ロイヤルティ(loyalty)は「忠誠」「忠義」という意味の英単語。
ビジネスシーンでは「従業員や顧客が、企業や商品に対して持つ愛着」を指します。
労働人口の減少により人材獲得競争が激しさを増す中、優秀な人材を会社に引き留めるには報酬や福利厚生といった制度を整備するだけではなく、従業員のロイヤルティを育むことが欠かせません。
本記事では「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」の違いと従業員のロイヤルティを高めるメリット、高めるための具体的な方法を紹介します。
目次
ロイヤルティとは
「ロイヤルティ(loyalty)」とは「忠誠」や「愛着」を指す英単語で、人事分野では「従業員が自社や組織に対して強い帰属意識と誇りを持ち、熱心に貢献しようとする姿勢」を「従業員ロイヤルティ」と言います。
またマーケティング分野では、顧客が特定の企業やブランドに対して抱く信頼と愛着を「顧客ロイヤルティ」と呼んでいます。
従業員ロイヤルティが高ければ生産性の向上や定着率の改善などが期待でき、顧客ロイヤルティが高ければ、リピート購入や口コミ拡散などマーケティング上でも有利に働きます。
このように現代のビジネス環境において、競争力を高めるために企業のロイヤルティを高めることが重要になっています。
ロイヤリティとの違い
「ロイヤルティ」とよく似た言葉として「ロイヤリティ(Royalty)」がありますが、これらは全く異なる意味を持つ用語です。
英語の「Royalty」は「王族」「王権」「気高さ」を意味する言葉で、日本のビジネスシーンでは「特許権」「商標権」「著作権」など権利の使用料を指します。
またフランチャイズビジネスにおいて、フランチャイズ本部に対して加盟店が支払う使用料をロイヤリティと呼びます。
このようにロイヤリティは権利や対価を意味する言葉で、人や組織に対する心理的な愛着や忠誠を指すロイヤルティとは意味合いが異なります。
エンゲージメントとの違い
「ロイヤルティ」と似た意味で用いられる用語として言葉に「エンゲージメント(engagement)」があります。
「エンゲージメント」は「婚約」「契約」「約束」などの意味を持つ英単語で、人事分野では従業員の会社への貢献心や愛着を指します。
エンゲージメントとロイヤルティの違いは、企業と従業員の関係性にあります。
エンゲージメントは「契約」、すなわち会社と従業員は対等な立場であり、従業員は自ら進んで能力を発揮して会社に貢献したいと思う状態を指します。
一方でロイヤルティは「忠誠」であり、主である会社に対して従業員が愛着を持ちながら、積極的に奉仕するという意味合いを持ちます。
このように語源を紐解くと、ロイヤルティはエンゲージメントよりも一歩進んだ忠誠心や愛着を含意しており、より強い結びつきがあるといえるでしょう。
ロイヤルティを高めるメリット
企業が従業員のロイヤルティを高めることで、「会社の発展に貢献したい」という意欲が高い従業員を増やすことができます。
ここでは企業がロイヤルティを高めるメリットを解説します。
離職率の低下
ロイヤルティが高い従業員は会社や仕事への愛着が強いため、多少の環境変化があっても離職に踏み切る可能性は低いです。
またロイヤルティが高い人は、同業他社からヘッドハンティングの話があっても転職を決意せず、長期間会社に在籍して貢献し続けてくれます。
結果として従業員の定着率が高まり、人材の流出を最小限に抑えられます。
作業効率の向上
ロイヤルティの高い従業員は、常に自身の役割や責任を自覚し、高い意欲を持って業務に向き合うことができます。
また「さらに会社をよくしたい」という思い入れも強いため、業務改善や生産性向上のための提案も積極的にする傾向があります。
ロイヤルティの高い従業員が増えれば組織全体の業務効率が改善し、会社の競争力向上も見込めるでしょう。
顧客満足度の向上
従業員ロイヤルティの向上は、顧客満足度の向上にも大きく寄与します。
愛社精神が高い従業員は顧客志向が高くなるため、お客様のニーズを的確に捉え、心のこもったサービスを提供しようとします。
顧客満足度が高まれば、リピート率の上昇や口コミの拡散などが期待でき、おのずと企業の業績向上にもつながるでしょう。
長期的な人材育成がおこなえる
従業員の離職の多い組織は目の前の人員補充に追われることが多いため、長期的な人材育成に着手することが難しくなります。
また離職の多い組織では、育てた人材が会社を離れてしまうことでこれまでかけたコストが無駄になってしまうリスクを恐れ、積極的に人材に投資できません。
反対に、従業員ロイヤルティが高く離職率の低い組織では、長期的な目線での人材育成が可能になります。
短期離職のリスクを恐れずに長期目線で人材育成計画を立てられるようになるのも、従業員ロイヤルティを高めるメリットです。
ロイヤルティが高い社員の特徴
ロイヤルティが高い社員の特徴として、下記があります。
リファラル採用に積極的に協力してくれる
リファラル採用は、自社の従業員に知人を紹介、推薦してもらう採用手法のこと。
ロイヤルティの高い従業員は自社に対して愛着や誇りを持っているため、リファラル採用にも非常に協力的です。
周りの人に自信を持って自社への入社を勧めることができ、また会社の魅力も自分の言葉で発信できるため、自社にマッチした人材を紹介してくれる可能性が高まります。
創業者や経営層を尊敬している
