サポートしていくことが、人事担当者に求められています。

セルフモチベーションを高める5つの方法と組織定着のポイント

社員のモチベーション向上は、多くの企業にとって重要な課題です。従来型のトップダウンによる施策だけでは限界があり、真の成長と持続的な成果を生み出すには、社員一人ひとりが自発的に行動を起こす「セルフモチベーション」を育むことが不可欠です。

ここでは、社員のセルフモチベーションを高めるための5つの具体的な方法と、組織としてどのようにそれらを定着させるか、実践的な施策を交えて解説します。

1.現状を把握する

セルフモチベーション組織定着のポイント①

セルフモチベーションを高めるためには、まず自分自身の現状を理解することが重要です。自分の強みや弱み、モチベーションが上がる要因や下がる要因を把握することで、自分に合ったモチベーション向上策を見つけることができます。

組織としてできること:対話を通して、社員の状況を深く理解する

社員の状況を深く理解するためには、一方的に情報を収集するのではなく、対話を通して、本音を引き出すことが重要です。

人事との定期的な面談

社員のキャリアプランや仕事への想いをヒアリングするだけでなく、日々の業務における課題や悩みを丁寧に聞き取り、現状を把握する重要な役割を担います。定期的な面談を設定し、社員が安心して話せる場を提供することで、モチベーション低下の兆候を早期に発見することができます。面談では一方的に話すのではなく、傾聴を意識し、社員の言葉に耳を傾けることが重要です。

上司との1on1ミーティング

上司は、日々の業務を通して社員の状況を最も近くで見守る存在です。定期的な1on1ミーティングを実施し、業務の進捗状況や課題だけでなく、仕事に対するモチベーションやキャリアに関する考えなどを共有する場を設けることで、社員の状況を深く理解することができます。1on1ミーティングでは、上司は部下の話にしっかりと耳を傾け、共感しながらコミュニケーションを取るように心がけましょう。

これらの対話を通して、社員一人ひとりのモチベーションの現状や課題を把握し、適切なサポートを行うことで、セルフモチベーション向上に繋げることができます

2.小さな成功体験を積み重ねる

セルフモチベーション組織定着のポイント②

「成功体験」は、セルフモチベーションを高める上で、非常に重要な要素です。成功体験を通して、人は、自らの能力に対する自信や、仕事に対するやりがいを感じることができます。

大きな成功体験でなくても構いません。むしろ、小さな成功体験を積み重ねることで、自己肯定感や自己効力感を高め、「もっと頑張ろう」「次はあれに挑戦してみよう」という意欲に繋げていくことが重要です。

組織としてできること:挑戦と成長をサポートする

目標設定のサポート

大きな目標をいきなり設定するのではなく、達成可能な小さな目標を設定するようサポートしましょう。目標管理ツールなどを活用し、目標の進捗状況を可視化することで、小さな成功体験を認識しやすくなります。

目標設定の際には、SMARTの法則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限付き)を意識すると、より効果的です。

業務の棚卸しと適切なアサイン

社員のスキルや経験、強みを把握し、適切な業務をアサインすることで、成功体験を得られる機会を増やすことができます。また、定期的に業務の棚卸しを行い、業務内容の最適化や改善を図ることで、社員の負担を軽減し、より集中して業務に取り組める環境を整備しましょう。

小さな成果を認め、褒める

小さな成果であっても、きちんと認め、褒めることで、社員のモチベーションは大きく向上します。成果を褒める際には、具体的にどのような点が良かったのかを伝えることで、社員は自身の強みを認識し、さらなる成長へと繋げることができます。称賛は、公の場で行うことで、他の社員のモチベーション向上にも繋がります。

これらの取り組みを通して、社員一人ひとりが小さな成功体験を積み重ね、自己効力感を高めていくことで、持続的なセルフモチベーションの向上に繋がります。

3.ポジティブ思考を身につける

セルフモチベーション組織定着のポイント③

セルフモチベーションの高い人は、困難な状況に直面しても、それを乗り越えようと努力を続けられます。 その根底にあるのが、「ポジティブ思考」です。

物事をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉える習慣をつけることで、困難な状況にも前向きに立ち向かうことができます。 また、ポジティブ思考は、周囲にも良い影響を与え、チーム全体のモチベーション向上にも繋がります。

組織としてできること:前向きなコミュニケーションを促進する

感謝の気持ちを伝えることを習慣化

感謝は、ポジティブな感情を増幅させる効果があります。「ありがとう」の一言を伝えるだけでなく、感謝の理由を添えることで、より効果的に相手に伝わり、組織全体の雰囲気も明るくなります。朝会や終礼で感謝を伝え合う時間を作る、感謝を伝えるための社内ツールを導入するなど、感謝の習慣化を促進しましょう。

ポジティブな言葉遣いを促進

言葉は思考に影響を与えます。ネガティブな言葉遣いは、周囲にも悪影響を及ぼし、モチベーション低下に繋がります。意識的にポジティブな言葉を選ぶように促し、社内全体で明るい雰囲気を作りましょう。例えば、「難しい」ではなく「挑戦しがいがある」、「できない」ではなく「どうすればできるか」といった言葉遣いを推奨することで、思考の転換を促すことができます。

社内イベントや交流の機会を増やす

懇親会、部活動など、社員同士が気軽にコミュニケーションを取れるイベントや機会を積極的に設けることで、社員同士の相互理解を深め、良好な人間関係を築きやすくしましょう。 良好な人間関係は、心理的な安全性を生み出し、ポジティブ思考を育む土壌となります。

