現代のビジネス環境は、急速なグローバル化、技術革新、人口構造の変化など、様々な変化が生じています。これに伴い、企業はますます高度なスキルや知識を持つ人材を求めるようになっています。人材教育が重要視されるようになる中で、人材育成を担う教育担当者には多様なスキルが求められるようになりました。

本記事では、ビジネスにおいて教育担当者が果たす役割や指導法、そして直面する問題点などを詳しく紹介します。

そもそも教育担当者の立ち位置

ここでは、教育担当者のそもそもの立ち位置や選ばれる人の特徴を解説します。

教育担当者の定義

教育担当者は、OJT(On-The-Job-Training)の中で、新人に業務知識やノウハウを教える先輩社員のことを指します。一般的に、新人が配属された部署にいる人の中から選任された人が、教育担当者として新人の業務指導を行います。座学とワークの中で業務知識を獲得するOff-JT(Off-the-Job Training)と比較して、OJTには以下のメリットがあります。

  • 実際の仕事に即してトレーニングができる
  • 教育担当者から即座にフィードバックをもらえることで、より短期間で人材を育成できる

教育担当者に選ばれる人の特徴

OJTの教育担当者に選ばれやすいのは、以下の特徴を持つ人です。

  • これまでの業績を評価されている
  • 仕事への熱量がある
  • 将来のマネージャーとして期待されている

教育担当者になる人は、会社の将来を担う人材として上層部から期待されていることも多いです。教育担当者になることで、分かりやすく物事を伝えるスキルやタイムマネジメントのスキルなどのマネジメントにも応用できるスキルが身につくメリットがあります。キャリア志向や出世意欲の高い人に選出された理由を伝えると、教育担当者本人のモチベーションアップにもつながります。

教育担当者に必要とされる役割とスキル

教育担当者は、新人にビジネス上必要な心構えを教える役割も担っています。ここでは教育担当者に求められる役割と、必要なスキルを解説します。

教育担当者に求められる役割

教育担当者に求められる役割として、以下のものがあります。

責任感を持たせる

ビジネスパーソンに必要なマインドとして、顧客やチームメンバーとの約束を守ったり、責務を果たしたりしようという責任感があります。責任感のない人は、信頼して仕事を任せられないだけではなく、周囲のモチベーションを下げてしまう、会社としての信頼性を失うなどのリスクも伴います。社会に出たばかりの新人に、仕事上必要な責任感を持たせるのが教育担当者の仕事です。

やる気を持たせる

新人にとって、仕事は初めての連続です。できないことや失敗が続くと、自信を喪失してモチベーションが下がってしまうことも多くあります。そんな中でも褒めるところは褒めて、自信を持たせることで、新人は意欲的に仕事に取り組めます。

業務上のビジネスマナーやコミュニケーションについて伝える

社会に出たばかりの新人社員は、ビジネスマナーやビジネスコミュニケーションに疎いことも多いです。社内外において信頼できる社員へと成長してもらうために、適切なコミュニケーションを教えるのも教育担当者の仕事です。

教育担当者に必要なスキル

教育担当者に必要なスキルとして、以下のものがあります。

コミュニケーションスキル

OJTにおいては、教育担当者と教育を受ける新人社員との間で信頼関係が構築されるのが非常に重要です。そのため教育担当者には、新人社員に対して親しみを持ってもらえるように振る舞うことが求められます。

日本パーソナリティ心理学会の研究によると、教育担当者に求められる具体的なコミュニケーション能力や経験として下記があります。

  • 他者受容
  • 表現力
  • 解読力
  • 自己主張
  • 自己対応力
  • 他者対応力
  • 知識
  • 経験

その中でも、特に新人の気持ちになって指導を行える他者受容能力は非常に重要です。

運営調整力

OJTは、1対1のやりとりで完結するものではありません。ときには同じ部署の上司や先輩、同僚に新人社員の状況を相談することもあるでしょう。さらに、実際の業務体験の中で学ばせる観点から、社外の人とも関わる可能性があります。そのようなときに、事前に関係者との調整・根回しを済ませておくとOJTが円滑に進行します。

このように、運営・調整スキルも教育担当者に必要なスキルの一つです。

企画力

OJTでは、教育担当者は新人社員に対して「何を、どの順番で覚えてもらえば効率的か」を考えながら仕事を教えていきます。新人社員がスムーズに仕事を覚えられるように、マニュアルや手順書、参考資料を用意しなければならないときもあるでしょう。