ロイヤルティの高い従業員は、会社の創業者や経営者、トップマネジメント層を尊敬している人が多いです。
中には創業者や経営者に惚れ込み、同僚や後輩など周囲の人に対してその人の魅力や尊敬する点を語る人もいるでしょう。
ロイヤルティの高い従業員の言葉によって「この会社を創業した(経営している)人はすごいんだ」という認識が社内に広まると、創業者・経営層の求心力が増して団結力が強まりやすくなります。
自社の商品やサービスに対する思いが強く、商材の存在価値を高く評価している
ロイヤルティの高い従業員は、自社の商品やサービスの魅力を理解しており、商品やサービスのファンを増やすために自発的な発信ができます。
自社の商品やサービスの魅力を伝えるための試行錯誤を惜しまないため、顧客やステークホルダーとも良好な関係を築き、営業・マーケティング・広報活動などで高い成果を上げることができます。
ロイヤルティを高める方法
従業員の忠誠心や愛着を呼び起こすためには、企業側から戦略的な働きかけを行うことが必須です。
ここでは従業員ロイヤルティを高める方法を解説します。
社員同士の交流の機会をつくる
ロイヤルティを高めるには、従業員に「この会社で長く働きたい」と思ってもらうことが重要です。
そのために職場環境を改善し、良好な人間関係を築いてもらうための施策を実施しましょう。
例えば社員同士が交流を深める機会を設けることで、組織への所属意識や一体感が生まれやすくなります。
懇親会やレクリエーション活動、社内イベントなどを積極的に開催し、社員同士の絆を深める工夫を行いましょう。
部署内のコミュニケーションを活発にさせる
従業員エンゲージメントを高めるには、人事部門や経営陣によるトップダウンの施策だけでなく、現場の上司と部下が密にコミュニケーションを取ることが大切です。
ミーティングや1on1などで日常的に対話の機会を持つことで、上司と部下の間に信頼関係が生まれ、ロイヤルティの醸成につながります。
マネージャーや上司が社員一人ひとりの思いや要望に耳を傾ける姿勢を持てるようにするために、マネージャー・管理職向けの研修を実施するのもおすすめです。
プロセス重視の人事評価をする
従来の人事評価は業績や成果のみを重視する傾向にありましたが、ロイヤルティ向上のためにはプロセスを重視した評価も必要です。
目標達成度などの結果だけでなく、その過程における行動や取り組み方を評価の軸に加えることで、従業員は「会社は自分の努力を見て、認めてくれている」と感じることができます。
ただし評価基準が曖昧で、透明性のない人事評価はかえってロイヤルティを低下させる可能性があります。
プロセスを人事評価に組み込む際は従業員が納得感を得られるように、求められる行動基準を明らかにした上で、明確で公平な評価を行いましょう。
ロイヤルティに取り組んでいる企業事例
ここでは実際に従業員ロイヤルティを高め、実績を上げた国内外の企業をご紹介します。
アメリカのIT企業「ラックスペース社」
ラックスペース社はITソリューションサービスを提供するアメリカの会社です。
同社は「ファナティカル・サポート(根狂的な顧客サービス)」を掲げており、これを達成するために従業員ロイヤルティ向上の取り組みを強化しています。
具体的な取り組みとして、自社サービスに熱中して取り組んだ従業員を定期的に表彰するほか、現場の管理職とのチームミーティングや、顧客対応部門のメンバーを中心としたミーティングを実施しています。
その結果、2008年にフォーチュン誌で「もっとも働き甲斐のある企業」の一つに選出されました。
アメリカのIT企業「AT&T社」
アメリカのIT企業「AT&T社」では、「顧客サービス向上のためには高い従業員ロイヤルティが不可欠」という考えのもとで様々な取り組みをしています。
例えば現場で働く従業員のアイデアをビジネスに生かすために、オンライン上で顧客サービスのアイデアを提案できるITシステムを構築し、全ての部署からの声を吸い上げる仕組みを作りました。
集められたアイデアは専門チームがすべて目を通し、各アイデアの実現へ向けてタスクの割り振りを行います。
従業員が提案したアイデアをスムーズに実現することで、「自分の声を業務に反映してくれる」という達成感から従業員のロイヤルティが高まりました。
従業員ロイヤルティの向上にはエンゲージメントサーベイツールがおすすめ
エンゲージメントサーベイツールを活用し、職場のロイヤルティの状況を可視化・改善することで、従業員一人ひとりのロイヤルティ向上につなげることができます。
しかし、せっかくエンゲージメントツールを導入しても、収集した意見を活かした改善が実施されないと、かえってエンゲージメント低下につながる可能性があります。
バヅクリHR研究所ではエンゲージメントサーベイ利用経験者にアンケート調査を行い、サーベイの実施から改善にまつわる従業員の本音を資料にまとめています。
資料は下記からダウンロードできますので、エンゲージメントを向上させるサーベイを実施するためにお役立てください。
まとめ
「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」は混同してしまいがちですが、これら2つの言葉には明確な違いがあります。
ロイヤルティ(Royalty)を高めることで社員の企業に対する愛着が芽生え、離職率の低下や業績の向上を見込めるようになります。
人材の定着率や業績不振、社員同士の関係性などでお悩みの際はぜひ一度ロイヤルティについて考えてみてはいかがでしょうか。