ISO30414とは

ISO30414は、人的資源(HR)領域での国際的な基準を提供するために国際標準化機構(ISO)が制定した規格です。この規格は、組織が人的資本の価値を定量化し、戦略立案や意思決定の実行に寄与することを目的としています。また、組織の持続可能性や社会的責任に関する情報を報告するための枠組みとしても活用されます。

ISOとは

ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称です。ISOは、1947年に設立された国際的な非政府組織であり、世界中のさまざまな国と地域が参加して、さまざまな分野の国際規格を開発しています。

ISOは、経済、技術、環境、安全性、セキュリティなどのさまざまな領域で標準化の推進を行っています。その目的は、製品、サービス、システムの品質や安全性を向上させ、国際的な相互運用性を確保することです。

ISOが発行する規格は、国際的に認められたベストプラクティスや指針として広く受け入れられています。これにより、企業や組織が統一された基準に従って業務を遂行し、品質の向上や効率性の向上を図ることができます。

人的資本開示とは

人的資本開示(Human Capital Disclosure)は、組織が自社の人的資本に関する情報を公開することを指します。人的資本は、従業員の知識、スキル、経験、創造性など、組織における人々の能力や付加価値を表す概念です。

人的資本開示は、組織が人的資本の重要性や価値、効果、パフォーマンスを外部のステイクホルダーに明示する手段として利用されます。人的資本の活用方法や開発プログラム、トレーニングの実施、ダイバーシティとインクルージョンの取り組み、従業員エンゲージメント、労働条件などの情報を開示することで、透明性を高め、ステイクホルダーの信頼を獲得することができます。

人的資本開示に向けて知っておくべき「従業員エンゲージメント」の基本とは?

HR研究所では、従業員エンゲージメントと従業員満足度の違いや、低下の原因とリスク、従業員エンゲージメントの向上がもたらすメリットをはじめ、どうすればエンゲージメントを高めることができるのか、いまさら誰にも聞けない「エンゲージメント」についての基本をまとめました。

下記からダウンロードできますので、エンゲージメント向上施策にぜひお役立てください。

ISO30414が注目される背景

ここでは、ISO30414が注目されるようになった背景についてご紹介します。

2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂

まずは、2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂により、上場企業に人的資本に関する情報開示が求められるようになったことが挙げられます。

参考:コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)|株式会社東京証券取引所

ESG投資への関心の高まり

また、ESG(Environmental, Social, and Governance)投資への関心が、近年急速に高まっていることも挙げられます。ESG投資は、企業の環境への影響、社会的責任、ガバナンスの質を評価し、それに基づいて投資を行うアプローチです。

「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取った言葉で、ESG評価の高い企業は投資家から「持続的な成長が期待できる企業」という評価を受けやすくなっています。

ESGのなかでも「Social(社会)」「Governance(企業統治)」は人的資本との関連性が高いため、人的資本に関する情報開示のガイドラインであるISO30414に注目する企業も増えています。

日本における人的資本開示の動き(人材版伊藤レポート2.0)

経済産業省は、「持続的な企業価値創造」を促すため、2017年に「人材版伊藤レポート」を公表し、2020年には「人材版伊藤レポート2.0」へと改訂しました。

人材版伊藤レポート2.0は、ISO30414を参考に作成されており、日本企業が人的資本に関する情報を効果的に開示するための枠組みを提供しています。

ISO30414をベースにしつつ、日本企業の状況に合わせて作成されているため、国内企業にとってより実践的なガイドラインとなっています。

人材版伊藤レポートとは?公表の背景や活用例について紹介

ISO30414の11の領域

ここでは、ISO30414の領域についてご紹介します。

コンプライアンスと倫理

組織が法令や規制に適合し、倫理的な原則を遵守しているかどうかに関する指標です。例えば、法的コンプライアンスへの従順性や倫理的行動規範の遵守度を評価します。

コスト

人的資源に関連するコストに関する指標です。組織が人材採用、トレーニング、福利厚生、雇用契約などにいくらの費用を費やしているかを把握します。

ダイバーシティ

組織内の多様性に関する指標です。性別、人種、年齢、障がい、性的指向などの要素に基づいて、組織のダイバーシティ戦略やダイバーシティ指標を評価します。

リーダーシップ

組織のリーダーシップの質や効果を評価する指標です。従業員の管理職への信頼等の指標です。

組織文化

エンゲージメント等従業員意識と従業員定着率を測定する指標です。

健康、安全

労災等に関連する指標です。

生産性

人的資本の生産性と組織パフォーマンスに対する貢献をとらえる指標

採用・異動・離職

人事プロセスを通じ適切な人的資本を提供する企業の能力を示す指標です。

スキルと能力

個々の人的資本の質と内容を示す指標です。

後継者計画

対象ポジションに対しどの程度承継候補者が育成されているかを示す指標です。

労働力

従業員数等の指標です。

参考:https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/ISO30414

ISO30414に準拠した情報開示の手順

ISO30414に準拠した情報開示の手順を説明します。

指標のデータ収集

最初のステップは、ISO30414に基づいて収集する指標に関するデータを収集することです。具体的には、従業員のスキル、教育、トレーニング、雇用形態、多様性、離職率などの情報を組織内から収集します。

収集したデータの分析

次のステップは、収集したデータを分析することです。データの分析により、組織の人的資本の状態やパフォーマンスを評価し、洞察を得ることができます。

例えば、スキルレベルの分布や従業員のエンゲージメントの程度のパターンや傾向を特定します。データの分析には、統計的手法やデータ可視化ツールを使用することが一般的です。

データを活用する仕組みづくり

最後のステップは、収集および分析したデータを活用するための仕組みを構築することです。これには、組織内でのデータの共有と可視化、意思決定への活用、改善策の立案と実施などが含まれます。

データを活用するための仕組みを確立することで、人的資本の価値向上や効果の最大化を図ることができます。また、報告書やダッシュボードの作成によって、内部および外部のステイクホルダーに対して情報を開示することも重要です。

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まとめ

ESG投資や人的資本経営に注目が集まり、ISO30414を通じ企業の在り方が重要視されてきています。ISO30414を活用した情報開示を行うだけでなく、開示したデータをもとにより良い組織づくりを検討することが重要です。バヅクリエンゲージメントではサーベイ結果をもとに課題を解決する最適な施策をご提案しております。是非この記事を参考に導入を検討されてみてはいかがでしょうか。