メンター制度とは、直属の上司とは別の社歴の近い先輩社員が新入社員や若手社員のサポートを行う制度です。
昨今、社員のモチベーション維持と人材定着の観点からメンター制度を導入する企業が増えています。
一方でメンター制度を導入しているにもかかわらず、うまく効果を得られていない企業も多いです。
本記事では人事担当者向けに、メンター制度を実施する際のポイントとメンターに対して行うメンター研修のポイントを解説します。

メンター制度とはなにか?導入するメリット・デメリットとは?

メンター制度の活用

メンター制度とは、新入社員や若手社員に対して、選任された担当者が主に精神面でのサポートを行う制度のことです。
サポートする先輩社員のことは「メンター」、サポートを受ける社員のことは「メンティ」と呼ばれます。
実務業務を通して業務を教えていく「OJT(On-the-Job Training)」とは異なり、メンター制度は新入社員や若手層の精神的なサポートを行うことが最大の目的となります。

メンター制度のメリット

ここではメンター制度を導入するメリットを紹介します。

1. 新入社員・若手社員のモチベーション維持

新入社員・若手社員の多くは、新しい職場になじめるか不安を抱えています。
まだ他の社員との関係も浅いため、悩みを抱えていても打ち明けられないことが多いです。気軽に物事を相談できるメンターがいることで、悩みや不安を解消し、モチベーション維持や早期離職の防止に繋げることができます。

2. メンターとなる先輩社員の成長

人に何かを教えたりサポートしたりすることは、メンターにとっても学びを得られる機会です。
あらためて自分のキャリアを見つめ直したり、多様な考え方を学ぶきっかけにつながります。
またメンターになった社員の多くは、メンティに振る舞いを見られることで、仕事に対して責任感を持つようになります。

3. 他部署間のコミュニケーションの促進

メンター制度では、同じ部署の上司や先輩ではなく、別の部署の先輩社員がメンターを担当することが一般的です。
業務で直接関わりのない社員がメンターを担当することも多いため、コミュニケーションの促進や組織の活性化が期待されます。

4. 女性の活躍のサポート

女性活躍推進を目的にメンター制度を導入する企業もあります。
結婚や出産などのライフイベントを抱える女性社員に対して、同じライフイベントを経験した社員がメンターとしてサポートします。

5. キャリア社員のモチベーションアップ

また、中堅社員や幹部社員がメンター役を担うことで、モチベーションアップになります。
目標達成やチームマネジメントのプレッシャーを背負ってストレスが溜まる、待遇などに不満を感じやすいキャリア社員にとって、メンティとの会話はリフレッシュの機会になりやすいです。

メンター制度のデメリット

上記のようにメリットの多いメンター制度ですが、以下のデメリットもあります。

1. 相性によっては悪い結果を招く

メンターとメンティの相性が悪く、良好な人間関係が築かれなかった場合、メンター・メンティともにストレスを抱える結果となってしまいます。
メンター制度が逆効果にならないためにも、両者の相性を見極めた上でメンターの組み合わせを考えることが大切です。

2. メンターとなる先輩社員の負担

メンター社員は、通常業務にプラスしてメンティのサポートを行う必要があるため、業務量の負担が増えます。
メンター候補となる人材とその上司とも話し合いながら、メンターとしてどんなことを任せたいのか具体的にしておくと良いでしょう。

3. メンターの質のばらつき

メンターとなる先輩社員のスキルやコミュニケーションスタイルによって、メンティへのサポート度合いに差が出ることがあります。

メンター制度を実施する際のポイント

メンター制度を実施する組織

ここではメンター制度が社内に定着し、効果的に活用されるポイントを解説します。

1. メンターとメンティのマッチング方法を検討する

メンター制度を実施する上で大切なのが、メンターのコミュニケーションスキルと、メンティの相性です。

面倒見の良い人がメンターについた方が、メンター制度は機能しやすくなります。
またお互いの特性やコミュニケーションスタイルが違いすぎると、相性が合わず、適切なサポートを行うことが難しくなります。

メンターの選出方法には、運営側がメンターを指定する方法と、メンター希望者をつのる方法があります。
社内にいる人材の特性を見極めた上で、最適な選出方法を選びましょう。

また運営側がメンタ―候補とメンティのバックグラウンドや行動特性を把握し、相性の良い人をマッチングするようにするのがおすすめです。

2. メンターに求める役割の明確化

メンター制度を実施する際には、メンターに何を求めるのか、負担の範囲を整理しましょう。
事前に期待される役割を明確化することで、メンターはどんなサポートを行う必要があるかイメージしやすくなります。
またメンターの上司とも役割を共有することで、協力や理解を得やすくなるでしょう。

3. メンターの教育と連携体制の構築

後輩のサポートを行うメンターには、傾聴力や受容力、キャリアに対する理解が必要になります。
メンターがメンティと円滑なコミュニケーションを図り、良好な関係を築けるようにするためにも、メンター研修でメンターの教育を行うことが肝要です。

