研修にeラーニングを取り入れる企業が増えています。場所や時間を選ばずに学べるうえ、会場費や交通費といったコストも抑えられるためです。
一方で、「受講者のモチベーションが続かない」「対面研修とどう使い分ければよいのか」という声もよく聞かれます。この記事では、eラーニング研修の仕組みやオンライン研修との違い、メリット・デメリット、ツールの選び方から導入手順、企業事例までをまとめて解説します。
eラーニング研修の基礎知識

まずは、eラーニング研修がどのような学習方法なのかを整理します。仕組みや似た言葉との違いを押さえると、自社に合うかどうかが判断しやすくなります。
eラーニング研修とは
eラーニングとは、パソコンやインターネットを利用し、動画などを視聴しながら知識を習得していく学習方法です。オンライン上で、受講者と運営側が双方向にやり取りすることもできます。
受講者の学習状況や教材の閲覧は、学習管理システム(LMS)で管理します。LMS内の教材は公開後も修正や再アップロードができ、こまめに更新すれば常に最新の状態を保てます。eラーニング研修は、この仕組みを社員教育に応用した研修形態を指します。
eラーニング研修が注目される背景
矢野経済研究所のeラーニング市場に関する調査によると、2024年度の国内eラーニング市場規模は前年度比2.1%増の3,812億円で、このうち法人向け(BtoB)市場は前年度比7.8%増の1,232億円と堅調に伸びています。
背景にあるのは、人的資本の情報開示への対応とリスキリング需要の高まりです。従業員への教育投資が企業価値を測る指標として見られるようになり、限られた人員でも全社に同じ学習機会を届けられるeラーニングを選ぶ企業が増えています。
オンライン研修との違い
eラーニングと混同されやすいものに、オンライン研修があります。両者の違いは、やり取りが双方向か一方向かという点にあります。
オンライン研修はWeb会議ツールを使い、講師と受講者がその場でやり取りしながら進める形式です。eラーニングは、あらかじめ用意された教材を受講者が自分の都合に合わせて視聴します。すぐに質問したいならオンライン研修、自分のペースで繰り返し学びたいならeラーニングというように、目的で選び分けると迷いません。
eラーニング研修の主な形式
eラーニング研修と一口に言っても、進め方にはいくつかの種類があります。代表的なものが、オンデマンド型・ライブ配信型・ブレンディッドラーニングの3つです。自社の目的に合わせて形式を選べる点が、eラーニング研修の使いやすさといえます。
オンデマンド型は収録済みの動画を好きな時間に見る形式、ライブ配信型は決まった日時の講義をその場で受ける形式です。ブレンディッドラーニングは、オンデマンド型と集合研修を組み合わせ、それぞれの良さを生かす進め方を指します。
eラーニング研修のメリット

eラーニング研修には、受講する社員と運営する企業の双方に利点があります。それぞれの立場から、主なメリットを見ていきましょう。
受講者側のメリット
受講者にとっての大きなメリットは、場所や時間を選ばずに学習できる点です。業務の合間やすき間時間を使い、自分の都合に合わせて学習を進められます。
わからない部分を繰り返し視聴したり、自分のペースで進めたりできるのも利点です。居住地や勤務地に関わらず、誰もが同じ内容の教育を受けられる点も、受講者にとってはうれしいところでしょう。
企業側のメリット
企業側の大きなメリットは、研修コストを大幅に削減できる点です。会場の用意や講師の招へい、受講者の宿泊費・交通費が不要になるためです。
また、全員が同じ教材で学ぶため、講師による教え方の差がなくなり、研修の質をそろえられます。LMS上で進捗や理解度を一元管理でき、内容が変わった際も教材を更新するだけで全社に最新情報を届けられます。
eラーニング研修のデメリットと対策

