日本の会社員は帰属意識がとても強いと考えられていました。
しかし、集団よりも一人ひとりの個性が大切にされるようになった昨今では、帰属意識が低くなってきているとの指摘があります。

帰属意識が低いと、会社の一員であるという自覚が薄れて生産性が下がったり、すぐに辞めてしまったりといったデメリットが発生します。

従業員が定着しなければ採用コストもかかってしまうため、従業員の帰属意識が低い状態を放置するのは、会社にとって非常に危険と言えるでしょう。

今回は、帰属意識という言葉の意味や、帰属意識が低くなる理由、高めるための方法などをまとめてご紹介します。

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帰属意識とは

帰属意識とは

帰属意識が低くなってしまう原因にふれる前に、帰属意識とはそもそもどういった意味を持つ言葉なのか解説します。

帰属意識の意味

帰属とは「特定の集団に所属し従うこと」を意味します。
そして帰属意識とは「特定の集団の一員として所属し、その集団に対し一体感を持っていると自覚すること」を指します。

帰属意識はもともと社会心理学や精神分析学で使用されていた言葉で、徐々に使用される場が広がりました。

会社においては、会社そのものに対してだけではなく、組織や一緒に仕事をするチーム、特定の共通点を持つコミュニティといった大小いくつもの集団に所属して一体感を持っていると自覚することが帰属意識とされます。

会社という集団の一員であるという帰属意識を持つようになると、その集団の現状を把握し、どうすれば利益が出るのかなどを自分自身で考えて積極的に行動することが期待できます。

組織の問題を「自分ごと」とし、その集団が「自分の集団」となり「自身の生活の根拠である」と強く認識するほど帰属意識が高い状態と言えます。

エンゲージメントとロイヤルティとの違い

帰属意識と似た言葉として、エンゲージメント(Engagement)ロイヤルティ(Loyalty)の2つがあげられます。

エンゲージメントとロイヤルティでは、会社と従業員は相互の関係を持ちますが、帰属意識は従業員が会社に対して持つ一方的な意識・関係という点で異なります。

エンゲージメントとは、会社への思い入れや愛着のことを指し、従業員が会社に抱く感情のことです。
つまり、会社から従業員に福利厚生や研修で支援をし、従業員は会社に貢献しようと前向きに仕事を行うという「お互いの成長にそれぞれが貢献していく関係」を指します。

ロイヤルティとは忠誠心、忠義や誠実と言った意味を持ちます。
会社に対してこの言葉を使うときは、「愛社精神」や「組織コミットメント」と言いかえることができるでしょう。
ロイヤルティが高いとは、それだけ従業員が会社へ忠誠心を持っていることを意味します。

エンゲージメントは「お互いが対等であり両者が一緒に向上していける関係」であるのに対し、ロイヤルティは「従業員が会社に忠誠心を持った主従関係」であるため会社の立場が強い状態にあります。

帰属意識が高い・低いことの影響

帰属意識の高低は、組織の業績と従業員個人の心理の両面に影響をおよぼします。以下の表で整理します。

状態組織・業務面への影響個人の心理面への影響
帰属意識が高い離職率の低下、採用コスト削減、チームワーク向上、生産性アップ仕事への意欲・やりがい・自己効力感が高い状態
帰属意識が低い早期離職、採用コスト増大、情報共有の停滞、チームの士気低下「ここに居場所がない」「評価されていない」という疎外感が強い状態

帰属意識が高い場合のメリット

帰属意識が高い従業員は、組織の課題を「自分ごと」として捉えるため、指示待ちではなく自発的に動く姿勢が生まれます。

結果として生産性が向上し、離職率が下がることで採用コストの削減にもつながります。またチームとしての連帯感が強まり、情報共有やコラボレーションがスムーズになるという副次的な効果も期待できます。

さらに、帰属意識の高い社員は会社のブランドアンバサダーとしての役割を自然と担うことが多く、採用広報や口コミでの採用力向上にも貢献しうるでしょう。

帰属意識が低い場合のリスク

帰属意識が低い状態では、従業員は「言っても無駄だ」と口を閉ざしたり、「どうせ評価されない」と手を抜いたりする傾向が出てきます。

こうした心理状態が続くと、転職市場への関心が高まり、早期離職につながります。採用難の時代において、せっかく育成した人材が抜ける損失は金銭的コストだけにとどまらず、チームの士気や組織の知見蓄積にも深刻な影響を与えます。

「帰属意識の低下」は、エンゲージメントサーベイに現れる前から行動の変化として表出することが多く、早期検知の仕組みが組織には求められます。

帰属意識が低下しているサイン

帰属意識の低下は、ある日突然「退職します」という形で表面化しがちです。しかし、その前段階では必ず何らかの行動変化が現れています。管理職や人事担当者が日常的に注目したいサインを以下に整理します。

コミュニケーション面のサイン

会議での発言が減り、質問されても最小限の回答しか返さなくなる場合は注意が必要です。以前は積極的に意見を出していた社員が「黙るようになった」「雑談に参加しなくなった」と感じたとき、それは帰属意識が揺らぎはじめているサインである可能性があります。情報共有もルーティンの業務報告にとどまり、自発的な提案や相談が目に見えて減ってくるでしょう。こうした変化は日常の業務連絡の中でも察知できるため、上司や人事担当者が「いつもと違う」という感覚を大切にすることが早期発見につながります。 

業務態度・行動面のサイン

定時ちょうどに退席するようになった、有給消化率が急に上がった、社内イベントや研修への参加を避けるようになった、といった行動の変化も見逃せません。

これらは単なる「疲れ」や「忙しさ」に起因することもありますが、複数の変化が重なって現れる場合は帰属意識の低下を疑うべき状況といえます。1on1などの定期対話で早めに状況を把握することが有効です。

帰属意識が生まれる4つの要因

帰属意識はどのように生まれるのか?

