皆さんは従業員エンゲージメントに取り組んでいますか?
働き方改革が進み、新型コロナウイルスの感染拡大防止でリモートワークが推奨され、非常に変化が大きい昨今だからこそ、従業員エンゲージメントに再度注目が集まっています。
今回は、改めて従業員エンゲージメントの言葉の意味を解説するとともに、従業員エンゲージメントを高めるメリットや、具体的な取り組み事例をご紹介します。
目次
従業員エンゲージメントとは
従業員エンゲージメントという言葉の意味を、端的に定義づけると「企業と従業員のあいだの関係性」となります。
従業員エンゲージメントとは何か調べると、実はそこまで明確な定義がなく、様々な人が独自の目線で解釈をしています。
様々な解釈の中から導きだすと、従業員エンゲージメントとは以下のポイントを含んで定義づけるとよいでしょう。
①従業員エンゲージメントとは、企業と従業員の関係性を指すもの
②従業員の企業への愛着心、貢献意欲、信頼度、熱意、帰属意識を表すもの
③企業と従業員が対等な関係にあり、双方が二人三脚で経営に向き合っているか確認するもの
その他にも、従業員エンゲージメントについて調べると、下記のような説明があるので参考にしてみてください。
従業員エンゲージメントとは?
- 会社の方針や戦略を、経営者を含む従業員全員に浸透させるために有効な手段のこと
- 人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係のこと
- 従業員と企業が二人三脚で同じ未来を描けているかを表すもの
- 従業員の仕事や会社に対する熱意や、信頼度、愛社精神などを表す考え方
- 従業員の「会社のビジョン・目標達成に向けての自発的な貢献意欲」という意味
- 従業員が会社をどれだけ信頼しているか、どれだけ貢献したいと考えているかなど愛着心を表す概念
- 従業員の企業に対する帰属意識や愛着のこと
- 企業と従業員が対等な立場にあり、お互いに貢献し合う関係性のこと
エンゲージメント(engagement)とは、直訳すると「約束・婚姻・契約・雇用」といった意味になりますが、従業員エンゲージメントという単語が人事領域で使われる際は、TPOに応じて広く使い意味合いを含むことがわかります。
いまさら聞けない!「従業員エンゲージメント」の基本
終⾝雇⽤が衰退し、働き⽅改⾰のもと⼈材の流動化が活発な今、従業員エンゲージメントに注⽬が集まっています。
HR研究所では、従業員エンゲージメントと従業員満足度の違いや、低下の原因とリスク、従業員エンゲージメントの向上がもたらすメリットをはじめ、どうすればエンゲージメントを高めることができるのか、いまさら誰にも聞けない「エンゲージメント」についての基本をまとめました。
下記からダウンロードできますので、エンゲージメント向上施策にぜひお役立てください。
従業員満足度/ロイヤルティ/コミットメント/モチベーションとの違い
従業員エンゲージメントを調べる際に、従業員満足度やロイヤルティなどとの違いが気になる方も多いと思います。
ここでは、従業員満足度、ロイヤルティ、コミットメント、モチベーションの意味を確認し、従業員エンゲージメントとの違いを押さえていきましょう。
従業員満足度
従業員満足度とは、企業が用意した給与待遇や仕事そのもの、福利厚生や働く環境などに対して、従業員がどのくらい満足しているかを示すものです。
従業員満足度が上がっても、必ず事業利益がアップするわけではない点が、従業員エンゲージメントとは異なるポイントです。
ロイヤルティ(Loyalty)
ロイヤルティとは忠誠心という意味を持ちます。
ロイヤルティ使う際は、企業が圧倒的な権力を持っていて、従業員は企業に忠実に従うという構図になります。
従業員エンゲージメントのように、企業と従業員が対等な立場でない点が、異なるポイントです。
コミットメント(commitment)
コミットメントとは、「委託・約束・責任・参加」などの意味を持ちます。
「事業の売上にコミットメントする」と用いるように、特定の相手に約束や責任を果たすよう要求するという意味合いで使われることが多いです。
つまり、ロイヤルティと同様に、企業から従業員に求める意味合いが強く、企業と従業員が対等な立場でない点が従業員エンゲージメントと異なるポイントになります。