便利なeラーニング研修にも、いくつかの弱点があります。あらかじめ知っておけば、運用の工夫で十分に補えます。
モチベーションが続きにくい
eラーニングは一人で学習を進めるため、モチベーションの維持が難しいという課題があります。「あとでまとめて見ればいい」と先延ばしにしているうちに、受講期限が迫ってしまう人も出てきます。
対策としては、受講期限をはっきり決め、定期的に進捗を確認することが効果的です。学習後にテストやレポートで理解度を確認すると伝えておくと、受講者も計画的に取り組みやすくなります。
双方向のやり取りが生まれにくい
オンデマンド型のeラーニングでは、講師や他の受講者と言葉を交わす場面がほとんどありません。一人で黙々と進めるうちに、疑問を解消できないまま学習が終わってしまうこともあります。
質疑応答の時間やフォローアップ面談を別に設けると、この弱点は補えます。学んだ内容を上司や同僚と共有する場をつくれば、理解が深まり、学んだことも記憶に残りやすくなります。
実技を伴う研修には不向き
接客やプレゼンテーションのように、体を動かして身につけるスキルは、動画を見るだけでは習得しにくいものです。実技を伴う研修は、eラーニング単体では効果が限られます。
こうした内容は、eラーニングで前提となる知識を学んでおき、その後ロールプレイや対面演習で実践する形が向いています。知識の習得と実践の場を分けることで、限られた研修時間を有効に使えます。
導入や教材制作に手間がかかる
eラーニングの導入や教材づくりには、一定のITの知識と準備の時間が必要です。システムの選定から教材の作成まで、社内だけで対応しようとすると負担が大きくなりがちです。
自社での制作が難しい場合は、外部企業のサービスや、すでに用意された既製の教材を活用する方法があります。はじめから内製にこだわらず、外部の力を借りることで、スムーズに運用を始められます。
eラーニング研修に向いている内容

eラーニング研修は、どんなテーマでも万能というわけではありません。得意な領域を押さえておくと、導入後の効果が変わってきます。
向いている研修テーマ
eラーニングは、知識のインプットを中心とした研修と相性が良いといえます。社内規定やコンプライアンスの学習、業務に必要な知識やスキルの習得、語学や資格の学習などが代表例です。
毎年実施する新入社員研修や、入社のたびに発生する中途社員向けの研修など、同じ内容を繰り返し教える場面でも力を発揮します。一度教材をつくっておけば、入社時期を問わず同じ品質の研修を届けられます。
集合研修と組み合わせるブレンディッドラーニング
知識の習得はeラーニング、話し合いや演習は集合研修というように、両方を組み合わせる進め方がブレンディッドラーニングです。近年、多くの企業がこの形を取り入れています。
たとえば、事前にeラーニングで基礎を学んでおき、当日は議論や実践に時間を充てる方法があります。インプットを各自の予習に回すことで、集合研修の時間を「人が集まらないとできないこと」に集中させられます。
eラーニング研修の導入手順

ここからは、eラーニング研修を実際に始めるまでの流れを紹介します。次の6つのステップに沿って進めると、迷わず準備を整えられます。
1. 研修目的と受講者を決める
目的が明確でないと、受講者は何を学べばよいかわからず、企画側もコンテンツを用意できません。研修の効果や満足度を高めるうえで、目的をはっきりさせることが大切です。
2. 学習管理システムを用意する
自社開発も可能ですが、時間や労力がかかります。多くの企業では、各社から提供されているLMSを利用しています。
3. 研修担当者を決める
研修内容の選定やスケジュール管理、受講者からの質問対応などを行います。人数が多い場合は、数人のチームで運営しましょう。
4. 研修実施日を決める
eラーニング研修は数日間の受講期間を設ける形になります。期間が短すぎると学習が不十分になり、長すぎると後回しにする受講者も出てきます。コンテンツ量から適切な期間を設定してください。
5. 研修を実施する
受講期間中は、管理システムで受講者の進捗状況を管理します。進捗が遅れている受講者へ自動で促進通知を送れるツールもあります。
6. フォローアップを行う
研修後はレポートの提出やテストの実施で理解度を確認します。質問の受付や満足度アンケートを行えば、次回の改善点も見つけられます。
eラーニング研修にかかるコストの目安