帰属意識が醸成されるためには、大きくわけて4つの要因が関連していると言われています。

1. 人:職場内のコミュニケーション

帰属意識は、「自分はここに属している」という感覚が積み重なることで育まれます。その感覚の多くは、日々のコミュニケーションの中から生まれます。雑談で同僚の人となりを知る、困ったときに声をかけてもらえる、自分の発言が場に受け取られる、といった小さな体験の蓄積が「ここに仲間がいる」という実感につながるのです。

逆に言えば、業務上の連絡だけで成り立つ関係では、同じ組織にいても帰属意識は生まれにくいといえます。コミュニケーションは手段ではなく、帰属意識そのものの土台です。

2. 仕事:自分の業務内容を楽しいと感じられるか

社員一人ひとりが、持っている能力を充分に発揮できる環境にあるかどうかも、帰属意識の形成に影響をおよぼします。

本人の長所・短所に適した部署へ配置されていなければ、従業員は「自分は会社に貢献できていない」と思うでしょう。

従業員が力を発揮しやりがいを感じられる人材配置にすることで、会社への貢献度合いが増し、帰属意識が生まれます。

3. 権利:会社に認められている(守られている)という認識

エンゲージメントは帰属意識の土台となっており、エンゲージメントを高めることは帰属意識を生むことにつながります。

仕事の裁量・権限を与えられ、自身のアイデアや成果が認められたとき、従業員は会社に満足感を抱きます。
この満足感がエンゲージメントを高め、その結果として従業員は組織の一員であると自覚し帰属意識を持つことができるのです。

4. 理念:会社のビジョンや理念に共感している

従業員がビジョンや理念に共感することも、帰属意識の醸成につながります。

ビジョンや理念がないと、従業員は「今やっている自分の仕事が会社にどう役立つのか」「会社の成長に自分が貢献できているのか」という疑問を抱きます。

ビジョンや理念は会社にとって期限のない目標です。
従業員がビジョンや理念に共感し、会社と同じ目標に向かい貢献できたと感じことで帰属意識が生まれるのです。

エンゲージメントサーベイへの従業員の意識調査

HR研究所では実際にエンゲージメントサーベイへの回答をしたことがある会社員2,200名に対して独自にアンケート調査を行ったところ、「無駄」や「何に活かされているのか分からない」などエンゲージメントサーベイに対しての不満が明らかになりました。

エンゲージメントサーベイに関する従業員の本音を調査した調査結果も、ぜひ参考にしてみてください。

帰属意識が低くなる4つの原因

帰属意識が低くなる原因

帰属意識が低くなるとさまざまな弊害が発生します。
帰属意識が低くなる4つの原因を確認し、会社がとれる対策について考えていきましょう。

職場の人のコミュニケーション不足

帰属意識とコミュニケーションは密接に関係しており、職場内でのコミュニケーションが円滑にとれていないと帰属意識が下がってしまいます。

仕事に取り組んでも「上司や同僚と連携して仕事をしている」という認識がなければ、自分が集団に所属しているという気持ちにはなれません。

特にテレワークが定着した職場では、業務上のやり取りだけが増え、雑談や偶発的なコミュニケーションが失われがちです。「隣の人が何をしているかわからない」という状態が続くと、同じ組織にいるという実感が持ちにくくなります。

仕事を楽しめていない

仕事が自分の特性に合っていないと、従業員は「この会社では力を発揮できない」「自分は役に立てない」と感じ、帰属意識が低下します。

従業員の能力に合わせ、人材を配置し最大限、仕事に打ち込めるような環境を整えることが会社には求められます。

従業員が生き生きと働けるよう、会社はしっかりと従業員の資質や特性を理解しましょう。

上司によるオープンな情報共有の不足

上司が情報を部下に開示しないと、従業員は「会社に大切にされていない」と不信感を抱きやすくなります。「また後から知らされた」「自分だけ蚊帳の外だ」という経験が重なると、組織への一体感は急速に薄れていくでしょう。

経営情報を開示・共有することは、エンゲージメント強化にもつながります。エンゲージメントの向上は、帰属意識アップに必要不可欠であると受け止めて、常にオープンなコミュニケーションを心掛けましょう。

会社に認められていると実感できない

「この会社で一体何のために働いているかわからない」「仕事の成果や能力を認められていると思えない」といった不満は、帰属意識の低下につながります。

他人に認められたいという欲求を心理学では「承認欲求」と呼びますが、承認欲求が満たされていないと「会社にとって自分は必要ない」と思うようになってしまい、早期離職のきっかけとなるのです。