おすすめの研修:レジリエンス研修
レジリエンス研修

この研修で解決できる課題・お悩み

  • ストレスや困難に耐えられず、集中⼒やパフォーマンスが低下している
  • メンタルが低下している社員のサポートをする体制がなく、休職者や離職者が多い
  • テレワークが続き、メンタルヘルスが弱くなっている

研修の内容

激変するビジネス環境において、ポジティブ思考と同様に求められるレジリエンス(心の回復力)を高める研修です。ストレス対処やメンタルコントロール法を学び、困難に負けない強いメンタリティを養います。ワーク中心の研修で、自身の状態を可視化する「レジリエンスカーブ作成」「サポーターマップ作成」や、仲間と交流し元気の源を共有する「私の元気スイッチプレゼン大会」、失敗を笑いに変える「ビジネスパーソン川柳」などを通して、楽しくレジリエンスを向上。グループワークを通してチーム力・相互理解も深め、ポジティブで生産性の高いチームを目指します。

4.集中力を高める環境を作る

セルフモチベーション組織定着のポイント④

セルフモチベーションを高めるには、集中できる環境づくりも重要です。周囲の雑音や中断によって集中力が途切れると、作業効率が低下するだけでなく、モチベーションの維持も難しくなります。

組織としてできること:働きやすい環境を整備する

集中しやすいオフィス環境の整備

周囲の音や視覚的な情報など、集中を阻害する要素を最小限にすることが重要です。静かな作業スペースの確保、適切な照明の設置、デスク周りの整理整頓などを促進しましょう。フリーアドレス制を導入している場合は、集中作業用のエリアとコミュニケーション用のエリアを明確に分けることで、それぞれの目的に合った環境を提供できます。

フレックスタイム制やリモートワークの導入

個々のライフスタイルや集中しやすい時間帯に合わせた柔軟な働き方を提供することで、生産性とモチベーションの向上に繋がります。コアタイムを設定しつつ、出社・退社時間を自由に選べるフレックスタイム制や、場所を選ばずに働けるリモートワーク環境を整備することで、社員の自律性を高め、集中できる時間帯に業務に取り組めるようにサポートしましょう。

業務効率化のためのツール導入

業務効率化ツールを導入することで、無駄な時間を削減し、本来集中すべき業務に時間を割けるようになります。例えば、チャットツールやプロジェクト管理ツールを導入することで、情報共有やタスク管理をスムーズに行い、作業効率を向上させることができます。ルーティンワークを自動化することも検討しましょう。

これらの施策を通して、社員がパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を整備することで、セルフモチベーションの向上をサポートすることができます。

5.継続する仕組みを作る

セルフモチベーション組織定着のポイント⑤

セルフモチベーションの向上は一過性の取り組みではなく、継続的に取り組むことが重要です。モチベーションを維持し、さらに高めていくためには、組織として社員の自律的な成長を後押しする仕組みづくりが必要です。

組織としてできること:自律的な成長を後押しする

キャリアパス制度の設計と運用

明確なキャリアパスを示すことで、社員は自身の将来像を描きやすくなりモチベーションを高めることができます。キャリアステップごとの必要なスキルや経験を明確化し、社員が自身のキャリアプランを主体的に考え、実現に向けて努力できるよう支援しましょう。定期的なキャリア面談を実施し、キャリアプランの進捗状況や課題を共有する場を設けることも重要です。

おすすめの研修:キャリアデザイン研修
キャリアデザイン研修

この研修で解決できる課題・お悩み

  • 社員のモチベーションを⾼めて早期離職を防ぎたい
  • ⾃分でキャリアに対して真剣に向き合える社員を育成したい
  • 社員の様々な可能性を引き出したい

この研修の内容

人生100年時代を迎え、変化の激しい現代において、キャリアデザインの重要性が増しています。本研修は、ワーク中心のカリキュラムで従業員のキャリアデザインを支援し、生産性向上を目指します。

強み・弱み分析、価値観の明確化、ターニングポイントの振り返りなど、自己理解を深めるワークを通して、X年後までの成長シナリオを「成長未来日記」として作成します。グループワークによる相互理解も深め、モチベーションの高い自律型人材育成と、生産性の高いチーム形成を実現します。

研修制度の充実

スキルアップや自己啓発の機会を提供することは、社員の成長意欲を高め、セルフモチベーション向上に繋がります。ビジネススキル研修だけでなく、自己啓発やリーダーシップ研修など、多様な研修プログラムを用意することで、社員一人ひとりのニーズに応じた学びの機会を提供しましょう。オンライン研修プラットフォームなどを活用し、時間や場所を選ばずに学習できる環境を整備することも効果的です。

コーチング研修の実施

上司がコーチングスキルを習得することで、部下のモチベーション向上をサポートできるだけでなく、組織全体のコミュニケーション活性化にも貢献します。社内コーチング制度を導入したり、外部コーチを招いて研修を実施するなど、組織全体へのコーチングスキル浸透を図りましょう。

これらの施策を導入し、継続的に運用していくことで、社員は自律的に成長を続け、高いセルフモチベーションを維持できるようになります。

社員のセルフモチベーションを高める研修/ワークショップサービス「バヅクリ」

バヅクリでは、セルフモチベーションを高める研修を含め200種類以上のプログラムをご用意しています。ぜひ貴社のセルフモチベーション向上施策にお役立てください。

下記よりサービス詳細の資料がダウンロードできます。

まとめ

変化の激しい現代社会において、企業の成長には社員一人ひとりのセルフモチベーションが不可欠です。従来の外的報酬中心のモチベーション施策には限界があり、社員の自律性や内発的モチベーションを重視したアプローチが求められています。

社員の状況を的確に把握し、適切な施策を提案・実行することで、組織全体の活性化に貢献することができます。

本記事が、貴社のセルフモチベーション向上への取り組みの一助となれば幸いです。