対面研修とeラーニングでは、かかる費用に大きな差が出ます。受講人数が多いほど、その差は広がっていきます。
たとえば、対面で500人規模の研修を行う場合、次のような費用がかかります。
- 宿泊費:6,000円 × 500人 = 3,000,000円
- 交通費:1,000円 × 500人 = 500,000円
- 食事費:4,000円 × 500人 = 2,000,000円
単純計算で550万円程度の予算が必要になり、会場を借りる場合はさらに会場費も加わります。eラーニング研修ならこれらは不要で、1人あたり1,000円前後から利用できるサービスもあります。
eラーニング研修ツールの選び方

自社に合うツールを選ぶには、いくつかの観点で比較することが大切です。ここでは、確認しておきたい4つのポイントを紹介します。
教材の量・種類・内容
取りそろえている教材の量や種類、内容を確認しましょう。幅広いテーマの教材があれば、複数の研修をひとつのツールでまかなえます。
ただし、量が多ければよいわけではありません。受講者に学んでほしいことや研修の目的に合った教材が用意されているかを、導入前に見極めておくことが大切です。
受講促進・進捗管理の機能
進捗が遅れている受講者へ自動で通知を送る受講促進機能があると、運営の負担が軽くなります。担当者が一人ひとりの進み具合を逐一追わなくても、システムが学習を後押ししてくれます。
一斉送信とすぐにわかる通知では、受講者が読み流してしまうこともあります。通知の文面やタイミングを調整できるかどうかも、あわせて確認しておきたいところです。
操作性・視認性
受講者と管理者の双方にとって、操作のしやすさは見落とせないポイントです。操作が複雑なツールは、それだけで受講者の学習意欲をそいでしまいます。
画面の見やすさや、次に何をすればよいかが直感的にわかる設計かどうかを確認しましょう。可能であれば、無料トライアルで実際の使い心地を試してから決めると、導入後のミスマッチを防げます。
料金体系とサポート体制
料金体系は、ID課金型か定額型かによって、受講人数が増えたときの総額が変わります。人数規模に合った料金プランを選ぶと、無駄なコストを抑えられます。
導入後の運用に不安がある場合は、初期設定や教材づくりを支援してくれるサポートの手厚さも比べておきましょう。問い合わせへの対応の早さも、長く使ううえで効いてきます。
おすすめツールを紹介

ここからは、代表的なeラーニングツールを紹介します。それぞれ得意分野が異なるため、自社の目的に合うものを選びましょう。
Schoo for Business
動画を視聴する形で学習を進めるSchoo。
生放送で配信されているコンテンツもあり、なんと生放送コンテンツの視聴は無料。
1回3分という短時間から学習ができ、法人向けのサービス・Schoo for Businessも展開しています。
階層、職種などに分けて様々なパッケージが提供されています。
料金:1,500円 / 1ID
Aircourse
ビジネススキルからIT関連の知識まで、様々な動画が提供されているサービスです。
同社から提供されている動画コンテンツだけでなく、自社で作成した動画コンテンツを 学習管理システム・LMS上にアップすることが可能です。
また、理解度を確認するためのテスト作成や、受講者の状況を管理できる機能も。
料金:360円 / 1ID 〜
※無料プランもあり
smartbording
動画を視聴することでインプットをし、ライブ配信で講師とコミュニケーションを取りながらアウトプットをするという学習スタイルのsmartbording。
5〜10分の短い動画で学習を進めます。
階層別にコンテンツが用意され、若手から管理職まで利用できます。
料金:980円 / 1ID 〜
https://www.smartboarding.net/
Teachme Biz
Teachme Bizはマニュアル作成・共有システムです。
e ラーニングのためのシステム、サービスではありませんが、e ラーニング用のツールとして利用することができます。
教材動画は提供されていないので、自社で動画を作る必要があります。
しかし、言い換えればオリジナルのe ラーニング教材を作成できるのです。
利用者データの管理・分析も可能です。
https://biz.teachme.jp/
ひかりクラウドスマートスタディ
NTT東日本が提供するe ラーニングのためのツールです。
無料動画が利用できる他、独自の資料をアップロードすることもできます。
テストの作成や利用状況のレポートの作成も可能です。
料金:198円 / 1人〜
https://business.ntt-east.co.jp/service/e-learning/
おすすめサービス「令和の研修」
研修を内製する場合、企画から実施までに、時間や人など多くのコストがかかります。
研修を実施する際は社外サービスを活用すると、社内負担を大幅に削減できます。
また、研修運営のノウハウがない場合も、まずは社外サービスを活用するようにしましょう。