またメンター制度を実施するには、人事部だけではなく、経営層や各部門の協力が不可欠です。
社内のさまざまな部門にメンター制度の目的や意義を理解してもらい、合意を得ながら導入を進めるようにしましょう。

メンター研修の内容(カリキュラム例)

メンター研修を受ける社員

メンターに必要なのは、精神面でのサポートをする上での心構えと、メンティに寄り添ったコミュニケーションスキルです。
ここではメンター研修のカリキュラム例を紹介します。

1. メンターとは

座学やワークで、メンター制度の概要や目的、意義を共有します。
メンターについて理解することで、これからメンターが担うべき役割を明確にします。

2. よいメンターになるために

ワークなどを行いながら、良いメンターとはどんな存在か、またどんなスキルやマインドを持っているかなど、理解を深めます。
また自分の経験を棚卸しを行い、メンティの相談事項に答えるためのヒントを探ります。

3. メンタリングのポイント

メンタリングとは、メンターとメンティが信頼関係を築くことで、課題に向き合う主体性を引き出す人材育成手法です。
ここではコーチングやOJTとの違いを比較しながら、メンタリングを実施する際の留意点を学びます。

4. メンターに必要なコミュニケーション力

メンターに必要なのは相手の話に耳を傾ける「傾聴力」と、相手の気持ちや考えを引き出す「質問力」です。
メンティとのコミュニケーションに必要な姿勢を習得することで、メンター制度をより効果的なものにすることができるでしょう。

5. モチベーションを向上させるフィードバック

メンターの役割の一つに、メンティへのフィードバックがあります。
メンティの心情を理解して、ポジティブなフィードバックを行うポイントをワークを交えながら学びます。

6. 実践ケーススタディ

メンターに求められる振る舞いを理解したら、実践的なケーススタディに進みます。
「ネガティブな発言をするメンティには?」
「向上心のあるメンティには?」
など、さまざまなタイプのメンティを想定しながら対応方法を考えることで、メンター制度の実践に備えます。

メンター研修を提供している会社

サービスを利用して行うメンター研修

ここではメンター研修を提供している会社を紹介します。

1. インソース

インソース
出典:インソース

【料金】115,000円〜
【URL】https://www.insource.co.jp/index.html
【内容】

  • 公開講座の受講者数も57万人以上を誇る社員研修界のリーディングカンパニー
  • 組織の課題に合わせた「オーダーメイド型」や一名からでも気軽に参加できる「オンライン公開講座」まで、さまざまな形式を用意
  • メンターとして活躍するのに必要なスキルを総合的に学習可能

2. schoo

schoo
出典:schoo

【料金】月額1,500円(税抜)/ID
【URL】https://schoo.jp/biz/
【特徴】

  • オンライン研修に加え、生放送授業による自己啓発学習プログラムが多数
  • ビジネス・働き方・経済・テクノロジーなど、リーダーの知見を深める幅広いe-ラーニングコンテンツ
  • メンター研修におすすめなコーチング研修パッケージも

3. リスキル

リスキル
出典:リスキル

【料金】115,000円〜
【URL】https://www.recurrent.jp/
【特徴】

  • 1986年の創業以来人材育成事業のみを取り扱う、研修会社の老舗
  • 実践的な研修と研修準備のフルサポートで良質な人材育成を実現
  • メンティ向け研修やメンター・メンティキックオフ研修など、幅広いサポートも用意

4. SMBCコンサルティング

SMBCコンサルティング
出典:SMBCコンサルティング

【料金】27,500円〜/1名
【URL】https://www.smbc-consulting.co.jp/
【特徴】

  • 東京都と大阪府に拠点を持つ、三井住友銀行グループの人材育成会社
  • オフライン参加やライブ配信、講師派遣型など多様な研修形態を用意
  • ケーススタディなどを取り入れながら実践的学習を支援

5. ラーニングエージェンシー

ラーニングエージェンシー
出典:ラーニングエージェンシー

【料金】要問い合わせ
【URL】https://www.learningagency.co.jp/
【特徴】

  • 過去13,000社以上の人材育成を支援
  • 階層別に最適な研修を提供
  • 質問力やポジティブリスニングなど、メンター向けに「聞くスキル」「話すスキル」を学べる

6. リンクアンドモチベーション

リンクアンドモチベーション
出典:リンクアンドモチベーション

【料金】要問い合わせ
【URL】https://solution.lmi.ne.jp/
【特徴】

  • モチベーションを切り口にした組織人事コンサルティング支援
  • 心理学・行動経済学などを基盤とした独自の組織変革技術を提供
  • 企業の状況・要望に合わせてプログラムをカスタマイズ

まとめ

本記事では人事担当者向けに、メンター制度を実施する際のポイントとメンターに対して行うメンター研修のポイントを解説しました。
悩みを溜め込んでしまいがちな新入社員や若手社員の課題を解決するためには、メンター制度を導入して社員全員が働きやすい環境を構築するのが有効です。
またメンター研修を実施し、メンターの質を均一化することで、メンター制度をより効果的なものにできるでしょう。