カッツモデルとは、マネジメント層に必要な能力を階層・スキル別に分類した理論のことで、人材育成や人事評価にフレームワークとして用いられています。本記事ではカッツモデルにおける3つの階層と3つの能力についての解説や活用方法、階層ごとに実施すべき研修の例をご紹介します。

カッツモデルとは

カッツモデルとは、1950年代にアメリカの経営学者ロバート・L・カッツが提唱した理論です。

組織内のマネジメント層を「トップマネジメント」、「ミドルマネジメント」、「ロワーマネジメント」の3つに分類し、その階層に応じて求められる能力を「テクニカルスキル(業務遂行能力)」「ヒューマンスキル(対人関係能力)」「コンセプチュアルスキル(概念化能力)」の3つに分類し割合を提示したモデルです。

このモデルは、人材育成や組織開発などのフレームワークとして用いられます。

カッツモデル

3つの能力のうち、ヒューマンスキル(対人関係能力)はどの階層においても割合は一律で必要とされていますが、テクニカルスキル(業務遂行能力)・コンセプチュアルスキル(概念化能力)の求められる割合が階層によって異なります。

次は、先ほど紹介した3つの階層および3つの能力についてそれぞれ解説していきます。

カッツモデルを構成する3つの階層

トップマネジメント(経営層)

CEO(最高経営責任者)や最高執行責任者(COO)、会長、社長など最上位の経営層が該当します。

企業のビジョン、方針、戦略など大局的な意思決定を行う立場のため、現場での作業や現場への指示は直接関与することは少ないです。

ミドルマネジメント(部長や課長などの管理職)

部長・課長や部門マネージャー、支店長などの中間管理職が該当します。

トップマネジメントが決定した経営方針や戦略に基づき、部門ごとの具体的な目標や戦術を策定する役割が求められます。

部門の運営やパフォーマンスの管理を行うため、モチベーションを維持し業務が遂行できるよう、現場と経営陣の関係性を取り持つ必要があります。

ロワーマネジメント(係長・主任などのリーダー層)

チームリーダーや現場監督、係長、主任など、日々の現場での業務の実行と監督を担当する立場です。

ミドルマネジメントから与えられた指示のもと、メンバーへの基本的な指導や調整を行います。

的確な業務遂行能力と、経営方針を理解し、メンバーの業務に落とし込む能力が必要です。

そのほかにプロジェクトリーダーなど、特定のメンバーをまとめる立場にある一般社員もこのロワーマネジメントに含まれます。

カッツモデルを構成する3つの能力

コンセプチュアルスキル(概念化能力)

コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を見極めその概念や意味、価値を考える能力のことを示します。

トップマネジメント層で求められるスキルであり、組織全体だけでなく情勢や市場の変化など、多角的な状況や事象を客観的に分析し、効果的なアプローチ方法を見出す能力といえます。

コンセプチュアルスキルでは以下のような思考方法を身につける必要があります。

  • ロジカルシンキング(論理的思考):来事の結果と原因を分析し、論理的なつながりを理解して判断する思考方法
  • ラテラルシンキング(水平思考):常識にとらわれずに創造的で自由なアイデアや考えを生み出す思考方法
  • クリティカルシンキング(批判的思考):行動や思考を客観的に見直し、情報や意見に対して批判的かつ論理的に評価する思考方法

ヒューマンスキル(対人関係能力)

ヒューマンスキルとは、人間関係を築きコミュニケーションを円滑に行う能力です。

上司・部下・同僚など社内の人間関係だけでなく、取引先やクライアントとの関係構築に役立つため、階層に関わらず全員で身につけておきたい能力です。

リーダーシップ・コミュニケーション能力・プレゼンテーション能力・ヒアリング能力などの要素で構成されます。

テクニカルスキル(業務遂行能力)