バヅクリが提供する『令和の研修』は、アクティブラーニングによる高い学習定着とアクションプランのコミットメントによる行動変容を促進するように設計されており、また講師を務めるのは業界のプロMCのため、深い学びを得るだけでなく、やらされ感のない「楽しい」と感じる研修の実施が可能です。参加者満足度は97%を誇ります。
企画から運営まですべてお任せできるので社内で実施する場合と比較して社内工数を90%も削減できます。
e ラーニング導入の企業事例

最後に、e ラーニングを導入した企業の事例をご紹介します。
どのようなスタイルでe ラーニングを導入し、どれほどの成果やメリットを得られたのか参考にしてください。
ダスキンミスタードーナツ
日本各地にドーナツ店を展開するダスキンミスタードーナツ。
ドーナツづくりの技術や経営ノウハウなどの知識を習得するための研修をe ラーニングを利用し行なっています。
e ラーニングを取り入れることで効率よく学習の最大化を実現できただけでなく、社員の自主性も育てることができました。
参考:48年におよぶ研修の歴史とeラーニングの出会いが生んだ新しい「学び」とは?
Pro Seeds
楽天
インターネット関連のサービスを展開する楽天は、新型コロナウイルス流行の影響を受け、新卒社員研修を「完全オンライン」で実施しました。
新入社員が1人1人しっかり学習は進められているか、講義についていけているか、体調に問題はないかなどの情報を自動的に集計し、データで管理。
瞬時に研修担当のチームが、データから研修の状況を把握できるシステムを構築しました。
参考:学びを止めるな!「完全オンライン」新卒研修の舞台裏をレポート~HRテクノロジー大賞・特別賞受賞~
Rakuten Today
スタッフサービス
人材派遣会社のスタッフサービスでは、e ラーニングを導入したことで受講者は増加し、地域に関わらず研修を受講できる体制をつくることができました。
Pro Seeds
JTB
大手旅行会社のJTBは、社内の教育に対する考え方を「育成する」という考え方から、「社員が自ら能動的に学び育つ」環境づくりをすると考えを変えe ラーニングを導入。
年間1,000本以上もある研修の8割を内製しており、外部企業のSLMシステムを骨組みに教材を作成しています。
参考:JTBが本気で挑む研修改革!「レッスンルーブリック」で行動変容を促す土台をつくる
HR NOTE
日本曹達
農業化学品などの開発・製造を行う日本曹達。
同社では、内定者と既存社員の交流のため、令和の研修のライブ型講座を導入しました。
体験したのはお絵かきで、お絵かきを通して「自己紹介」「自分の喜怒哀楽」「会社に入ってからの理想的な社会人像」などを表現しシェア。
例年開催していたオフラインイベントの場合よりも、内定者の個性を感じることができました。
外部企業のサービスを利用することで、社内負担もほとんどなくイベントを開催できたそうです。
参考:レクリエーション性があって、参加者が楽しみながら交流できるイベントを
バヅクリ
まとめ
eラーニング研修は、学びの効果を高めながら、研修にかかるコストや社内の負担を減らせる手段です。一方で、モチベーションの維持や双方向のやり取りといった弱点もあります。
まずは研修の目的をはっきりさせ、知識のインプットはeラーニング、議論や実践は集合研修にといったように、内容に合わせて学び方を組み合わせていきましょう。