モチベーション(motivation)
モチベーションとは、「やる気・意欲・動機」という意味を持ちます。
モチベーションは、企業と従業員の関係性を示すものではなく、従業員本人に対して使われる指標になります。
従業員エンゲージメントを上げるために、個々のモチベーションアップは重要な視点ですが、モチベーションが上がれば従業員エンゲージメントも必ず上がるとも言い切れません。
あくまでも、従業員エンゲージメントを計る指標の一つが、従業員のモチベーションであると解釈するとよいでしょう。
日本の現状(従業員エンゲージメントが各国より低い)
日本は、世界各国と比較すると、非常に従業員エンゲージメントが低くなっています。
米ギャラップ社の従業員エンゲージメント調査によると、日本は139ヵ国中132位となり、世界最低水準でした。
従業員エンゲージメントの概念は、もともと米国で生まれたものであり、日本は米国を始め、海外に追随する形で、従業員エンゲージメントに取り組み始めたばかりの現状です。
参考:「従業員エンゲージメントとは? 測定方法や企業事例を紹介」
従業員エンゲージメントを高めるメリット
従業員エンゲージメントを高めると、従業員の帰属意識や愛着心がアップし、離職率を低くしたり業績アップしたりするなど様々なメリットが期待できます。
ここでは、従業員エンゲージメントを高めることのメリットをご紹介します。
1. 人材の定着率が上がる(離職率が下がる)
従業員エンゲージメントが上がるということは、従業員の企業への愛着心、貢献意欲、信頼度、熱意、帰属意識などが上がると解釈できます。
つまり、従業員エンゲージメントを高めていけば、企業と従業員間のつながりが一層強化され、人材の流出を防ぐ効果が期待できます。
また、「この企業にもっと貢献したい!」と前向きな気持ちで定着してくれることで、従業員が企業の採用にも協力的になる可能性もあるでしょう。
従業員エンゲージメントの好循環サイクルが回れば、結果としてリファラル採用強化や企業口コミの改善、新たな人材の採用へとつながっていくのがメリットといえます。
2. 顧客満足度やサービスの提供の質がアップする
従業員エンゲージメントが高まれば、従業員の仕事に対する貢献意識やモチベーションが高まっていきます。
前向きに仕事に取り組むということは、自然と提供するサービスの質も上がり、顧客満足度のアップにもつながっていくメリットがあります。
3. 企業の業績が上がる
従業員エンゲージメントが高まり、企業と従業員が対等な立場でビジョンを共有しながら事業に取り組むことができれば、最終的には業績アップにつながります。
もちろん、従業員エンゲージメントの向上は、一朝一夕で成し遂げられるものではありません。
継続的に、従業員エンゲージメントを改善し続ければ、業績アップにつながるメリットがあるのです。
従業員エンゲージメントを高める方法
どのように従業員エンゲージメントを高めていけばよいのか、具体的な方法を確認していきましょう。
1. MVVの浸透
働く環境や業務効率をアップするだけでは従業員エンゲージメントを高めることは難しいです。
リンクアンドモチベーションの近年の調査によると、従業員エンゲージメントのアップには「組織の上下のコミュニケーション強化、理念・戦略・目標の共有と意欲醸成、事業の将来性実感が重要」とされています。
企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は何か明確に定義づけて、どのようにMVVを実現していくのかを、従業員に向けて語り、コミュニケーションをとり続けることがもっとも重要です。
2. 継続的なエンゲージメントサーベイの実践
従業員エンゲージメントを高めるためには、自社の従業員エンゲージメントの現状を数値化する必要があります。
一般的には、エンゲージメントサーベイのサービスを用いて、エンゲージメントスコアを計る方法があります。
なお、従業員エンゲージメントは1回確認したら終わりではありません。
1回計ったら、その場で従業員エンゲージメントが高まるわけではないからです。
エンゲージメントサーベイを継続的に実施し、何をすれば従業員エンゲージメントが高まる・下がるのか、効果検証を繰り返していくことが重要です。