テクニカルスキルとは、具体的な業務や専門知識に関する能力です。

プロジェクトの遂行や業務の実行に必要なスキルであり、現場で業務に関わる機会の多いロワーマネジメント層に求められます。

PCの操作スキルや資格、顧客への提案力・営業力などが該当し、業務を効率的にこなすためのスキルで構成されます。

カッツモデルを人材育成に取り入れるメリット

目標の明確化と効果的な育成

カッツモデルを取り入れることで、組織内の各階層に求められるスキルや能力が明確になります。

これにより、従業員の育成計画を具体的に立てることができ、必要なスキルを重点的に習得させることが可能です。

従業員側も自分が今何を求められているのかが明確になるため、モチベーションの向上や自己啓発の促進にもつながります。

公平な評価と査定

カッツモデルに基づいた評価基準を用いることで、従業員のパフォーマンスを客観的かつ公平に評価できます。

役職ごとの求められるスキルを考慮に入れた査定が行われるため、能力の違いを適切に評価できます。

カッツモデルを活用した人材育成

カッツモデルを活用した人材育成の手順をご紹介します。

①各階層に求めるスキルをリストアップ

まずは組織内の各階層に求められるスキルを明確にリストアップします。

トップマネジメント、ミドルマネジメント、ロワーマネジメントそれぞれの階層で必要とされる能力をコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキルに分類して把握します。

これにより、各階層の育成目標を設定する基盤が整います。

②各階層・スキルに応じた研修の実施

次に、各階層および必要なスキルに合わせた研修を計画・実施します。

今回はバヅクリ株式会社が提供する研修をご紹介します。

バヅクリの研修は、VUCA/多様性の時代で自立型人材育成を目的として、実践的な学びとコミュニケーションを重視しているため、全ての研修がグループワーク中心で構成されており、座学中心の研修では難しいアクティブラーニング、受講生同士の関係構築、行動変容コミットメントを実現します。

コンセプチュアルスキルの習得(トップマネジメント)に適した研修

ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修

論理的思考について、基礎理論を学習し、自身の業務においてどのように活用するのか考えます。

グループワークを通じて論理的思考を実践し、グループでの議論を通じて自身の思考に関しての気づきを得ながら学習を進めます。

ラテラルシンキング研修
ラテラルシンキング研修

商品企画や業務改善のアイデアを出す際に、ロジカルシンキングだけでは出てこないような、思考の枠を拡げてアイデアを出す方法を学習します。

グループワークで実際に多様なアイデアを出していきます。

クリティカルシンキング研修
クリティカルシンキング研修

論理や情報に偏りなく本質を見極める思考力を身につける研修です。

経験値のない事柄・事象について自分の頭で考え、論理的な判断を行う方法をグループワークを通して他者からの視点を取り入れながら学べます。

ヒューマンスキルの習得(全マネジメント層)に適した研修

OJT研修
OJT指導研修

若者の価値観変容、テレワークへの移行などに伴い、従来通りのOJTでは育成が困難です。

本研修ではSL理論「状況対応型リーダ―シップ」に基づいた育成の基本を学ぶと共に、新しい価値観を持つZ世代のモチベーションを保ちつつ組織に貢献できる人材を育成するノウハウを、社員同士の交流を図りながら学べます。

アサーティブコミュニケーション研修
アサーティブコミュニケーション研修

自分も相手もストレスの無いアサーティブコミュニケーションについて理解を深め、日常での活用法を習得します。

自分のコミュニケーションの癖を把握し、相手と良好な関係を築けるコミュニケーションスキルを学びます。

心理的安全性研修
心理的安全性研修

心理的安全性が高い組織運営を仕組み化できるノウハウを得ることができる研修です。

心理的安全性の高いチームを作るための方法を理解し、自身のチーム運営における実践ポイントを定義し、自身の言動を振り返り、心理的安全性を高めるためにすべきこと/すべきでないことを理解します。

テクニカルスキルの習得(ロワーマネジメント)に適した研修

法人営業基礎研修
法人営業基礎研修

法人営業に必要な意識やコミュニケーションスキル、プロセス・手法を学ぶ研修です。

グループワーク形式で楽しみながら体感的に自身の得手・不得手を確認し、今後の強化ポイントを識別します。

プレゼンテーション研修
プレゼンテーション研修

聞き手のニーズを踏まえて、わかりやすくコンパクトに伝えられるためのプレゼンテーションスキルを学習します。

実際にプレゼンテーションしている様子を受講生同士で見ながら、自身の強化ポイントを把握します。

リーダー研修
リーダー研修

リーダーに求められる成果創出と部下育成について学ぶ研修です。

一見すると相反するこの2つをどのように両立させるかを考え、明日からの具体的な改善行動に結び付けていきます。

実際に組織内で起こりがちな部下のミスを想定したロールプレイングを経験することで、座学での学びをより現場で活かせる知識とスキルとして定着させることができます。

まとめ

カッツモデルについての基本的な解説や、階層ごとに実施すべき研修をご紹介しました。

各階層に必要とされるスキルを明確にし、人材育成や組織力向上にご活用ください。