このように、教育担当者は研修の目的やゴールを把握し、研修全体の企画を考える力が求められます。

社員教育の手法

社員教育の手法は、大きく「マニュアル」「OJT」「Off-JT」の3つに分かれます。実際の現場では、上記の3つをうまく組み合わせて行うのが一般的です。

ここでは、社員教育の具体的な手法について解説します。

社員教育手法の種類

マニュアル

実際の業務に即しているマニュアルが用意されている場合は、新人にマニュアルを熟読してもらいます。新人は、マニュアルを通じて業務内容を繰り返し見返すことで学習できます。マニュアルは制作コストがかかるものの、一度作ったら他の人にも展開できるのがメリットです。

OJT

教育担当者が付き添って教えることで、業務スキルを学ぶ方法です。実際の仕事に即して具体的なトレーニングができるため、短期間で一人での業務ができるようになるのがメリットです。

Off-JT

職場以外の場所でビジネスの基本や専門的な知識、業務内容を学ぶ方法です。OJTとは異なり、実務と離れた座学での研修になります。実務で使うビジネスマナーやマーケティングのフレームワークなど、体系的な知識やスキルを学んでもらうには有効です。

近年では、OJTを重視する企業が増えている

厚生労働省が発表した 「平成29年度 能力開発基本調査」によると、正社員に対する教育訓練で「OJTを重視する」「OJTを重視するに近い」と回答した企業は70%を超えました。
またOJTが上手く機能しているかどうかで、人材の独り立ちまでの時間に違いが生まれるという調査もあります。

OJTで活用できる「4段階職業指導法」

OJTを実施する際は、「4段階職業指導法」というステップに則って行うと成果が出やすくなります。ここでは4段階職業指導法の具体的な手法を解説します。

Show(やってみせる)

実際に仕事をやってみせて、仕事の全体像を把握させます。言葉だけで仕事内容を把握するのと、実際にやっている姿を見せるのでは新人の理解度に大きな差があります。OJTを行う際は実際にやって見せてから説明を行うのがおすすめです。

Tell(説明する)

具体的に仕事の内容を説明し、仕事の意味や必要な理由を理解させます。この業務が必要な背景や原理・原則も合わせて教えることで、業務の全体がイメージできるようになり、臨機応変な対応ができるようになります。

Do(やらせてみる)

ShowとTellを踏まえた上で、実際に仕事をさせてみます。

Check(フィードバックする)

OJTにおいては、Checkのステップが最も大事です。できた部分はしっかりと褒め、できなかったところに対してはできるようになるためのアドバイスをすることで、新人社員との間で信頼関係が構築されます。

OJTの問題点と解決方法

ここではOJTでよくある問題点とその解決方法を解説します。

人材育成担当者の意欲が低い

人材育成担当者の本人の意欲が低いと、育成にコストを割かず、教育を受ける新人に適切な教育がされなかったり、モチベーションが著しく低下したりなどのデメリットが生じます。
この場合の解決策として、人材育成担当者に担当になった理由を適切に伝える、OJTの成果を評価制度に組み込むなどがあります。これらの取り組みを行うことで、担当者が主体的に新人の育成に取り組むようになります。

人材育成の基準が明確になっていない

人材育成の基準が明確になっていないと、教育担当者各々の判断で教育が行われるため、育成のレベルにばらつきが出てしまいます。人材育成に取り組む際は、共通の指標を設けることが重要です。具体的にはスキル到達テストなどを設け、評価側の基準を一定にするようにしましょう。

研修の最終目標が決まっていない

OJTによくある問題として、「いつまでに研修を終わらせるか」「どのような方式で行うか」など、研修の全体像が決まっていないことがあります。これも、先ほどの「人材育成の基準が明確になっていない」と同様、教育者各々の判断でOJTが行われ、最終的な育成のレベルにばらつきが出てしまう要因になります。研修の全体像は事前にしっかり決めておき、教育担当者に共有する必要があります。

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まとめ

本記事では、ビジネスにおいて教育担当者が果たす役割や指導法、そして直面する問題点などを解説しました。教育担当者の指導力によって、企業の成長は大きく左右されます。OJTを成功させたい企業の方は、バヅクリのOJT指導研修を検討してみてはいかがでしょうか。