他人に認められたい・尊重されたいという従業員の承認欲求を自然に満たせるような環境作りに取り組むことが大切です。

帰属意識が低くなる原因とは?帰属意識を高める方法や事例を紹介

帰属意識を高める5つの方法

帰属意識を高める方法

帰属意識が低下する原因を解説したので、次はどうやって帰属意識を高めればよいのかをご紹介します。施策の効果を高めるためには、「原因の特定→施策の設計→効果測定」という順序で取り組むことが大切です。

理念やビジョンの発信と浸透

帰属意識を向上させるために、会社のビジョンや理念を従業員に伝え浸透させることは有効な手段の一つです。

従業員の帰属意識は「自分の居場所がここにある」「仕事で貢献し、従業員として役割を果たせている」と思うことで高まります。

会社や部署のビジョンや理念を従業員に理解してもらわなければ、従業員は進むべき方向を見失いかねません。
組織の一員として目指すべきゴールを知り、そこに向かって仕事に取り組むことで会社や同僚と一体感を得ることができるのです。

そのため、会社は従業員に対して入社したときから社内報や会社のSNSアカウント、社員向けのブログなどで日々「会社が掲げているビジョンと理念」について発信し従業員一人ひとりに浸透させることが大切です。

職場内でのコミュニケーションの機会を増やす

コミュニケーションが不足してしまうと帰属意識の低下につながります。特にテレワーク・リモートワークが導入された職場では社内のコミュニケーションが減ってしまいがちです。

「ハーズバーグの2要因理論」によればいくら昇給・昇進させたとしても、人間関係や職場環境がよくならなければ従業員は会社に満足できません。

会社は従業員同士がコミュニケーションを取れるように、部活を設立したり食事会を開催したり、お互いをよく知るきっかけとなる場を提供するとよいでしょう。対面・オンライン双方を組み合わせて、接点の総量を意図的に設計することが大切です。

仕事の役割を明確にする

帰属意識を高めるためには従業員に「自身の持つ役割を理解してもらう」ことが必要です。「自分がこの職場で働く理由がわからない」となると、帰属意識は低くなってしまいます。

こうした状況に陥らないようにするために、従業員自身が自分の役割や立場を理解できるようにキャリア面談や綿密なコミュニケーションを取りフォローしましょう。

ただし、役割を与えるだけでは不十分です。
なぜその役割をその従業員に与えたのか、どうしてその役割が必要となるのか理由についても伝えると、より帰属意識アップの効果が期待できます。

役割を理解すれば「自分はこの集団の中に居場所がある」と実感でき、会社との結びつきを体感するきっかけとなるでしょう。

働き方の改善や福利厚生の拡充・社内表彰などの機会を作る

働き方の改善とは、たとえばデスクの位置や動線、テレワーク・リモートワークを導入することにより従業員が働きやすい職場環境を整えることを指します。これによって従業員一人ひとりの多様性を会社が受け入れていると示せるため、帰属意識の向上につながります。

福利厚生や支援の導入も同じ効果が期待できます。他社を真似て取り入れるのではなく、自社の従業員にとって何が必要かを吟味した上で福利厚生・支援の導入を進めましょう。

また、表彰制度を設けることで「従業員の働きを会社が評価している」と目に見えるようになり、従業員が会社に認めてもらえていると自信を持って働けます。この仕組みは他の人の仕事ぶりを知り、従業員が会社全体の業務について関心を持つきっかけにもなります。

帰属意識が高まる研修を実施する

研修は、共通の経験や目標の共有を通じて参加者の一体感を醸成し、共に学ぶ中で仲間意識が芽生え、組織のビジョンを共有することで個々の目標と組織の目標の繋がりを明確化し、貢献意識を高めます。


また、研修は社員間のコミュニケーションを活性化させる場でもあります。普段接点の少ない社員同士が交流することで相互理解を深め、職場での円滑なコミュニケーションに繋がります。


さらに、研修を通じたスキルアップや自己成長の実感は、組織への貢献意識を育み、帰属意識の向上に寄与します。組織文化を学ぶことで組織への理解を深め、組織の一員としての自覚を強める効果も期待できます。

帰属意識を高める研修についてもっと知りたい方は下記もご覧ください。
帰属意識が高まる研修とは|おすすめの研修会社を紹介

まとめ

帰属意識の低下を防ぎ高めていくことで、会社と従業員に一体感が生まれ生産性の向上や定着率を上昇させ、優秀な人材が離職してしまう可能性を減らすことが期待できます。

帰属意識がどういったものかを理解した上で、低くなってしまう要因を取り除き会社として帰属意識の向上に取り組むことは会社の発展にプラスとなるでしょう。

低下しているサインを早期に察知し、コミュニケーション・役割の明確化・理念浸透・制度整備という4つの軸で継続的に施策を講じることが、組織の土台をつくる第一歩といえます。

帰属意識を高めるために会社として制度の見直しやコミュニケーションが取りやすい環境を整備することからはじめてみてはいかがでしょうか。

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