サーベイツールにも色々ありますので、以下の記事も参考にしてください。
調査するだけではエンゲージメントは低下する
従業員の満足度や組織の課題を把握するためにエンゲージメントサーベイを実施する企業が増えてきましたが、サーベイツールを導入するだけでは社員のエンゲージメントが低下することがアンケートによって明らかになりました。
サーベイの導入が社員の不満につながる理由はどういったものなのでしょうか。
調査結果は下記からダウンロードできますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。
3. 人事施策の検討
エンゲージメントサーベイを実施したら、自社の課題を抽出して、複数の人事施策を検討します。
人事評価や1on1など、上司と部下とのコミュニケーションやフィードバックの改善を行う施策や、ワークライフバランスを見直すための施策など、課題にあわせて実施します。
自社の課題状況に合わせて取り組むべきポイントは変わります。
そのため、「1on1を増やせば従業員エンゲージメントが高まる」や、「賃金アップすれば従業員エンゲージメントがアップする」など、安易に考えないよう注意が必要です。
従業員エンゲージメントを高めた企業事例
最後に、従業員エンゲージメントを高めた企業事例を紹介します。
1. 株式会社LIFULL
不動産情報サービス事業を展開するLIFULL社では、コロナ禍で不確定要素が多い中でも、従業員のために新たな勤務ルール導入や賃金制度の改定を行い、従業員エンゲージメントを高めました。
在宅・オフィスどちらでも働けることはもちろん、緊急時は子どもを会社に連れてきても良いとするなど、柔軟な対応をしています。
また、新たな勤務ルールにあわせて交通費制度などコストを見直し、正社員の月額給与を約10%増加するなど、積極的な人材投資を行っています。
その結果、従業員エンゲージメントへの取り組みを表彰するベストモチベーションカンパニーアワードで第3位を受賞されています。
2. 株式会社ウエディングパーク
2020年3月から、全社リモートワークを実施したことで、チーム間コミュニケーションの質・量が減ってしまうことを懸念した同社は、カルチャーを促進する社内制度のオンライン化に踏み切りました。
オンラインで社員総会「WPA2020 Autumn」を実施する際には、従業員の自宅に社員総会の案内状、オリジナルデザインのTシャツとビール、スマホスタンドなどを郵送するなど、様々な工夫をこらされている点が特徴です。
また、コロナ禍の中でスピード感をもって事業内容を見直し、新たな中期ビジョンを発表するなど情報の透明性があった点が、従業員エンゲージメントを保ち続けた秘訣といえます。
https://www.wantedly.com/companies/weddingpark/post_articles/288547
3. 大日本住友製薬株式会社
大日本住友製薬株式会社では、従業員一人ひとりが自主的に本人の能力開発に取り組む風土をつくれるよう、従業員の成長に重きを置いています。
公式ホームページ内で、独自の人材育成体系も公表しており、戦略的に人材開発を実施しています。
- OJT/OFFJT、選抜型研修、公募制海外研修など各種研修
- タレントマネジメントによる戦略的な人事配置
- ジョブローテーション制度
- 自己申告書に基づく上司、部下との面談
- 人材戦略会議を100回以上も実施 など
従業員を中心とした、複合的な人事施策を継続し、従業員エンゲージメントを高水準に保っている良い事例です。
https://www.ds-pharma.co.jp/csr/with_employee/education.html
まとめ
従業員エンゲージメントは、企業経営をおこなう上で非常に重要な指標です。
少子高齢化が進み、少ない労働人口で高い生産性を上げていくためには、企業が従業員へ一方的なコミットメントを期待するのではなく、双方に理解しあい良好な関係性を構築するいつ用があります。
ぜひこの機会に、従業員エンゲージメントについて社内に説明し、エンゲージメントサーベイを用いて自社の状態を確認してみてはいかがでしょうか。